落とす玉イベント6 ~ 玄武雷刻黒拳と千日鋼を必ず落とすジョーモン ~
「大丈夫ですか?」
ゆっくり歩いているシンズさんのところへ向かった。
「いや歳には勝てぬわい。参った参った。」
「ジジイのくせに、あんなに張り切ってたからこうなるんだ。」
厳しい言葉を放つニイタツに、隣にいたセイヤンが言いすぎだろと肘を突いた。
「ニイタツの言う通りじゃな。
悪いが2,3日千日の塔はお休みさせてもらうわい。すまんのぉ。」
「私たちのことは気にしなくていいから、無理しちゃダメですよ。」
「そうそう、今日はゆっくりしてて。」
ニャルマーとアビナが心配そうな顔をしてシンズさんを気遣った。
「ありがとな。ほれ、ここで儂は見送ってるから気を付けて行くんじゃぞ。」
「うん、わかった。行ってくる。」
「それじゃ、いってきま~す。」
シンズさんはカスミとアビナを千日の塔へ押し出すかのように2人の背中を押した。
今日はシンズさんを除く7人で千日の塔へ向かった。
23層へ転移し、開始早々熊太郎たちを召喚した。
「今日は悪いが朝からよろしくね。」
理解しているのか熊太郎とベア子はラジャーと言わんばかりに敬礼し、
ムツキは空中を1周した。
召喚獣にバフを掛け、修行の杖を装備してウインドカッターを
唱えながら進めていき、集合時間に間に合うよう外に出た。
ギルドに戻り福引と素材の売却を終え空いている席で寛いでいると、
ニイタツとセイヤンが近づいてきた。
「色々お世話になりました。また来年もよろしくお願いします。」
「そういえば、30日から家に戻るって言ってたっけ。」
セイヤンの年末の挨拶を聞くまで忘れていた。
「俺は戻らなくてもいいと思ってるけど、
セイヤン一人で帰るには危険だから仕方ない。」
捻くれたニイタツは放っておいて、『危険』とはどういうことか気になった。
「家ってカサーナじゃないの?」
「ここから徒歩で1時間位離れた小さな集落なんですよ。
ニイタツの実家とは近いんですけどね。」
「そっか。戻りはいつ頃?」
「4日に向こうを出るから、5日には活動再開って感じですね。」
「まぁ暫くゆっくりして、また来年もよろしく頼むよ。」
「「はい。それでは良いお年を。」」
「ああ、二人とも良いお年を。」
二人を見送り、少し時間を潰してから宿へと戻り1日を終えた。
【12月30日】
「こうして歩くと、少し前を思い出すな。」
俺が来てメンバーが揃ったので千日の塔へ出発し、シンズさん達3人が
抜けたこの5人メンバーを見ながらパワルドが過去を振り返った。
「スパイティフの一件からシンズさん達と一緒するようになったんだよね。」
「あんときゃ迷惑掛けたな。」
パワルドはバツが悪そうに後頭部を搔いていた。
「あのお陰で1つ問題が解決したんだし、もうあまり気にしなくていいよ。」
「そうそう、ブリーディングエリアについて教訓になったしね。
その少し前のポスリメンの時にカスミ達に会ったんだよね。」
「うん。」
ニャルマーは左右にいるカスミとアビナが元気に返事した。
「振り返ってみると、カサーナに来てから色々バタバタしてたね。」
年末だからなのか思い出話に花が咲き、千日の塔までの道中盛り上がった。
千日の塔では、23層へ転移した。
昨日は雪掻きの影響で酷い筋肉痛だったが、今日は問題ないので体を動かすため
武器は玄武黒北の爪、防具は玄武道着と体術用の装備にした。
ちなみにこの爪と防具は、ゲーム内で体術系の武器としては最強のもので、
玄武雷刻黒拳という
ランク6の電気系の武器固有のスキルも付いている。
パワルドが買ったノベグランの爪にある氷塵纏爪はランク4の武器固有の
スキルで、モブスタに使った瞬連撃はランク3の剣術スキルだ。
準備を整えるとガラゴーンが1体現れたので、玄武雷刻黒拳を使ってみた。
『ドォーーンッッッ!!』
真面に喰らったガラゴーンは壁へめり込み、摩素へと還った。
剣を振った時のデジャブがそこに。。。
「壁に穴が空いちゃったけど、ダイ、ジョウ、ブ、ダヨ、ネ・・・」
毎回入るたびに内部は変わるので問題ないと思いつつも、
居た堪れない気持ちになり、そっとその場から離れた。
少し離れるとガラゴーンとフワノッペがいたので、今度は2体とも殴り付けた。
『ベキッ!バコッ!』
何かが折れる音が響き、2体とも少し飛ばされ摩素へと還った。
体術レベルが186だし、こんなもんなのだろう。
相手の動きも見切れるし全く問題ない。
魔香を使い体術で出てくるモンスターを倒していった。
10分経過---
「ヤバイ!はぁ、はぁ、もう疲れてきたぞ。」
息を切らしながら、額の汗を拭った。
魔香の効果は切れたが、目の前にいる古びてくすんだ鍵の形をしている
モンスター、ジョーモンが飛び掛かってきたところを
「俺は鍵穴じゃないって!」
と突込みながら躱し、タイミングよく蹴り上げると落とす玉と
千日鋼を落とし一撃で摩素へ還った。
このモンスターは飛び掛かってきて怖いけど、
100%千日鋼を落とすのでありがたいんだよね。
「ちょっと休憩。。。」
ディテクトを使い周りに敵がいないことを確認して、その場へ座り込んだ。
「スキルレベルは高いから簡単に倒せるけど、体力的に問題があるなぁ。」
現状ベースレベルとスキルレベルが、この場所のモンスターと比較すると
圧倒的に強いからレベルにあった攻撃ができているか分からないだけで、
今の状態で最終フィールドの敵を倒せるか微妙かもしれない。
息が整いディテクトの圏内にモンスターが2体入ってきたので、
立ち上がった。
「よし、もう少しだけ頑張ってみよう。」
気合を入れ直し、目視でも確認できる距離まで来たガラゴーン2体を蹴り倒した。
そして、もう一度魔香を使い10分間体術スキルでモンスターを倒し続けた。
「やっぱ、キツイなぁ。。。」
魔香で近寄ってきた最後のモンスターを撃破し、その場に座り込んだ。
近距離での攻撃は敵の動きにも気を回す必要があり、
肉体面だけでなく精神的にも疲れる。
「魔香を使ってやるのは、あと1回でいいっか。」
息も整い立ち上がり、屈伸や肩をグルグル回し軽いストレッチをして
2度ピョンピョンとジャンプした。
「ラスト~!」
魔香を使い10分間体術でモンスターを狩りまくり、
最後の1体を豪快に蹴り飛ばした。
息が上がりながら中腰になり手を膝に付きながら、
「今日の運動は終わり!」
と、宣言した。
『体術を使うのが運動?』そんな突込みは気にしない。
当面は朝1時間程度運動することにした。
イベントはさて置き、運動と魔法スキルと召喚獣たちのレベル上げ。
色々やりたい事多いなぁ。
「熊太郎、ベア子、ムツキ、後よろしく!」
熊太郎とベア子は俺がいつもと違う恰好をしていたのが気になりじっと見た後、
「押忍!」と言わんばかりのポーズをして見せた。
君たちどこでそれを学んだのかな?
装備をいつもの物に戻し、召喚獣にバフをかけ続けながら
16時前まで落とす玉集めを進めた。
『え、ラクしすぎじゃないか』って?
そんな事はない。召喚スキルと補助スキルのレベル上げを頑張っていたのだ。
さて、塔の外に出ると女性陣は既に待機しており、
パワルドがまだ塔にいるようだった。
3人で楽しく話をしている横でパワルドの戻りを待っていると、
カーピユが塔から出てきて、こちらに気付き手を振りながら近づいてきた。
「丁度よかった。今度のサイポークの件で話したかったんだ。」
カーピユはニャルマーたちと年始の予定を協議し始めた。
そのタイミングでジャインが塔から出てきてカーピユに気付き、
苦笑いしながら俺の方へ来た。まだ揉めてるってことはないよね?
瞬連撃(ランク3)
氷塵纏爪(ランク4)
玄武雷刻黒拳(ランク6)
剣術や体術などのスキルの強さは漢字の数になってます。