落とす玉イベント2 ~ アルティマ祭準備、そして因果応報 ~
1つ目をペリッと捲って、書かれている物を確認した。
「回復薬って・・・」
壁に貼られている商品リストの一番下にあるので、参加賞といったところだ。
「気を取り直して次!ペリッと、、、またか・・・。」
次もまた参加賞だった。
「ええい、もう一気に開けてやる!」
残り16個を一気に開け、結果トータルで魔香が1個、
MP回復薬が3個、回復薬(大)が2個、回復薬が8個、
500ゼニーが1個と100ゼニーが3個になった。
回復薬は回復スキルがあるから使わないけど、
魔香は使う機会が多いのでありがたい。
商品リストの上位には10000ゼニーや魔香10個セット、
変わったものとしてはサイポークの宿泊券などがあった。
余談だが他のメンバーも俺とほとんど同じく回復薬が多かったみたいだ。
千日鋼などの千日の塔で得たものを精算し今日は終わりにした。
【12月23日】
千日の塔での探索を終え、貯まった落とす玉で福引しにギルドを訪れた。
ちなみに成果は昨日とほとんど変わらない。
「ギルド内が随分賑やかになったね。」
「明日の夜はアルティマ祭だからな。」
ギルドスタッフと乙女戦士や他の女性冒険者が壁に飾りつけしている
ポスターを見ていると、パワルドが答えてくれた。
「アルティマ祭って?」
「諸説あるけど、1年最後の1週間を前に、今年を振り返って感謝を
捧げるためと言われてるよ。」
「あるいはこうも言われておるの。今日が一番陽が短い冬至じゃろ。
明日から徐々に陽が伸びるから太陽の復活を祝うとな。
まぁ何であれ、儂は毎年ギルドで宴と共にターキーを
ご馳走してくれるからそれが楽しみじゃ。」
「僕たちは去年、アビナんちでパーティーしたね。」
「楽しかったよね。今年はギルドでのパーティーが待ち遠しいね。」
ニャルマーとシンズさんが説明してくれ、
カスミとアビナは去年の事を話していた。
「とある宗教の誰かの降誕を祝う訳ではないんだね。」
「え、何それ?」
「いや、何でもない。」
小声で言ったが、耳の良いニャルマーには聞こえていたようだった。
「ねぇアビナ、僕たちも手伝おうよ。」
「面白そうだからいいよ。」
乙女戦士たちが楽しそうに飾りつけをしているのを見て
カスミは手伝いたくなりアビナを誘った。
「ニャルねぇちゃんも一緒に行こ。」
「福引と精算が終わったらね。」
「よし、直ぐに済ませて早く手伝わせてもらおう。」
ニャルマーの参加を取り付けたカスミは福引の会場へ行ってしまった。
「俺らはいいよね?」
「男はギルドスタッフしかいないし、女性陣が楽しんでるところを
邪魔しても嫌だから良いんじゃないか。」
パワルドに参加しない同意を求め、
俺たちは福引と精算を終えてゆっくりすることにした。
福引の結果は残念な結果だったことだけ付け加えておく。
ま、おまけだし気にしない。
【12月24日】
モンスターが多く落とす日だったお陰で、いつも以上に多く落とす玉を
ゲットすることができた。
俺は26回引くことができるのだが、パワルドはブリーディングエリアに
遭遇したとのことで、39回も引けると大喜びしている。
「綺麗だね。」
18時からパーティの会場となるギルドは、昨日女性陣が飾りつけをした
イルミネーションがゆっくりと点滅している。
「昨日遅くまで頑張ったからね。」
「そうだよね。」
「うん。」
ニャルマーだけでなく、カスミとアビナも夜遅くまで
残って作業していたようだ。
「そうだったのか。3人ともお疲れさん。」
「男の人も手伝ってくれてたらもっと早く終わってたと思う。」
「「すいません。」」
アビナの鋭い指摘にパワルドと即謝り、
後列にいたシンズさん達はシレっと別の方を見ながら話していた。
「私たちが好きでやってた事だし、男の人がいたらあんなに
キャッキャできなかったと思うよ。」
「ん~、それだと楽しさが半減するから、あれで良かったのかも。」
俺たちの事を案じたニャルマーの言葉に、アビナは納得してくれた。
今回はニャルマーに借りができたなと思いながら反省し、
5つある福引をするための列で人が少ない一番右の所に並んだ。
そして隣の列に39回引けるパワルドが期待を込めた笑みで並んだ。
時は経ち、前に並んでいた3人が捌け俺の番がやってきた。
福引のボックスに何度か手を突っ込んで26回分引き、1枚ずつ開封した。
「はぁ。」
1つ、2つと捲っていくが回復薬の籤が一か所に重ねられていく。
そして、違うのが出ても100ゼニーとか回復薬(大)しか出ない。。。
隣のパワルドも一か所に籤が重ねられていき、
先ほどまでの笑みは消え徐々に顔が強張り始めている。
『カラ~ン、カラ~ン』
一番左端で福引をしていたアビナの前にいるギルドスタッフが鐘を鳴らし、
「サイポークの4名様宿泊券、大当たり~!」
と皆に聞こえるように大声を出し、当たりを引いたアビナはカスミと
手を取り大喜びだ。
引き続き俺も良いものが出るよう祈りながら残っている籤を開いていくが、
回復薬の所に籤がどんどん重ねられていく。
最終的にMP回復薬1個、回復薬(大)2個、回復薬15個、
500ゼニー1個、100ゼニー7個と今までで最悪の引きだった。
『ドン!』
引きが悪くてがっかりしている俺の横で、全ての籤を開き終わった
パワルドがテーブルを思い切り叩き、悔しがっていた。
彼の前には1枚と3,4枚の束と、30枚以上の束の3箇所に分けられていた。
はっきりとは見えないが、100ゼニーが数個と
1枚が何か不明だが500ゼニーとかその程度のもので、
そして残り30枚以上が回復薬だったのだろう。
俺より悪いな。
『カラ~ン、カラ~ン!』
パワルドよりマシだった事に少し気が紛れた心に、
真ん中で福引をしていたニャルマーの前にいた
ギルドスタッフが鳴らす鐘が響いた。
「壱万ゼニー、大当たり~!」
最後の1枚が大当たりだったニャルマーは飛び跳ねながら喜んでいる。
日頃の行いというか、因果応報というか、ニャルマーとは
対称的に良いものが引けなかった俺とパワルドは、
しょんぼりと次の人へ場所を譲った。
「俺も今日は引きが悪かったよ。」
「ま、所詮はオマケだしな。」
パワルドの肩をポンと叩きながらの慰めに、
先ほどの期待を込めた笑みとは異なる引きつった笑みで返してきた。
「確かに言う通りだね。もう終わったことは気にせず、
この後のパーティーを楽しもうぜ。」
「ああ、そうだな。と、その前に素材の精算だな。」
精算を終え1時間近くパーティーの開始まであったが、
香ばしい匂いのするギルドの中で時間を潰し、その時を待った。