新装備の検証 ~ フワノッペとガラゴーンに氷結系範囲魔法フローズンブリザを唱えてみた ~
シルバーウィークなので、特別に1話追加でリリースします。
次はいつも通り、来週水曜日の29日を予定しています。
「買おうか悩んだけど、結局のタッピキザの盾を買ったよ。」
「あれか。お高かったじゃろうに。」
後ろでニイタツとセイヤン挟まれて歩いているシンズさんが
羨ましそうにしていた。
「シンズさんは何か装備品を調達されたんですか?」
「量産品をいくつか買ったくらいじゃよ。
こんな老体が限定品を付けてても装備品もかわいそうじゃろ。ははは。」
「そんなこと言わないでくださいよ。まだまだお若いですって。」
冗談ぽく限定品を買ってないことを伝えたシンズさんを
最後列でカスミとアビナに挟まれて歩いているニャルマーが受け答えた。
「そんなニャルマーは何か買ったのかい?」
「私はノベグランの弓を買ったよ。」
「ほう、得意武器の剣ではないとは意外じゃの。」
「剣は今使っているワザヤミーの剣があるし、ブルーフォレストの
人達みたいに遠距離攻撃もできた方がこの先いいかなと思って。
あとは【極】の鎧上下やアクセサリーを買って
今回得たお金分以上に使っちゃったよ。」
「俺もノベグランの爪を買って、量産品も幾つか買ったりしてたから
ほとんど精算した金残ってないな。」
ニャルマーとパワルドだけではなく、俺も2つ限定品を買って
大半を使っちゃってるし、他のカサーナの人たちも今回の儲けを
使い切っている人は多いんだよなぁ。
ブルーフォレストも大金をギルドに精算しただろうが、
最後はきっちり商売して回収していく辺りはさすがだ。
「いいなぁ、限定品。。。」
「俺たちも【匠】ランクで一式防具を揃えれたんだから上出来だって。」
セイヤンは、話を聞いて羨ましそうにしているニイタツを宥めた。
「カスミとアビナも必要なものは買えたかい?」
「防具は【匠】で揃えることができて、武器は【極】でメインと
サブの2種類を買えたよ。
と言っても、少し足りなくてアビナに借りたんだけどね。」
「いつも助けてもらってるから、返さなくていいって言ってるのに。」
「アビナんちって金持ちだもんな。」
『パワルド、アビナはあまりそれを言われたくないぞ』と思ったが、
皆知っていることなので、誰もそのことは気にしていなかった。
ただニイタツは2人が【極】の武器を手に入れたことが気に食わないのか、
両手の拳を握り締め「んんん」と唸って頭に血が昇っている。
隣のシンズさんとセイヤンは、それを見て呆れたように溜息を付いた。
「なあ、新しい得物の小手調べに千日の塔へ行こうぜ。」
パワルドは千日の塔が近づいた所でソワソワしていた。
「通り道で時間もまだあるし、良いんじゃないか。みんなは?」
と振り返ると、行く気満々だった。
新しい装備品を試しに、2週間ぶりに千日の塔へ行くことになった。
千日の塔では現状で行ったことがある最奥の21層へ転移し、
久しぶりに熊太郎達を出してあげたかったが、
ノベグランの杖のスペックを確かめることにした。
やっぱり、折角手に入れた新しい武器だから試したいよね。
この層で比較的よく見かける宙に浮いたフワノッペという
顔の無いモンスターに単体氷魔法のアイスボムを使うと、
想像以上に威力に驚いた。
「これならこの階層は余裕だな。あとは範囲魔法を試したいよなぁ。」
かじられリンゴを倒しまくってもベースレベルは上がらなかったが、
この層の推奨レベルより遥かに高いし、
魔法スキルは以前よりレベルは上がっている。
そして、この杖の効果があれば当然の結果なんだけどね。
ディテクトを使い複数固まっている場所を目指した。
「いたな。よし、フローズンブリザ!」
フワノッペとガラゴーンというモンスターがいる場所を
目掛けて唱えると、1撃で2匹とも魔素へと還った。
「凄いけど、なんだかなぁ。。。」
威力は申し分ないが、この層のモンスターを1パン狩りしたところで、
ベースレベルの経験値としては微々たる物だし、
魔法スキルを上げるなら修行の杖の方が効率良いしなぁ。
ノベグランの杖は効率的に狩りを行う場合に使う事として一旦仕舞い、
修行の杖を装備した。
少し進むと、ガラゴーンが1匹現れたので同じように範囲魔法を唱えた。
「フローズンブリザ!、、、ですよねぇ。」
この杖だと威力は等倍なので1撃では倒せず、
結果3発唱えることになってしまった。
まぁアイスボムやウインドカッターでも2発必要なので、
威力の落ちる範囲魔法だから妥当なところだろう。
検証を終え、今まで通りスキルレベルの低い召喚スキルと
魔法スキルを上げる事にして久しぶりに熊太郎達を呼び出し、
集合時間まで塔内のモンスターを倒していった。
【12月21日】
かじられリンゴの件が落ち着き、
リッジスターは商隊の護衛でチャビーゼンまで同行し、
ウォウヴェンハットはバトマへ応援に出た。
セントレアとは千日の塔への往復でたまに一緒になり、
仲良くしてくれる。
今日も千日の塔へ行き、帰りにセントレアと合流し
精算のためギルドへ顔を出した。
「もうこんな時期になったんやなぁ。」
ギルドスタッフが壁に張っているポスターを見ながら、
タイガンは感慨深げにしていた。
「年末年始恒例の『落とす玉イベント』だね。」
「『落とす玉イベント』ってなんだ?」
パワルドはジャインの言っているイベントはどんなものか、
俺に聞いてきた。
「なんだろう?」
オンラインゲームの中でも同じイベントはあったが、
必ずしも同じとは限らなので、話のボールを渡す様にジャインを見た。
「そっか、君らはまだ冒険者になって1年経ってないし、知らないか。
毎年12月22日から翌年の1月5日まで、
モンスターを倒すと玉を落とすんだよ。
それも不思議な事に毎回色と模様の組み合わせが違うんだ。
そのモンスターが落とす玉を集めてギルドに納めると福引ができる。
まぁ豪華景品はないけど、ちょっとしたオマケみたいなもんだよ。」
「へぇ、その玉が出やすいのが12月の24と25,
そして1月の1,2,3かぁ。」
パワルドは説明を聞いてイベントの内容を理解したようで、
俺もゲーム内のイベントと差はないなぁと感じた。
「何でギルドは玉なんて集めてるんだろうね。」
「あれはアクセサリーになるんやて。」
「そのアクセサリーは翌年高貴な人たちの間で流行るそうよ。
だから前年のものは引き取ってもらえないの。」
落とす玉にどんな価値があるのか気になったニャルマーに
タイガンとスワリアが理由を教えてくれた。
「ああ、だから前年のは引き取ってくれなかったのか。」
さっきまで偉そうに説明していたジャインは今そのことを知ったようだ。
「あたしは年始はやりたくないわよ。そうだ、ニャルちゃん達も
サイポークへ行かない?
奥さんが獣人の旦那が経営している宿を知ってるから行ってみよ。」
「それって、ひょっとしてハームさんとこ?」
カーピユの誘っている宿が知っている所かもしれないと
ニャルマーが聞き返した。
「え、知ってるの?だったら調度いいや。年始に行こうよ。」
ニャルマーが俺を見てきたので、どうぞどうぞとジェスチャーすると、
「うん、楽しみにしてるね。」
とカーピユに答えた。
「僕たちもいいよね?」
「ああ、二人も寛いできな。」
カスミが聞いてきたので、アビナも一緒に行くことを認めてあげた。
「おいおい、折角のイベントやのに勝手言うたらあかんやろ。」
「そうだぞ。稼げるときに稼ぐのは当然だろ。」
既にタイガンの頭からは煙が出ている状態で、
ジャインもカーピユの勝手を面白く思っていなかった。
「まぁ、まぁ、まぁ。。。」
ドランゴとべスターは困りながらもカーピユとタイガンの間に入り
必死に仲裁していた。
次回から、モンスターが落とす玉を集める『落とす玉イベント』です。
ちなみに、正月に子供がもらうのはオトシダマです。