表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強の剣を求めて~Another Story~  作者: 遠浅 なみ
第3章 ゴエアール地方
57/186

かじられリンゴの逆襲11 ~ ブルーフォレスト第1部隊到着とビクレビスとの共闘、そして吞み比べ ~

かじられリンゴが徐々に増えてきた理由を把握し、

誤ってブルーフォレストの人に当てないよう茂みから離れた。


離れて討伐していると木の上の人影は消え、少しすると茂みの中にいる

かじられリンゴを倒しながら湿地帯へと現れた。


全体では凡そ30人はいるだろうか、一番近くに来た人の雰囲気はかすかに

エメラルドグリーンが混じった様な色白の肌で背は俺よりも少し高く、

耳は少しとがっていてエルフのようだった。


茂みから出てきたブルーフォレストの応援部隊は近距離攻撃の武器へと

変えており、一番近くの彼も弓から槍に変わっていた。


そして、俺と目が合うと一回会釈して、

かじられリンゴを倒しながら近づいてきた。

「わっきゃブルーフォレストがら来だビクレビスだ。

この度はご迷惑おがげすます。」

20そこそこに見える青年は、東北弁で訛りながら話かけてきた。


「俺はなおとだ。皆からはナオッチって呼ばれてるよ。

若いのに随分腕が立つね。」

ウインドカッターで倒しながら、こちらも自己紹介した。


「うんにゃ、そったらに若ぐはねじゃ。なよりたげ年上だよ。」

「100歳とか?」

「もう何年がすたっきゃ、そうなるよ。わんどエルフは長寿で、

若ぇ期間がなげじゃよ。」

当てずっぽうで言ったが、いい線行ったみたいだった。


「若い期間が長いってのは羨ましいですね。」

「そった風さしゃべらぃるど、わんつかてれるなあ。

折角だす、もう少すあっちまで行ってみるべよ。」

ビクレビスが近くを、俺が離れたところを倒したので、

付近にはかじられリンゴがいなくなっていた。


「そうしましょう。」

弓に武器を変えたビクレビスと移動しながら、

共に遠距離攻撃で次々と倒していった。


夕方4時ころには、湿地帯にいたかじられリンゴはほぼ殲滅した。

最果ての西西の丘周辺の雑木林や丘の上にはまだ残っているが、

宿営地への影響は取り除かれたと考えていいだろう。


湿地帯の入口まで戻ると防衛ラインは無くなっており、

ウェデンさんと数名のブルーフォレストの人が出迎えてくれるだけだった。


「お疲れさん。順次宿営地に戻ってもらってるから、

君たちも今日はゆっくりしてくれ。」

「多大なる協力、感謝すます。わっきゃこの部隊で総指揮官すてらガツールだ。

宿営地にブルーフォレストの美味ぇ酒用意すたはんで飲んでってぐれ。」

ウェデンさんの後に話したガツールさんは、ビクレビスと雰囲気が似ていて

どう見ても20歳前後にしか見えない。


「困ったときはお互い様ですよ。」

「そうしゃべってもらえで、ありがだぇじゃ。

ビクレビス、今日はおめもこの後はゆっくりすろ。」

「そいだば、今日は終わりにすて飲むべ。行ぐべが。」

ビクレビスに促され宿営地へと歩みを進めた。


宿営地の仮設ギルドでは既にカサーナ、ブルーフォレスト入り乱れて

酒盛りが繰り広げられていた。


「このジャポネ酒、美味すぎるぞ。

ほらそこにグラスがあるから飲んでみな。」

一升瓶を持ちながら既に出来上がっているメセーナさんが、

俺の肩の上に腕を乗せながら絡んできて、指さす所にあった台の上に

無造作で置かれている少し小さめのグラスをビクレビスが2つ持ってきた。


1つを受け取るとメセーナさんが「ほれ、ほれ。」と言いながら

並々と注いでくれ、一口飲んでみると雑味のない日本酒で、

下戸な俺でも美味いと感じる。

「ほんと、おいしいですね。」

と答えたものの、ビールのようにガバガバ注がれてもそんなに飲めないので、

潰される前にメセーナさんから離れようと辺りを見まわした。


「カスミとアビナに付き添ってたいので、またよろしくです。」

皆の邪魔にならないようにと少し離れていた2人を指さしながらその場を離れ、

俺と同じように並々注がれていたビクレビスは半分以上飲みながら付いてきた。


「お強いようで。」

「ブルーフォレストのふとは皆酒につえぇはんでね。

もす、酒さ弱ぇだば無理すね方がいじゃ。」

「1杯なら大丈夫だと思うから、これをチビチビ行かせてもらうよ。」

正直に打ち明けると「気にすんでね。」と笑顔で返してくれた。


「2人は何で端にいるの?」

大広間の隅で話をしていたカスミとアビナに話しかけた。


「ボクたちお酒はまだ飲めないしね。料理は貰ってるけどさ。」

ギルドが用意した料理も並べられ、立食パーティーのようになっていて、

カスミはそれらの料理を盛っていた皿を左手で少し上げて俺に見せた。


「何が飲んじゅのがい?」

グラスを持っていないことに気付いたビクレビスはカスミ達に尋ねると、

少し考えてから「何も飲んでないlと首を横に振った。

「すたっきゃ美味ぇ飲み物があるはんでわんつか待ってろ。」

ビクレビスは何かを探しに行ってしまった。


「凄い訛ってたよね。一瞬何を言ってるか考えちゃった。」

「何となく意味は分かったけど。でもさ、凄くイケメンだよね。」

カスミと同じようにしっかりと会話を理解できなかったアビナは、

他のブルーフォレストの人に何かを聞いて回っているビクレビスを

ずっと目で追っていた。


「ビクレビスの事、気に入った?」

アビナは一回俺の顔を見ると、頬を赤らめながらうつむいてしまった。


「あぁもう疲れたよ。」

ニイタツがセイヤンと一緒に愚痴りながら俺のところへ来た。

「何かあった?」

「ほら、あれ。」

二人は邪魔にならない場所で酒瓶を抱きながら寝ている

シンズさんを指さした。


「はぁ。。。お疲れさん。」

呆れながら1つ溜息を吐き、2人を労った。


「わーらの地元の特産品リンゴで作ったジュース、

めぇはんで飲んでみでな。って人増えでらね。」

2人のブルーフォレストの男にも手伝ってもらいながらリンゴジュースと

つまみを少々持ってきたビクレビスは俺やカスミ達にグラスを渡すと、

もう一度取りに行こうとしていた。

「あ、私が行きます。」

アビナはセイヤンに自分の受け取ったグラスを渡し、

先ほどビクレビスが注いでいた所へ行ってしまった。


「ニイタツ、俺は後ででいいからやるよ。」

アビナが持ってきたものを渡すとこいつは絶対に文句を言い始めるだろうから、

俺の分を渡してやった。


ビクレビスが連れてきた2人を紹介してきたので、

俺もこちらのメンバーを紹介していると、

ニャルマーとカーピユが合流した。

「あれ、グラスは?」


ニャルマーはジャポネ酒の入ったグラスを持っていたが、

カーピユは何も持っていなかった。

「よく酒強そうに見られるけど、全く駄目なんだよ。」

「へぇ、意外だね。とは言え、俺もこの1杯で十分だけどね。

で、他の人たちはどうなの?」

「ウチのメンバーはあたし以外全員酒豪だよ。もうあいつらん所には

行きたくないし、もう少しここに居させてもらうかな。」

「俺らは全然かまわないよ。」

俺とカーピユが話していると、アビナがニャルマーとカーピユの分の

ジュースを持ってきてくれた。


「そういえば、パワルドは見てないな?」

「多分あの中にいるよ。」

俺がパワルドの姿を探していると、ニャルマーが奥の方で

盛り上がっている集団を嫌そうに指さした。


「ありゃカサーナ恒例の飲み比べでもしてそうだね。」

カーピユは呆れていたが、貰ったリンゴジュースを1口飲むと

「美味しいわ、これ」とご満悦だった。


「そいだば、わんつかわんども行ってみるがな。」

『飲み比べ』と聞いてビクレビス達3人は参戦しに奥で盛り上がっている

集団の所へウキウキしながら行ってしまった。


パワルドがまたやらかさないか心配だったが、何かあっても

大人だし自己責任だよなと思い直し、その後は気にせず美味しい料理と

飲み物を頂いて、まったりと夜を過ごした。





余談ではあるが飲み比べはアブレラとスワリア以外は全滅したそうだ。

「ねぇねぇみんなもっと飲もうよぉ、ははは。」

アブレラは手酌で飲みながら笑って、近くに寝ていた人を叩いていた。


「私は眠くなってきたからそろそろ帰るわね。」

「んじゃ、あたしももう寝よ。」

普段と変わらぬ雰囲気のスワリアが出口へ歩き出すと、

アブレラも一緒に歩き始めた。


「みんな大したことなかったわね。」

仮設ギルドから出て振り返って放たれたスワリアの酷な一言は、

冷たい夜空へ消えていった。

ブルーフォレストとガツールは、そのまんま青森と津軽です。

ビクレビスは本州最北端の大間町から大(Big)間(crevice:隙間)です。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ