かじられリンゴの逆襲8 ~ カサーナの状況とサンハイト、そしてそれぞれの思い ~
今週水曜日(8月11日)リリース予定分を
3連休なので先行リリースします。
【12月9日】
6時40分、日の出を迎えたカサーナの朝はひんやりとしている。
「やっぱ、朝晩は寒いよなぁ。」
討伐を開始すれば体は必然的に温まるが、
軽くウォーミングアップをしてから湿地帯の入口へ向かうことにした。
「兄貴、おはよう。」
コアゼン川の手前でパワルドが待っていた。
「ああ、おはよう。で、こんなとこでどうした?」
いつもならメセーナさんがいる入口で集まるのに、
わざわざ待っているのは何か用があるのだろう。
「ちょっと先に兄貴へ話しておきたい事があってな。」
「何か困ったことでもあった?」
2人で橋を渡りながら会話を続けた。
「昨日さぁ、20時過ぎまで残ってやってたんだけど、
そん時にニャルマーが1回代わるって言ってきたんだよ。」
「へぇ、でも何で急にそんな事言い出したんだろうね。」
「ま、あの~、俺が帰ってくるなりぶっ倒れるのを見て、
手伝わなきゃって思ったらしい。」
パワルドは言いづらそうに、声が小さく恥ずかしそうにしていた。
「あれは、お前が最初に飛ばしすぎたからだろう。」
「その辺はちゃんと話したんだけどよぁ、やるって言って聞かねぇんだよ。」
「まぁ俺は別に構わないけど、後でジャイン達にちゃんと言っとけよ。」
「ああ、分かった。一応ニャルマーには4陣目に代わる感じでどうだろ?」
「ニャルマーならどこでもしっかりやってくれるだろから構わんよ。」
話をしながら歩っていると湿地帯の入口が見えてきて、
その先のかじられリンゴはピーク時の6,7割位まで減っていた。
「お三方に伝えたいことがあるんだけど、少しいいか?」
皆揃うとジャインが話し始めた。
「うちのメンバーからの要望で、3陣目にタイガンの代わりにドランゴ、
4陣目に俺の代わりにカーピユに入ってもらおうと思うんだがいいかい?」
「構わないと思うけど、何でそんな話が出たんだい?」
俺はジャインに理由を聞いてみた。
「何だか大変そうだって事で、協力してくれることになったんだよ。」
「大変ねぇ・・・」
パワルドの方を見ると、視線を明後日の方へ逸らしやがった。
「相手はかじられリンゴだし、ドランゴとカーピユなら大丈夫だろう。」
2人の実力を知っているアゼールもメンバー構成に異論はなかった。
「うちも同じ意見が出てて、4陣目に俺の代わりにニャルマーに
入ってもらおうと思ってる。ニャルマーの実力は俺が保証する。」
視線を明後日の方にやっていたパワルドは、
アゼールの後に続けてうちのパーティの件を伝えた。
「4陣目やったらカーピユと一緒やし、女同士でええんちゃうか。」
ニャルマーも了承され、自然と視線がアゼールへと向かった。
「俺のとこかい?そう言った話はあったけど、
俺がやりたいって言って始めたことだから断ったよ。
君たちの所の話を聞いたら、うちも交代すれば良かったかもと
今更ながら思うよ。
お、アブレラ達が来たね。じゃ、それじゃ始めようか。」
アゼールがアブレラとタケリツに手を振ると、アブレラは嬉しそうに走ってきた。
「おっはよう~!今日もいいとこ見せちゃうからね!」
後ろから歩って来ているタケリツはお疲れの様子だが、
A班として既に8時間やっていたのにアブレラはまだまだ元気だ。
「いいとこ見せてもらうために、昨日と同じで1陣目と2陣目でどうだい?」
「おう、ゴホゴホ、、、ま゛がぜどげ、、、」
ジャインが頼むと、また胸を思い切り叩きむせて苦しそうにしていた。
加減という言葉を知らんのか・・・
「豪華顔ぶれが盛り上がってるところ悪いが、少しいいかい。
ちょっと情報の共有だけな。」
陣容が決まり一段落していると、メセーナさんが俺の方を見ながら声をかけてきた。
「どうしたんですか、神妙な面持ちで?」
「見ての通り皆のお陰でピーク時の3分の2程度まで減ってきて感謝している。
だが、昨日サンハイトのギルドからカサーナの方からかじられリンゴが
大量に来てるって連絡があった。幸い大きな被害は出てないとの事だが。」
俺、パワルド、ニャルマーはサンハイトから来ている経緯があり、
俺たちに情報共有してくれた。
「仮に今から直ぐに戻ったとしても、間に合うかどうかってとこだな。」
俺がどうしようか考えていると、パワルドはもしサンハイトへ
向かった場合を想定した。
「残念だがそれはできない。今君たちに抜けてもらっては困るという事も
あるが、現在チャビーゼンより先へは一時的に運休になっているんだよ。」
「要は俺たちにはここでかじられリンゴを倒すことの一択ってことですか?」
俺はメセーナさんの情報を元に、選択肢をぶつけてみた。
「ここでかじられリンゴの数を減らせば、サンハイトの助けになるだろう。
引き続きゴドロンパーティーのメンバーには期待しているよ。」
メセーナさんはこの場から俺たちを解放するつもりは全く無いようだった。
「もっと多く倒していれば、サンハイトや他の所への影響を抑えられたのかもな。」
アゼールは先ほどまで減ってきていることに気が緩んでいたが、
多くが逃げられてた事たことに後悔の念を口にした。
「そんなに気負う必要はないし、君たちは良くやっている。
ここから北のクレンランドやドアスロープ、そしてその先の人たちが
ベストを尽くしてくれたからこそ、
カサーナでのピークは短く済んでるじゃないか。
だからこそ、我々もベストを尽くして少しでも多くかじられリンゴを倒そう。」
「メセーナさんの言う通り、俺たちは俺たちのベストを尽くさないとな。」
ジャインはアゼールの肩をポンと励ますように叩いた。
「あたしももっと頑張っちゃうからね。(ドン)ゲホゲホ、、、」
アブレラが言い終わると自分の胸を大きく叩くと再びむせてしまい、
一同笑いに包まれた。
「ほなアブレラの頑張りに期待して、そろそろ行きまっか。」
タイガンの言葉に皆気を引き締め、1陣目がスタートした。
メンバーはジャイン、タイガン、アブレラ、タケリツ、そして俺の5人だ。
メセーナさんの話を聞いて、昨日よりじられリンゴは減っているか
気を抜くことなく討伐していた。
密度が下がったことで1回のフレイムウェイブで倒せる数は減っているので、
ウインドカッターで単体攻撃をしながら、時折まとまっている場所に
フレイムウェイブを唱えるようにした。
俺の魔法の変化を気付いても誰も何も言わず、当然のように受け入れてくれた。
2陣目ではジャインとタイガンに代わって、アゼールとパワルドが入った。
今日はパワルドも初めから飛ばすような事はせず、普通に戦闘をしていた。
スピードアップは使ってるようだったが。
アブレラもパワルドの様子を見てパワーアップで攻撃力を高めたようだ。
高速で3回切りつけていたが、2回で倒せるようになっていた。
2回でも3回でもアプレらの速度だったらあまり差は無いように思うが、
本人の気分の問題なんだろう。
アゼールとタケリツもスピードアップを使い始めたようだった。
2人の影響もあるだろうが、かじられリンゴが減って
間隔が広くなったので移動時間の短縮が目的だろう。
その一方で俺はマジックアップの使用をやめた。
間隔が空いてしまったことでフレイムウェイブよりウインドカッターを
主に使うようになり、わざわざバフを掛けなくても1撃で倒せるからだ。
俺だけMP節約しちゃって申し訳ない気分ではあったが。
3陣目はアブレラとタケリツが抜け、ジャインとドランゴが入った。
ドランゴは背も高く、大きい斧を片手で軽々と持ち上げ肩に載せていた。
あの斧で力加減するのは難しいから仕方はないが、防衛ラインにいる時から
彼は豪快にその斧を振り回しかじられリンゴをオーバーキルで倒していた。
そして振り返ると獣王の斧を装備し、ニヤニヤと不敵な笑みのパワルドがいた。
もう嫌な予感しかしない・・・
毎週水曜日にリリースしてますが、8月11日はお休みします。m(_ _)m