かじられリンゴの逆襲4 ~ 防衛ラインの外でフレイムウェイブを唱えてみた。その効果は、、、~
「待たせたな。」
アイテム購入を終えたジャインとタイガンが店から出てきた。
「この後はゆっくりしようと思ってたから構わないよ。で、話って何だい?」
「今って防戦一方だけど、こっちからも攻めて数を減らした方がいいと思ってるんだ。
おっと、勘違いしないでくれよ。防衛が良くないと言っている訳じゃないからな。
カサーナを防衛するために守りを固めることは当然だからな。
そこで俺はもっとあのフレイムウェイブを有効活用できないかと思ってるんだけが。」
「そんでな、うちらであんさんを守るから防衛ラインの先でフレイムウェイブをぶっぱなしたら
おもろいんちゃうかって話やな。メインであるあんさんに負荷がかかてまうけどな。」
「俺の負担は大丈夫だけど、俺たち3人が抜けると他の人達に負荷がかかるんじゃないか?」
「確かにそうだが、今はあんたの意思を聞きたい。
もしOKなら、ギルドや他のパーティの人達の協力は俺たちが採りつけるよ。」
「なら、他の人たちが問題ないって言うなら引き受けるよ。」
「おもろくなりそうやな。せや、お宅のパーティへはあんさんから頼めんやろか?」
「じゃあ、他はよろしくです。」
「ああ、任せとけ。」
ジャインとタイガンは俺と逆方向に行き、俺はメンバーに集まってもらうようメッセージを送った。
メンバーにジャインの提案について話をすると、パワルド以外は受け入れてくれた。
「悪い案じゃないと思うが、俺も入れてくれないか。」
「他の人にその分負荷がかかっちゃうから難しいと思うけど、何で行きたいんだ?」
「彼らを信頼していない訳じゃないけど、例えば囲まれてピンチになった時とか、
まだ会って日が浅いのに体を張って守ってくれるのか?」
パワルドはもっともらしく俺を気遣っているが、所詮周りにいるのはかじられリンゴ。
囲まれても問題ないし、そもそも囲まれてピンチになることもないと分かっているだろうに。
要はただ行きたいってことなんだろうけど。
「残ったもんで何とかするから、パワルド君も連れて行ったらどうじゃ。」
シンズさんは見かねて助け舟を出した。
「分かったよ。それじゃ少し早めに行ってギルドの人に話してみるか。」
俺が諦めるとパワルドはガッツポーズをしていた。
11時40分、皆が集合する時間より10分早く集合場所へ行くと、
リッジスターとセントレアの面々とメセーナさんが互いに難しい表情で打ち合わせをしていた。
「お、主役さんがいらしたか。」
メセーナさんは俺達に気が付いた。
「主役さんって・・・」
困惑しているとジャインが近づいてきて申し訳なさそうに小声で話してきた。
「他のパーティは協力してくれるよう話はつけたんだが、リッジスターのリーダのアゼールが
どうしても自分も参加したいと。で、メセーナさんがちょっと困ってるんだ。」
「まいったなぁ。うちもパワルドが参加したいって。」
「そうか。」
ジャインは腕を組みながら「どうしたもんかなぁ。」と天を見上げた。
「折角だから、まずは5人でやってみたらどうじゃい?少し防衛ラインを下げれば大丈夫じゃろうし、
もしそれで駄目なら戻ってきてもらって昨日みたいにやれば良かろうて。」
「それもそうだよな。」
ジャインはシンズさんのアドバイスを参考にしてもう一度メセーナさんへ交渉しに行き、
最終的にパワルドを含めた5人での行動を認めてもらえた。
俺を中心としてサイコロの5の様な陣形で前の方へ突き進むという方針は早々に固まったものの、
誰が前衛に就くかで揉め、最終的にはじゃんけんで勝った順に、
右前がジャイン、左前がアゼール、右後がパワルド、左後がタイガンと決まった。
12時になったのでA班と入れ替わり、マジックアップを使い魔力を高めてから
俺を中心に5人が正面に立った。
「それじゃ、いくよ!フレイムウェイブ!」
右前方に唱えるとジャインとパワルドが飛び出し、次に左前方へ唱えるとアゼールとタイガンが
飛び出し、倒しきれなかったかじられリンゴを攻撃し始め、俺は中央にもう一発打ち込んだ。
「おいおい、なんだよあれは。」
交代したA班は突然の爆発音に驚き、ざわつきながら俺たちの方を見ていたが気にせずに
かじられリンゴがいる前方まで走り再度両サイドにフレイムウェイブを唱えた。
俺はフレイムウェイブを唱え、倒しきれなかったものは4人に対応してもらいながら
奥へと進んでいく。
「兄貴、後ろの方も頼む!」
防衛ラインからある程度離れ、四方八方かじられリンゴに囲まれており、
もはや前衛も後衛もなくなってきた。
「はいよ~。」
パワルドとタイガンの間にフレイムウェイブを唱え、倒しきれず残ってしまったのは2人に任せ、
さらに先へ進むためフレイムウェイブを前方へ放った。
「あまり奥へ行き過ぎるのもリスクだから、この辺までにした方がいいんじゃねぇか?なぁ。」
アゼールは言い出しっぺのジャインに確認した後、俺に同意を求めるかのように振ってきた。
「確かにそうだね。」
「それじゃ、あまり奥に行かない程度に多そうな方へ打ってくれ。俺たちはそれに合わせるよ。」
アゼールに意見に賛同すると、ジャインから進む方向を一任された。
「OK。じゃ、左側から行くよ。」
アゼールとタイガンの間に放ち、MP回復薬(特大)を飲みながら南の方角へ歩いた。
「日もだいぶ傾いてきたし、そろそろ戻った方がえんちゃうか?」
4時を回り影が伸び始めたところで、タイガンがかじられリンゴを倒しながら提案してきた。
入口付近ではギルドがライトを照らしてくれるが、このまま日が落ちてしまうと
俺たちは暗闇の中で対処しなければならなくなってしまう。
かじられリンゴが弱いとはいえ、それは危険すぎる。
「OK、6時の方向行くよ~」
5人での討伐を数時間こなし、いつからか奥へ進む場合を0時として方向を言うようになり
方向を決めてた俺が、いろいろ決めるようになっていた。
「よっしゃ、戻るぞー!」
3時間以上休みなく対応して疲弊していたが、パワルドは再度気合を入れ直し、
他のメンバーが「おー!」と呼応した。
戻りはパワルドとタイガンが先頭で、俺の両サイドにアゼールとジャインがおり、
俺は時折振り返り0時の方向にフレイムウェイブやウインドカッターを唱え、
後方から攻撃してくるかじられリンゴを倒しながら進んだ。
戻った時には既に回りは薄暗くなっていたが、
近づくにつれライトの光が届くようになり無事にたどり着いた。
「うげぇ、疲れた~」
パワルドは前線から少し離れたところで大の字になって寝っ転がってしまい、
「もう、あかんですわ。」
「俺も。」
と、タイガンとジャインも続けて大の字になった。
「お前たち情けないなぁ。」
アゼールもそう言いながらその場に座ったので、俺も腰を落ち着かせた。
正直守ってもらっていた俺が一番疲れていないことは内緒だ。
「かなりお疲れのようだね。」
メセーナさんは水を持ったアサミと共に来た。
「俺だけで1300以上倒したんですけど、何か変化ありました?」
この3時間で昨日の分以上倒したのに現状は行く前とあまり変化がなかったので、
俺たちが先方で討伐している間どうだったか聞いてみた。
「伝えにくいけど、あまり減っていたようには見えなかったよ。」
「そんなぁ・・・」
メセーナさんが苦笑いで教えてくれたのを聞きジャインは一度起き上がってがっくりし、
俺も疲れがどっと出た。
「で、悪いんだがあと5分くらいしたら戦列に戻ってくれ。」
アサミからもらった水を一気に飲み干し俺も横になり、「もう嫌だ!」と呟いた。
お陰様で、次話が50話になります。ありがとうございます。
50話はまとめの意味を込めて、登場人物紹介を載せます。
話の続きは51話にて。お楽しみに~