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最強の剣を求めて~Another Story~  作者: 遠浅 なみ
第3章 ゴエアール地方
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かじられリンゴの逆襲2 ~ トコトン稼いじゃって良いそうです。 ~

防衛ラインを徐々に上げていっていると、カスミとアビナも加わった。


「遅くなってごめん。」

戦列に加わったカスミが謝ると、ニイタツは苦虫を噛み潰したような顔になった。

「獣人のくせにいつも遅いんだよ。」

「獣人だろうが人族だろうが、女の子の朝は忙しいの。

そんなことも分からないんじゃ、もてないわよ。」

「んだとぉ!」

ニイタツはカスミの言葉に怒ってしまい、一瞬かじられリンゴから目を逸らしてしまった。


「おいおい余所見してんな。危ないから、今はこっちに集中しろって。」

ニイタツを襲おうとしていたかじられリンゴをセイヤンが倒した。


「危ないところ、すまん。」

ニイタツは再度周囲に注意を払いながらかじられリンゴの討伐を続け、

それを遠目に見ていたシンズさんは大きく溜息をついていた。


サイレンで叩き起こされてから1時間が経過し、橋上は完全に制圧でき、

主戦場は南コアゼン川を越えて湿地帯との境目になり、

それでも大量のかじられリンゴがやってきている。


何となく湿地帯の入り口を中心に弧を描くような戦線になっていたが、

先へ進むにつれ弧は大きくなり、隙間ができてそこからすり抜けられる事態も発生していた。


メセーナさんは入り口近くで状況を把握しており、一部の冒険者に声掛けをしていた。

そして俺のところにもやって来た。

「朝早くからすまないね。一旦入り口まで集まってもらえるかい。」

「何かあったんですか?」

「詳しくは後で話すよ。」

メセーナさんは次の人に声掛けしに急いで行ってしまった。


既に一部の人たちが戦線から抜けたことで、徐々に隊列が崩れ始め、

俺も目の前の敵を放置し、気がかりながらも小走りで向かった。


半分はまだ戦闘を続けていたが急速に後退し、先ほどまでの広がりは瞬く間に小さな弧になった。

おおよそ半分が集まり、声を掛けていたメセーナさんが戻ってきた。


「取り敢えず戦線は維持できそうだな。さてと。」

戦況見て想定どおりの形になったことを確認した後、俺達がいる方へ振り返った。


「今朝早くからの迅速な対応に感謝する。

さて、手短に状況を伝えるが、ブルーフォレストからの応援は5日後になると連絡が来た。

その間昼夜を問わず、この状況が続くと思われる。」

昼夜問わずと聞き少しザワついたが、かじられリンゴも

夜はお休みというわけではないので仕方が無い。


「そこで2班に分かれ、ここにいる人はB班として12時から24時まで戦ってもらう。

南コアゼン川を抜けられるとカサーナに被害が出てしまうから何としてでも守りきる。

長時間になってしまうが、みんな頼む。昼まで僅かだがゆっくりして備えておいてくれ。」

12時間労働はブラックだと思ったが、この状況下で誰も文句を言う人は居らず散会した。


メセーナさんは状況を監視していたので、声をかけにいった。

「ここまで凄いとは思いませんでしたよ。」

「2、3日前まではゆっくりしていたのが嘘みたいだな。それで、やる気は出たかい?」

いつもみんなより遅く出てたので、そう思われても仕方ないか。ま、事実だし。


「こんな状況では、やる気云々の問題じゃないですよね。

稼がせてもらえるから良いんですけど、多すぎですよ、これ。」

「この状況で稼ぎを考えてるとは、たいしたもんだな。

掛かったコストは全部ブルーフォレストに請求するからトコトン稼いじゃって良いよ。」

「例えば、範囲魔法を使うってのも有りですかね。」

「この間のスパイティフの時に使ったっていう噂のフレイムウェーブかな。

火属性は奴らの弱点だしそれで効率が上がるなら、周りに気をつけてくれさえすれば構わないよ。」

「後で試してみます。」

「稼ぎの事を気にしてるから一応言っておくが、MP回復薬のコストは持たないからな。

足が出ない程度で頑張ってみたら良いさ。」

「当然です!それじゃ、午後まで待機してますね。」

範囲魔法の許可を得た俺は、ウインドカッターだったら1パンで行けたが、

単体魔法より威力が落ちる範囲魔法でも1パンで行ければ良いなと思いながら寛いだ。


開始予定の10分前に集合した。

見知った顔としてはスパイティフの時に駆けつけてくれたリッジスターや、

カサーナまで賊を引き連れて行ってくれたセントレア、そして英傑の乙女戦士の3人がいた。


英傑の乙女戦士はA班、B班へ3人ずつ配置したようだった。

片方の班に入れてしまうと、戦力的な問題が発生するのか、それとも片方のテンションが

下がってしまうからという理由かは知らないが。。。

軽く挨拶をしているとメセーナさんが配置を指示し始め、

俺達は50メータほど後ろが川になっている入り口から向かって

一番左側の比較的数が少ない箇所を任された。


パーティー内ではパワルド本人の希望で正面に近い一番数が多い場所へ、そしてその隣が俺、

以降ニイタツ、シンズ、セイヤン、アビナ、ニャルマー、カスミという形にして、

シンズさんとニャルマーには隣の2人をサポートしてもらうことになった。


俺達の右となりのパーティはセントレアで、乙女戦士の3人はリザーバーとして入り口付近で、

メセーナさんの部下の人たちと待機している。


A班の人たちとスイッチし、俺は早速メセーナさんから許可を得ている範囲魔法を使用した。

「フレイムウェイブ!」

火の波は10メータ位後方まで届きダメージを与えて近くにいた2匹を倒し、

さらに山彦効果でもう1波発生し、トータル8匹倒すことができた。


一撃でもっと多く倒したいなと思っていると、右横ではパワルドと

セントレアのパーティーが驚いて見ていた。


「さすがじゃの。悪いがこっちの方にも使ってくれぬか?」

シンズさんは以前にも見たことがあり驚きはしなかったが、

一気に数匹倒したことに感心していた。


「了解!」

左の方を向きマジックアップを使い魔力を高めてからフレイムウェーブを唱え、

残念ながら山彦効果は発動しなかったが一撃で5匹倒し、さらにその後ろにもダメージを与えた。

「こっちもお願~い!」

ニャルマーが手を上げながら俺を呼んでいた。


「パワルド、少しだけここ頼めるか?」

「構わねぇけど、俺んとこにも頼むよ。」

パワルドと位置を交換し、マジックアップをさらに2回掛けて最大となった魔力で

フレイムウェイブを唱え、威力が上がり広範囲にダメージを与えることができた上に、

山彦効果も加わり10匹以上倒すことができた。

「兄貴の魔法はすげーな。」


パワルドは俺が焼き払った一帯を眺めながら感心していた。そして、隣からも声が掛かった。

「後ででいいんで、私たちのところもお願いできないかしら?」


セントレアの赤いセミロングヘアーの女性カーピユが申し訳なさそうに頼んできて、

その奥で藍色のロングヘアーの女性スワリアもぺこりと頭を下げてきた。


「いいんですか、取り分減っちゃいますけど。」

「そこそこ稼げてるし、全然構わないわよ。

それより今朝からこの状況見てて、もう気分が悪いのよ。」

カーピユは物凄くうんざりしていた。


「分かりました。それでは後ほど。」

俺はカーピユとスワリアの気持ちを察し、後で手伝うことにしてニャルマーのところへ向かった。

折角なのでパワルドとニイタツの間から始まり、各人の間をフレイムウェイブを使い間引きし、

カスミの所へ行くまでに100匹近く倒した。ぼろ儲けだな。


マジックアップを維持しつつカーピユの所へ向かった。

「悪いねぇ。よろしく頼むよ。」

カーピユは、そこで唱えてくれといった感じで自分の立っていた位置を俺に譲った。


「フレイムウェイブ!」

山彦効果は発動しなかったが、10匹近く倒した。

「いいね、いいね。」

カーピユはそれでも大喜びだった。


「次は私の所をお願いします。」

スワリアから透明感のある透き通った癒される声で頼まれた。

この声好きだわ、と思いつつフレイムウェイブを唱え、ここでは山彦効果が発動した。


「おい、何余計なことしてんだよ!」

スワリアの隣の隣にいたオレンジ色の髪の男でセントレアのリーダーのジャインが怒気を強め

俺に近づいてきて、その隣にいた黄色と黒の縞々模様の髪をした男、

タイガンも「えらい損失や。」と言いながら、おでこを2度叩いて、戦闘に再度集中した。


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