千日の塔へ初挑戦 ~ 初めに遭遇したのはヌヒョーンとベロンチョでした ~
毎週水曜日にアップしてますが、ゴールデンウィークにつき先行リリースします。
もう1話GW中にリリースできたらします。
【10月31日】
昨日の打ち合わせ通り8時にギルド前に集合し、千日の塔へと向けて出発した。
カサーナとポスリメン討伐時の宿営地の中間辺りで塔が見え、右に行く道へ進むと、
塔の周りを囲むように3メーター程の高さの塀があり、そのまま道なりに進んだ。
「ゲートが見えてきたけど、そこから塔へ入れるのかな。」
ゲートの前には数人居り、横に設置されている装置にギルドカードをかざし
1人ずつ中に入っていった。
俺達がゲートに着く前に先程いたパーティーは全員中に入ってしまったので、
まずは俺が先ほどの人たちと同じように試してみることにした。
「じゃあ、早速俺から行ってみるかな。」
「ピッ!」
ゲートが開いたが、もう1つゲートがあり、俺が通ると後ろのゲートが
閉まり前のゲートが開いて中に入れた。
中は広場になっていて、その先にはコマアールのダンジョンと同じような
転移陣があり、同じような仕組みに見受けられた。
ゲート付近に立って周りを眺めていると、ニャルマー、カスミ、アビナ、
パワルドの順でゲートから入ってきた。
「これってコマアールにあったのと同じ転移陣だよな。」
最後に通り抜けてきたパワルドが転移陣を見ながら俺に近づいてきた。
「コマアールみたいに一人ずつ転移陣に乗って、
行ったことのある階層移動できるんだろう、きっと。」
「コマアールのダンジョンって、どんな感じなの?」
コマアールの事を知らないカスミが俺に聞いてきたが、ニャルマーが教え始めた。
パワルドは行きたそうにうずうずしていたので、
「ニュルマー、説明中悪いけど、先行ってるね。」
「あ、良いよ先行ってて。カスミ達にいろいろ注意すべき事を教えてから行くから。」
「それじゃ夕方4時にここへまた集合って事で。パワルド早速行ってみよう。」
「ああ、楽しみだな。」
まずは俺から転移陣に乗ったが、当たり前だが1層目しか行けなかったので、
そのまま1層へと飛んだ。
コマアールのダンジョンはごつごつとした岩の洞窟だったが、ここは人工的な壁に囲まれている。
少し歩いているとヌヒョーンとベロンチョが現れた。
「やっぱ1層目は雑魚からか。これならカスミ達も問題ないな。」
ベロンチョとヌヒョーンをウインドカッターで倒し、次の階層を目指した。
「あ、そうだ。クリッピノさんのお守りを使ってみよう。」
その後はお守り効果で偶にしかモンスターに遭遇せず、ひたすら次層への階段を探した。
俺が千日の塔へ入った後、パワルドが転移陣に立った。
「やっぱり1層目しか行けないか。」
ちょっとがっかりしながら、1層へと飛んだ。
1層に入り、モブスタとの戦いを思い返した。
モブスタに全く歯が立たなかったのに、兄貴はそのモブスタを倒した。
精霊祭イベントで相当頑張ったから差は縮まったの思ってたけど、残念だけどまだだ。
ここでモブスタを一人で倒せる位までレベルを上げてやる。
「よし、やってやるぞー!」
大きな声で気合を入れると、目の前にブルースライムが現れた。
「はぁ。」
急にやる気が削がれ、大きくため息をつきながら、精霊苺の爪を装備した。
「連爆拳!」
パワルドが使える体術系で最も強力なスキルを使った。ほぼ八つ当たりだ。
「こりゃ早く次の階層に行かないとダメだな。」
ベロンチョなどいろいろ出てきたが、ほとんど無視しひたすら走って次の階層を目指した。
ニュルマーはコマアールでの経験をカスミとアビナにレクチャした。
自分のレベルよりも少し弱いモンスターを倒したほうがいいとか、
ダンジョンからの戻り方など聞き漏らさないよう2人は真剣に聞いている。
「お嬢さん方、ここは初めてかな?」
説明をほぼ終えたタイミングでゲートを通り抜けてきた70歳位のちょっと
おなかの出ているおじさんが声をかけてきた。
「シンズさん、お久しぶりです。」
カスミ達の知り合いで、アビナも軽くお辞儀をした。
「カスミもアビナも元気そうで何より。今はそちらの方のパーティーを組んでおるのかな?」
「うん。あと2人いて5人のパーティーなんだ。」
「そうかそうか。これからも2人の事を頼みますぞ。」
シンズさんはニャルマーに軽くお辞儀をした。
「ニータツ、セイヤンも久しぶり。」
シンズさんと話している間にゲートから来た2人の若い男に、
カスミはシンズさんの時と比べ明らかに低い声でちょっと嫌そうに挨拶した。
「ふん、獣人風情が気安く俺に話しかけるんじゃねぇ。」
二人の内少し背の高いほうのニータツは横を向きながら答え、
その横にいるセイヤンは少し苦笑いしていた。
「全くお前は器が小さいのぉ。」
シンズさんは少し残念そうな顔をした。
「折角会えたことだし、ここの先輩として少しだけアドバイスじゃ。」
内部についていくつか情報共有してくれた後、転移していった。
「それじゃ、私たちも行こうか。」
カスミ、アビナ、ニャルマーの順で転移陣に乗り、それぞれの探索を開始した。
俺は先の階層を目指しつつ歩き続け、夕方4時に間に合うよう転移陣から塔の外に出た。
既にニャルマーとカスミ、アビナがゲート付近で待っていたので合流した。
「お疲れ~、待ったかい?」
「私たちもさっき出てきたとこ。」
時間を確認すると4時まであと2、3分で、パワルドはぎりぎりまで中にいるようだった。
「あ、パワッチが出てきたよ。」
ニャルマーと話をしていると、カスミがパワルドを見つけた。
パワルドは俺達を見つけると、小走りでこちらに来た。
「ギリギリだけど、間に合ったかな。」
「俺も今し方戻ってきたところだよ。それじゃ、カサーナへ戻ろうか。」
まずは俺からゲートを抜け、パワルド、カスミ、アビナ、ニャルマーの順で外に出た。
普段どおり、俺の横はパワルドで、後ろにニャルマーとカスミ、アビナという隊列で
今日の結果を共有しながら戻った。
「パワルドは何層まで行けた?」
「7層まで行ったけど、兄貴は?」
「俺は6層まで行ったけど、早いね。」
「レベリングに適した階層まで早く行きたかったから、
モンスターを無視してひたすら走りまくったからな。」
「まだまだ余裕そうだね。」
「まあな。せめてコマアールの20層に出てくるモンスター位じゃないと時間が勿体無いな。」
「ということは10層より先ってことだろうね。
何となくけど、モンスターのレベルの上がり方がコマアールの2層分が
こちらの1層分な気がしてるんだよね。」
「確かにな。明日には10層まで行けるだろうから、俺にとってはそこからが
本当のスタートだな。」
「あんまり無理するなよ。ニャルマーたちはどんな感じ?」
「私は出てきたモンスターを倒しながら行ってたから、まだ5層までしか行けてないよ。
私も無視して走っていけば良かったかも。。。」
「まぁそう焦らなくてもいいんじゃないか。年末まではカサーナにいなきゃいけないんだし。」
「なんか2人の状況を聞いてるとさ、、、
そうだ、塔へ入る前にカスミの知り合いのシンズさんから千日の塔についていくつか
教えてもらったんだった。」
「シンズさんって、誰なの?」
「カスミとアビナの知り合いなんだよね。」
ニャルマーがカスミに話を振ると、シンズさんとの関係を話してくれた。
「私とカスミが冒険者登録して、これからどうしようか悩んでいた時に、
いろいろアドバイスをくれて、それから偶に会うと気に掛けて話しかけてくれるんだ。」
「なるほどね。それでそのシンズさんからどんなことを教えてもらったのか
良かったら共有してくれるかな?」
「もちろんだよ。気を付けたほうがいい情報もあるからね。」
ニャルマーはシンズさんから聞いたことを俺とパワルドに話始めた。
次回、シンズさんからのアドバイスをニャルマーが共有してくれます。