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最強の剣を求めて~Another Story~  作者: 遠浅 なみ
第3章 ゴエアール地方
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千日の塔への立ち入り許可 ~ ギルド本部の指揮官ストーレンスからの抗議 ~

「お前ら余計なことをしてくれたな。」

「え?」

ストーレンスの言葉に、思わず耳を疑ってしまった。

特に余計なことをした記憶は無いのだが。。。


「え、じゃねぇよ。お前達が辺竹を逃した張本人だろうが。」

「なんだとてめぇ!」

「パワルド、ちょっと落ち着けって。」

今にもストーレンスに襲い掛かろうとしたパワルドを手で止め、

ニャルマーも飛び掛らないようパワルドを抑えてくれた。


「ストーレンスさんって言いましたっけ。随分な物言いですね。

俺達は辺竹の配下を討伐したけど、辺竹本人と会ったわけではないし、

そもそも俺達が発見してなくても逃げられてたんじゃないですかね。」

「確かにこちらさんの言う通りだ。最果ての西西がもぬけの殻だったからって、

彼らに当ってもしょうがないだろ。」

50前後の不精髭を生やしたもう一人のギルド本部の男、リインフがストーレンスを宥めた。


「うるさい、カサーナの件の指揮官は俺だぞ。」

「ああ、確かにそうだ。悪かったよ。」

リインフは、首を横に振りながらうんざりした顔で引き下がった。


「兎に角だ、お前たちの近くに辺竹がいたのに逃げられたことは事実だ。

もう今後はポスリメンの件に関わらないでくれ。」

「分かりましたよ。」

「おい、兄貴!」

パワルドは、相手の言うことに素直に従った俺の肩を掴んだ。


「まあ、分かったならもういい。」

ストーレンスは出口の方へ歩き出した。

「悪かったな。」と俺の耳元で言いながら肩をポンと叩き、

リインフがストーレンスの後に付いていった。


「なんであいつ等の言いなりになってるんだよ。」

「確かに、何で。。。」

パワルドとニャルマーが腑に落ちていない様だったが、それを無視した。


「ほんと、ごめんなさいね。」

ギルド本部の2人が離れたタイミングで、シンメイさんが両手を合わせながら近づいてきた。

「あれで良かったですか?」

「ええ、私の意図を読み取ってくれて助かったわ。

でも、ほんとギルド本部のストーレンスって失礼な人ね。」

シンメイさんもちょっと怒っているようだった。


ストーレンスに言い返している時に、視界に入っていたシンメイさんが

身振り手振りで何かを伝えようとしていたのだ。

「あの場では意図を汲んだけど、俺もパワルドたちと同じで納得してないですよ。」

「ええ、そうよね。ちょっと、こちらへ来ていただけるかしら。」

先ほどストーレンスが出てきた部屋に案内された。


そこには60前後で、髪がバーコードのような男性がいた。

「カサーナで事務局長をしてもらってるシペードさんよ。」

「君達がゴドロンパーティーだね。今回の活躍、感謝するよ。しかし先ほどは、災難だったね。」

シペードさんもシンメイさんの横で先ほどのストーレンスとのやり取りを見ていたそうだ。


「そうそう。それで、お詫びとして今回は特例に、

あなた達の千日の塔への立ち入りを許可することにしたわ。」

シンメイさんは手を1回叩き、俺達にお詫びの提案をしてきた。


「シンメイさんそれは。」

「シペードさん、何か問題あるのかしら。千日の塔の管理者はカサーナのギルマスである私よ。」

「まぁそうですが、慣例としてカサーナでの貢献を加味して考えませんと。。。」

「貢献度なら、ポスリメン幹部の直属の手下を2人も倒したんだし、十分じゃない。

それにサンハイトからわざわざ応援に来てもらってるのに、

こんな仕打ちをして返したら目も当てられないわ。」

「まぁ確かにそうですが、、、では今回は特別にということで。」

シペードさんも納得し、俺達のギルドカードで千日の塔への立ち入れるようにしてくれること

になった。


「で、千日の塔てなんですか?」

「あら、まだ知らなかったのね。ポスリメン討伐の宿営地の近くに塔があったでしょう。

それが千日の塔で、攻略には千日掛かると言われているわ。

前に言ってたレベル上げに最適な場所で、そこで入手できる千日鋼はいい稼ぎにもなるわ。

ただ、どうしてもギルドから遠いから我々の眼が届き難くなっちゃって、

昔はしょっちゅう冒険者同士でトラブルが発生してたの。それで今は、実績を積んでもらう中で

私達がその人柄を確認して、問題無い人だけ許可しているわ。」

「そうだったんですね。」

俺は千日の塔について理解できた。


「ただ、完全に問題なくなった訳ではないから、

必ず行きと帰りは皆で一緒に行動することが条件ね。」

「分かりました、行きと帰りは集まって行動します。」

「でなんだけど、まさか私が折角許可したのにすぐ旅立たないわよね。」

「え?」

「ポスリメンを追い払えたとは言え、またいつ戻ってくるか分からないし、

それにあなた達がバトマへ辺竹を追っていってしまうと、またストーレンスとぶつかるでしょう。

だから、年内はカサーナで活動しなさいな。」

ひょっとして最初からそれがシンメイさんの目的だったのか?


バトマへは行けないとしても、この状況で「サンハイトに戻ります」とはさすがに言えないよなぁ。

と言うか、シンメイさんの横でシペードさんが顎に手を当て頷いている。

何だかこの二人に一芝居打たれた気がしてならない。。。

「分かりましたよ。年内はカサーナで活動しますよ。」

「やったー!」

カスミは俺達が暫くカサーナにいると聞き、大きくガッツポーズした。

「ところで、今日シンメイさんにお会いしたかったのは、

モブスタとラーセニーの報酬の件なんですけど。」

年内はカサーナに滞在することにして、話を報酬の件に切り替えた。


「メセーナさんから報告は受けているわ。あなた達、よく無事だったわね。

討伐報酬はポスリメンレッドの10倍の4000ゼニーでどうかしら。

危険だったのは十分理解しているけど、予算的にこれが上限かしら。」

既に事務局長と話はついているようで、シンメイさんの横にいるシペードさんは

頷きながら聞いていた。

モブスタを倒すのと赤を10体倒すのであれば、後者のほうがリスクは低いがこれが

妥当なラインなのかもしれない。

他のメンバーを見ると、頷き返してくれたので、モブスタとラーセニーの討伐報酬としては

8000ゼニーで決着した。


「そしたら、あとはシペードさん、よろしく。」

「かしこまりました。ゴドロンパーティの方は、受付まで付いてきてください。

そこで手続きします。」

受付で全員のギルドカードを渡して千日の塔へ入れるようにしてもらい、報酬を受け取った。


報酬を受け取ると、世界の導きクエスト「エディクスさんの頼みを聞こう」が

達成済みとなり、その報酬1000ゼニーも受け取った。

そして新たにクエストが発生した。


<世界の導きクエスト>

シンメイさんの頼みを聞こう(報酬1000ゼニー)


シンメイさんはすでに自室へと戻ってしまっているので、

エディクスさんの時と同じように暫くは放置で問題ないだろう。


さてその後、ギルド内にある空きテーブルに座り貰った報酬を分けることにした。

「この間と同じで、5等分でいいかな?」

「いや、それだと俺達は貰い過ぎだろ。兄貴がいなければ全滅してたんだし

大半は兄貴でいいんじゃないか。」

「私もそれでいいと思うよ。」

パワルドとニャルマーから配分を変えた方がいいと言われたので、少し考えた。


「そしたら半分を俺が貰って、残りを4等分するってのでどうだい。」

「まあ、それなら。」

パワルドが納得すると他も納得してくれたので、1000ゼニーずつ渡した。


「それでさっきカサーナに残ることになっちゃったけど、パワルドはそれでもいいかい?」

「この先のバトマに行くのはストーレンスとの件があるから気が引けるし、

かといってサンハイトに戻ってもコマアールのダンジョンは既に20層まで行ってるし。

だったらカサーナの千日の塔に行ったほうが面白いと思うから構わねぇよ。」

「ニャルマーはどうだい?」

「私も千日の塔に興味があるし、カスミ達と暫く一緒に居れるのも嬉しいから

カサーナに暫くいることに問題はないよ。」

「ありがとう、ニャルねーちゃん。」

カスミはニャルマーを見つつ満面の笑みをした。


「よし、明日から千日の塔で頑張ろう。」

「それで兄貴、1個提案なんだけど、集合時間は8時にしないか?」

「なるほど。往復で1時間位かかるから、確かにそのくらいにカサーナを出発したほうがいいね。

集合はギルド前にして、帰りは暗くなる前に戻ってくれるよう夕方4時には出たいね。」

「とすると現地には、実質7時間位ってとこか。遠いし仕方ないよな。」

明日からの方針が固まり、今日はそれぞれ宿を取り体を休めた。


ストーレンスはstrength(強さ)、リインフはreinforce(増強する)という

単語からネーミングしてます。

ギルド本部は冒険者より強いんです、きっと。

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