激戦! 「パワルド VS モブスタ」、「ニャルマーVSラーセニー」
「俺があの中で一番強そうなモブスタを相手するから、他頼むわ。」
「じゃ、あたしが奥のラーセニーってやつを。」
パワルドとニャルマーがそれぞれ1人ずつ引き受けてくれたので、再度バフを掛けてあげた。
これで3分少々は強化された状態になるが、その前に掛け直さないと効果が切れてしまう。
間に合うか・・・
初めに飛び出したパワルドは、大きく右へ振りかぶり一文字切りを使った。
モブスタは驚きつつも、左に大きくかわした。
パワルドは下から上にかち上げ切りを追撃すると、今度は後ろへ大きく跳びかわした。
「当ったら痛そうだよねぇ。まあ、そんな大振りなら当ることは無いけどね。」
さらに追撃したパワルドの十文字切りをかわしながら、ニヤリとした。
連続攻撃を後ろに避け続け、先ほどの場所から離れた所でモブスタがパワルドの攻撃を盾で受け止めた。
「そろそろ、この辺にしないか。君の意図は分かってるんだよ。」
パワルドは斧での攻撃を止め、少しモブスタから離れた。
「君があの中で一番強いのかい?」
「だったらどうした?」
カスミ、アビナは論外として、ニャルマーは女だし、兄貴は魔法使いだから初見では
俺が一番この中で強いと思われるのだろう。
出会った頃に俺がタカに放った渾身のパンチを止めた兄貴の力は上だったと思う。
今の俺がこいつを倒すことは無理だろう。だから兄貴に賭ける。
あっちが片付くまでこいつを抑えておくことが今の俺の役目だ。
「う~ん、ちょっと期待外れかな。だったら、つまらないね。」
「それはどうかな?」
パワルドは斧を仕舞い、精霊苺の爪を装備した。
「ほぉ、少しは楽しめそうかな。」
モブスタは鋼鉄のグローブを装備した。
パワルドが顔を目掛けてパンチを放つと、グローブで受け止め代わり腹にパンチを放ってきた。
その攻撃をまともに食らったパワルドは後ろに後退した。
「マジかよ。」
単なる攻撃を一発食らっただけで、バフが掛かっているにも関わらず大ダメージを受けた。
バフが切れるまで後2分位か、やばいな。冷汗が流れた。
「おやおや、もう終わりかい?」
モブスタは攻撃の構えを取った。
「ウインドカッター!」
モブスタの顔を目掛け放たれ、グローブでガートした。
そのタイミングでモブスタの腹に渾身突きし、すぐにその場から引いた。
「へぇ、魔法まで使えるんだ。君、面白いね。」
ほとんどダメージを与えられていないようだった。
ここまで実力差があるとは。。。
下手すりゃバフがかかってる間にやられる可能性もあるな。
「俺はパワルドだ。さっきから君、君ってイラつくんだよ。よく覚えておけ!」
「そういう人物がいた、と3日位覚えておくよ。」
よし乗ってきたか。これで少し時間を稼いでやる。
「過去形とは言ってくれるな。」
「だって今日をもって君は過去の人物になるんだから、間違ってないと思うけどね。ははは。」
「能天気なやつだな。過去の人物になるのはお前のほうだ。」
「ほう、パワルド君はこの状況でも冗談も言えるのか。大したもんだが、全く面白くないねぇ。」
「冗談かどうかは、これから俺が教えてやるよ。」
爪からまた獣王の斧に装備を変えた。
「また斧か。いくら攻撃力が高くても、当らなければ意味がないことが分からないとは。。。」
モブスタは残念そうに首を振った。
「いつまで避けてられるかな。」
パワーよりもスピードを重視し切りかかったが、モブスタはそれを右のグローブで受け止め、
左の拳で腹を殴り返してきた。
ギリギリのタイミングで避け、後ろへ退避した。
よし、相手の攻撃をかわすことに専念すれば、何とか避けれるな。
けどあと少しでバフが切れそうだ。。。
「ああ、悪手だねぇ。威力を落として当てに来たけれど、これじゃ勝負にならないだろうに。
まださっきの方が、やる気を感じられたよ。」
「スピードアップ」
パワルドは唯一使える補助スキルを使い、スピードのみバフ効果を延長した。
バフを掛けているその隙に、モブスタが殴りかかってきた。
「危ね!」
咄嗟に盾でガートしたが、吹き飛ばされた。
「クソッ!」
ディフェンスアップの切れる直前だったが、大きくダメージを受けてしまった。
「スピードアップ以外のバフが切れちまった。どこまで耐えられるか。。。」
パワルドは大きく息を吸い、気合を入れ精神を集中した。
パワルドは避けることに専念し5分程時間を稼いでいたのだが、
避けたタイミングで体勢を崩してしまった。
「しまった!」
盾でガートしたが5メーター以上飛ばされ、意識を失ってしまった。
「雑魚が梃子摺らせやがって。」
意識を失っているパワルドの方に、止めを刺すためゆっくり歩き始めた。
(遡ること数分前)
パワルドがモブスタに攻撃を仕掛けた際、ニャルマーはそれを避ける形で
弧を描くように後ろにいるラーセニーの方へ向かった。
「何よ、いきなり。」
突然横から現れたニャルマーを、面倒臭そうに睨んだ。
「あなたを倒します。」
「はぁ、あなたが倒されるんじゃなくて。」
突然の宣戦布告に、ラーセニーが不機嫌な顔になった。
ニャルマーは剣を抜き多段切りを仕掛け、ラーセニーは後ろに下がりながら盾で受け流していった。
攻撃が止むとラーセニーはバックステップで5メーター位距離を取った。
「ねぇねぇ、凛さまって誰?」
ニャルマーは猫耳をピクピクさせた。
「獣人風情が盗み聞きとは気に入らないね。」
「聞く気は無かったけど、ただ聞こえてきただけだし。ねぇ、凛さまって辺竹凛のこと?」
「さあね。獣人ごときに教える訳ないだろう。」
「図星だね。」
「いちいち気に食わないねぇ。ウインドカッター!」
ラーセニーが苛立ちながら放ったが、ニャルマーは盾で防いだ。
「手がちょっと痺れたけど、なんとかなりそうかな。」
盾でウインドカッターを防ぎながら、再度距離を縮め連続切りでラーセニーを追い込んでいったが、
大きなダメージを与えることができず時間が経過し、3分を過ぎたところで形勢が逆転した。
「おやおや、急に弱くなったねぇ。さっきまでの勢いはどうしたんだい?」
あ~あ、バフの効果が切れちゃった。さっきまで互角だったけどヤバイかも。
そう思っていたらウインドカッターが連続して飛んできた。
先ほどまでは手が痺れる程度だったが、ディフェンスアップの効果が無くなったことで、
全身に衝撃が走り、確実にダメージを受けていた。
そして身動きが取れず盾を構えていると、どんどんラーセニーは近づいてきて、衝撃が強くなってきた。
「これで終わりだよ、ファイヤーボール!」
両手にそれぞれ作った火の玉を同時にニャルマーに放った。
盾でガードはしたものの、大きく後ろに弾かれてしまった。
「も、もう駄目かも。」
ヨレヨレになりながら立ち上がったが、そのまま気を失い後ろに倒れてしまった。