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最強の剣を求めて~Another Story~  作者: 遠浅 なみ
第3章 ゴエアール地方
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ポスリメン討伐説明会 ~ 絶対に笑ってはいけない説明会 ~

コアゼン川を越えて3時間ほど進むと、街が見えてきた。

俺の腰が限界を迎える前に、カサーナへ到着した。

「兄貴は腰、大丈夫か?」

パワルドが小声で俺に尋ねてきた。


「ああ、何とかギリギリな。パワルドは?」

「まだ大丈夫だけど、暫く移動は遠慮したいな。」

「ははは。」互いに苦笑いをした。


「まずはギルドに行ってギルドマスターのシンメイさんに

エディクスさんから預かった荷物を渡そう。」

ニャルマーも馬車から降りてきたので3人で街の中心の方へ歩き始めた。


ギルドの建物の中に入ると、サンハイトのギルドと同じような作りになっており、

受付の人に荷物の件を聞いてみた。

「サンハイトのエディクスさんからこちらのギルドマスターのシンメイさんへ

荷物を届けるよう依頼を受けているのですが、いらっしゃいますか?」

「シンメイさんですね。少々お待ちください。」

受付の女性は奥の部屋に確認しに行き、戻ってくると俺達を応接室へと案内してくれた。


暫く待っていると、60歳過ぎと思われるの背が低く細身の優しそうなおばあさんが入ってきた。

「ごめんなさい、お待たせしちゃって。ここのマスターをしているシンメイよ。

こんなおばあさんで驚いたかしら。」

「ギルドマスターっていうと、何かどっしりとした人のイメージがあって、意外ですね。

申し送れましたが、私がなおとで、パワルド、ニャルマーになります。よろしくお願いします。

それでこちらがエディクスさんからお預かりしているお荷物です。」

「ありがとう。荷物が届いたらあなた達のランクを上げるように言われているから、

あとで手続きしますね。

それから、エディクスさんから聞いてると思うけどポスリメンの件、

協力をお願いできないかしら。」

「前向きに検討したいのですが、エディクスさんから詳しいことを聞けてないので。」

「まだオープンにできる情報とそうでないものがあるから仕方ないわよね。

明後日の17時からここでポスリメン討伐について説明会をするから

まずはそこに参加していただけないかしら。」

「分かりました。その説明会に参加します。ちなみにですが、推奨レベルはどのくらいですか?」

「そうねぇ、これくらいの情報だったら教えても大丈夫かしら。

ポスリメンの特徴はその説明会で話をするけど、アジトから離れた末端のポスリメンでも

レベル30以上はあったほうが無難かしら。

アジト付近になるとより強いポスリメンが出てくるから一概には言えないわね。」

二人の方を確認すると頷き返してくれたので、レベル30は問題ないのだろう。


「ありがとうございます。多分それであれば大丈夫だと思います。

ポスリメンとは別の話なのですが、サンハイトのようにダンジョンみたいな

レベル上げに適した場所はありますか?」

シンメイさんは少し困った顔をし、言葉を選ぶように話し始めた。


「あるにはあるけど、まだ来てすぐのあなた達にそこの利用を許可することはできないわ。

申し訳ないけどちょっと問題があって、少し立ち入りを制限しているわ。

もう少ししたらポスリメン討伐が始まるから少しだけゆっくりしていてくれないかしら。

勿論カサーナで出ている依頼を受けていただいても構わないわ。」

「事情は分かりました。明日、明後日をどうするかは後で考えます。」

「ごめんなさいね。お詫びに今日と明日の宿代はごちらで持ちましょう。」

手帳からチケットを取り出し、今日の日付と明日の日付を3枚ずつ記入して俺達にくれた。


「これを渡せば料金は掛からないわよ。明後日の夕方よろしくお願いしますね。

それでは、ランクアップの手続きをするから受付に行きましょうか。」

シンメイさんが受付の人に話をしてくれ、俺達はギルドカードを渡すとそれぞれ更新してくれた。

FからEには半年くらい普通に実績を上げていればポイントが溜まって上げてくれるため

珍しくはないが、ギルドマスターに推薦してもらったことにより半年かからずに

上げて貰えたのはラッキーだった。


ランクを上げてもらった俺達はシンメイさんと分かれ依頼掲示板を確認した。

「どうだい、兄貴は何かいい依頼見つけたか?」

「いや、無いねぇ。明日、明後日はゆっくりしようかな。」

「それもいいんじゃないか。俺もゆっくりしようかな。」

ニヤニヤしながら自分の腰を叩いていたので、ウンと頷いた。

ニャルマーは不思議そうな顔をしていたが、「私も街中を見たいし、ゆっくりしよう。」と

依頼を受けないことにしたようだった。

明日、明後日はフリータイムにして、ギルドの宿に行きシンメイさんから貰ったチケットを使った。


【10月13日】

昨日と今日の夕方までゆっくりとしていたお陰で、腰の調子もほとんど問題なくなった。

17時前にギルドに行くと、中には既に50人近くの冒険者がおり、

依頼掲示板の前に壇が設けられており、そこで説明会が行われる感じだった。

人だかりの真ん中より少し前ら辺にパワルドとニャルマーを見つけた。

「そろそろ始まりそうかな。」

「兄貴は今来たとこか?さっきまで探したけど見つからなかったけど。」

「ああ、わりぃわりぃ。」

「別に間に合ったんだし問題ないんじゃないか。そろそろ始まりそうだな。」


先日会ったシンメイさんが拡声器を持ちながら壇上に立つと、急にシーンとなった。

「今日はお忙しい中、お集まり頂きありがとうございます。

先般より発生している住民の失踪事件について皆さんにご協力いただければと思いますので、

よろしくお願いいたします。

まず現在までの状況ですが、8月30日に夫婦と子供2名の一家4人の行方不明が発生しました。

これがカサーナで発生している失踪の1件目だと考えております。

その後、9月6日に1家族、9日に2家族、13日に1家族、16日に3家族と

それ以降も断続的に一晩のうちに家族ごと失踪しています。

町と当ギルドで調査を行い、最近ケービヨンなど他の地域でも問題になっているポスリメンの基地が

カサーナにあることが分かり、今回の件に関わっている可能性が高いと考えられます。

既にギルド本部へ応援を要請しており2週間後には到着する予定になっていますので、

それまでに周辺のポスリメンをカサーナの冒険者で一掃していただければと思っています。

ポスリメンの基地は『最果ての西西』と言いましょうか、ここから北西に15キロくらい

離れた小高い丘の上にあります。

ポスリメンの詳しい情報はサブマスターのメセーナさんからお願いします。」

壇上から降りたシンメイさんは50歳位のすらっとした髪の長い女性に拡声器を渡した。


後で聞いた噂だが、シンメイさんの後任と目されているらしい。

「まず先ほどから出ているポスリメンのイメージ画を作成したものがこちらだ。」

そう言って広げられた模造紙大の紙に書かれたポスリメンは、

あまりにも稚拙な絵で「プッ」とみんな噴出した。


心の中で『ドゥドゥーン、全員アウトー!』と響いた気がした。


「ご覧の通り、ポスリメンは人に良く似ていて、顔は真っ黒で真ん中が赤く光っており、

黒い服を着ている。」

説明している本人は至ってまじめで、絵を自信有り気に指差しながら特徴を説明しており、

『確かにポイントは抑えてるけど、絵のセンスが・・・』と思った。

この意見に反対する人はいないだろう。


「ここから3キロとちょっとを道なりに沿って北へ行くと南コアゼン川を渡るための橋があるが、

その先にある二股を左に行くと湿地帯に出て、そこからポスリメンが出没する。

カサーナ周辺で出てくるタイプのポスリメンの事をギルドでは見回りポスリメンと呼んでいる。

そこから基地の方へ向かうと、色が黒から青、茶色、赤と変わって行き、段々強くなっていき、

見回りポスリメンブラックの推奨レベルは30程度で、ブルーが33程度

としているが、複数同時に襲ってくることがあるから、4、5人のパーティーが理想だ。

ギルドからの報酬は1体あたり

 黒は200ゼニー、青は240ゼニー、茶は300ゼニー、赤は400ゼニー

としパーティー単位で精算致する。

ポスリメンとは別に、幹部クラスが複数名いることも確認しており、

その中心人物は辺竹ヘンチクリンと言う25歳位の若い女性で、

頭頂部からポニーテールをしている細身のすらっとした美人だったと報告を受けている。

調査員の話を聞き、みんなのために参考で作成した似顔絵がこちらだ。」


ギルドの男性スタッフが丸めた模造紙を持って登壇し広げた似顔絵は

女性の肩から上が大きく描かれ、先ほどと同じくあまりにも稚拙な絵であった。

その絵を見て「プッ」と噴出してしまったが、周りの人たちも噴出す人や下を向いて笑っている人、

口を押さえて笑いをこらえている人ばかりで、再びあの声が心の中に響いた。


『ドゥドゥーン、全員アウトー!』



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