エディクスさんからの依頼 ~ 「サンハイト ⇒ ウイメンズシャドウ ⇒ アサヒヒル」 そしてケーティー牧場 ~
2月10日に予約掲載したと思っていたのですが、出来ていませんでした。
大変申し訳ございませんでした。
次話分は忘れずに2月17日にリリースします。
【10月6日】
「おはよう。ヒワディーア山は昨日どんな感じだった?」
9時少し前にギルドの入り口付近に集まり、昨日の様子を聞いてみた。
「大勢でクリビオーを退治したから、最終段階ではかなり減ってたと思うよ。
16時過ぎに結界を通じて中和剤が撒かれたみたいで、その後は結界も解かれて
マンシャゲの効果も終わっちゃたよ。
全部使い切ろうと頑張ったけど、結果俺は20本位余っちゃったよ。」
「ごめんなさい。私はもっと余っちゃった。」
「まぁ全部使い切らなきゃいけない訳でもないし、残りは記念にとっておけば。
ここ数日で魔法スキルも結構上がったんじゃないの?」
「こういった事が無いとなかなか上げようと思わないから良い機会だったよ。な。」
「MPの少ない私にとってはマンシャゲ効果はありがたかったです。」
2人共今回のクリッピノさんの依頼には満足しているようだった。
「それじゃ昨日メッセージを送った通り、エディクスさんの所に行こうか。」
3人で受付の人にエディクスさんに会いに来たと伝えると、応接室に通された。
「おはよう。朝からすまんねぇ。」
応接室に通されてから2,3分経過した頃、エディクスさんが部屋に入って来て、
手に持っていた書類の束をテーブルの上に置き席に座った。
「クリッピノさんの依頼の件、お疲れ様。」
パワルドとニャルマーの方を見ながら労いの言葉をかけたが、
俺のほうには目も合わせようとしなかった。
俺がクリッピノさんの依頼を受けれなかった原因を作った人だから、気まずいのかもしれない。
マンシャゲの効果の恩恵は、MPが高い俺にとってはたいしたことないので
もう気にしてないのだが。
「昨日の夕方には中和剤が撒かれて結界も解いたと聞いたけど、
これでクリッピノさんも安泰ですね。」
「いや、でもそうでもないよ。ここだけの話だが、この件以外にもサボってたのがばれて
協会の人が再教育が必要だって連れて行ったよ。」
「それは大変ですね。」
何となく連れて行かれる絵が頭の中に浮かんでしまった。きっと大泣きだったんだろう。
「当面は戻ってこれないだろうな。」
「でもまた戻ってこれるなら良かったんじゃないですか。
そうするとしばらくヒワディーア山の管理人が不在だけど大丈夫ですかね。」
「実務的にはクリッキーさんという男の人がやってたから大丈夫だろう。」
多分インターホン越しに話した人のことだろう。
「そうそう、それで何だけど、」
エディクスさんは持ってきた書類を何枚かめくり、一枚の紙を置いた。
「この間の件の埋め合わせとして、この依頼を受けて欲しいんだ。」
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依頼内容:カサーナのギルドマスターのシンメイさんへ文書を届ける
報酬:5000ゼニー(移動費込み)
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「え、これが埋め合わせなんですか?」
パワルドとニャルマーの方を見ると、二人とも「えっ?」という顔をしていた。
カサーナまではウイメンズシャドウ、アサヒヒル、チャビーゼン、サイポークで
それぞれ1泊し片道で5日かかる。
危険は低いとはいえ、移動費込みだとあまり利益にならない。
「そう慌てるな。話には続きが2つある。
1つ目は、この依頼を達成したらパーティーランクと冒険者ランクをEにしてやる。
本来だったらもっと沢山の依頼をこなす必要があるんだが、まぁお前達の実力なら問題ないだろう。
特別に俺が推薦しておく。」
二人を見ると頷いたので、代表して「ありがとうございます。」と返答した。
「それともうひとつは、サンハイトのギルドからの応援として
カサーナへ行きポスリメン討伐に参加して欲しい。
これはさっきの依頼とは別だから、受けなくても構わないが、是非協力して欲しい。」
ポスリメンという言葉を聞き、この世界のベースとなっているオンラインゲーム
「最強の剣を求めて」のメインストーリーが始まるんだなと思っていた。
「ポスリメンて何なんだ?」
俺はどういう組織か知っているので疑問に思わなかったが、
パワルドは初めて聞くワードに疑問を持ったようだ。
「ここ最近現れたよく分からない集団で、各地でいろいろ問題を起こしている奴等だ。
南東の方から徐々に勢力を伸ばしてきて、
カサーナが落ちれば次はここサンハイトが狙われるだろう。
被害を出さないためにもカサーナに応援を出し、奴等を叩いておきたいんだよ。」
「なんか危なそうだね。」
「確かに危険度は高いが、その分報酬もいいはずだ。
詳しくはカサーナで確認してもらいたいが、お前達なら問題ないと俺は思っている。」
ニャルマーの疑問に、エディクスさんは3人を見ながら答えてくれた。
「状況は分かりました。ただ、詳細をカサーナで確認して依頼を受けないことも可能ですか?」
クエストを進めるためには受けざるを得ないが、
難易度が高すぎるということは無いにしても報酬が合わない場合など拒否可能なのか確認した。
「ああ。それは勿論だ。カサーナの状況を正しく伝えられていない以上当然だろう。
だが、カサーナが落ちればいずれにしてもサンハイトで対峙することに変わりはないがな。」
「それではまずは、シンメイさんへの届け物の件は受けさせていただき、
カサーナの件はなるべく協力したいとは思いますが、
向こうで判断させてもらうということでいいでしょうか?」
「ああ、構わんが期待はしてるぞ。」
「では今日の馬車は出てしまっていますが、なるべく早く向かうようにします。」
「頼んだぞ。それじゃ、荷物取ってくるからちょっと待っててくれ。」
エディクスさんが持ってきたシンメイさんへの届け物を受取、
アイテムボックスに仕舞いギルドを出た。
「ポスリメンの件を受けると暫くサンハイトには戻ってこれないだろうから、
もしあれだったら残っててもいいぞ。」
「兄貴は受けるつもりなんだろ。俺もよっぽどひどい条件じゃなければ受けるよ。」
「カサーナのためにもサンハイトのためにも私も協力するよ。」
「それじゃ、3人で行こうか。」
馬車の待合所へ行き空き状況を確認したところ、明日のカサーナ行きに乗れそうだったので予約し、
残りの時間はダンジョンで各々レベル上げを行うことにした。
【10月7日】
9時発のカサーナ行きの馬車に乗り、定刻になると出発した。
10人程乗っているが、電車内の様に話し声は聞こえず下を向いて寝ている人ばかりだった。
馬車は整備された街道を、人が小走りするのより少し速いくらいのスピードで走り続け、
途中お昼くらいに30分くらい休憩を挟み、ウイメンズシャドウには15時過ぎくらいに着いた。
町の中心に小さな時計台があるが、町全体はそれほど大きくはなく、
町と町を繋ぐ中継地点のような所のようだ。
町中を歩きながら見て回って早めに宿に入り、移動初日を終えた。
【10月8日】
今日も昨日と同様、9時に出発し昼くらいに30分程度休憩があり、
15時前にアサヒヒルへ着いた。
「エディクスさんがケーティー牧場に行ってみたらいいよ、って言ってたよね。」
「ニュルマー、行きたいのか?」
「ほら昨日は時間を持て余しちゃったし、時間を潰すにはいいかなぁって。」
尤もらしい理由を述べているが、要は行きたいのだろう。
「まぁ確かに時間はあるし、パワルドはどうする?」
「昨日は夕方時間が経つのが遅く感じたし、いいんじゃないか。」
「すいませ~ん。ケーティー牧場ってどうやって行ったらいいですか?」
ニャルマーは喜びながら、御者に道を聞いてきた。
「ここを右に出て一つ目を左に曲がってまっすぐ行くと学舎が2つあるから、
その手前を右に曲がっていけば見えてくるよ。」
「ありがとうございます。」
よく聞かれるのか、分かりやすく教えてくれた。その道順で歩って行くと15分位で着いた。
「売店があるんだなぁ。」
「パワルド君、君は売店というよりは、そこで売られているアイスが気になっているよね。
まぁ俺も気になるけど。」
売店前のテーブルで食べてるアイスが、おいしそうに見えた。
「私も食べたいな。」
「それじゃ俺が買ってきてやるよ。」
3人分のアイスを買い、売店の奥の牧場を見ながら食べた。
牧場の柵の中には数十頭の牛が、自由に歩いたり、座ってたり、草を食べたりしていた。
更に奥には子牛の牛舎があり、そこで暫く見てゆっくりし、
17時近くになると売店が閉店するとの事なので、牛型のクッキーが売られていたので
それを10枚ほど買った。
まったりしながら、移動2日目を終えた。