シュートクとの模擬戦
あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
パワルドとシュートクの緊迫した攻防が続く。
シュートクがスピードアップで自身の素早さを上げると、
パワルドも同じくバフをかけ対抗する。
「シュートクが押している?」
素人目には手数が多いのでそう見える。
だが、ニャルマーは首を横に振る。
そして、親父さんが補足する。
「確実に見切って、的確に受けておる。
ウチのは、息が上がってミスが出始めておる。」
シュートクの動きをよく見るが、
上手くリカバリーしているからか、
ミスらしいミスは分からない。
ただ、肩で息をしているのは分かる。
一方でパワルドはどっしりと構え、
息は上がっていない。
むしろ、手数が減っているようにも思える。
シュートクの手数が多いからなのか、
それとも、敢て攻撃を誘導しているのだろうか。
シュートクが距離を縮め、
鍔迫り合いへと持ち込む。
そのまま、パワルドの腹をめがけ、
右膝蹴りを仕掛ける。
パワルドは躱すように左側へと回り、
重心がかかった左足を大外刈りで払う。
パワルドの剣先が、尻餅を搗いたシュートクの
顔の前に突き出される。
「参った。」
シュートクは剣を置き、両手を上げる。
「悪手だったな。」
パワルドは剣を引き、手を差し伸べる。
個人的に思う事はある。
剣の試合なのに、決まり手が大外刈りって。
ただ、この世界では、有りなんだよなぁ。
「おいそこの、次はお前だ。
剣術のみで勝負しろ。」
ズボンに着いた土を払いながら立ち上った
シュートクが剣先を俺に向ける。
「え~、俺・・・?」
指先を自分に向ける。
「んだってよ、ほれ。」
パワルドからトスされた木刀を受け取る。
「すまんがあのバカに付き合ってやってくれ。」
親父さんが呆れながら、軽く頭を下げる。
断れそうな雰囲気ではない。
「もう分かったよ。ねぇバフもなし?」
「なしだ。」
ぶっきらぼうに返答したシュートクの前に立つ。
「いいから来いよ。」
煽るように挑発してくる。
一呼吸おいて構える。
「瞬連撃!」
シュートクは驚きながらも、
1振り目を受け止め、2振り目もぎりぎり受ける。
だが、3振り目が右腕へ、4振り目、5振り目が
左右の脇腹へ食い込む。
「あ゛あ゛あ゛・・・」
腹を抱えるように蹲り、悶絶している。
「ヒールア!」
慌てて回復スキルを掛ける。
「卑怯だ。スキル使ってるんじゃねぇ!!」
痛みの引いたシュートクは立ち上がり
激おこぷんぷん丸と化している。
「え、駄目なの?」
「いや、問題ない。
それより真剣なら2度死んでるんだぞ。
分からぬか!」
答えを返したのは親父さんは、
シュートクを一喝する。
「だってよぉ・・・」
シュートクは小声で何か言いたげだ。
「約束通り、就天式にはお前に行ってもらうぞ。」
就天式が何だが分からない。
ただ、この親子の間で何かを賭けているのは
察していたがこの事なのだろう。
「おい、そこの女、今度は剣のみ、
スキル無しで勝負だ。」
未だ納得いっていないシュートクは
悪あがきにニャルマーを指名する。
「どうする?」
「別に構わないけど。
っていうか、逃げたと思われるのも癪だし。」
ニャルマーに木刀をトスする。
「女だろうが、手は抜かない。」
「はいはい、そうですか。」
ニャルマーは剣を構え、シュートクも構える。
特に合図なく打ち合いが始まる。
シュートクはバフをかけていないが、
徐々に速度を上げていく。
「すごいじゃん、彼。」
「ああ、この条件だったらヤバかったな。」
パワルドは腕組しながら、試合の行く末を見守る。
ただ、相手が悪かった。
体術アリでのパワルド、スキル使用アリでの俺。
ニャルマーはほぼ同じ位置で、
軽くその攻撃をいなす。
一方、シュートクは左右にいなされ、
時に弾かれ、逸らされている。
普段から剣を振っている彼女の前では、
逆に条件が悪かった。
ピークを過ぎたシュートクの攻撃は
雑さが目立つ。
ニャルマーは隙を突かずに、ただ受け流す。
攻撃を躱されニャルマーの背後へ回り距離を
取るシュートクは息が荒く、全身で呼吸している。
そして、構えたまま動かない。
「もう終わり?」
嫌味っぽくニャルマーが挑発する。
「もういい。就天式には俺が行く。」
シュートクは強く言い残すとその場から去ってしまった。
「経験を積めばマシになるんだが。」
シュートクの後姿を見送る親父さんは小さくつぶやく。
「先ほどから、就天式っていうワードが
出てるけど知ってる?」
隣にいるパワルドに聞いてみる。
「え、なんだろうな。」
パワルドは親父さんに視線を送った。
「就天式は、この地域の土地神様を祀る儀式で、
年末にシキシニシシシキで行われるんだ。
んで、今年はウチから手伝いを出す番なんだよ。」
「その手伝いを賭けてたって事だな。」
パワルドが軽く問い詰める。
「ははは、悪かったね。」
「ねぇ、就天式ってどんなものか行ってみたいかも。」
ニャルマーも話に加わる。
「だったら、ウチのと一緒に行ってくれないか。」
「道中のお守?」
「そういうこった。」
ニャルマーに答えると、親父さんは屋敷へと進み始めた。
次回リリース予定は、、、未定です。m(_ _)m
東武東上線で、池袋から志木行の電車に乗ると、
志木駅でアナウンスが流れるのです。
「終点志木です。」と。