アタックチャンス!
午後、エシュロン師範と兄弟子にあたるエコーキヨは、
道場で集落の門下生の指南を行っている。
ララの姿は見えない。
ケービヨンへ戻ったのだろう。
俺たちは、まだそのレベルには達しておらず、
裏庭で自主練を命じられた。
正面を向き、肩の力を抜き、腹を引き締め、
背筋を伸ばす。
左足を1歩前に動かし、
「いち!」
ゆっくりと右上から右下に振り下ろす。
そして、見よう見まねで続きを行う。
右足を前に出し、手首を返し、
「に!」
右下から右上へ振り上げる。
再度左足を前に出して、振り下ろし、
「さん!」
剣先が相手の額の高さで止める。
右足を左足の隣まで持って来て、再び左足を前に出し、
「し!」
剣を再び上げた剣を振り下ろす。
五から八は左右が逆の動き。
パワルドとニャルマーも四までの動きを練習している。
「三から四の足の動きはいいけど、
剣先はココでしっかりと止めなきゃ駄目だな。」
見かねたパワルドがアドバイスをくれる。
それ以外にも、細かな指摘をくれる。
夕刻まで自主練を続け、1日目を終えた。
【10月5日】
5時半。
日の出と共に起こされ、
昨日と同様道場の裏庭に集合した。
途中朝食を挟み、四までレクチャを受けた。
パワルドの指摘の比ではない程、
細かく指南された。
パワルドとニャルマーも、
四までのレクチャとなっている。
午後は昨日同様、自主練。
2日目を終えた。
【10月6日】
3日目。
午前中の指南を終える。
パワルドとニャルマーは、まずまずの出来でOKが出た。
俺は粗削りだが、OKとの事で明日から次へ進む。
【10月7日】
4日目。
五から八の指南を受ける。
左右が逆なだけと軽く思っていたが、難しい。
【10月8日】
5日目。
細かな指摘を受けつつ、五から八の動きを
マスターしていく。
【10月9日】
6日目。
一から八までを続けて行う。
そして、より精度を高めていった。
【10月10日】
7日目。
昨日同様、一から八までを続けて行うが、
じっと見られているが、一切指導が無い。
【11月30日】
指南、最終日。
二十五の形までの指南を受け、
「あとは、日々の中で鍛錬せよ」
となった。
明日からは本業の冒険者へと戻る。
思い返すと、ずっと形の練習ばかりだった。
最初に受けた、十三の形を一通りマスターしたら、
それを今度は倍の時間をかけての動き。
5秒の動きを10秒でやる。
超遅速な分、さらに微妙な動きを指導される。
その次に、普通の速度での十三の形を指南される。
暫くは、普通、遅速、超遅速のパターンを交互に
十三の形を行い、何度も指南を受けた。
月が替わり、十四から二十五までの形を
教えてもらう。
十三までが基本的な動きに対し、
十四から二十は隙を作り、
それに対する反撃の動きだった。
特に、二十の形は盤面を大きく変え不利な状況から
一気にチャンスを作る技で、エコーキヨ曰く、
「アタックチャンス」と力強く呼んでいる。
そして暫し先の未来で、この二十五の形は
「アタック25」と呼ばれるのであった。
【12月1日】
ケービヨンへ戻るため、神福の丘を訪れた。
「通行止め。。。」
俺たちが通って来た道には柵が建てられていた。
「調査と開発だってよ、まいったな。」
柵の隣にある説明をパワルドが読む。
この道が開通すると良くも悪くも
物流が大きく変わってしまう。
ケービヨン側は良くても、
人族の事を好ましく思っていない獣人達が住んでいる
カミフクの集落としては歓迎しないだろう。
ララリリ姉妹の報告を受け、
人の往来が始まる前に一旦蓋をした
というのが可能性が高い。
「アタシの丸菱デパートが・・・」
ニャルマーは柵に手を乗せ、覗き込む。
いや、お前の丸菱デパートではないぞ。
とはいえ、俺たちは取り残されてしまった。
どうしたものか・・・
某パネルクイズ番組とは関係ありません。
あ、1問目に正解した方は、13番に飛び込むんでしたっけ。
次回は11月18日リリース予定です。