カミフク ~ 神福の丘とエシュロン師範 ~
新章突入。
今後とも、ご愛読よろしくお願いします。
ケービヨン地方は長くなってしまった。。。
2時間近く歩いた。
しかし、未だ森の中を歩いている。
分岐こそ無いが、『正しきは進め』の
続きかよと思うくらい、
変わり映えのしない景色を進む。
武帝蛇はどのくらいで着くとは言っていなかったが、
あの言いっぷりに直ぐつくと勘違いしたが故に、
疲労度も高まる。
いや、武帝蛇の様に飛んでけば直ぐなのか。。。
「あとどれくらいかしぁ?」
ララは時間を気にしている。
「そろそろ限界でショウか?」
「え、何が?」
ニャルマーはララリリ姉妹に尋ねる。
「シングワシに馬車を止めたままデスから、
夕刻までには。。。」
「あ、折角だしちょっと待ってて。」
立ち止まり、先ほど覚えたスキルを使ってみる。
「レビテート!」
少し浮いたのを確認すると、
そのまま木々の上まで高度を上げた。
かなり先まで木々に覆われている。
「すぐに着きそうではないね。」
地上に降りて伝える。
「あぁただけ戻りなさい。」
「かしこまりマシタ、お姉さま。」
「アタシたちは?」
「あぁし達は行くぁよ。」
ニャルマーの質問にララが答える。
「一人でも戻れマスから。」
「道は続いてるのに戻って何て報告するつもり?」
リリとララは、心配そうにしているニャルマーを説く。
「途中で引き返したんじゃ、中途半端だもんな。」
パワルドも先へ進むことに賛同する。
「リリちゃんごめんね。」
「お気になさらず。では、お気をつけて。」
リリは頷くと振り返り、一人逆方向へ進んだ。
その後は、一段ペースを上げて進む。
シングワシに有った高麗門と同じ形の門が見えたのは、
陽が傾き始めた頃だった。
門を潜ると『ピロリーン!』と響く。
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<クエスト>
『蒼竜の刻印』を入手せよ。
報酬:蒼竜のお手伝い
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ステータス画面を確認すると、
導きクエストが発生していた。
蒼竜の刻印って確か学園都市コラフルにある
祠で入手できるんだったけ。
んで、報酬が『蒼竜のお手伝い』ってどういう意味だろ?
召喚して呼べるとか・・・?
よう分からん・・・
麓の集落に辿り着くと、兎の耳をした獣人の男が
3名近づいてきた。
「あんたら、あの丘から来たんか?」
1番年長者と思われる人が強めの口調で尋ねてきた。
あまり歓迎されているようではなさそうだ。
「そうだが。」
「お、おい、師範を呼んで来い。」
驚きながら、一番若い人に指示を出す。
「ねぇ、ここはどこなの?」
「カミフクだ。」
ニャルマーが聞くと、普通に教えてくれた。
獣人同士だからだろうか。
「という事は、あれは神福の丘だな?」
パワルドは来た道を振り返り小高い山を指す。
「ああ、そうだが。あんたらはどっから?」
「ケービヨン、シングワシからだけど。」
一番警戒されていないニャルマーが答える。
「ケービヨン?随分とエライ所から。」
「ねぇ、カミフクってどこらへんなの?」
今度はこちらからニャルマーが質問し、
ここからケービヨンへ行く場合の説明してくれた。
ケービヨン側から行くと
東のソニックシティーへ出て、
南のサウスヨーノまで行く。
そこから西へ行き、学園都市コラフルを経由して、
シキシニシシキへ。
そこから北へ数個の集落を経て辿り着くのが、
ここカミフクとの事だ。
大方の位置を教えてくれた後、
カミフク側で起こったことを話してくれた。
神福の丘は神聖な場所として崇められており、
今朝までは霧に覆われていた。
門の向こう側へは結界に阻まれて
進むことができなかった。
昼過ぎに霧が晴れ騒然となりここに住む人たちが
気になり集まったが、特にそれ以外の変化はなく、
時間と共に人が減り、
今は3人が代表で警戒している状態だった。
話が落ち着いたタイミングで、
師範と呼ばれる兎の耳をした老男が近づいてきた。
俺たちを見るなり
より一層不快感をあらわにした。
「あら、久しぶりじゃない、不死身の兎さん。」
ララは皮肉たっぷりに、
わざと口調を柔らかく上品な言い方をした。
「ふん、その呼び方は止めろ。エシュロンと呼べ。」
「はいはい、あぁたが師範なんて。ふふふ。」
ララは意地悪な笑みを浮かべる。
「ここじゃ何だ。ついて来い。」
エシュロン師範に従い付いていく。
道中、ニャルマーがララに知り合いなのか聞くと、
過去の話を少しだけしてくれたが、
きまりが悪そうにエシュロン師範は都度話を遮ってきた。
案内されたのは10メートル四方の白線に囲まれた
板張りの剣道場だった。
エシュロン師範が中央付近に座り、
俺たちの輪になるように座る。
「逃げ足だけは早かったあぁたが
こんな立派な道場の師範なんてねぇ。」
俺達4人とエシュロン師範しかいない。
ララは腰を落ち着けるなり
道場の隅々まで見渡しぶっちゃける。
不死身って、身に危険が迫りそうになったら
直ぐ逃げるから死なないって事か。
「フン、生き残った奴が勝者だ。
まったく、丘の霧が晴れたかと思ったら、
とんでもねぇのが来やがった。」
エシュロン師範は胡坐をかいた膝の上に肘を乗せ、
顎を手で支えるようにしながら、
不貞腐れて顔を背ける。
「随分と連れないぁね。」
ララは嘲笑する。
「もう、今日はここに泊めてやるから、
余計な事は言わずに明日には帰ってくれ。」
「はいはい、分かったぁよ。
ねぇニャル、折角だし稽古でも付けてもらったら。」
「え、アタシ?」
「あぁしは駄目よ。」
「剣が折れちまうからお前さんは勘弁してくれ。」
エシュロン師範は立ち上がり、入口付近にある傘立ての様に
立ててある木製の模造剣を手に取った。
「好きなの選べ。」
「うん、じゃあ。」
ニャルマーは普段使っているものに
近い模造剣をチョイスした。
エシュロン師範とニャルマーが
中央付近に引かれた線の位置に相対し立つ。
俺、パワルド、ララは白線の外に出る。
「来い。」
「テヤァーーーッ!」
エシュロン師範の言葉に頷くと、
ニャルマーが攻撃を仕掛ける。
その攻撃を軽く躱す。
ニャルマーは続け様に攻撃する。
時折、エシュロン師範は剣を当て剣筋を逸らす。
ニャルマーはやり難そうだ。
と思ったのも束の間、エシュロン師範の剣が決まる。
ニャルマーは腹を抑えているが、
真剣だったら胴体が真っ二つだ。
始めの位置に戻り、両者が頭を下げる。
「そっちの御仁もどうだ?」
ニャルマーの代りにパワルドを指名する。
「んじゃ、やらせて貰うかな。」
ニャルマーが使っていた剣を受け取り、
所定の位置に着く。
「好きにかかって来い。」
エシュロン師範はパワルドを挑発する。
「どりゃーー!」
高く剣を振り上げながら、エシュロン師範に走り近づく。
が、一瞬で勝負が決まる。
エシュロン師範はパワルドの胴体に剣を叩きこんでいた。
「もう一回やらせてもらぇねぇかな。」
あっけない結果にパワルドは立ち上がり、
腹を抑えながら再戦を懇願する。
「何度でも好きにするがよい。」
パワルドは再び、所定の位置で構えた。
次回は10月8日リリース予定です。
【参考情報】地名
ケービヨン(川越)
シングワシ(新河岸)
ソニックシティー(大宮)
サウスヨーノ(南与野)
学園都市コラフル(埼玉大学)
※埼玉→彩の国→彩→Colorful
シキシニシシキ(志木)
※志木市西志木という地名は無いです