たまねっと ~ ウツーミヤとキネーナ、そして偉大なるリーダーのティーケー ~
外へ出ると周りを警備していた3人も玄関の前に集まる。
シャローマは周囲を確認しながら庭へと出た。
ボロ家から最も離れた場所で立ち止まり全体が見渡す。
そして家の裏へ回り、ゆっくり1周した。
「自然と調和された家だが、特に変わったところは。」
先程注意されたことを活かしたのか、
ローバストの言葉はやけに丁寧だ。
「その様ですね。」
「昨日追いかけた場所まで案内しようか?」
見落としがないか周りを見回している
シャローマに提言した。
「お願いします。3人はこのまま警戒を。」
「「了解です。」」
ギルマスのシャローマに支持されたギルドスタッフは
再度散らばった。
1体目のポスリメンを倒した後に追いかけたルートを
状況を説明しながら辿る。
「この道は何らかの用途で利用されているのでしょう。
こちらは?」
俺の真後ろで説明を聞いていたシャローマが
右斜めへ進む別の小道を指す。
「さぁ?彼女を追いかけ、後ろからは
ポスリメンに追い立てられてたんで。」
帰りは死角に入ってしまい、
こんな所に別の道がある事に気付かなかった。
「なんだか女の尻を追う悪人みたいだな。」
シャローマの後ろを歩くローバストが率直な感想を述べた。
「今回の立役者に失礼です。」
「あ、すいません。」
再びシャローマから注意を受け小さくなってしまった。
そのまま進み、ポスリメン2体を倒した場所、
ディメンティアを捕らえた場所へと案内した。
「ここですね、彼女を捕まえたのは。」
「まだ道は続いてますが。」
「ここから先には。」
首を横に2度振り話を続ける。
「気の失った彼女をグルグル巻きにして、
引き返したんで。」
「それで台車に乗せて運んだと。」
「台車はさっきの家でですけどね。」
「あの光景は、変態が現れたのかと思いました。」
「ははは、そうですか。。。」
って、さっき立役者に失礼だって言ってなかったっけ。。。
苦笑いしてたらローバストと視線が合った。
彼も何とも言えない表情をしていた。
「今回はここまでにしましょう。」
暫し周囲を調査したのち、
シャローマは前方から来た道へと振り返った。
「では私が先を。」
ローバストはシャローマを守るように先頭を進んだ。
俺は最後尾。
今回はという事は、改めて調査するのだろう。
この道の先、先程の分岐、
それ以外にも見落とした道があるかもしれない。
あとはバトマのギルドにお任せしよう。
【8月29日】
8時前、イナサンイの馬車でバトマを出発する。
御者台に俺も座り、客車は空っぽだ。
「飛ばすんで、しっかり捕まっててくださいよ。」
イナサンイは忠告すると馬に鞭をふるった。
「はっやっ!!」
一気に速度を上げ、普段の倍以上のスピードで進む。
正直怖いし、振動も激しくお尻が痛い。
「ははは。今日はティーケーまで行きまっせ。」
目一杯速度を上げて上機嫌のイナサンイが
今日の目的地を教えてくれた。
「ティーケー?」
「カリイニットの橋を渡って、西ケービヨンの更に先でさぁ。」
「随分と先まで。」
「通常3日の所、2日で行くんで。」
「そ、そだね。」
普通に行けば良かったと肘掛を掴みながら後悔した。
道中ティーケーの街について教えてくれた。
周囲は水田に囲まれた小さな街だが、
ダンスミュージックで有名らしい。
かつて『たまねっと』というグループのリーダー、
ティーケーが住み、音楽家を目指す若者の指南をしていた。
以前の街の名前は異なっていたのだが、
彼を慕う人や彼から教鞭を受けた人が移住し、
いつからかそう言うわれるようになったらしい。
ちなみに、『たまねっと』は他にウツーミヤとキネーナの3人組で、
『街の狩人、野生を手に入れろ』、『野生の天国』、『小刀の夜』など
多くの曲を世に広めたらしい。
途中からイナサンイは『たまねっと』の曲を鼻歌で唄ってた。
とてもノリの良い曲で、俺も気に入った。
遅い昼休憩をカリイニットでとり、
ルイマン川の橋を渡る。
スイジオ&シュケイ兄弟と同様に、
西ケービヨンを迂回した。
そして迂回の途中で別の道へ進んだ。
暫く水田の合間を進むと
今日の目的地に到着した。
【8月30日】
8時、ティーケーを出発した。
相変わらず、高速で進んでいる。
腰が痛い。お尻が痛い。
運転するイナサンイは今日も絶好調だ。
以前立ち寄ったコンセイは通らずケービヨンを目指す。
夕方6時半過ぎ、ケービヨン南のギルド前に到着し、
彼とはここで別れた。
ギルドに入り、空いてるテーブル席に
座り顔を伏せた。
全身至る所が痛く、気分も悪い。
「おい、大丈夫か?」
顔を起こして声の主を見る。
「パワルドは元気そうで。」
「そういう兄貴は?」
「色々ヤバい・・・」
到着予定を連絡してたパワルドに
バトマでの事を話した。
大爆笑だった。
「玄武の刻印の状況はどうよ?」
一通り話を終え、彼に進捗を尋ねた。
年末(12/28)と年始(1/8)予定のリリースはスキップします。
次は1/18にリリース予定です。
本年もご愛読ありがとうございました。
良いお年をお迎えください。(^^♪