犯人は・・・俺?
「ちょっと事情を聞いてきてやるよ。」
ディメンティアを乗せた台車を押す俺とツルボウを置いて、
「おーい」と手を挙げながら冒険者たちの輪に溶け込んでいった。
状況を聞いてきたサッチャンが状況を話始めた。
「今日バトマに到着した馬車が盗賊団に襲われたらしい。
その際、乗客の一人が行方不明になって、
今から捜索しに行くみたいだぞ。」
「へぇ、、、ってそれ、俺じゃね?」
自分に右手の人差し指を向ける。
「え、そうなのかい?」
「いや、他にもいるかもしれないけど・・・」
「アイツだよ、アイツ!
盗賊団とグルだったんだよ。間違えない!」
サッチャンと会話していると、
えらい剣幕で俺を指し、髪がボサボサの眼鏡を掛けた女性に
訴えながら近づいてくる男がいる。
って、さっきまで乗っていた馬車の御者と、
バトマのギルマスのシャローマじゃん。
御者の言葉に、凶悪犯を見るかのような視線と共に、
耳を塞ぎたくなるような、罵詈雑言が飛んでくる。
そして、今にも襲い掛かってきそうな御者のおっちゃんは
取り押さえられ、シャローマだけが来た。
「これは、一体どういう状況なのでしょう?」
シャローマは紐でグルグル巻きになって時折「ん~、ん~、」と
うめき声を上げているディメンティアの紐を解こうとしゃがんだ。
「あっ、ちょっと危険なんで、解かないでもらえます?」
俺の言葉にピタッと動きを止め立ち上がった。
「色々お聞きしなければなりませんね。
ここでは何ですので、一旦ギルドまでお越しください。」
再度台車に乗っかっているディメンティアを見てから、
変態でも見るかのような冷めた目で俺を睨み付けてきた。
今、俺って凄い悪者扱いされてる気がする。
サッチャンはこの状況に笑いを堪えていた。
「早速ですが、この女性は何なのですか?」
応接室にサッチャン、ツルボウ、俺の3人と、
屈強なギルドスタッフ1人が入ると、直ぐに扉を締め、
シャローマが静かに取調べを始めた。
「忘却のディメンティアって知ってます?
恐らく、その方かと。」
「おいおい、知ってるかだと。」
自分たちの仕事にケチを付けられたと、
眉間に皺をよせ、顔を近づけてきた。
「ローバストさん。
この方が、そのディメンティアだとおっしゃられるのですね。
確か盗賊団は5人だったはずです。」
自身より大きいローバストを右手で軽く押さえ、
シャローマが質問に回答する。
「5人、、、?」
ポスリメン4体を人と数えれば5人とは言えなくもないか。
と思った一方で、疑問形で返してしまったことにより
シャローマとローバストが一層疑いを深めてしまった。
「いやあの、ポスリメンを人数に入れていいものかと。」
「は、ポスリメン?」
ローバストは呆れた顔をしている。
「金品を奪うだけのポスリメンですか。」
「いや、アタシ達は。さっきまでバトマに居たし。」
シャローマの視線を受けたサッチャンが我関せずと
手を横に2度振りながら否定する。
「では、その4体のポスリメンは?」
「倒しちゃいました。」
「お一人で?」
「ええ、まあ。」
「へ~、そいつはすげーや。
一人でポスリメン4体を倒し、
主犯のディメンティアを生け捕りってか。
まあ、事実ならな。」
次から次へとでまかせ言うなよという顔をし、
ローバストは厭味ったらしくしている。
「とするとディメンティアはポスリメンの関係者だと?」
「と思ったからここへ連れて来たんですけど。」
シャローマの目を見て答える。
「なるほど、言い分については理解しました。
確認するのでお出しいただけますか?」
「えっ?」
何かを受け取ろうと右てを出すシャローマに、
どうしたらよいのか首を傾げた。
「ギルドカードだよ。」
ローバストが不敵な笑みを浮かべて教えてくれた。
そして、サッチャンもニヤリとした。
ギルドカードをアイテムボックスから取出し、
差し出されている手に載せた。
シャローマとローバストがソファー席に座りログの確認を始め、
サッチャン達と共に対面に座った。
「ポスリメン4体倒したというのは確かです。」
シャローマはログの確認を終えた。
「じゃあ、ほんとに。」
意外だと言わんばかりの表情のローバストの視線が
台車の上でうめき声を上げているディメンティアへと向かう。
すっと立ち上がったシャローマは、
ディメンティアの目を覆っていた布を取り、
喋れない様にしていたロープも解き始めた。
「ヤバいって。」
「チャーム!」
言わんこっちゃない。
警告を無視した結果がこれだ。
サッチャンは頭を抑え必死に抵抗し、
ツルボウとローバストはエロい目でディメンティアを凝視している。
「リセイン!」
シャローマが唱えると、サッチャンとローバストが正常に戻った。
ツルボウは、、、エロ目でまだ凝視している。。。
サッチャンが頭をコツンと軽く叩くと、
漸くディメンティアから視線を外した。
ん~、よく分からん奴だ。
「私には効きませんよ、セニリティーさん。」
シャローマはドヤ顔で眼鏡を上げる。
「セニリティーって、あの地味な。」
ローバストの言葉に、サッチャンとツルボウも驚ている。
どうやら、俺だけ知らないようだ。