コマアールのダンジョン 21層のナゾ ~ ヒワディーア山の管理人は今日も自由気ままです・・・ ~
コマアール ダンジョン 21層。
ステータス画面を開く。
時刻は10:47。
なので10分後の57分には撤退したい。
背後には20層への階段、右手には帰還陣がある。
そのまま5歩前に進み、計測器を確認した。
∩ ∩
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│ IR 15 │ │
│ UV 87 │ │
│ α 0 │ │
│ β 0 │ │
│ γ 0 │ │
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「ほっ・・・」
即逃げるように言われていたα、β、γの数値が
動いていなかったことに一安心。
事務所よりIRが低く、UVが高い原因は分からないが、
数値は許容範囲。
ステータス画面に目をやると、MPが1秒で2~3、
逆算すると凡そ0.3秒で1ずつ減っている。
だが、HPは減っていない。
防護服か断空の腕輪のいずれかに効果があるようだ。
計測器を仕舞い、空気のサンプリング用のキューブを手にした。
まずは指示通り60秒のタイマーをセットして床に置く。
そして、結界内の空気を持って帰っても意味はないので
結界の外の空気が入るようその場から離れると、
目の前にサンジャナイとハチジャナイが現れた。
「じゅーいち!」
周囲に声が響く。
マテカ空間での癖が咄嗟に出てしまった。
ハチジャナイを素手で殴り飛ばし、
サンジャナイを蹴り飛ばし魔素へと還す。
防護服を着たままだから動きにくいが、それぞれ1撃で倒した。
「ディテクト!」
周囲に反応があるが、大丈夫だろう。
振り返り元来た道を戻る。
そろそろキューブの蓋は閉まってるだろう。
キューブを回収し、そのまま急いで帰還陣に乗って脱出した。
防護服をアイテムボックスへ片し
クリッピノさんの待つ管理事務所へ戻った。
「おかえりなの。」
先程話をしていた応接室に通されると、
テーブルの上に断空の腕輪らしきものが5個、
殴り書きされたメモと共に乱雑に置かれていた。
「どうしたのこれ?」
「必要な酸素だけを通す方法を考えてたんだけど、
簡単にはいかなそうなの。」
俺がコマアールのダンジョンに行っている間、
策を考えてくれていたようだ。
本来の仕事をせずに。。。
そんなクリッピノさんに、計測器の状況と、
断空の腕輪を使用して防護服装備していた時に
HPが減らなかった事を伝え、
21層の空気の入ったキューブを手渡した。
「アナライズなの.」
受け取ったキューブを左手に乗せ、
右手を添えて唱えると一瞬ポワンと光った。
真顔で取り掛かっているクリッピノさんを
前のめりになり固唾を呑んで見守る。
「ん~、特に変な物は入っていないの。」
「そっか。。。」
背もたれにもたれ掛った。
クリッピノさんはキューブを置くと、
もう一つキューブを隣に置き手を添えた。
「コンペアなの。」
ポワンと光ったが、クリッピノさんの表情は硬いままだ。
俺の視線を感じたのか、目が合うと状況を説明してくれた。
「こっちはダンジョンの、こっちはこの部屋の空気なの。
違いはダンジョンの方が魔素が多いくらいなの。」
「それが原因ということは・・・?」
「ダンジョンの方が魔素が多くなるのは当たり前なの。」
クリッピノさんは首を横に2度振りながら答えた。
「って事は、空気の問題じゃないって事か。
防護服だけでもダメージを受けなかったか
確認しとけば良かったね。」
「それは意味がないし、とても危険なの。
防護服で防げるのはα線、β線、γ線だけなの。
そういう意味では、キューブの中身に違いがあるはずなの。
もっと詳しく分析してみるから明日また来てなの。」
「手間かけて悪いけど、仕事は大丈夫?」
「勿論大丈夫なの。」
微塵も問題を感じさせず、自信満々に答えが返ってきた。
ちょっと気が引ける。。。
「あはは、なら良いんだけど。。。
何かあれば手伝うよ。」
「そしたら、山のモンスターを減らしといて欲しいの。」
「分かった。引き受けるよ。」
借りていた防護服と断空の腕輪を返却し、
ヒワディーア山へと向かった。
【8月2日】
朝9時過ぎ、ヒワディーア山の管理事務所を訪れると、
クリッカーさんに応接室へと案内された。
テーブルの上には顕微鏡やシャーレ、スポイト、
小瓶に入ったよく分からない水溶液、
そして数冊の図鑑が乱雑に置かれていた。
そんな中で寝ていたクリッピノさんは、
足音で目が覚めたようだ。
「うぅぅん、はぁ、おはようなの。」
両手を上に伸ばして一息吐き、挨拶してくれた。
「ひょっとして徹夜?」
「はぁぁぁ(うんうんうん)。でも原因は分かったの。」
欠伸をしながら3度頷いた。
「えっ、流石じゃん。」
「魔素は魔素でも、半分は魔原素だったの。」
「まげんそ・・・、
あっ、確かトゲトゲしてる魔素みたいなモノだったけ。」
「言いえて妙だけど、何で知ってるの?
ん~、妙なの、妙なのぉ!」
グイグイと顔が近づいてくる。
「あれは、シーミュラ教授って人が言ってたんだよ。」
まさかこんなところでセミナーの知識が役に立つとは。
「あの魔素学の権威の。」
「権威だかどうかは知らないけど、
これ書いた人のセミナーをこの間受けたよ。」
アイテムボックスから魔素学の本を取り出して見せた。
「間違えないの。」
牛乳瓶の底のような分厚い丸眼鏡を掛けた教授をふと思い出す。
やはり凄い人のようには思えない。
というかあの時のセミナー、ガラガラだったし。
「シーミュラ教授の事は一旦置いといて、
なんとかなりそう?」
「摩原素だけを遮断するのは多分無理なの。」
「とすると、やっぱり空気そのものを?
それだと10分が限度か、まいったなぁ。。。」
魔素学の話は第99話
「魔素学(魔原素、魔素核) ~ エスセティ・ツリーベルとシーミュラ教授 ~」
です。読み返してみては。
魔素に関する知識は、
シャローマ(バトマ ギルマス) → シーミュラ教授 → クリッピノ
という流れでした。参考まで。