表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強の剣を求めて~Another Story~  作者: 遠浅 なみ
第4章 ケービヨン地方
154/186

ヒワディーア山 管理事務所 ~ ケーティ牧場の手土産と断空の腕輪~

「すいませんでした。」

事務所に入るとクリッカーさんが背中を直角に曲げ

めっちゃ平謝りしてきた。


驚いてクリッピノさんを見ると事情を話てくれた。

「不在の間、あたしの知り合いだって言う人がたくさん来たの。

でも、ほとんどが単なる営業だったみたいなの。」

「もう気にしなくていいですよ。」

と伝えても、恐縮しきりだった。


クリッピノさんに応接室へ案内され、

アサヒヒルで購入したケーティー牧場の

クッキーの詰め合わせを手渡した。


喜んで受け取ると、次から次へと個包装を開けて食べ始め、

色々と愚痴り始めた。

「ねぇそれ、クリッカーさんの分も・・・」

「ん、大丈夫なの。」

そう言って2つ箱からテーブルの上に置いた。

それ以外、全部食う気か。。。

もうこれ以上言うまいと、食べかすを口の回りに付けている

彼女を見て苦笑いした。


そして、クッキーを食べながら彼女は話を続けた。

「結界を滞りなく張って、漏れなくクリビオーは退治できたの。

なのに、何でお仕置き研修を受けなきゃいけなかったのか

未だに納得いかないの。」

そう愚痴りながら更に箱からクッキーを取出し、口へと放り込む。


暫く彼女の不平を黙って頷きながら聞いた。

「今日はお話聞いてくれてありがとうなの。」

一連の不満を吐き終えた彼女の前には、

空の箱とクッキーの個別包装のゴミが山になっていた。


「いや、構わないよ。こっちからも1つ聞いていい?」

「うん、知ってることなら答えるの。」

「コマアールのダンジョンの21層以降について何か知らないかな?」

「ん~、ダンジョンはご近所だから知ってるけど、

残念だけど入ったことは無いの。

何かそこに問題でもあるの?」

「20層までは普通に行けるんだけど、

21層に入るとダメージを受けて先に進めないんだよね。」

「なんでダメージを受けちゃうの?」

「えっ、なんでって・・・毒?か何かじゃない?」

そういう物だと思い込んでて、しどろもどろに答えた。


「原因が分からない事には対処のしようは無いの。」

「原因かぁ、、、確かに。」

問題を解決するのであれば、原因を知っておく必要はある。

対処療法というか強引に進む方法も無いわけではない。

回復役を飲みながら進むという方法も出来なくはないが、

23層まで行くにはどれだけ飲まなければならないのだろうか。

多分、お腹が持たない。


「ミステリーを感じるの。面白そうなの。」

興味深げに目をキラキラさせコチラを見ている。


「何か調べる方法ある?」

「ちょっと待っててなの。」

何かを取りに部屋を出て行ってしまった。


入替わりでお茶のお代わりをクリッカーさんが持ってきた。

「お土産持ってきたんですけど。」

「いつもの事なんで。」

お茶を入れ替えると、テーブルの上を片し始めた。


「あ、それクリッカーさんの分です、多分。」

「え、そうですか。ありがとうございます。」

「なんか、すいません。」

「いえいえ、いつもは残ってませんから。」

やっぱ全部食べる気だったんじゃん。

「お察しします。」

「ははは、もう慣れました。」

片付け終えたクリッカーさんは一礼して退室した。


淹れなおしてもらったお茶を啜り、しばらく待った。

「待たせたの。」

戻って来たクリッピノさんの口元は綺麗になっていた。

クリッカーさんに注意されたか拭いてもらったんだろう。


「まず、これの反応を調べてほしいの。」

IR、UV、α、β、γと書かれた横に

計測した数値がでる機器を渡された。


「横にある丸いボタンを押すの。」

言われた通りボタンを押すと電源が入り、

数字が表示された。


IRは6~8の間を動き、UVは30~35の間で動いている。

それ以外は0のままだ。

「下3つは動いてないけど、これって何?」

「これは目に見えない波長を感知するの。

上2つは陽の光を当てると大きくなるの。

もし下3つの数値が動いたら、即逃げるの。」

「え、そんなヤバイやつなのコレ?」

「寿命が縮まるの。」

「こっわっ!」

放射線か何かの類なのだろうか。

寿命が縮まるし、線量が高ければ即死もあり得る。

行きたくなくなってきた。


「そんな顔しないの。これを着てけば大丈夫なの。」

アイテムボックスから防護服を出してくれた。


「う、うん、頑張って行ってくるよ。」

「あと、これは空気を遮断する結界を張るの。」

テーブルの上に置かれたブレスレットを装備する。


「断空の腕輪か。」

「魔力を流すと結界が発動するの。」

「へぇ、これって窒息したりしない?」

魔力を流してみるが、特に何も変わらない。

そしてクリッピノさんはニコニコして何も答えない。


「これってどれくらい大丈夫なのかな?」

ずっとニコニコして何も答えない。

多分、息することを考えてなかったな。

ってか、殺す気か!!


ブレスレットへ魔力を流すのを止めた。

あとでどれくらい持つか検証してから実際に使おう。


「っで、こっちは?」

ダイヤルが付いた透明の10センチ四方のケースを

手に取った。


「それで空気を持って帰ってきてほしいの。」

「持って帰ってくる?」

「そのタイマーで箱の閉める時間を調整できるの。

ん~、60秒にセットして一旦離れて閉まったら

回収すればいいの。」

「なるほど。」

具体的な方法を聞きながら、箱を動きを確認した。


「さぁ、行ってくるの!」

「えっ?」

「早く行って、すぐ戻ってきて、待ってるの。」

「あ、はい。」

急かされて事務所を後にする。


外へ出てふと事務所を振り返り見た。

クリッピノさん、また仕事しない気だな。。。

断空の腕輪を装備し、魔力を流しながら

コマアールのダンジョンへと向かった。


10分を経過すると徐々に息苦しくなってきた。

「ざっくり10分ってとこか。」

魔力を切ると新鮮な空気が入って来た。

これで空気が遮断されている事と、

無理無く使える時間を把握できた。


コマアールのダンジョンの周囲には人がいない。

既に冒険者たちは中に入っている時間だ。


防護服を装備し、計測器を手に持つ。

そして断空の腕輪に再び魔力を流し、

21層へと転移した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ