表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強の剣を求めて~Another Story~  作者: 遠浅 なみ
第4章 ケービヨン地方
153/186

経営コンサル ~ 縮小均衡で生かさず殺さず:大成してもダメ、潰れてもダメ ~

「そっからは違いますわぁ。」

「事業が1つに集中しているいう点は考えさせられますが、

ん~、他はちょっと違うかなと。」

社長が否定した後、副社長が補足する。


「縮小均衡的な考え方で、利益重視だもんね。」

毎月の売上は2400程度。

だから生産量も同程度に減らす。

んで生じる余剰人員を削減しコストを減らす。

売上を維持してコストを減らす訳だから

確かに利益は最大化できる。


そして、需要が増して単価が上がれば

同じ数量を売却しても利益は増える。


一方、需要が減ればそれに合わせて生産量を更に減らし

余剰人員を整理して利益を維持していく。

要は、売り上げが落ちる分、事業を縮小させて、

利益とのバランスを確保していくという事だろう。


報告書にはそれらしい事がつらつらと書かれ、

常に利益を確保出来ると謳っている。


抜けている点は、2400という売上数は

半分在庫を確保しているからである。

そして今回、クロースミスの件で在庫は大幅に捌ける。


「縮小均衡、、、?難しい言葉は分かんねぇけど、

小さく纏まってく感じがつまねぇよ、なぁ。」

横にいる副社長は社長の言葉に頷き、自信の考えを追加する。

「発展的な考えではないですよね。」

「リスクを取りたくないんじゃない、多分。」

「「リスク?」」

「事業を拡大させようとすれば、

失敗する可能性、要はリスクがあるよね。

この提案なら無理なく中期的に利益を上げれるだろうしね。」

「んじゃ、長い目で見たら?」

社長は小さく肩をすくめて問いかけてきた。


「最終的にお二人だけになっちゃう。」

冗談ぽくあっけらかんに答えた。


「ははは、いやいくら何でも。意図が見えねぇ。」

社長は大袈裟だろうと右手を2度振り否定しつつ、

一呼吸置き今度は腕組みして頭をひねり始めた。


「まぁ1つ猜疑的な言い方をさせてもらうと、

彼らも短期な賭けで事業拡大して契約を失うより、

より確実に長く利益を上げるようにして契約を維持したいじゃない。

むしろ、うちらが事業拡大に成功しちゃうと、

用なしですって切られる可能性もあるし。」

「生かさず殺さず、

確かに大成を収めりゃ、コンサルの仕事はなくなる、

言ってみりゃ、コレ彼らにとってのベストプランじゃねぇか。」

「あくまで1つの考え方だよ、あくまで。」

妙に納得している社長に断りを入れておく。


「であれば、この話はお断りしましょうか。」

副社長が結論を迫ると、社長の困った顔をした。


「気が引けるな、タダで時間割いてもらったし。」

「タダより高いものは無し、なんてね。

まぁ、彼らもタダとは言え、2人から多くの業務知識を得て、

まるっきり損してる訳ではないと思うよ。」

もう一度、初めからパラパラとよく取り纏められた報告書をめくる。

このまま同業へ持ってくことは無いと思うが、

他に営業をかける際に観点など十分役に立つと思う。


「今度から気を付けますぁ。」

社長はテーブルぎりぎりまで頭を下げた。


「まぁまぁ。

っていうか新規偉業ってのは今度まとまった金入るし

有りだと思うんだけど、なんか面白い案てない?」

社長が気にしちゃっているようなので話題を変えた。


「面白い、、、ちょっと考えてみますわぁ。」

「よろしくね。」

面白い案といった言葉から、楽しめる事業を立ち上げようと

社長と副社長が考え、アミューズメント部門が立ち上がる。


そして将来、カードゲームやパチンコなど

アミューズメントと言えばタークハギ社と言われるまで

成長する。が、これは別の機会で。


在庫とコンサルの件が話し終わり、

2人の希望で、俺の冒険譚を聞かせた。


そしてノベグランの杖を買った時に、

店主のランデプスから貰ったジャポネ酒を

プレゼントしたら、大喜びだった。


日も落ちる頃になり、宿へと戻った。

ちなみに、コマアールのダンジョンの21層以降について、

情報を得ることはできなかった。



【8月1日】

朝一、コマアールのダンジョンを通り過ぎ、

ヒワディーア山を目指した。

桃香が最後に残したマンシャゲの花、

何かヒントがあるのかもしれない。


山付近までたどり着き、ふと茂みに隠れた

『ヒワディーア山管理事務所』の小さな縦看板を見つけた。


「そういや、クリッピノさんて元気にしてるかな。」

事務所へ向かう細い道の前で立ち止まり、

折角なので顔見せだけしてこうと行き先を変えた。


少し進むと以前と変わらず、

木々に囲まれた平屋の大きな家が現れ、

玄関の前のインターホン押した。


「はい、ヒワディーア山 管理事務所です。」

男の人の声、クリッカーさんの声が

インターホンから返ってきた。


「以前管理人のクリッピノさんにお世話になった者で、

近くまで来たので挨拶だけでもと。」

「ああ、そういうの、結構です。」

返ってきた声は先程より低いトーンで、

すぐにガチャっと切られてしまった。


「あ゛っ・・・」

インターホンを見ながら

呆気に取れれて2度大きく瞬きした。

どうやら、飛び込み営業と勘違いされてしまったようだ。

アポも取ってないし仕方がない。

そのまま引き揚げることにした。


「ちょっとぉ~待ってなの~~」

敷地から離れ細い道を歩いていると、

聞き覚えのある声がドテドテと近づいてくる。

走っている様に見えて歩く速度と大して変わらず、

ただ懸命に叫んでいる。


「クリッピノさん、久しぶり!」

振り返り手を挙げると、彼女の走る速度は更に落ちた。


「はぁはぁ、後姿を見て慌てて追いかけてきたの。」

そんなに距離は無いのに、彼女は既に息を切らしている。

こちらも歩み近づくと、遂には立ち止まってしまった。


「久しぶりなの。」

横に並ぶと屈託のない笑みで出迎えてくれた。

「相変わらず元気そうで。」

並んで話をしながら事務所へ戻り始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ