表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強の剣を求めて~Another Story~  作者: 遠浅 なみ
第4章 ケービヨン地方
152/186

クロースミスの鍛冶組合連合会からの嘆願書

受け取った用紙はクロースミスからの嘆願書だった。


-------------------------------------------------------------------------

タークハギ鉱業 御中

クロースミス 鍛冶組合連合会


優先取引のお願い


拝啓

時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。

平素は格別のご高配を賜り厚くお礼申し上げます。


さて、既にご承知の通り、

ハノウではポスリメンの侵攻を制圧することができました。


しかしながら、街の随所に爪痕が残り

防衛施設の修繕などで鉄鉱石の需要が急速に増しております。


同時に消耗した武具の再調達も喫緊の課題となっており、

ハノウより当連合会へ協力要請がありました。


つきましては、下記の通りご協力賜りたく存じます。

何卒ご高配のほどお願い申し上げます。


                             敬具

              記


  1.数量        10,000ケ

  2.価格        800ゼニー/ケ

    ※市場価格が本価格を上回った場合、市場価格とする


  3.納期    契約後2か月程度で分納

  4.引渡方法  応相談

  5.特記事項

     ・

     ・

     ・


-------------------------------------------------------------------------


「2ヶ月で1万個か。これってどうなの?」

挨拶文を読み飛ばし、主要な内容に目をやり、

対面にいる社長に確認する。


「全数納品に充てるってんだったら1ヶ月あたり5000、

まぁ不可能じゃねぇが、奴らもうちの生産力を知ってて

この数を言ってきてやがる。

ったく、全数充てれれば何とかなるけどよ。」


全数というワードを敢えて最後に投げ出すように

もう一度出し強調してきた。

と同時に、副社長が直近の生産推移表を出してきた。


4950、4930、4960

直近3ヵ月で5000を超えた月は無いが

確かに達成可能なレベルではある。


「確かに今より少し頑張れば行けそうだけど。」

対面に座る社長と目が合うと、

2度首を横に振り問題点を述べた。


「・・・今の取引先へ納めることが出来ねぇ。」

「ん~、流石にそれはマズいよね。」

目の前の2人は大きく頷いた。


「とは言え、800万というでっけぇ案件だ。

しかも倉庫にはあれだけの量がある。

見す見すスルーするってのも。」

社長からは絶対に取りたいという気迫を感じる。

だから先に倉庫を見せたのかもしれない。


「例えば8月9月の生産分はクロースミスに回して、

サンハイトの取引先には在庫分からってのはどうかと。」

副社長も前のめりになって

どうにかならないかとプランを提示してきた。


「いいんじゃない。それで。」

その言葉に前のめりになっていた2人は笑みを溢す。

2人の気迫にやられた訳では無い。

そもそも在庫を確保していたのは高値で売るつもりだったからだ。


「800万かぁ。ほぼほぼ利益だよね。すげーなぁ。」

8月9月は経費は変わらずに売上が増える。

顔を綻ばせながらクロースミスの書類を社長へ返す。


「後は俺達に任せて、収支を楽しみしていてくだせぇ。」

受け取った書類を副社長へとそのまま手渡した。


半分ほど残っているコップに口を付け、一口飲む。

副社長が書類を整えている間、社長も1口水を飲んだ。


「あとはコンサルの件だっけ。」

「それはこのファイルになります。」

20枚ほど綴られているレールファイルを

副社長が手渡してきた。


「クリアストリム・コンサルタンツ、ねぇ。」

表紙にはコンサル会社の社名と

清流をイメージしたロゴが描かれている。

まぁ、聞いた事ない所だけど。


表紙を捲ると、お引き立てがどうこうと、

協力への謝辞といった挨拶文が書かれていた。


そして次のページにはクリアストリムの沿革や

業務内容など説明が載っていた。

詳しく読むつもりはない。直ぐに次のページを捲った。


3ページ目にはタークハギ鉱業の沿革が載っていた。

「ヤエンダ鉱業、設立。」

ハイルートに行ったとき、彼らの親父さんに

聞いたことがあったっけ。


「元は俺たちの祖父が創業した会社なんだ、ここは。

コンサルに色々聞かれて過去の資料をひっくり返したり、

親父たちに話を聞いたり、過去を知るいい機会になったよ。」

上半分は三十数年のヤエンダ鉱業について、

続けて1/4がタークハギ鉱業について書かれている。

残っている1/4の余白には今後何が追記されるんだろうか、

良いことが書かれることを願いながら次のページへ進んだ。


4~6ページ目には、サンハイトや近隣の経済状況、

鉄鉱石の需要など社外状況についての説明だった。

「へぇ、そうなんだ。」と興味深く読ませてもらった。


7ページ目から暫くは、運用ルールや業務フローなど

社内状況について詳細に書かれ、ぺらぺらとページを捲る。


「結構事細かだね。」

「コンサルが業界に疎いからって言いながら

色々聞いてきたもんで、

できるだけ分かりやすく教えたんですぁ。」

「ああ、なるほど、そう言う事。」

思惑の1つが理解できた。


社内状況の後には、直近の売上やコスト分析、在庫の状況など

財務的な内容がグラフィカルに数ページに跨りまとめられていた。


「まぁ直近は赤字だからね。。。」

単月の収支は真っ赤になってて、黒字はない。


「今月は楽しみにしてぇてくだせぇ。」

社長が悪代官みたいな笑みを浮かべる。

さっきの件でしょ。

分かってるがなと1つ頷きページを捲った。


ここから先は社内の課題とコンサルからの

改善案がつらつらと書かれている。


「意外と現場の事をしっかり書いてるね。」

俺の感心とは裏腹に2人は苦笑いしている。


「いやそれ、俺たちが説明したモンだから。」

「ああ・・・」

尤もらしく書いてあるが、

聞いたことをそのまま書いただけか。。。


「この収支改善案についても?」

現場改善案の後に1ページにわたりコスト削減、

適正在庫、新規事業について書かれていた。


確かに1事業に集中しすぎて何かあった際に

立ち行かなくなるリスクはあるけど、

2人が事業の多角化を考えていたのは意外だ。


それに、在庫に関しては納得して管理してくれてると

思ってたんだけど。。。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ