飛竜を追い払え(前編)~ パワルドの渾身の一撃 ~
飛竜戦、長くなりますので、2話に分けてアップします。
後編は次週アップします。
【9月3日】
9時少し前にワザヤミーさん宅の前に8人が集まった。
俺は耐火性のある火炎蜥蜴の皮で作られた、火炎蜥蜴の盾、鎧を身に付け、山彦の杖の装備した。
「減熱の護符だ、みんな飛竜と退治する前に使ってくれ。もし襲われたとしても、
耐熱効果のある防具を装備していてこの護符を使えば、火炎攻撃での大ダメージは回避できるだろう。」
ワザヤミーさんは1人2枚ずつくれた。効果は30分間、熱によるダメージを20%軽減するらしい。
「追い払うだけだから、無理はするな。もし失敗しても、また行けば良い。怪我だけは気をつけてくれ。」
その言葉に、みんな頷いた。
「よし、それじゃ行くぞ。」ワザヤミーさんを先頭に、昨日と同じ隊列で岩山へと向かった。
道中、昨日とは変わって、会話は少ない。みんな緊張しているようだ。
「ワザヤミーさん、飛竜は2匹居ると聞いたけど、もし2匹とも居たら同時に対処しますか?」
「2匹同時に対処せざるを得ないだろうな。まぁ、俺もできれば1匹ずつ追い払いたいけどな。
だが、1匹追い払った後、もう1匹と合流してこちらに襲ってこられたら、
結果的に2匹同時に相手せざるを得ない。
まぁ、1匹だろうが2匹だろうが、やらざるを得ないってことだ。
2匹ともすんなりと逃げてくれりゃ良いんだがな。」
「逆に、飛竜がいなかった場合は?」
「巣に罠を仕掛けた上で、戻ってきたところを弓矢で威嚇射撃して、西の方へと追いやる。
まぁその場合、いつ戻ってくるか分からないから暫く待つことになりそうだな。
巣に罠を仕掛けたことに怒って、俺達の村に来ないようきっちり対応しないとな。」
後ろのメンバー達は、俺とワザヤミーさんの会話に耳を傾けながら歩き、
俺達の待機場所である飛竜の居る場所から東に100メータ位離れた場所へと着いた。
「ちょっと飛竜の様子を見てくる。」とワザヤミーさんはそう言って巣のほうへ向かおうとしたので、
「俺もいいですか?」と聞くと、「お前だけなら構わん。」ということなのでついていった。
50メータくらい進むと、右手側は高さ10メータくらいの岩の壁となっており
左手側は他よりは傾斜の少ない斜面が広がっていた。
さらに少し進んだところで、「ここで待っててくれ」とワザヤミーさん一人で様子を見に行った。
ここからでも巣の様子は見えただが、より近くまでゆっくりと行って何匹いるかを確認してきた。
「今の所、あの一匹しか居ねぇな。」と指差し、みんなのいる場所へと向かった。
現状1匹しかいないことを皆に共有し、ワザヤミーさん達は山頂へと向かった。
しばらく待っていると、シガンさんから『山頂に着いて準備が整いました。』とメッセージが届いた。
「シガンさん達も準備できたようだから、行くか。」
俺は3人に伝え、先ほど行った道を辿った。
70メータ位進むと、飛竜の姿がはっきりと確認できる状態となり、俺とパワルドは盾を装備し、
ニャルマーとナナさんは弓を構えた。
昨日の夕方ワザヤミーさん宅へ戻ってから、俺とナナさん、パワルドとニャルマーでペアを組み、
俺とパワルドが盾役となり、女性二人が矢を放つという作戦で行くことに決めていた。
徐々に近づき、2メーターより少し大きいくらいの飛竜の全体を確認できたとき、飛竜に気付かれてしまった。
先ほどのワザヤミーさんのときとは違い、今回は盾を持ちながら近づいたので気付かれるのは当然だが。
大きな鳴き声でこちらに威嚇してきているが、もう少し近づいてから弓を射ることにした。
よしここから矢を放とうとしたその時、飛竜が巣穴から飛び出し4メーター位の高さから
こちらにブレス攻撃をしてきた。
羽を広げた飛竜の翼の大きさは片方で2メータくらいあり飛ぶとかなり大きく見える。
俺とパワルドの盾でブレス攻撃を防ぎつつ、一旦距離をとった。
飛竜が巣穴から出てきたタイミングで、頂上付近にいたワザヤミーさん達が攻撃を開始した。
立ち位置としては、俺達がいて上空3~4メータくらいの高さに飛竜がいて、
さらにその4メータくらい上にワザヤミーさんたちがいる感じだ。
矢は辛うじて刺さっているものがあるが、ほとんどダメージは与えられていないようだったが、
気にせずどんどん矢を放っている。
飛竜は飛んでくる矢を気にせず、再度ブレスを俺達に放ってきたので、盾で防ぎつつ、どんどん後退していった。
30メーター位離れるとブレス攻撃は止み、その間にもワザヤミーさん達は矢を射続けていた。
こちらから何か攻撃する手段はないかと考えていると、飛竜はギャーギャー喚きながら徐々に高度を下げてきた。
後で聞いた話だが、矢に麻痺毒を付しており、徐々にその効果が現れたとのことだった。
飛竜が着地する直前にワザヤミーさんの「別の方向からもう1匹が来たから、すまないがそちらは任せた。」
という大きな声が聞こえた。
「了解」と大声で返し、俺達は再度飛竜へと近づき、俺とナナさんが飛竜の右側に、
パワルドとニャルマーが左側へと回り二手に分かれ、ブレス攻撃を受けていない側が矢を放つという作戦を取った。
飛竜は右側にいる俺達の方へ向きブレス攻撃を仕掛けてきたので、俺はナナさんを守るように盾でガードした。
こちらが攻撃を受けている間、ニャルマーが矢を放ち攻撃しているはずだ。
飛竜はブレスを吐き終えると、今度は左側を向き、大きく息を吸いパワルドたちへブレス攻撃を仕掛けた。
パワルドが盾を構え、その後ろにニャルマーがうまく隠れた。
そのタイミングでナナさんが弓を構え、矢を何本か放ったが1本刺さっただけで大半が弾かれてしまった。
飛竜は息を吸い込むと今度はこちらに向けでブレス攻撃を仕掛けてきたので、俺は盾でガートした。
ガードしつつナナさんに、魔法を試してみたいから一回盾役を変わってもらえないか
聞いてみたところ、快く引き受けてくれた。
「私の攻撃ではあまりダメージを与えられなかったので、よろしくお願いします。」
ナナさんはそう言いながら、弓を仕舞い盾を装備した。
ブレス攻撃が止んだので盾役を交代し様子を伺っていると、大きく息を吸い、
再度こちらにブレス攻撃を仕掛けてきた。
パターン的にはパワルドのほうを攻撃するんじゃないのかよと心の中で思いつつも、
ナナさんの陰に隠れ、盾を仕舞い山彦の杖を装備した。
こちらへのブレスを吐き終えると、今度はパワルドの方へブレス攻撃を仕掛けたので、
俺はすかさず「サンダー」を飛竜の頭上へ放った。
山彦効果が発動し、2発決まりそれなりにダメージが入ったようだ。
飛竜はこちらの方が危険と判断したのか、ブレス攻撃を切上げ、こちらに向き大きく息を吸った。
その間に2発サンダーを唱えたが、山彦効果は発動しなかった。
ブレス攻撃をナナさんの後ろに隠れることで回避し、 飛竜が息を吸うタイミングでサンダーを3発唱え、
山彦効果で2発プラスで5発入った。
飛竜のブレス攻撃をナナさんの陰で回避したが、耐熱効果があるとはいえ連続で受け続けると、
盾の耐熱効果も限界になってしまう。
大きく息を吸っている間に、また3発サンダーを唱えるが大分弱ってはきているものの
仕留めるまではいかず、再度ブレス攻撃が襲ってきた。
ナナさんの盾がもつか微妙だったが、ナナさんの前にニャルマーが盾を構え
ガードしてくれたおかげで耐え切ることができた。
ブレスを吐き終えたタイミングで、斧を装備したパワルドが飛竜の首の真上から渾身の一撃を放った。
「渾身の一撃」は斧術のレベルを上げることで取得できるスキルで、
防御を捨て、全力の一撃で通常攻撃の倍くらいのダメージを与えるスキルだ。
少し飛竜が動いたことで微妙に手前にずれたが、逆に中心よりずれたことで
パワルド側の首部分に大きな傷を負わせることが出来た。
飛竜の首からはかなりの量の血が流れ出ており、ふらふらの状態だったが、
パワルドの方を向き、大きく息を吸った。
俺は、「お前の相手はこっちだ!」と叫び、再びサンダーを唱えた。
3発ほど唱えると、飛竜はこちらに向けて、ブレスを放ってきたが、ニャルマーの盾で防ぎきった。
既にブレス攻撃の威力も大分衰えていた。
パワルドがもう一度同じ場所を目掛けて、渾身の一撃を再度放つと飛竜はその場に倒れ、
魔素へと消え、この近辺のモンスターに比べると大量の経験値が入った。
あと少しでベースレベルも上がりそうだ。
そして、アイテムボックスには飛竜の盾、飛竜の鱗が15個、MP回復薬が3個、回復薬が5個が入った。
次回、不思議なものを入手する予定です。
そしてパワルドがまたしても活躍(?)します。