クヌキの祠 40層 ~ 玄冥亀(ゲンメイキュウ)との戦い2 ~
配管工のおじさんが勢いよく転がってきた甲羅にぶつかって
死んだときの曲が不意に頭の中に流れた。
このままここに立っていれば、そうなってしまうだろう。
なので、大きくジャンプした。
甲羅を踏むために高く飛んだのではなく
ただ横へ飛んだ。
すぐ横を玄冥亀がスピンしながら通り抜け、
通った跡が微妙に湿っている。
「うゎ・・・」
右足だけその上に乗せるとヌルヌルと滑りやすくなっていた。
玄冥亀は何度か壁に跳ね返って徐々に速度を落とし、
床の到るところにヌルヌルをまき散らしやがった。
「サンダー!」
天雷の杖を装備して唱えると、玄冥亀の甲羅に直撃した。
ちょっとお遊びが過ぎたようだ。
ここからは真面目に最適な攻略である
電気系統の魔法で攻める。
既に止まっている玄冥亀は頭も出さずじっとしている。
あれだけスピンしてたから目でも回してるのだろうか?
チャンスとばかりに10発近くぶち込んでみた。
玄冥亀は頭と足を甲羅から出し、
ボクサーの様に体を左右にゆっくり揺らしている。
そして後ろ足で立ち上がると、
前足を左右と拳を繰り出す様な仕草をした。
亀の前足の長さは短い。
当然、届くわけもなく。。。
きっと、威嚇なんだろう。
玄冥亀は後ろを向き、尻尾を床に叩きつけてきた。
亀の尻尾の長さは短い。
当然、届くわけもなく。。。
「サンダー!」
無防備な後姿に遠慮なく放つ。
玄冥亀は逃げるように壁へと速度を上げて突き進む。
壁にぶつかりスピンしながら跳ね返ってきた。
先ほど蹴とばした時より速度は遅い。
余裕で躱した、、、が、あっ!
ドテン!
ヌルヌルに足を取られ尻餅を搗いた。
「イテテテ、、、」
ゆっくり立ち上がると、背後に玄冥亀が近づき
噛みつこうとしてきた。
しゃがみ込み転がるようにして、距離をとる。
「あちゃ~」
全身至る所がベタベタになってしまった。
気分を悪くしていると、アシッドボムが飛んできた。
盾で弾き、距離を取る。
少し劣化してしまったが、やむを得まい。
「サンダー!」
反撃すると玄冥亀は一瞬顔を顰め、紫色の霧を放つ。
毒状態が続き、少しずつHPが削られていく。
「サンダー!」
ゆっくり下がりながら唱える。
ダメージを負った玄冥亀はスピンしながら突っ込んできた。
盾でガードし、衝撃を利用して後方に距離を取る。
勢いがあり、流石にノーガードは危険だろう。
ただ、スピンが止まっても玄冥亀は頭を出してこない。
あれだけ回ってれば、目も回るよね。。。
「サンダー!」
床のヌルヌルを避けながら離れて唱える。
玄冥亀はじっと耐えている。
更に距離を取りながら、数発放つ。
玄冥亀は少しだけ頭を出すとゆっくり後足に力を込めた。
それでもひたすらサンダーを唱えダメージを与える。
玄冥亀は口を大きく開けて勢いよく飛んできた。
体が大きい割に、意外と速い。
驚きつつ躱した。
スッポンなど、噛む力は強いから侮れない。
玄冥亀は着地すると同時に、紫の霧を吐いていく。
「うわ、また毒か。」
目がショボショボし、HPが地味に削られていく。
距離を取ろうとすると、今度はアシッドボムが飛んできた。
また盾が劣化してしまった。
こんちくしょうめ!
「サンダー!サンダー!」
やけ気味に2度唱えた。
玄冥亀は遠吠えする犬の様に首を上にあげ気合を入れた。
そして、黄色く一瞬ふわりと光った。
「硬いのに更に防御力を上げたのか。」
ディフェンスアップを使用した時の光り方だった。
物理攻撃だと、倒すのは大変だったであろう。
「マジックアップ!」
ディフェンスアップに対抗し、一瞬紫色の淡い光が全身を包む。
玄冥亀は睨み付けながら、後ろ足に重心を掛け始めた。
再度サンダーを唱えるため杖を構えているが、
放つ瞬間を狙っているのは想像に難くない。
どうしても唱えたタイミングで隙が出来る。
下手に動けない。
飛び掛かってきたらまずは躱す、神経を集中させる。
だが、玄冥亀も睨むだけで動かない。
ゆっくり息を吐く。
息を吸いながら、顔を動かさずに左右の床の状況を確認する。
左側は乾いているが、右側は湿っている。
ゆっくり息を吐きながら、左に飛ぶべきか悩む。
玄冥亀は1度瞬きしたが動かない。
息を吸いながら、チラリと左の床に移し状況を再度確認し、
玄冥亀をじっと見る。
一瞬口元が動いた気がする。
読まれたか。
息を吐く。
時間にして十数秒、この硬直状態は長く感じる。
しびれを切らした玄冥亀は睨みを利かしたまま重心を戻した。
視線を逸らさず、緊迫感から抜け出す様に
バックステップで距離を取り、透かさず唱える。
「サンダー!」
稲妻が直撃した玄冥亀は重心を後ろ足にかけ、
飛び掛かってきた。
溜が少なかった事、距離を取ったことによって、
俺の所まで届かない。
念のため1歩バックステップし、ヨシと思った瞬間、
玄冥亀はその勢いを活かし、スピンして襲ってきた。
盾でガードするが、受け止めきれない。
その場で踏ん張るのではなく、スピンの威力をいなし弾かれる。
玄冥亀は離れた場所で止まった。
マジックアップを唱え更に魔力を高め、
サンダーが届くギリギリの範囲まで近寄る。
そして、何度か連続してサンダーを唱えた。
玄冥亀との攻防はまだ続きそうだ。