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最強の剣を求めて~Another Story~  作者: 遠浅 なみ
第4章 ケービヨン地方
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クヌキの祠 40層 ~ 玄冥亀(ゲンメイキュウ)との戦い ~

普段より早い時間にも拘わらず、例によって串焼き屋の響に立寄り、

通行人の邪魔にならないよう、所定の場所で食す。


その後、見慣れた街並みを適当に散策して時間を潰した。

明日のために用意する物は、無い。


以前リリから聞いた話では、

水系の亀のようなモンスターで

電気系の魔法で大ダメージを与えられる。


武器は電気属性魔法を400%強化する天雷の杖で十分だろうし、

MP回復薬も潤沢にある。


むしろクヌキの祠で入手した素材やらで、アイテムが溢れている。

時間はあるので整理して、ギルドの精算コーナーで多くを売却した。


そろそろ集合時間の8時が迫っていた。

外へ出ると、ララリリ姉妹が待っていた。


「あら、昨日と違うぁね。」

こちらに気付いたララの一言にハッとさせられた。

昨日は40層への階段が見つからずイラっとしていた。


「やっぱり?」

「まぁずっと眉間に皺を寄せてぇば、流石にね。」

「ええ。その様子だと進展があったようデスね。」

「40層へ辿り着いたよ。明日挑戦してみる。

確か電気系統の魔法が効率良いんだよね?

二人はどうやって攻略したの?」

「ひたすらブン投げて倒したかしぁ。」

「それで倒せてしまったお姉さまは素敵デス。」

「あぁたは何十本も武器駄目にしちゃったもんね。」

「お恥ずかしい限りデス。」

姉のララはボスを投げて倒し、

妹のリリは何十本の斧を犠牲にして倒したのか。

ん~、参考にならん。


ニャルマー、パワルドも集合し、

越川へ帰るため停めている馬車へと向かう道中、

明日40層のボスへ挑戦することを伝えた。


ニャルマーは羨ましそうにしていて、

パワルドはジェラシーを感じていた。


「あれよあれよと追い抜かれちまったな。」

パワルドは32層周辺でレベリングする必要があったが、

俺はその必要はなく、次の層への階段を探すだけだった。


「パワルドは現状どうなの?」

「36層にいるけど、まだまだキツイ。

とてもじゃねぇけど、ボスに挑むのは無謀だな。」

厳しい顔で2度横に首を振り、

置かれている状況を冷静に分析していた。


36層ということは大体ベースレベルは80前後か。

一段とレベルが上がりにくくなっているはずだ。

それでもまだ諦めているような目つきではない。


「急ぐこともないし、着実にやってこうよ。

刻印を得ても、召喚獣のレベリングとかやる事あるし。」

「急がねぇけど、早めに追いつくからな。」

複雑な気持ちを押し殺し、ニヤリといかにも

作り笑顔で返してきた。


少し離れてララリリ姉妹と歩いているニャルマーも、

俺とパワルドの話を聞きながら、

早く40層に到達しなきゃと心に決めた。



【7月7日】

クヌキの祠 40層


朝一、転移陣から40層に来た。

右手には帰還陣があり、背後には39層への階段がある。


そして、目の前には3メートル程の高さの重厚な扉がある。

中に入ればボスである大型の亀が出てくるのだろう。


 ギギギギ

意を決して扉を開け、周囲に低い軋む音が響き渡る。


 コツ、コツ、コツ・・・

大きな部屋の中に入り、5歩、6歩と進む足音が響く。


 ギギギギギー、バタン!

背後の扉が自動で閉まり、部屋の中央で魔法陣が淡く光り始めた。


『余は争いを好まぬ故、先に行きたければ奥の階段へ進め。』

俺の背丈より高い黒い亀が現れ魔法陣は消えた。

そして、頭の中に低く年老いた声が響く。

所謂、念話ってものだろう。


黒い大亀は道を譲るかのように、右へゆっくり移動した。

戦うのがヤダって道を譲るボスって・・・


「玄武の刻印ってのが欲しいんだけど。」

『ほう。何故なにゆえ?』


先ほどまでとは打って変わって、興味深げに見てきた。

「大蛇の結界の中に入りたい。」

『うむ。さすれは、余に、

この玄冥亀ゲンメイキュウに其方の力を示せ。』


突如、玄冥亀は殺気を放ってきた。

そして、何か液体を吐き飛ばしてきた。


すんでの所で躱す。

酸っぱい匂いが立ち込める。

アシッドボムってやつか。


カサーナの剣を装備して間合いを詰める。

正直良い剣を使って、駄目にしたくない。

千日鋼で作られている量産品の剣で玄冥亀の首を狙う。


直瀑斬チョクバクザン!」

飛び上がり、剣を真上から真下へと一気に振り下ろす。

が、首を引っ込められ、空振りに終わる。


そして、着地と同時に一回転して勢いをつけて甲羅に斬撃を加える。

  バキィンー!

甲羅に少し傷が入った。

カサーナの剣がひん曲がった。


「あちゃ~・・・」

ちょっと、リリの気持ちが分かった気がする。

折れ曲がった剣をアイテムボックスへ戻しながら距離を取る。


玄冥亀は首を出し、紫色の霧を周囲一帯に吹いた。

「ッチ、毒か。」

咄嗟に口を抑えたが、毒状態になってしまった。

この霧が収まるまで解毒しても意味がない。

目をショボショボさせながら、

ケービヨンナックルを装備した。


ケービヨンで製作される量産品は

街から北西の場所でとれる霞ヶ石をベースに作られている。


玄冥亀の横に回り、連続で拳を繰り出した。

「爆裂拳!」

硬い、硬すぎる。

ララの投げ飛ばしたくなる気持ちは理解できる、、、

が、この巨体を投げ飛ばすのは無理だろう。


そんな事を思いながら、足の裏、特に踵を意識して

最後に全力で前蹴を咬ました。


甲羅に閉じこもった玄冥亀は勢いよく壁に飛んでいき、

何度か跳ね返ってこっちに向かってくる。

まるで摩擦係数が0であるかのように、速度が落ちない。


「ファイアボール!」

気が動転して床にバウンドしてから当たった。

ダメージは入っていないみたいだ。


「メットかっ!」

とある赤い服を着た配管工のおじさんが

出てくるゲームを思い出し突っ込んだ。


あの配管工のおじさんの様にハイジャンプで

向かってくるメット、もとい玄冥亀を踏めば止まるのか。

いやいや、2メートルはあるぞ。

無理だろ!


 ♪テレッテ、テレッテテン ♪

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