かじられ青リンゴの大逆襲6 ~ もう1つの光柱 2時50分と黒タイツ ~
ゆっくり左に傾いてから転がり始めたデカモンは
ユピレスの所で止まった。
視界から抜けたブレイバーズは
認識外という事だろうか。
転がり終えたデカモンは目を回している。
「チャンスタ~イム!
からの~、いきなり玄武雷刻黒拳!」
そしてもう1発、同じようにぶちかます。
続けて3発目を繰り出そうとしたら、
デカモンの意識が戻ってしまった。
「おいおいおい、もう終わりかよ!」
転がった距離が短かったので、
前よりチャンスタイムは短かった。
デカモンは口をもごもごしている。
それでもぎりぎりまでダメージを稼ぐ。
「ブブブブブブ、、、、ブブブブブブ、、、、」
間隔を開けたのでマシになった。
デカモンは2度ジャンプをしながら、
右の方へ回っていく。
「あれっ・・・?」
次の瞬間、ブレイバーズめがけて
一直線に転がり始めた。
フィアスタとフォースンは難を逃れたが、
セカンディーノとサーディーがそれぞれ
右と左に弾き飛ばされた。
フィアスタはセカンディーノの元に駆け寄り、
ゆっくりと回復薬を飲ませる。
サーディーは朦朧としながら自身にヒールをかけている。
フォースンはそんなサーディーを
荷物であるかのように雑に担ぎ、
戦線から離れる。
デカモンからは大分離れてしまった。
ユピレスはブレイバーズを気に掛けることなく、
デカモンへ駆け寄る。
そして俺たちも、走り近づく。
「マズい!」
デカモンは口をもごもごし始めた。
パワルドと共にフィアスタ達の前に立つ。
俺はバリアを、パワルドは盾を構える。
ニャルマーとララリリ姉妹は俺達から
大きく離れる。
一か所に集まれば、また集中的に狙われる。
判断は、正しい。
「ブブブブブブ、、、、ブブブブブブ、、、、」
左から右、右から左へと吐き出される種攻撃を防ぐ。
「恩に着る。」
フィアスタは回復したセカンディーノと立ち上がり、
軽く頭を下げた。
デカモンは2度ジャンプする。
先ほどの状況を教訓に、全員ばらける。
弧を描くように転がったデカモンは
例によって目を回している。
「チャンス!」
殴る、殴る、殴る。蹴る、蹴る、蹴る。
時折、玄武雷刻黒拳。
ヒット&アウェイでダメージを稼ぎ、
途中からサーディーとフォースンも復帰する。
「グギャァァーーー!!!」
1時間程要したが、漸くデカモンは魔素へと還った。
「ふぅ~、やっと終わったな。」
パワルドは右手を顔の高さに挙げながら
近づいてきた。
「お疲れさん。」
パチンとハイタッチする。
【討伐ランキング発表!】
第5位 ララ
第4位 リリ
第3位 フィアスタ
第2位 セカンディーノ
第1位 なおと
「流石兄貴だな。」
ランキングを見たパワルドは尊敬の眼差しを向けてくる。
----------------------------------------------------------------
【RESULT】
ダメージポイント +1710Point
テクニカルポイント +103Point
討伐ポイント +80Point
獲得ポイント +1893Point
トータル 5797Point
----------------------------------------------------------------
玄武雷刻黒拳を何度も使った分、
ダメージポイントは大きく増えた。
討伐ポイントは時間がかかってしまったので、
減っているけど、差し引いても獲得ポイントは前回より多い。
「もう、疲れたぁ。」
うんざりした顔のララを中心にリリとニャルマーも合流した。
「ご苦労さん。周囲も減ってきたろうし、
切りの良い所で終わろう。」
一仕事終えてすがすがしい表情のユピレスは
ブレイバーズと共に声を掛けてきた。
そして、先ほどのデカモン戦を振り返っていた。
「ね、ねぇアレ・・・」
まるで幽霊でも見たかのように青い顔をしたニャルマーが
ケービヨンの街の方角に人差し指を向けた。
「ん?」
ゆっくりと皆の視線の先が同じになる。
「あ゛あ゛あ゛っ・・・」
「クッ・・・」
「おいおい、マジかよ。」
「マジか・・・」
全員愕然とした。
紫のオーラが光っている。
「さっきまで無かったよな。」
「多分。」
引き攣った顔のパワルドに答える。
「悪いが、現地へ急行してくれ。
他のパーティーに声を掛けたらすぐに向かう。」
ユピレスは近くで戦闘をしているパーティーの
元へと走っていった。
「急ごう。」
ブレイバーズと共に紫のオーラを放つ光柱まで
かじられ青リンゴを無視してすっ飛んで行く。
紫色の光柱は外壁の手前の
開けた場所に建っていた。
「凡そ1時間半後か・・・」
「2時50分って事だな。」
隣にいるパワルドは、残り時間から時刻を算出した。
「ねぇ、あの黒い布は何だろ?」
光柱内のタイマー付近で引っかかっている2つに分かれた
帯状の布をニャルマーは指した。
「どぇ?ん~~、タイツ?かしぁ?」
見えなくもない。
だが、答えたララも何でこんなところにと
不思議そうに首を傾げている。
「あの中では手出しできない以上、何もできませんし、
それより、周囲のアレ減らしといた方が良さそうデスね。」
ブレイバーズは既に近くのかじられ青リンゴと
戦闘を開始している。
リリに促され、俺たちも付近のかじられ青リンゴを倒し始めた。
2時49分。
光柱の前には、俺達とユピレス、そしてスプリングハールの
メンバーしかいない。
ここで向かう途中、今後同時刻でデカモンを相手する
ケースを考え、この組み合わせになった。
念のため、ブレイバーズも付近で警戒に当たっていて、
ヤバイ時には直ぐに駆けつけてもらう手筈になっている。
これは飽く迄保険。
このメンバーで倒す。
でなければ、同時に出た時に対応できなくなる。
その事はスプリングハールも十分理解し、
彼らから緊張感が伝わってくる。
俺自身も3回目のデカモン戦になるが、
カウントダウンが進むにつれて、
心音は高まっていく。
張り詰めた空気に、離れた場所での戦闘音が
かすかに響く。
10、9、8、7、
光柱内のかじられ青リンゴが魔素に分解され、
渦を巻きながら中央に集まっていく。
先ほど見つけた黒タイツらしきものも、
その流れに乗って渦へと飲み込まれていく。
じっとその様子を眺める。
残り1秒。
眩い光が周囲を包む。
「ギャァァァァ!!!」
前回と同じように、デカモンが姿を現した。