かじられ青リンゴの大逆襲2 ~ スプリングハールのリッシュ、ウースイ、ケイチツ、シュンブ ~
「ウインドカッター!」
まずは反応の右手側かじられ青リンゴに放つと、
ニャルマー、パワルド、ララ、リリと飛び出した。
ディフェンスダウンを掛け、
もう片方の反応にもウインドカッターを放つ。
続けてディフェンスダウンを使うと、
右手側のかじられ青リンゴに斬撃を与えたニャルマーが
此方へ回り攻撃する。
かじられ青リンゴは小石大の種を無数に飛ばし、
盾でガードし1歩後ずさりしたニャルマーへ体当たりした。
そのまま俺の方に駆け寄ってくる。
もう1発ウインドカッターを唱えながら俺も駆け寄る。
そして、勢いをつけて突っ込んできたかじられ青リンゴを
右手に杖を持ったまま思い切り蹴り飛ばした。
パワルドの指導のお陰で、今まで以上にキレがある。
少し先の木まで飛ばされたかじられ青リンゴは
木にぶつかった衝撃でフラフラしている。
「てぇぇぇいっ!」
「だああああああ!んん どぉりゃああ!」
ニャルマーがすかさず斬撃を与え、
此方に来たパワルドが右左、右左と連続して拳を突き出した後、
両手を上にあげてタメを作り背筋を反らし勢いよく叩き下ろす。
真面に喰らったかじられ青リンゴは地面に尻を付け、
パワルドはバックステップで距離を取る。
「てりゃぁぁ!」
ニャルマーが頭上から振り下ろした斬撃で
漸く魔素へと還った。
ピロリン!ピロリン!
2つ分の結果が表示された。
「両方とも片付いたね。」
「みたいだな。にしても、良い蹴りだったな。」
隣に来たパワルドが背中をバンと叩いた。
「いてぇよ、全く。まぁお前のお陰だけどさ。」
「はぁ、駄目ね。パワーアップを掛けてみたけど硬いわ。。。」
一方でニャルマーは剣を鞘へ戻しながら
力の無さを嘆きながら近づいてきた。
「まさか躱されてシマウとは・・・」
「あぁただけが悪い訳じゃないわ。
あぁしも、抑え切れなかったし。」
ララリリ姉妹は先ほどの戦いを振り帰りながら
こっちに歩みを進め、俺たちも歩み寄った。
「やっぱ前みてぇにはいかねぇな。」
「種攻撃や体当たりが大して強くないのは救いね。」
かじられ青リンゴに突き飛ばされたニャルマーは
あまりダメージは受けてなさそうだ。
「とは言え、囲まれるのは避けたいぁね。」
「確かにララの言う通りだね。
まぁ今のところ近辺に反応は全くないけど、
上手く立ち回るようにするよ。」
「んじゃ、次行こうぜ、な。」
近くにいるかじられ青リンゴの状況を把握し
なるべく複数を相手にしない様に進めていった。
初日はかじられ青リンゴを50体近く倒し、
721ポイント稼ぐことができた。
【5月21日】
8時過ぎ、外壁の外へ出ると、
肉眼でも数体かじられ青リンゴを確認できた。
「あたし達が一番乗りね。」
ニャルマーは左右を見ながら
周囲に俺たち以外がいないことを確認していた。
「それに、かじられ青リンゴも昨日より増えて
こりゃ倒したい放題だな。ポイント稼ぎまくれるぜ。」
パワルドは腕をストレッチしていた。
「周りがいない分、囲まれるのは気を付ける必要があるぁね。」
「まぁ、囲まれないように誘導するよ。」
「昨日の様子だと、テリトリーに入らなければ
大丈夫でショウけど。」
ララの言葉に身構えていると、妹のリリがフォローしてくれた。
「お、早速来たな。」
遠くに見えても奴らはスルーするが、
適当に動いているので、俺たちが止まっていても
勝手にテリトリーに入ってしまう。
「ウインドカッター!」
昨日と同じように先制しディフェンスダウンを掛けると
パワルド達が一気に叩く。
既にパターンが出来上がっていた。
合間合間で小休止を挿みながら、午後も続けていく。
「何かあっちで助けを求める声が。」
ニャルマーは耳をピクピクと動かし斜め後方を振り返る。
「行ってみよう。」
ディテクトでは追えない範囲で、俺の耳には何も聞こえない。
だが、誰かピンチなのなら早く駆けつけるべきだろう。
俺の意見に賛同するかのように皆が頷いてくれた。
ニャルマーが指示した方向へ急ぐ。
そして、ディテクトで反応を捉えることができた。
反応は5つ。
更に、1体近づいている。
救援を求める声と武器がぶつかる音が
次第に大きくなっていく。
ディテクトの反応があった場所にたどり着くと、
かじられ青リンゴが6体、
それに若手4人の冒険者が苦戦していた。
パラルドたちはすぐに助太刀に入る。
若手4人へ誤爆する可能性があるため、
俺は山彦の杖からマテカの爪に装備し直し
乱戦の中に身を投じる。
最初は手持ちで一番強い玄武黒北の爪を装備しようとしたが、
悪目立ちしそうなので、この間手に入れたマテカの爪にした。
数的にも有利になった俺たちは
無事かじられ青リンゴ6体を倒した。
「このパーティ、スプリングハールのリーダーのリッシュだ。
助太刀、感謝する。」
鉢金を道つけた剣士がパワルドに手を差し伸べる。
「俺たちもポイント稼がせてもらったし構わねぇよ。
ちなみに、リーダーは俺じゃねぇけどな。」
パワルドはリッシュと手を握りながら俺に視線を送る。
「一応、ゴドロンっていうパーティーで
リーダーしてるナオトって言いま~す。」
お茶らけて言うと、リッシュは笑って首の後ろを掻きながら、
俺の所に来て握手し、それぞれ自己紹介した。
「あぁた達、最近になって見かける人達ね。」
「いやぁ~、もう1年以上ケービヨンの
ギルドに出入りしてるんだけど・・・」
リッシュは引き攣った顔で苦笑いしている。
「ん??」
ララはリリと首を傾げている。
彼女たちのキャリアからすれば1年は最近、
彼らからすると1年は結構前という認識何だろう。
「まさか雲の上のような存在のお二人に
助けてもらえるとは。」
「あぁし達、別に死んでないわよ。」
「お姉さま、尊敬しているとかそういう意味かと。」
槍を肩に背負うウースイを睨みつけるララを妹が諫言する。
「わ、わぁってるわよ、そんなぉ。」
「そ、そうですよねぇ。」
苦し紛れに作り笑顔でウースイは同調していた。
「今のでアイテムが手薄になったし、
一旦引き返そう。」
「俺も武器をメンテしたい。」
杖を持つヒーラーらしきシュンブが手持ちの状況を伝えると
斧の状況を気にしているケイチツもリーダーのリッシュに進言した。
「そうだな。
俺たちのレベルだと深入りは危険なのは分かったし、
今日は一旦切り上げよう。
もし、俺達で手伝えることができたら
遠慮なく声を掛けてくれ。」
スプリングハールのメンバーは出入り口を目指した。
そして、彼らとは反対側、丁度真後ろに
ディテクトの反応が近づいてきている。
振り返り、再度杖を装備して構えた。
スプリングハール(24節季より)
立春:リッシュ
雨水:ウースイ
啓蟄:ケイチツ
春分:シュンブ
多忙につき次回より当面の間、
8が付く日にリリースします。m(_ _)m
次回は2月18日(土)リリース予定です。