かじられ青リンゴの大逆襲1 ~ 唾を付ける、紳士協定 ~
「ウインドカッター!」
笹みたいな雑草に隠れて目視で確認できないが、
ディテクトの反応を手がかりに放つ。
所々生えていた雑草を切り倒し、木の間にいた
かじられ青リンゴにヒットした。
杖を装備せず咄嗟に放ったのでダメージはあまり入っていない。
「どりゃ~!」
姿を現したかじられ青リンゴにパワルドが左右と拳で追撃を加え、
止めとばかりに右足で蹴りつけた。
かじられ青リンゴはよろけたが、魔素には還っていない。
「てぇぇぇい!」
「うぉら~~~!!」
離れて駄弁っていたニャルマーが勢いよく走って近づき斬撃を、
そして小さな背丈には不釣り合いな大斧をリリが振りかぶって
今まで聞いたことのない野太い掛け声を上げながら真上から叩き切った。
ララが短剣で追撃しようとしたところ、
かじられ青リンゴは魔素へと還っていった。
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【RESULT】
ファーストアタックポイント +2Point
ダメージポイント +1Point
討伐ポイント +3Point
獲得ポイント +6Point
トータル 6Point
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ピロリンと結果が表示された。
「これがこの間話してたポイントってやつだね。」
ニャルマー本人がよく分かっていなかったので、
聞いてるこっちもチンプンカンプンで、
結局、『始まれば分かるんじゃね』ということで落ち着いていた。
「16ポイント、どうなんだか分からねぇな。」
「アタシなんか7ポイントだよ。
ダメージポイントが4ポイントで、討伐ポイントが3ポイント。」
パワルドとニャルマーにもポイントが表示されているようだ。
「俺はダメージポイントが13ポイントで、
討伐ポイントは同じ3ポイントだな。兄貴は?」
「ファーストアタックポイントってのが2ポイントで、
ダメージが1ポイント、討伐が同じで3ポイントでトータル6ポイントだね。
リリは?」
「ダメージが8、討伐が3、あとファイナルアタックポイント
というのが2ポイントで合計13ポイントです。」
「ちなみに、ゼロよ。あぁしは。」
ララが妹の後に取って付けたかのように続けた。
「最初と最後に攻撃した人が2ポイント、
んで、ダメージに応じてポイントが加算されるみたいだな。
討伐ポイントってのが、」
「倒すまでにかかった時間によって変わるはず。」
パワルドから視線を送られたニャルマーが答えた。
「今のは私達の攻撃が遅かったから、
次からはもっと早く倒せるカト。」
「あぁしは何もしてなかったしね。」
「俺もウインドカッターでちょっとしかダメージ与えてないしね。」
「いや、兄貴は今の感じでいいんじゃねぇか?」
「え、何で?」
ダメージを多く与えた人ほどポイントが高いからか?
それだと俺が・・・
「モンスターを検知したらまず兄貴が唾を付けてくれ。
そうすりゃ、他のパーティーは基本手出ししねぇからな。」
唾を付けるって・・・
言い方はアレだが、俺がウインドカッターでダメージを与えれば、
他のパーティーは基本参加してこない。
逆に俺たちも、他のパーティが手を付けた得物は横取りできない。
所謂、紳士協定ってやつ。
「表現は微妙だけど、意図は理解できるよ。」
「そしたら、一気に叩く。
これが一番早くて、効率も良いだろうな。」
「うん、いい案ね。それで行きましょ。」
パワルドの案を聞いて頭の中で算盤を弾いたララが受入れ、
リリとニャルマーも頷く。
前にも見たことがある光景。
こうなると俺が何を言っても数で押し切られる。
「ま、いんじゃね、それで。」
ダメージポイントは少なくなりそうだが、
異議はしなかった。
だが、やれることはやる。
山彦の杖を装備して、マジックアップで魔力を上げる。
「少し奥へ行こうか。」
まだ始まったばかりで、かじられ青リンゴの数が少なく、
どちらかというと取り合いの状態になっている。
ディテクトで反応があるものは、
パワルド風に言うと唾が付けられている状態なので、
外壁に沿って北上した。
「ウインドカッター!」
山彦が発動して、2つの風の刃が10メーター程前方にいる
かじられ青リンゴに向けて放たれ、同時に4人が飛び出す。
先頭のニャルマーが斬撃を加える前に、
「ディフェンスダウン」
で防御力を下げる。
そして、ニャルマーの斬撃、パワルドの蹴り、
ララが短剣でど真ん中に突き刺し、そのまま先にある
木まで「ぬぉ~~」っと叫びながら押して潰しにかかる。
止めに、サイドから回ったリリが先ほどと同じように
気勢を上げて大きく振りかぶり、真上から叩き切る。
かじられ青リンゴは魔素へと還っていった。
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【RESULT】
ファーストアタックポイント +2Point
ダメージポイント +7Point
討伐ポイント +6Point
獲得ポイント +15Point
トータル 21Point
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ピロリンと結果が表示される。
「あれ?ダメージポイントが意外と高い。」
「俺は逆に低いな。
討伐ポイントは6ポイントに増えたけど、
さっきより攻撃回数も少なかったから
ダメージが5ポイントになっちまったな。」
パワルドは攻撃数も減りポンとが減ってしまったようだ。
「アタシも討伐ポイントは6で同じね。
ダメージポイントは4でさっきと変わらないや。」
「ディフェンスダウンをかけてるから
多くダメージは与えてるはずだけどね・・・
もしかして、効かないのかな?」
「いえ、恐らくデスが、守備力が落ちて
ダメージが伸びた分は、術者へポイントが付されるのかと。
であれば、お二人の辻褄が合いマス。」
現状、補助スキルのレベルが68まで上がって、
1度かかれば17.4%防御力を下げれる。
確かにリリの考えはしっくりくる。
「どうしよう?使うのは拙い?」
他の人の攻撃分で稼がせてもらうことになるので、
申し訳ないので確認した。
「いいんじゃねぇか、それで。
結果的に早く倒せるなら全体的には有りだよな。」
パワルドの意見に他の3人も頷く。
「それじゃ、使ってくね。
おっ、そっちとこっちから来るよ。」
「2つ同時だな。よし。」
「当然、いくぁよ。」
ディテクトの反応を知らせると
パワルドとララに気合が入った。