【新年特別企画】Special Story ~ The Episode of Yupiles ~
あけましておめでとうございます。
本年も引き続きご愛読よろしくお願いします。
今回は特別企画で、ケービヨンの南のギルドマスタの
ユピレスのお話です。
113話前後のストーリーになります。
【3月19日】
ギルドの仕事はスタッフのお陰で、
俺が関わらずとも日々滞りなく進んでいる。
主な俺の仕事は面倒な客のお相手だ。
そして、今日もまた一人、面倒な男が執務室に来ている。
「あぁ、そういや今ゴドロンパーティーってのが来てるよな。」
話が終わり一度ソファーから立ち上がろうとした
ギルド本部のリーインフは再度腰を落ち着けた。
「すいません。はっきりとは存じ上げないです。」
っていうか、全く聞いたことないし、
ケービヨンに出入りしているパーティーが
どんだけいると思ってるんだよ。
まぁ滅多にフロアに出ないってのもあるけど。
「獣人の女と組んでいる男2人の、
一人はがたいがいいので、もう一人は魔法使いの。」
「その方たちがどうかされたんですか?」
懸命に説明しているのを知らないと無下にはできない。
話の内容を聞いといて、後で受付に聞いてみるか。
「悪いんだけど、暫く留まるよう調整してくれるか。」
「何かご事情でも?」
「ん~、大した理由じゃ無いけど、内密にな。」
リーインフはテーブルの上に乱雑に置かれた書類を
何度か手に取って見ては元の位置に戻していた。
「はぁ、内密ですか。」
「ん、これなんか調度いいな。」
掲示板へ掲載予定だった依頼書を差し出してきた。
「マテカ空間ですか。」
難易度は低いが、2週間拘束されてしまう。
「彼らなら問題ない。俺が保証する。
って事で上手く話進めといてくれ。」
「話てみますが、引き受けるかどうかは
彼ら次第ですよ。」
「うんうん。」
完全に空返事で聞いちゃいねぇな・・・
【3月22日】
「あの鬼人族の2人と一緒にいるのがそうですよ。」
精算を終え出口に向かう彼らを受付が教えてくれた。
「あの2人が誰かと一緒にいるのは珍しいな。」
「最近5人で活動してるみたいです。」
「へぇ~。」
ギルドから出る5人を見ながら2度頷いた。
ゴドロンとかいうパーティーは知らんが、
あの2人が依頼を受けるのはアリだ。
いつも何かと理由を付けて断られてしまうからな。
5人で受けてもらえるよう段取るか。
【3月27日】
ミーティングから自室へ戻ろうと歩いていると、
丁度良かったと言わんばかりに報告書を渡してくる。
「後で確認しておくよ。」
「よろしくお願いします。」
一礼した事務スタッフの後ろに、ゴドロンパーティーの
リーダーがテーブルに腰掛け居眠りしているのが見えた。
あ、話するの抜けてた。
部屋からマテカ空間の依頼書を持参し、
彼の寝ている対面に座り、報告書に目を通し始めた。
大分お疲れのようだし、起こすのも何だからね。
暫くすると、彼のパーティーメンバーがやってきた。
鬼人族の2人とも仲が良さ気に話している。
程なくして俺の視線に気づく。
簡単に自己紹介をした後、マテカ空間の件を話した。
彼らは興味を持ってくれたし、
あとは鬼人族の2人も乗ってくれれば御の字なんだが。
つい視線が彼女たちの方へ行ってしまう。
何度か視線が合うと、彼女たちは俺の思いに気付いたのか、
一緒に行くことを申し出てくれた。
よく分からんパーティーより、
実力を知る彼女2人の方が信頼が置ける。
ホッとしたのも束の間、鬼人族の痛い視線が突き刺さる。
約束も取り付けたし、さっさとずらがらせてもらうかな。
【3月31日】
夕方になるとここ最近バタつく。
今日こそはあのパーティーに話をしなければならないのに、
急遽支社からお呼び出しだ。
支社ってのは、ケービヨンにある3つあるギルドのうちの1つで
ここ南のギルドから歩いて30分程で街の中央にあり、
本部の機能を有している。
ケービヨンの3人のギルマスと、
ギルド本部の3人で打合せが続く。
終わった時には、夜9時を回っていた。
「まいったなぁ~・・・」
「どうした暗い顔して。」
今しがた打合せで同席していたリーインフが声を掛けてきた。
「例のマテカ空間の件、彼らに詳細伝えてないんですよ。」
「でも、約束はしたんだろ。だったら大丈夫だろ。
それより、明日朝一でカリイニットへ戻るから同行してくれ。」
「あの~、人の話聞いてます?」
「お前の部下が何とかするだろ。」
「ならなかったら?」
「それはお前の教育が悪い。」
「はぁ・・・」
溜息を吐き、もうどうにでもなれと思った。
【4月7日】
カリイニットでの用件が済み、朝一で出発する。
「なぁ、ちょっと強引だったのは反省してるから、
そう何度も愚痴るなって。」
事あるごとに『鬼人族にどやされる』と嘆いていた。
リーインフはゴドロンパーティーの3人だけが
マテカ空間へ行っていると勘違いしていた。
カリイニットへ行く道中に鬼人族の2人も
同行していることを知り、その後は恐縮しきりだ。
「これで彼らの機嫌を取ったらどうだ。」
丸菱デパートの優待券を5つ渡してきた。
この人がくれるものは大概丸菱関連のものだ。
丸菱の回し者かよ。
「これで納得してくれますかね・・・」
「それはお前のコレ次第だろ。」
右手を口の近くに持ってきて、喋るジェスチャーをしている。
「もう、分かりましたよ。」
「悪いな。そうそう、俺が糸引いてる事はくれぐれも内密にな。」
お気楽なリーインフはここに残る。
戻るのは、俺だけ。
乗合場所まで1人で歩く。
ふと立ち止まり空を見上げ呟いた。
「はぁ、中間管理職って・・・」
次回は本編に戻り、1月11日リリース予定です。