マテカ空間11 ~ サンガティーンのチェンセン、そして遺跡とXYZ ~
30分ほど道形に進むと、集落が見えてきた。
パッと見でも、シューニャやエクーより大きい。
そのまま村の中へ進むと、俺たちに気付いた人が
村長宅まで案内してくれた。
ニイズドーでは俺たちの気配を感じるとスッと隠れてしまい、
バイドレッド村長以外とは話すことは無かったが、
案内してくれた彼はフレンドリーだった。
「此度は遠路はるばるご足労頂き御礼申し上げます。
小生はこの村の村長をしているチェンセンと申します。
立ち話も何ですので、コチラへお上がりください。」
今まで会ってきた人と見た目では判別しにくいが、
声は若い男で、畏まった話し方をする人だ。
村のあらましと今回の目的地となる
遺跡までのルートについて説明を受けた。
「あの、1つよろしいでショウか?」
話が一段落したタイミングで、
リリが確認したいことがあると手を上げた。
「どうぞ、何なりと仰ってくださいませ。」
「この先にも村がアルのに、何故ここが最後なのでショウ?」
村長から許可を得て質問したリリの言っている
意味がよくわからない。
ニャルマーとララも頭の上に?マークが出ていたが、
パワルドだけは「確かに。」と意味を理解していた。
あの分厚いファイルに書かれているのだろう。
「その件でございますか・・・」
村長の声のトーンが落ちた。
そして、一呼吸置き話を続ける。
「確かにこの先にチャールという村がございまして
近くの廃城にモンスターが住み着いております。
ただ、倒せないのがいるそうです。」
「パスコードが解けないってことだろうな。」
腕組みしながら聞いていたパワルドが見解を述べる。
「結界内の事は小生には分かりかねますが、
ここを旅立ったその日のうちに
シュンとして戻ってこられるのです。」
「ふぅ~ん、むしろ面白そぉじゃない。ねぇ。」
不敵な笑みを浮かべるララは強引にリリへ同意を求める。
『いや、お前計算しないだろう。』と心の中で突っ込むが、
怖いので口にはできない。
「そそられる部分はありマスが・・・」
困りつつチラリと俺を見るリリ。
「まぁ1日ロスする覚悟で行ってみるのもありかもね。」
「ダメもとで行って倒せたらスゲーし良いと思うな。」
「皆様がそう仰られるのであれば、お止めはしませんが・・・」
村長はまた同じ流れなのかと諦めていた。
倒せないモンスターがどんなものか気になりつつ、
サンガティーンの遺跡へ向かった。
「なんだこれ、古びたゴーストタウンじゃねぇか。」
かつて栄えていたであろう街並みの入口でパワルドは立ち止まった。
石造物は原型をとどめているが、人が住んできたと思われる木造の建物は、
辛うじて家としての形を留めているものはごく一部で、
大半は天井が落ちて柱がむき出しになっていたり、
柱も朽ちて折れているものばかりだ。
「遺跡と呼ぶにはまだ時間が必要な感じだよね。」
「結界の影響で朽ちる速度が遅いのかもしれマセンね。」
「ねぇ何かいる?」
ニャルマーは耳をピクピクさせて前方を指した。
「んじゃ、やるかな。」
パワルド、ニャルマー、ララが数歩前に出て構える。
あれ~、ニイズドーと同じ流れだ~と思いながら、
ディテクトでモンスターの位置を探る。
反応は3つ。
エンカウントしたのは5x、Zっぽい何かに乗っているヨンナノ、
そして単なるハチジャナイ。
「5x + 4z + 8」
リリがパスコードを言うと、3人が一斉に攻撃を仕掛けた。
マテバリアは無事に解除され、3体とも魔素へ還った。
「もう1組近づいて来てるよ。」
ディテクトで反応があった3体が飛び出してきた。
Yの形をした何かを傘の様に持つサンジャナイ、
Zっぽい何かに乗っているニデアル、そしてリチギナイン。
便宜上、3y、2z、9としよう。
「5x + 3y + 、、、6z + んとぉ 17」
リリは一人で頑張ってマテバリアを解除し、
3人が攻撃を仕掛けた。
「ねぇ、大丈夫?」
リリは泣きそうな顔で首を横に振った。
「そうだよね・・・」
いずれ3桁になり、4つとか絶対無理だ。
モンスターを倒し終わった3人は何やら話合いをしていた。
リリと共に3人に近づく。
「あのさ、ちょっと相談があんだけど。」
「計算担当の事だよな。」
ニャルマーとララに目配せしたパワルドが答えてくれた。
「そうなんだけど、これ2人じゃ厳しいと思うんだよね。」
「ええ、確かにリリも大変そぉだったし十分分かぅわ。」
何故か理解の早いララ。
「x、y、z、計算担当は4人いた方が良いよな。
モンスター自体は1人でも対処できるし、
今日はニャルマーお前がやったらいいんじゃねぇかな?」
「わぁしは、数字だけの部分をやぅわ。」
「そ、そうね。私一人でも大丈夫。任せて。」
「よし。じゃあ、兄貴がx、俺がy、でリリがzでいいな。」
「1つの数字だけ対処するなら何でも構イマセん。」
「何かやけにすんなりと。ん、あ。」
倒す担当を3人で持ち回りにする気か。
隣のリリを見ると全く気にしていないようで、
既に3人はニマニマしながら歩き始めていた。
「はぁ、もういいや。。。┐('_')┌」
「903x」
「プラス876y」
「プラス928z」
「プラス1068」
パスコードを解除されたモンスターをニャルマーが倒した。
「ふう。これで終わりね。」
ニャルマーの目には入り口が映っていた。
俺のディテクトにも反応はない。
「もぉ、何で私だけ千越えなぉよ。」
「まぁまぁ、お姉さまこればっかりは仕方ないデスよ。
ご自分で先に選んだのデスから。」
「んんん・・・」
リリの正論にララは膨れて何も言い返せない。
「お、大量だな。」
アイテムボックスのマテカ結晶の数を見て
パワルドの口元は緩んでいる。
「500以上稼げたね。」
「わぁしが一番頑張ったかぁね。」
歩きながら数を確認していると
先ほどまで嘆いていたララが自慢気に隣に並んだ。
「一度も間違えなかったし、凄いよね。
お疲れ様。」
「うんうん。もっと褒めてよし。」
「お姉さまは私よりも計算得意デスから。」
「え、そうなの?」
「何、意外そうな顔してぅのよ。
ちょっと失礼じゃない。」
「いや、リリがずっと計算担当だったからね。」
「ただ面倒臭がりなだけデスよ。」
「ああ、納得。」
「そりゃ納得だな。」
「っぷぷぷ。」
先頭を歩いているニャルマーは
聞き耳を立てながら噴き出した。