マテカ空間3 ~ シューニャの村長、リンレイからの説明 ~
全員が座卓の前に立つと、
「どうぞ、お座りください。」
と促された。
よく見ると絨毯には椅子の跡がある。
俺たちにとっては旅館にある様な座卓だが、
ここの人たちにとってはテーブルなんだろう。
「此度は遠路はるばるお疲れさまでした。
私はこの村の長を務めておりますリンレイと申します。
いつもでしたら正しい使者様の数のお告げがあるのですが、
今回は1名様~4名様の使者様がお越しになるというお告げでして、
大変失礼いたしました。」
リンレイはおかしいなぁと疑問に思いつつ頭を下げた。
「あっ!」
俺はふとマテカ空間へ転移するときの事を思い出し声を上げてしまった。
あの時、ファイルを奪ったララが先に転移し、
その後、時間をおいて俺たちが4人で転移した。
転移陣もしチャラく言ったら『1名様か~ら~の~4名様』か。
転移陣やお告げがチャラいかは知らないけど。
であれば、人数の誤差原因は彼女か。
顔を上げて、目の前にいるララと視線が合う。
「あぁ、なるほどな。
ってことは、、、まぁいいやもう。」
俺の視線がララに向かったのを見てパワルドも同じことを考え、
人力車の件を言いかけたが、途中で止めララを見た。
「ちょっと何ぉ。」
2人の視線を感じたララは少しイライラし始めた。
「なるほど、そういう事でシタか。」
「ちょっと、何なぉ。もぉ、怒らないから私にも教えなさい。」
ララは隣に座っているリリの袖を強引に揺さぶっている。
怒らないって言っているけど、既に怒っている気が。。。
リリが耳元で説明すると、ララの顔は徐々に紅潮し始めた。
「そんぁ事言われたって、知らないわよ。フン。」
結局ララは不貞腐れてしまった。
「お告げの件なんですけど、どうやらウチラにも
原因がありそうなんで、気にしないでください。」
「良く分かりませんが、使者様が納得頂いているのでしたら。」
リンレイは腑に落ちない部分はあったが、
こちらの責を問われないことに一安心した。
「それで、私たちは南と北の森のモンスターを
減らせば良いんデスよね。」
「左様でございます。後ほど森の手前までご案内差し上げます。
森にはモンスターが村を襲わない様に結界が張られているのですが、
我々は立ち入れない取り決めになっていまして。
そこでお願いなのですが、モンスターを倒した際に得られた
マテカ結晶をお譲りいただけないでしょうか。
もちろん報酬もご用意しております。」
取り出されたリストには、マテカの剣や槍などの武器、
兜や盾などの防具が500個となっており、
仕様も記載されていた。
武器に関しては、ランダムな属性付与+500%が
発動するらしい。
つまり、攻撃の際に風、火、氷、土、電気、聖、闇の
7属性のうち1つの属性が付与されるという事か。
使い勝手は微妙な気もするが、
入手していない装備品なので手に入れたい。
それ以外にもアイテムがあり、
1個100ゼニーでも引き取る事になっていた。
「これは他の村でも共通デスね。」
事前にファイルを読んで知っていた情報を
リリは念のため確認した。
「はい、他の村でもマテカ結晶は入手可能で、
報酬は同じです。
なので、どこの村で変えても差はございません。」
「ここに書かれている内容と相違ないデスね。
それとは別にもう1つお聞きしたいのですが、
パスコードって何かご存じデスか?」
どうやら分厚いファイルを読んでいても見つからなかったらしい。
5人の視線が、リンレイに集まる。
「パスコード?はて・・・?」
首を傾げながら同席しているワンヤオへ視線を送る。
「いやぁ、アッシも知りませんですぁ。」
「もうこうなったら現地で色々試すしか無いね。」
「ああ,それしかねぇよな。」
パワルドは落胆しつつも、賛同してくれた。
「これもそれも、アイツが説明するって言って
しなかったのが悪いぉよ。
戻ったら絶対締めぅわ。」
「お姉さま、」
おおリリ、姉を止めてくれるくれるか。
「私もお手伝いいたしマスわ。」
あちゃ~、もう俺知らんわぁ~ ┐(~.~)┌
村長は俺たちの雰囲気に戸惑いながら、
この村の概略、滞在期間中この部屋と隣の部屋を使って良いこと、
そして、隣町のエクーまで3時間程掛かることを教えてくれた。
「4日の朝一でしたら、アッシらが送ってけまっせ。
30分少々で着きますが、どうしやす?」
「そうすると、今日入れて3日か。大丈夫かなぁ・・・」
「今回の依頼って、数を減らすことだから
適当な所で良いんじゃない?ねぇ。」
3時間も歩きたくないニャルマーは、
他のメンバーにも同意を求めた。
「あの、全部倒されてしまうと私たちも困るのです。
マテカ結晶は我々にとっては必要なものなので。」
なるほど、ここにいるモンスターも貴重な資源で、
増えすぎても困るし、いなくなっても困る。
適当な塩梅でってとこか。
「でしたら、それでお願いします。」
ワンヤオの申し出を受けることにした。
一旦休憩を挿み、南の森へと案内してもらった。
ワンヤオは休憩時に
「すいやせんが、アッシはこれで。」
と退出した。
森と村との境目は、ガードレールの様に木で仕切られている。
低いように思ったが、ここの住人の身長を考えると
十分な高さなのかもしれない。
出入口は鎖で巻かれ南京錠で止められている。
中に入る人はいないが念のためということらしい。
次に北の森へ案内してもらう。
道形に進むと、5分位で先程と同じ様に
森と村が区切られていた。
リンレイは南京錠の鍵を開けて鎖を外した。
「私どもができるのはここまでです。
鍵は次の村に行くまでお預けします。」
北と南の南京錠の鍵を受け取り、森の中へと入った。
村の人は入れないはずなのに、5人が並んで歩ける道が
不思議と整備されているが、マーイーカ。
ディテクトを使い周囲を探ると、
少し先の右の茂みに何かいることが分かった。
「シッ!何かいる。」
立ち止まり臨戦態勢に入ると、ヨンナノが現れた。
「なんだ、雑魚じゃねぇか。」
パワルドは1撃で倒した。
「その先にもいる。」
今度は左側を示すと、ララは駆け寄り短剣を振った。
出てきたのはεの形をしたサンジャナイ。
ただ今まで見てきたのとは異なり裏表が逆、
つまり3の形で出てきた。
ララの攻撃は何かにはじかれた。
「な何なぉよぉ~」
パワルドは追撃を加えると
あっさり倒した。
「なぁ、どうしたんだ?」
パワルドは、短剣を右手から左手に持ち替え、
右手の痺れを取るかの様に振っているララに尋ねた。
俺たちもララの元へ駆け寄った。