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最強の剣を求めて~Another Story~  作者: 遠浅 なみ
第4章 ケービヨン地方
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初めてのクヌキの祠 ~ ニャルマーとアングリーラビットのラビ ~

【クヌキの祠】

川越の観光名所の1つである喜多院にある苦ぬき地蔵尊。

願掛けすると、苦しみを取り除いてくれるらしい。

【2月25日】

今日から5人でクヌキの祠に行く。

「今日から暫くはクヌキの祠だな。」

ララの運転する馬車に乗り、パワルドは外を見ながら呟いた。


「ねぇ、どんな所なの?」

ニャルマーは隣に座るリリに祠のことを尋ねた。


「祠は丸菱デパートから少し先に行った所にアッテ、

人通りも多く、ギルドとの行き帰りは比較的安全デスよ。」

「あたし達が今まで行った事があるコマアールの社とか

千日の塔と違う感じね。」

「特に千日の塔はカサーナから離れてるし、危険だったよな。」

「その最も危険な時に、誰かさんは居なかったけどね。」

「あはは、兄貴はよく覚えてるな。」

「いやいや、あんなヤバかった事、忘れる訳ないよねぇ。」

ニャルマーが同意を求めるかのように俺に振ってきたので、

「そうそう。」と頷き返すと、パワルドはバツが悪そうに詫び、

その光景を見ていたリリは楽しそうにしていた。


「で、肝心の刻印はどうなのかな?」

パワルドの質問にリリは一度軽く頷くと知っている事を教えてくれた。


刻印が得られるボスは40層にいて、

効率よく戦うのであればレベル85程で倒せるだろうとの事だ。


というのも亀のような水系のモンスターで動きは遅く攻撃力は低いが、

守りが堅く打撃や斬撃などの物理攻撃はあまりダメージを与えられない。


一方で、電気系の魔法は大ダメージを与えることができる。

パワルドとニャルマーは長期戦覚悟で物理攻撃でいくか、

魔法スキルを上げてから臨むか悩んでいた。


ゲームでは白虎の刻印と異なり、必須と言う訳では無く

どちらかというとやり込み的な要素が大きく、スルーしたユーザーも多い。

俺もここはスルーしてフィンファングでのポスリメン討伐に参加していた。


ケービヨンに到着し、昨日と同じ場所に馬車を留め、

丸菱デパートの前を通り過ぎる直ぐに祠があった。


中には、コマアールの社にあったダンジョンと同様に

転移陣があって順番に乗った。

残念ながら転移できる先は1層しかない。


1層。


数メートル程歩くと、目の前に舌をベロンベロンとしているベロンチョと

のっぺらぼうのノッペランが現れた。


今は手ぶらで何も装備していないが、ウインドカッターで2体とも片付ける。

わざわざ杖を装備して魔力を上げる必要もない。


当然ながら浅い層では、弱いモンスターしか出ず、

レベル上げにもならないので、次の層へ進む。


目指すはボスがいる40層といったところか。

「そうだ、こういう時こそアレを使おう。」

ヒワディーア山の管理人であるクリッピノさんが作ってくれた

お守りを取り出した。


耐異常だけでなく、少し魔力を込めることで雑魚モンスターが

近づいてこなくなる便利なアイテムだ。


モンスターの出ない中、早歩きで次の層への階段を探した。

夕方6時過ぎ、4層へ到着し切りが良いので外へ出た。


集合は8時にギルド前なので、まだ時間に余裕がある。

ララ姉妹は午後早い段階で切り上げて丸菱デパートに行くと言っていたし

俺もケービヨンの街中を散策しながら帰る事にした。


8時少し前、女性陣はギルドの横で待っていて、

パワルドが後ろから走って来た。

「間に合ったかな?」

「ギリ、セーフ。」

ステータスの時計は『19:57』だった。


「さ、早く行きぁしょ。」

ララは俺とパワルドが合流するとすぐに、

機嫌が悪いのかスッと歩き始めてしまった。


「なんか奇異な視線を感じたような・・・」

振り返りギルドの入口付近にいる冒険者をパワルドは見ていた。


俺も振り返ってみたが、数人の冒険者がギルドから去る姿しかなく、

パワルドと目を合わせ、なんだったんだろうと首を横に傾げ、

いつもより早いペースで歩くララ・リリ姉妹を追った。


「はぁ。」

リリの運転する馬車が動き始めると、ララが大きく溜息を吐いた。

「どうしたんだい?」

「さっきギルド前にいた連中が、コソコソと陰口を叩いてたぉよ。」

先ほどパワルドも感じていた視線だろう。


「はっきりとは聞こえなかったけど、

アタシ達の事も良くは言ってなかったよ。」

獣人で人より優れた聴力の持ち主であるニャルマーが耳を動かした。


「なるほどな。まぁ一緒にポスリメン討伐をしようって訳じゃねぇしな。」

「そうだね。取り敢えず何かアクションがあるまでほっとこうか。」

「一応、今まではちょっかい出さぇることはなかったけど、

もし、何かさぇたら絶対私に言って頂戴ね。」

ララは俺たちの事を心配してくれた。


「あっ、そうだ!」

暗くなったムードを打ち破るかのようにニャルマーがポンと

1度手を叩いて、明るく声を発した。

「今日ね、アングリーラビットをテイムしたの。」

「早速凄いじゃんか。」

なかなかテイムできないのに、大したもんだ。


「折角だし、召喚してみぇよ。」

「え、ここで?大丈夫かなぁ・・・」

「大丈夫よ。ペットにもなってるくぁいだし。」

ララが興味津々に頼むと、ニャルマーは心配になりながらも召喚した。


「ラビ!」

ニャルマーの膝の上に、怒った顔のラビットが出現した。


「大丈夫だよぉ。」

知らない3人に見つめられ驚いているラビの頭を

安心させるようにニャルマーは撫でている。


「ねぇ、アタシも触ってみぇもいいかしら?」

「うん、いいよ。」

触ろうとして手を伸ばしたララの膝の上に置かれたラビは、

ララとニャルマーの顔をキョロキョロと見ていた。


「あら、近くぇ見ると意外に愛嬌のあぅ顔ね。」

ラビの頭を撫でるララの顔は自然と綻んだ。


少しすると、ラビは正面のパワルドの膝の上へジャンプして移った。

「お、おう。」

ラビよりパワルドの方がビビってる。


パワルドが頭を撫でると今度は俺のところに飛んで来た。

「ラビ、よろしくね。」

頭を軽くポンポンとしてあげると、ニャルマーの元へと戻った。


「アタシもセミナー受けてみぉうかな。」

ララは物欲しそうに呟いた。


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