【100話記念 第2弾!】Special Story ~ The Episode of Storenth ~
ギルド本部の新鋭、ストーレンスの話で、
第95話のカリイニットでリーインフに会うまでの特別編となります。
【2月10日】
ケービヨンのギルド本部支社を兼ねている町の中央にあるギルドで
ストーレンスは執務室として使っていた部屋を片付けていた。
既にケービヨンのポスリメンは殲滅し、
明日辺竹が逃げたフィンファング方面へ発つ。
コンコン
「どうぞ。」
概ね片付いたタイミングでドアがノックされた。
「お片付け中、失礼します。」
「ああ、構わんよ。」
バトマ以来、俺のサポートをしてくれているフィデリーが入室した。
ヘイズフィルドでポスリメンを追い詰めていたが、
ケービヨンのギルドから辺竹が付近にいると報告があり、
残っている雑魚をリーインフに託した時に、
代わりにと彼女をサポートに付けてくれた。
リーインフは俺が知らないと思っているが、
彼が俺の監視役であることは知っている。
そして、彼女は彼の部下で、俺のことを監視し
適時リーインフへ報告している。
まぁ、リーインフにしても、フィデリーにしても
本部からの指示で見習い指揮官である俺を監視しているだけで、
邪魔をしないのであれば、どうでも構わない。
現状、様々なサポートをしてくれているので
むしろ逆に助かっており、感謝しているが。
同じギルド本部のメンバーなんだから当然か。
「収支報告書と先般ご依頼いただいた調査資料です。
それから、こちら南のギルドマスターからです。」
「ありがとう。」
フィデリーから書類一式を受け取り、いつも座っていた席に着く。
そして最後に置かれた二つ折りの紙を開いた。
社交辞令的なお礼と共に、ここぞとばかりに要望が書かれている。
「はぁ。」
どこへ行ってもギルマスからは現場の愚痴や要望ばかりだ。
いちいち聞いてられるかと溜息を吐き、
元の2つ折りに戻して更にもう一度折った。
「あと、バトマで動きがあったようです。」
「続けてくれ。」
彼女は話を続けるかどうかを俺に選択させる。
時間が無ければ「またにしてくれ。」と言うし、
些細な事であれば「君に任せる」と言う。
彼女との暗黙の流れだ。
「はい。比留間真也と喜多川美海を倒したとの事です。」
「倒したのは?」
「ゴドロンパーティーとイーグルビーのサッチャンとツルボウです。」
「ゴドロンパーティーか・・・」
カサーナで八つ当たりしてしまった彼らか。
あの時逃した事を責めたが、結果的にバトマ、ケービヨンと
2度も逃げられ、そして残してきた後始末を彼らがするとは、
自分の情けなさに反吐が出る。
悔しさのあまり、手に持っていた四つ折りの紙を握りつぶした。
その様子を見てゴドロンパーティーの事を良く思っていないと
感じたフィデリーは報告を続けた。
「バトマへは再度本部のメンバーが応援が行くので、
直に残っているポスリメンも殲滅されるかと。」
「そうか。また何か動きが有ったら伝えてくれ。」
「かしこまりました。よろしければ、手伝いましょうか?」
「いや、粗方整理はついているし、
君もまだ事務処理が残っているだろう。
戻って今日中に片付けてくれ。明日は出発だからな。」
「あはは、そうですね。」
彼女は残務を思い出し、苦笑いして退室した。
フィデリーは自室へと歩きながら
リーインフにメッセージを送った。
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フィデリー>バトマの件、ストーレンスに報告しました。
リーインフ>で、どうだった?
フィデリー>例のパーティーの事は良く思ってない感じです。
リーインフ>そうか。それについてはこっちで何とかする。
フィデリー>どうして彼のことを目にかけているんですか。
リーインフ>彼は有能だろ。
些細なトラブルで潰すのは勿体ない。
あと、問題が起こらなければ俺達は報告する事もないだろ。
フィデリー>なるほど。
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報告書を書くのも読むのも嫌いなリーインフのことを思い出し、
フィデリーはクスリと笑った。
そして、リーインフは、
「あいつらがここを通るまでに何かいい方法考えねぇとな。」
と口にしながらカリイニットの町をパトロールした。
【2月21日】
リーインフは珍しくカリイニットの事務所で
時々ペン尻で頭を掻きながら、
「ん~、ん~」と書類と睨めっこしていた。
後ろに予定が詰まっている時に限って、
普段やらないことをしてしまう。
所謂、テスト前になるとなぜか部屋の片づけをしてしまう
あの心理だろうか。
「おっと、もうこんな時間じゃねぇか。」
ペンのキャップを締めて書類の上に置き、
急いで外へと駆け出した。
時計の針は、あと少しで4時を指す。
そして書類は再び長い眠りにつく。
降り積もる埃と共に。。。
次週から本編に戻ります。