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3. お友達が出来ました!


「母さん、母さん!早く行きましょう!」

「ふふ、ちょっと待って。もう終わるから」


今日は母さんとポーションの足りない材料を薬師屋さんに買いに行った後、家でポーションを作る予定だ。

少し落ち着こうと思い、朝のトレーニングを増やして倍やったけれど全然興奮が治まることは無かった。異世界楽しすぎるのがいけない。そう、仕方がない事なのだ。母の支度も待ちきれない。


「はい、お待たせ!行きましょノア」

「楽しみですー!」


母さんと手をつないで村の方に歩いていく。今日は父さんは新しく出現したというダンジョンに向かって行った。私はダンジョンの事はまだ良く分かっていない為、後で父さんに詳しく聞いてみようと思う。


母さんと他愛もない話をしながら村の中を歩いている時、私は2年半ぶりに村の子供たちから石をぶつけられる事になった。


「うわっ」

「ノア!?」


後ろから石をぶつけらた為、私も母さんも気が付く事が出来なかった。

幸いぶつけられた所は背中で、石もそこまで大きなものでは無かった為、傷にはならなかった。身体強化で体全体を強化しているので最悪頭にぶつかっても傷一つ付くことは無かったとは思うが、母さんが悲しむので出来れば避けたかった。回避できなかった自分の修行不足を恨む。


「おい!化け物がこんなところで何してんだ!」

「そうだ!化け物め、どっかいけ!」

「おまえなんか見たくもない!村におりてくるな!」


2年半前もこの3人の男の子に絡まれた記憶がある。確か前も同じような事を言われた。それ以外に言う事は無いのだろうか?それに人にそんな事を言っている暇があるなら、鍛錬の一つでもした方が何倍も有意義なのに。

つまらない...妙味に乏しい人たちである。ある意味異世界にきて初めての時間だ。それに楽しみを邪魔されたことに対して人生であまり経験のない怒りが湧く。

でも、そんな事で子供に怒るほど私は子供ではない。こういうのは流すのが一番だろう事は前世で嫌なほど学んだので、気を取り直して薬師屋に向かう為歩みを進める。


「母さん、早く行きましょう!」

「え、ええ」


務めて明るく話しかけると心配していた母さんも少し笑顔を作り手を握りなおしてくれる。

それが嬉しくて私の気持ちは浮上してきていたのだが、そんなのはお構いなしだと言わんばかりにまたしても邪魔が入る。


「お、おい!無視するな!...おい、待てって!!」


煩いので無視していると、1人はまた石を投げようとしていて、もう1人は殴りかかかってこようとしているのが見えた為攻撃をされると認識した頭は、思わず反撃をしようとするが、そこで私は父さんの言葉を思い出す。


『ノア、今のノアは君と同年代の子たちよりもとても強い。それどころか、そこらの大の大人よりも身体強化をしたノアの方が確実に強いだろう。ノアが暴力を振るってしまうと相手が怪我をする、それにノアが一方的に悪者にされてしまう。ノアはみんなを守る英雄になるのだろう。英雄になるのなら、つまらないことでその手を傷つけてはいけない。...約束できるな。』


そうだ、私は父さんと約束した。英雄になると。無駄な争いはしないのだと。


私は反撃しようと動かしていた体を無理やり違う方向に向きを変え、衝撃を流す。

小石を弾き返そうとしていた手の衝撃はそのまま小石と共に握り潰し、殴りかかってきていた子供には回し蹴りをする一歩手前の所で蹴りの方向と強さを変え、小突く程度に力を調整して背中をけり倒す。

流石に足の着地点をずらす事は出来ずそのまま背中に足を付け、文字通り握りつぶした小石だったものはリーダーらしき男の子の前で砂になった状態で捨てる。......ここだけを客観的にみると私はまるで悪役の様である、今後は一切手出しはしないようにしよう...。

私が一人反省会を開いている間、いじめっ子達はいまいち状況が分かっていない様で、未だ呆然としたまま動かない。

流石にこのまま去るのはどうかと思ったので一応声を掛けてみる。反応がなければ色々面倒なのでそのまま去ってしまおうと考えて。


「あの、大丈夫ですか?」

「......はっ、な、なんだお前!?何をやった!?」


最初に話しかけてきたリーダーらしい子共は数秒してから意識を取り戻し、また私に怒鳴り散らしてきた。

私は少し声を掛けたことを後悔しながら、何をやったかには触れずに会話が終わる様に話を進める。


「私、弱い者いじめはしないんです。かっこ悪いですから。安心してください、足蹴にしてしまっている子も無傷ですので。もう気は済みましたよね、忙しいのでこれで失礼します。」

「ま、まて!!お前そんなやつだったか!?それにおれは弱くない!まほうだっておれは将来使えるようになるんだ!お前といっしょにするな!」


なんと、この子も属性持ちらしい。まあ、私には関係ないので興味は微塵もないが。


「そうですか、ではこれで。」

「おれは弱くない!今は...おまえよりも、弱い...かもしれないけど!おれは将来おまえよりも強くなる男だ!」

「...はい?」


...このいじめっ子は何なのだろうか。いじめの次は宣戦布告、もう勝手にやって頂きたい。それに、道に転がっているお友達は良いのだろうか?さっきからずっと無視なのだが。ちょっと可哀そうになってきた。


「おれは、強くなる。強くなって、家族をまもるんだ。」

「っ!......。」

「...おまえみたいによくわからないやつは、危ないから家族に近ずけさせないようにしようって思って、おまえがいやがることして家族からとおざけてた...前のおまえは今と違って暗くてしゃべらないし、おれの友達を魔法で攻撃した...だからやっぱりまもののこどもなんだって思った。でも、今日のおまえを見たら、違うんじゃないかって...」


.........。村の大人たちも、存在が曖昧な私が不安で、危険かもしれない私を子供たちを近づけたくなくて...子供たちは不安がる大人たちが心配で、守ろうと行動し私に立ち向かおうとしていた。というのが、今までの彼らの状況であり行動だったらしい。


私と両親の意見は無視な上に、私がただの人間だったらどうするのか等、色々とこちらの不満が拭えない所は多々あり、蟠りが残るが...正直呆れが強すぎて、怒る気力は無くなってしまった。


「私から1つ間違いなく言えることは、私は正真正銘人間だという事です。確かに髪の色と瞳の色が少し特殊ですが、それだけの理由で石をぶつけられる理由も、化け物と言われる筋合いもありません。家族をまもりたいというのはとても素敵な考えですが、私にだって家族がいます。心があります。理由も言わず、話も聞かず不安だからと攻撃をされる。もしその立場が自分だったら?家族だったら、あなたはどうしますか。......もっと広い視野を持って下さい。」

「っ......」

「それと、魔力が暴走してあなたのお友達を傷つけてしまったことに対して、深くお詫び申し上げます。すみませんでした。...私もあの時は家族を侮辱された怒りで、魔力が暴走してしまいました。私が未熟だった事が原因です。二度とあんな事はしないと約束しますので、安心してください。」


私は3年前、いつものようにいじめられていた頃、日々の流れでいくのなら石をぶつけられ私自身が罵倒されて終わるはずだった所、何を思ったのか一人の女の子が私の両親までをも悪く言った日があった。

その事が耐えられず怒りを覚えた時、自分でも驚く程に体の内からものすごい勢いで魔力が競り上がってくるのを感じた。止めようと思った時にはもう遅く、目を開いたときは魔力が暴走した後だった。幸い誰にも怪我を負わせることは無かったが、みんなに恐怖を与えるのには十分だった。

...今思い出してみると、この男の子たちはその後から私に絡んでくるようになった気がする。

ただ、守りたかっただけだというのは本当だったんだと考えていると、男の子がどこか居心地の悪そうな表情をしながら話し始めた。


「...おれたちも、おまえの話を聞かないで、親のこと悪く言ったり...たくさんひどいことして悪かった。...ごめんなさい。おれももう、今までみたいなこと、もうしない。おとなたちにも言っておく、おまえはいいやつだって。......ひどいことたくさん言って、おまえも、おまえの家族も傷つけたのに...おれたちを守ってくれて、ありがとう。」


私はまさかお礼を言われるとは思わず、驚きで固まっているといつの間にか起き上がっていた子と、石を投げつけてきた子も本当に反省している表情で私に謝罪とお礼を言っていた。

私も悪かった所があるので、許してこの話は終わりとなった。


「...おまえ、なまえは?」

「そういえばお互い知らなかったですね、私はノアです。改めて、これからよろしくお願いします」

「おれは、ライルよろしくな。」


色々事情を話してくれたリーダーらしい子共はライルというらしい。ノアと同じ年の少年で、髪が金のブロンドで瞳は藍く澄んだ色をしている、改めて見るととても綺麗な顔立ちをしていた。将来はきっとイケメンに育つことだろう。

石を投げてきた子は、年は一つ下のロイ。綺麗な青い髪に可愛らしい顔立ちをしている為、一見すると女の子だが声は男の子なので違和感が凄い。本人的には母親似の顔がコンプレックスなのだとか。

最後に殴りかかってきた男の子はギドという名で、ロイの兄だと言っていた。ギドは父親似らしく黒髪黒目の線の細い子。

みんなの自己紹介の後、3人には石を投げたり殴るなど危ない上に最低な行為だから今後止める様説教をさせてもらった。ライルは昔も今回も絶対に手を出すことは無かったが、2人を止めなかったので同罪だという話を更にした後、ようやく解散することになった。


「では、私と母さんは買い物があるのでもう行きますね」

「あー、おれたちもついて行っていいか?」

「え?」

「2人で行くとおれらみたいのに、また絡まれそうだからよ。いっしょにいればへんな目では見て来るだろうけど、話しかけたりはしてこないと思うから。...めいわくだったらそのまま帰る。」


これは、私たちを心配してくれているのだろうか。段々声が小さくなっていくがその声と表情は、とても心配している様だった。


「ノア、ぼくたちが言えることではないけど2人が心配なんだ。迷惑じゃなければついていきたい、駄目かな」

「おれたちにとっては、もう大切なともだちだから...ともだちを、まもりたいんだ」


本当に気遣って言ってくれている言葉だと判断し、私と母さんは3人に着いてきてもらうことにした。

返事をすると、3人は心底安堵した表情の後、私と母さんの隣を囲うように歩いてくれた。


「ライル、ギド、ロイ、ありがとう」


私はそんなみんなの気持ちが嬉しかったので、3人に改めて感謝の気持ちを伝え様と思い、笑顔でお礼を伝える。私からお礼を言われると思っていなかったのか、3人共驚いた表情をした後リンゴの様に顔が真っ赤に染まった。大丈夫だろうか。母さんは何だか誇らしげというか、微笑ましそうというか...変な顔をしていた。


その後みんなで他愛もない話をしながら歩いていたら薬師屋に到着した。

滞り無く買い物も済んだので、あとはそのまま家に帰りポーションを作る予定だったが、ライルがとても私の修行に興味を持ったようで家で一緒にポーションを作った後、ライルと手合わせや身体強化をすることになった。

急な予定変更だったが、家に友人が遊びに来るというのは前世合わせて初めての事だったので、思わず興奮してしまったら、ライルには可哀そうな子を見る目で見られた後、頭を撫でられた。完全な憐みの目でした...。因みに帰ってきた父さんは、うちに居るライルを見て始めは警戒している様だったが、私と仲良くしている様子を確認すると、嬉しそうに笑って私の頭を撫でてくれた。



ノアが漸く、村の住人になれた日だった。

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