プロローグ 2
頭がいたい。今まででも頭がいたいことは沢山あったけど、比べられないくらいにいたい。頭がわれそう。
それと一緒に頭の中にいろんな出来事が流れ込んでくる。
まるで過去を見てるみたいに。
だんだん立っていることも辛くて、私にできることは床にうずくまって痛みに耐えることだけだった。
しばらく痛みが治まることは無かったが、只管痛みに耐えていると映像とともに頭痛もようやく収まり、私は今までの夢と頭痛の原因であった、前世の記憶を思い出した。
私がノアになる前の前世は、佐々木 花という名前のごく平凡な田舎育ちの女の子だった。
10歳になるまでは家族3人で静かに幸せに暮らしていたが、私の10歳の誕生日に両親は事故で帰らぬ人となり、訳も分からぬまま私はお葬式に参加した。
その後親戚の家に住まわせてもらうこととなったが、親戚は私のことをあまり良く思ってはおらず、顔色を窺いながら生活をして、なるべく迷惑をかけない様過ごしていたが、親戚とは仲良くなれないまま中学を迎え、高校生になった私は早々に進路を決め、就職と同時に一人暮らしをする為家を出た。
就職した先は世間でいう所のブラック企業だった様で、8年間殆ど休むこともなく働き続ける生活を送っていた。
就職した後の生活は会社では一人一人の仕事量が膨大で自分のノルマを終わらせることも容易ではなかった中、周りで苦しんでいる人たちを見て少しでも助けになればと思い、その人たちの分の仕事を一部肩代わりし、更に仕事に打ち込んだ。
お給料は今まで育てた分返済をしていけ、という話を家を出る前にされていたのでお給料の一部を親戚に渡し余ったお金でやりくりする日々。
そんな生活を続けている時、私は何の因果か26歳の自分の誕生日、両親と同じ事故で帰らぬ人となった。
その日は3徹して仕事を終えた帰宅途中で、子供たちが遊びに夢中になって居た時、一人の少年が誤って道路に飛び出しトラックに轢かれそうになっていたので、助ける為に飛び出して行き死んだ。
改めて客観的に自分の人生を振り返ってみると中々なお人よしだったかも知れない上に結構不幸だ。
不思議と特に後悔する人生ではなかったが、一つの悔いが残った。
自分のために生きること。
流石に振り返りで気が付く事が出来た。誰かのために生きることは悪いことでは決してないと思うが、自分の人生の一番にするものではないと。それに二度目の人生までも危うく同じことを繰り返す所だった。流石に似たような人生を二度も歩むつもりはない。
それにここは、前世で憧れを抱いていた異世界!
しかも魔法が使える!冒険もしてみたいし、どんな事が出来るのか試してみたい。楽しむ以外の選択肢など何処にもないだろう。
思わぬ所で夢が叶ったのだから思う存分満喫しよう。
そして、今のノアとしての夢も叶えよう。
誰の為でもない、自分のために。
それと記憶を取り戻した事で何個か気が付いた事、気になる点が出てきた。
まず現在の容姿だが、前世で言うアルビノの様な風貌で、この世界でも珍しい分類にあたる模様。ノアの記憶でも自分以外には似たような髪色すらいない。瞳の色も赤は珍しいようで、いても精々紫が限度といったところ。
そしてその理由は、魔力の多さに比例している可能性がある。村の人たちを見るとどうも魔法が得意な人間は平均して色素が薄い傾向にある上、魔力が暴走したという話もノアだけ。少なくとも村では見たこともなければ、聞いたこともない。あくまでも仮説に過ぎないが、私ことノアは魔力量が膨大すぎる故に容姿や魔力の暴走等の異常が見られるのではないだろうか。
可能性を試すためにもまずは動かなくては始まらない。
これから私は、英雄になるのだから。