プロローグ 1
最近、同じ夢を見るようになった。人が沢山いて、うすい板みたいなもので話していたり、凄く速い乗り物を大人が乗っている変な夢。
全然知らない筈なのにどこか懐かしい風景だったから、思い出したいと思った。でも、それ以上を思い出そうとすると頭がすごく痛くなってできない。これはなんだろう。
「ノア?ぼーっとしてどうしたの、お父さん行っちゃうわよ!」
「...あ、いってらっしゃい」
父さんのお見送り中だったのに、夢のことを考えちゃってた。
私の父さんはとっても強い冒険者だ。仕事で忙しいのに私たち家族のことを凄く大事にしてくれて、村のみんなからも愛されるくらい優しくて、たまに貴族からも護衛以来をされたりする自慢の父だ。今日も隣村に向かっている魔物の群れを倒しに出かけるところらしい。
...ただ、私はそんな父さんが少し苦手でもあって、たまに話し方が分からなくなる。
「ああ、いってくる」
父さんは嬉しそうに私の頭を撫でながらあいさつをしてくれる。いつものやりとりで、私の好きな時間の一つ。
ドアが閉まって、父さんがいない部屋は少しさみしいけど、母さんと一緒にご飯を作ったり洗濯物を干したりして過ごすのも楽しいし、好き。
「ノア、母さん晩ご飯の食材を買いに出るけど、今日はどうする?一緒に行く?」
「行かない。」
「...そう、じゃあ行ってくるわね、すぐ戻るから」
母さんが少しさみしそうに家を出ていく。
これもいつものやりとり。
私は外に出るのが怖くて、もう2年ぐらい外に出ていない。私だって外に出て遊びたいし、父さんみたいに強い冒険者になりたい。でも、私にはできない。
外に出れば自分の白い髪と肌や、赤い目が気持ち悪いって言われるから。魔族の子だって、石をぶつけられる。私は魔力を暴走させてみんなを傷つけたことがあるから余計なんだと思う。魔力はふつう暴走したりしないらしい。私もみんなを傷つけたくないし、父さんと母さんが私のせいでみんなから嫌な目で見られたり悲しい気持ちになるのはいや。二人のあんな顔、もう見たくない。あんな目に合うの悪い私だけで十分だ。
だから私は家から出ないことにした。誰も傷つけないし、みんなに嫌な思いをさせないですむから。
みんなには笑っていてほしい。私が家から出なければ、みんなが幸せになれるんだ。そう思えば、こんなのへっちゃらだ。あんまり父さんと母さんに迷惑かけたくないから大きくなったら家を出てみんなに会わないように一人で生きてみよう。って、計画を立てたんだ、なのに。
心の中で思っちゃうんだ。
...みんながうらやましい。外に出て、一緒に遊んだり、一緒に冒険したり、私もふつうになりたい。みんなと一緒がいい。そうすれば...
父さんと母さんは私の心配をしなくていいし、村のみんなに迷惑をかけなくていい。
私のせいで二人が今みたいに泣かなくていいし、みんなから二人がかわいそうって言われなくなる。
父さんと母さんのじまんの娘だって自分から言える。
生んでくれてありがとうって言いえる。
父さんと母さんと、ずっと一緒にいられる。
本当は私も、
母さんみたいに、笑顔があったかくて、一緒にいるだけで落ち着くような人に、
父さんみたいに、強くて、みんなに愛される
英雄になりたい。
そう思ったとき、
今までで一番、頭が痛くなった。