2 帝と戦います。
「貴方様は先程私が欲しいとおっしゃいましたよね? 私はその理由がわかりません。あなた様のような美しいお方なら、私以外でも良いお方はいらっしゃるはずですわ。なぜ私のような女を欲しがるのでしょうか?」
帝を気付かれない程度に睨んで言うかぐや姫。帝はあぁ成程。といって話し始めた。
「申し訳ありません。つい、かぐや姫の欲しさ一心で、理由を言い忘れてしまいました。理由は簡単です。私はあなたに恋をしているのです。とてもとても。言葉ではいい表せないほどに。一目見た時からお慕いしておりました。」
帝が美しい笑みを浮かべながらそう言い、かぐや姫は何故か寒気を感じました。
「それは、私の容姿に惚れたということですか……? 私は外見だけで好意を抱くようなお方は、余り良い方だと思えませんの。外見だけで惚れるようでしたら、他の方をあたっていただきたいです。」
「私は外見だけで惚れるような男ではありませんよ。」
帝は真剣な声音で、かぐや姫にそう言いました。
(いやいやいや、でもそういうことよね? 一目見た時からーとか言ってたし!)
なんてかぐや姫が考えていると、帝は口を開いてこういいました。
「私の発言で勘違いをさせてしまったのならば申し訳ございません。しかし、私は外見だけで惚れたわけではないのです。それだけは信じていただきたい。確かにあなたはお美しい方です。しかし外見だけが人のすべてではないでしょう? 私もこの外見のせいで色々なことを言われてきましたからね。かぐや姫のことは、分かるつもりなのですよ。」
「……そうですか。でも、私の外見以外で何がいいとおっしゃるのでしょうか? 私達は先程お会いしたばかりでしょう? お互いに何も知らないはずなのにどうして好意を抱かれているのか、全く見当がつきませんわ。」
「私とかぐや姫が会うのは、これが初めてではありませんよ……。」
「え?」
帝が小さくつぶやいて聞こえなかったので、聞き返そうと思ったかぐや姫だったが、何でもありません。と帝に言われて渋々諦めざるを得なくなってしまった。
「……私のことを本当に好いていると仰るのならば、それを証明してほしいのです。言葉では何とでも言えますからね。」
「もちろんです。かぐや姫の為なら私は何でもできますよ?」
「そうですか。それでは不死山の頂上にあるという、不老不死の秘薬を持ってきてください。」
「不死山の頂上の秘薬ですか……?」
「はい。私の為なら何でもできるんですよね?」
不死山に行った人は、猛吹雪や雪崩崖からの転落死などで、今まで誰も帰ってきたことがないという危険地帯でした。そこの頂上は酸素も薄く、とても人がいる空間ではないといいます。かぐや姫はそれを知った上で言いました。
(これがプランBよ! わざわざ私の為に死地に行くような阿呆ではさすがにないでしょう。さすがにこれは私への求婚を諦めるはずよ。先程、私の為なら何でもできるなんて言わなければ良かったのに。)
勝利を確信してにやけそうになったのを、かぐや姫は慌てて扇子で隠します。
(さぁ、無理だといいなさいよ。そして私を諦めなさい。私が地球人と結婚なんてあり得ないんだから。)
しかし、帝が言ったのはかぐや姫が思っていたものとは違う答えでした。
「良いですよ。かぐや姫が望むのであれば。」
「……ふえ?」
あっけらかんと答える帝に、気の抜けたような声を出してしまうかぐや姫。そして数分フリーズしてしまいました。帝にかぐや姫?と呼びかけられ、はっとします。
「えっと……。期限は一週間です。取ってこれなかった時は、分かりますよね?」
「はい。勿論取ってこれなかった時は、かぐや姫、貴方を諦めましょう。しかし、私が取ってこれた場合は、貴方は私の物になってくださいますよね?」
「……。」
「かぐや姫?」
「勿論ですわ。本当にとってくることが出来たのならば、私も喜んで貴方様の物となりましょう。」
「約束ですよ?」
「…はい。」
帝は私が頷いたのを確認して、それでは。と言って部屋から出ていきました。
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