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ニアリィヒーロー/イコウルマオー  作者: アントワネットジョー
5/5

第5話 そういう次回に続く展開はダレるから嫌いだ

〜〜前回のあらすじ〜〜

 ついに恐怖の日曜日がやってきてこわいこわいな環ユウキくん!そんな時は変身練習で気合いを入れるんだ!ってあれれ?1週間経ったのにテキは現れなかったみたい?なんだか拍子抜け。

 そんなこと思うのも束の間!さっそくテキに襲われた被害者が出てしまったぞ!急げ!僕らのヒーロー!メグルマスク!テキを倒せるのは君しかいない!

ハァ⋯⋯ハァ⋯⋯まさかこんないきなり行動に移すなんて⋯⋯⋯⋯。早く行かないと⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯いやちょっと待って!



「がむしゃらに走ってたけど、冷静に考えたらどこを探せばいいのかわかんないじゃん!ラックスの探知機能でテキの位置を探さなきゃ!」


「いや、その必要はない。メグルがテキと出会い戦うつもりならば、目の前にテキは現れる。出会うつもりがなくとも、嫌でも遭遇してしまう。必ずそういう展開になってしまうのだ。

 正確に言うとテキを探知すると言うよりは、『テキと戦う展開』を探知するものになるな」


「それ探知するっていうんすか⋯⋯」



 考えてみれば、TVの中でヒーローしてる仮免ライダーやスーパー戦線は『毎回都合よく』怪人達に遭遇してるからな⋯⋯。そういうものなんだろうか⋯⋯。



「だがうかうかしてはられないぞ。急がなければまた被害者が出る、とりあえずは走るのだ」


「それもそうだね⋯⋯」



 軽く深呼吸をして、再び走り出そうとしたその瞬間。ヌッの目の前に、明らかに普通じゃないモノが現れる。⋯⋯例えるなら、一昔前に流行った『黄鬼』というフリーホラーゲームの鬼のような⋯⋯。大きな頭に大きな目。それに対して体は小さいけれど手足の形はめちゃくちゃだ。



 展開が早くも来たってことだ⋯⋯。



「メグル、わかってると思うが」


「さすがにわかるよ、テキのお出ましだ」


「いや、それもだが、変身時の掛け声は『チェンジ メグルマスク』でいくぞ。私達のタイミングを完璧に合わせるんだ」


「今それはどうでもいいでしょ⋯⋯」



 そういうくだらないお喋りをしてる間にも、そのテキはノソノソとこちらに近づいてくる。あっちが油断してるうちに先手必勝だ。すかさずラックスを手に取り変身を⋯⋯。




「君『荒野侵攻』やってる??」




 ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ハ???




 え?なんで??あまりにも流暢に喋り出すからビックリして体の動きが止まってしまった。てかテキって喋れるんだ。



「君『荒野侵攻』やってる??」



 近づきながらまた同じ質問をしてくる。なんなんだ。


 荒野侵攻⋯⋯。高校入学したあたりの時、同級生の輪に入るためにインストールしてみたけど、結局つまんなくてすぐやめちゃったな⋯⋯。



「君『荒野侵攻』やってる??」



 まだ聞いてくる。しつこいぞ。


「やってたけどすぐに引退したわ!!いくよラックス!!」


「あぁ!いつでもこい!」


「チェンジッッ!!メグルマスクッッッ!!!!!」



 俺史上一番いい声で叫ぶ。ボタンを押せば一瞬で変身完了。やっぱりテキの反応があれば変身できるみたいだ。

 変身して即、あの時みたいに右ストレートをテキの顔面に叩き込む、デカい頭が吹っ飛んでいく。喧嘩素人の俺にとっちゃ利き手で殴るのが1番やりやすい。



「やったか!?」


「メグル、それは多分やってないやつだ」


「ラックスもわかってきたねぇ」


 一撃で死んでくれたらそれに越したことはないけれど、やっぱりそうはいかないみたい。倒れたテキがゆっくりと立ち上がり、再びこちらに向かってくる。




「『荒野侵攻』やってたんだ?今のランクはどれくらいですか?」


 また荒野侵攻か。ほんとになんなの?


「さっきすぐに辞めたって言っただろ!だから初期ランクだっっつーーのっっと!!!」


 またまた右ストレートをドデカい顔面にぶち込む。そんな遅いんじゃ隙だらけだよ。フッ⋯⋯決まっ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯てない!?拳を受け止められた!?




「じゃあテメェも寄生野郎ってことかァァァアァアァーーーーーーーーァァアーーーッッッッ!!!!!!!!この恥知らずのクソゴミがァァァあアァア死に晒せェェェエーーーーーーッエエエエッッ!!!!」


 今までの動きから冗談みたいに早くなり、右腕ごと俺の体を持ち上げて地面に叩きつける。2回3回頭を打ってバウンドしたが、それでもちょっと痛いレベルで済んでる。さすがメグルマスク。


「いでででで⋯⋯」


「大丈夫かメグル」


「まぁそこそこ大丈夫」



 なんて話してるうちにも、テキはわけのわからないことをギャーギャー騒ぎながらこちらに向かってくる。意外とスイスイ動けるところもまるで『黄鬼』みたいだ。でもその分動きも単純。これなら見切れるぞ。



「低ランクがイキッてんじゃねぇぇぞぉぉおおーーーーーッ!!!!!!!!」


「隙ありィィィーーーーッッ!!」


「今だ!リンネメグルブレード!!」


 急にラックスが叫ぶ!いやナニソレ!?


 テキの懐に向かって振り切った手刀が、瞬時に剣型の武器に姿を変える。青く光るそれは近未来的なデザインでなかなか好きだ。



 驚いたテキは攻撃をかわそうするが、リーチの伸びたリンネメグルブレードからは逃れられない。急所は外したけど、歪な右半身の3分の1くらいを切り落とす。グッッッッッロ!



「イイイイィッッデェェエエエエエエエエエエ!!!!!!!」



 テキは悲痛の叫びをあげながらも素早く間合いを取る。暴走しているようで意外と冷静みたい。


 だけど素早く動けるのはこっちも一緒だ。一気に距離を詰めてテキの目の前でジャンプ!脳天に向かってブレードを振り下ろして頭から真っ二⋯⋯⋯⋯!



 その瞬間、テキの頭上で謎の光が発生し、思わず避けてしまう。⋯⋯あ!ヤベ!!

 無駄に回避をしてしまった今の俺はまさに隙だらけ。格ゲーだったらここで相手にコンボを決められちゃう!早く体勢を⋯⋯⋯⋯


 咄嗟に攻撃を受ける構えに入る。が、さっきまで居たハズのテキが忽然と姿を消してしまっていた。⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯え!?



 ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯



「もしかして逃げられた!?」


「逃げられた、というよりはなんだか逃がされた感じだな」


「そんなのアリ⋯⋯」


 こっちがTVの中のヒーローみたいに都合よく出会って戦える展開が作れるのなら、テキの方は都合よくしっぽを巻いてまた来週〜って感じで逃げられるって言うの!?

 そこまでお約束通りにせんでもいいのに!


「てか、逃がされたってことは、やっぱりそういう悪の組織がいるってことだよね。薄々感じてたけどさ」


「それはどうだろうな⋯⋯」


 テキの反応が無くなったので勝手に変身が解除。展開が過ぎ去ったってことですか。疲れたけど、この前みたいに眠くなるほどではない。


「つかさ!あんな便利な武器があるなら最初から教えてよ!めっちゃ強かったじゃん!」


「正直、咄嗟に力を出せた私自身今も驚いている。ああいう芸当が出来るとは思っていなかったのだ。もしかすれば、私の失った記憶と何か関係があるのかもしれないが⋯⋯」


「うぅーん⋯⋯。やっぱりループしてるよなぁ」


「何がだ?」


「なんでも」



 だって『リンネメグルブレード』ってねぇ⋯⋯。明らか周回してるようなワードばっかりじゃんね⋯⋯。




 すっかり忘れていたけど幸い(?)まだ今から登校すれば間に合うので、一度ウチに戻って準備に戻る。戻ってみるといつものように遥が家の前で待っててくれてた。


「アレ??なんでユウキくんが外から来るの???」


「ちょっと色々用事があって⋯⋯」


「えー!なんか怪しい!さてはメグルマスクになって怪人と戦ってたんでしょ!」


 わ、その通りです。逃げられたけど⋯⋯。



「とにかく早く行かなきゃ!遅刻しちゃうよ!!」


「あー!ごめん!すぐ準備するから待ってて!」


 こうして遥と会話していると、さっきまで殺すか殺されるかの戦いをしていたのが嘘かのように、普通の日常に戻れていることに安心感を覚える。

 この世界の平和を守れる自身は正直あまりないけれど、今目の前にある俺の世界は絶対に傷つけさせやしない。自分の小さな幸せを守るために戦うヒーローだって、1人くらい、いてもいいよね。


〜〜そして放課後〜〜


「それでねぇ、叱るベコっていうのがいてねぇ」


 いつものように遥とお喋りしながら帰り、家の前まで見送られる。ばいばい遥。またあした。


「ただいまー」


「おかえりメグル」



 家に着いたらすぐ自分の部屋に行く。これからの作戦会議だ。



「とりあえずアレから反応はなかったけど、また今日中に出てくるのかな」


「憶測だが、おそらくあのダメージだと明日明後日までは行動できないだろう。それまでに体を再生して、傷を回復させるかどうかして⋯⋯」


「え、待って、再生能力とかあるんですか」


「いや、あるかはわからない。しかし再びテキと戦う展開はやってくる筈なのだ。再生能力は予想でしかないが、また戦える状態になってやってくる。そう思っていた方がいいかもしれない」


「はぁ〜〜⋯⋯ズルくね?」


「まぁズルいな⋯⋯」



 せっかく追い詰めたのに⋯⋯。なんだか数時間かけてクリアしたボスステージのデータをリセットしちゃって、また最初からやり直しになったかのような気分だ。

 もしまた逃げられたりしたら、俺はこのクソゲーをバキバキにブチ壊してゴミ箱にポイしてしまうかもしれない。そうできればいいのにな。



「あ。そうだそうだそういえば」


「なんだメグル?急にスマホをいじり出して」


「いやね、今朝テレビでテキが高校生を殺したニュースが流れてたでしょ?それでPwitterとかで事前に殺害予告があったみたいだから、それを見れば何か行動のヒントが掴めるかもと思って。荒野侵攻にこだわってたのも絶対理由があるだろうし」


「なるほどな、早速調べてみよう」


 Pwitterのアプリを開いてプイート検索でそれらしいプイートを調べてみる。ニュースにもなったからかなり話題になっているみたいで1発で殺害予告のプイートがヒットした。なになに⋯⋯。


 『上平俊平、台場弘樹、小松大吾


近日、この3人を殺していきます。


なぜかというと、コイツらは荒野侵攻でぼくの足を引っ張り、ゲームの妨害をしたからです。


こういう雑魚がいなくなれば、もっと楽しく荒野侵攻ができると思うので、皆さん応援してください。


一緒にいいゲームにしていきましょう』



 ⋯⋯⋯⋯頭おかしいだろ⋯⋯。てかなんで本名特定できてるんだよ⋯⋯⋯⋯おや?あれあれ?


「テキはゲームで肥大化した悪意⋯⋯怒りを喰らったようだな。今はターゲットが絞られているみたいだが、いつ関係の無い人間に手を出すかわからない。そうなる前にも、次で決着を付けなければ⋯⋯」


「あ、あのさぁ⋯⋯この台場って人なんだけど⋯⋯」


「ん?その男がどうした?」


「この人同じクラスの同級生なんだよねぇ⋯⋯」


「そういうことか⋯⋯。だからニュースの後、登校中を狙っていたテキは私達のすぐ近くにいたってワケだ。

 メグルの身近な人間が襲われるのも展開の内、ということになるのか⋯⋯」


「そんな言い方されると俺達のせいで戦いに巻き込まれてるみたいじゃん」


 みたいというか、実際にそうなのかも。多分、俺がこの力を得たのと、テキが出現したのはほぼ同じタイミングな気がする。ヒーローどころか俺が存在するだけで被害者が増えていくような⋯⋯。



「そんな事はない、メグルがいなければ誰もテキに対抗することができず、一方的に蹂躙され、瞬く間に人類は滅亡していただろう。何もお前のせいではない。共に頑張っていこう」


 励ましてるつもりなんだろうけど⋯⋯なんだかなぁ⋯⋯。



「でもまぁとにかく、クラスの同級生が狙われてるってのがわかったから、今はとにかく台場くんをしっかり監視しなきゃ。半分ストーキングみたいになりそうだけども」


「そうだな、明日からはしっかりと彼を見守らなければ」


 とりあえずの作戦会議は終了。まさか早くもクラスメイトを守る展開になるなんて。そんなに仲良くないどころか話したことすらないけど⋯⋯。


「まぁとりあえずもう眠いから⋯⋯おやすみ」


「おやすみ、メグル」



 なんだかまた来週って感じじゃなくて次回に続くって展開になっちゃったなぁ⋯⋯。一見同じようだけどさ、来週と次回は俺にとっちゃだいぶ大きな差があるから⋯⋯。

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