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ニアリィヒーロー/イコウルマオー  作者: アントワネットジョー
3/5

第3話 これがメグルの日常か

〜〜前回のあらすじ〜〜

 ラックスにいろいろ聞いてみていろいろわかったりわかんなかったり!とりあえず週一でしかテキは現れないようなのでひとまず安心!

 今回は環ユウキくんのドキドキワクワクな学園生活を一部始終をお送りするぞ!ヒロインの遥ちゃんとの恋路にも注目だ!

 『叶多(かなた) (はるか)


 高校生活における数少ない、というより、残念ながら、唯一の、まともに会話のできる友人である。多分。お互いに⋯⋯。


 それもそうだ。男子高校生が女装して、何食わぬ顔で毎日学校に登校してる。当然、周りからはイロモノ扱い。学校としては性同一性障害?的な扱いにしてるのかはわからないけど、まぁそういう個性として受け入れられてたり、られなかったり。虐められてないだけマシかな。


 だからって不思議なことにホモとかオカマとか、そういうアレではないみたい。仕草やしゃべり方は女々しいけれど、キチンと女性を恋愛対象として見ているようなのだ。

 姿格好は女性そのもので、喋り方も仕草も女の子って感じだけど、それでも好きなのは女の子。うーん、複雑、不思議。付き合いは長いけど遥に対してはわからないことは結構まだある。


 それで俺に友人が少ないのは何故なのかというと⋯⋯。なんでだろう?わからない⋯⋯。いや、多分話してて面白くないとか、もしかしたら協調性がないとか、それなりの原因はあるのかもしれない。

 けどそれにしたって数人くらい、それこそオタクや陰キャの友達くらい居てもいいのに、俺にはいない⋯⋯。周りとは深く関わり過ぎず、かと言って離れ過ぎず。いや若干離れちゃってるくらいの距離感を保ってる。保ってしまっている。寂しいよ俺⋯⋯。


 そんなこんなで遥とはお互い昔から唯一の友達なので、学校ではこうして支え合って暮らしているのだ。ある種のボーイミーツボーイかなぁ⋯⋯。


「それでねぇ、昨日ソンリオショップに行ってねぇ」


 俺はそのソンリオのことはキキィとかスナモンとか、そのくらいしかわからないけど、楽しそうに話してる遥の顔が好きなのでうんうんそうかそうかと聞いている。こうやって遥の話を聞きながら歩いてる登校時間が一番落ち着くや。


 ⋯⋯⋯⋯⋯⋯。ほんとだったら話す必要はないけれど、昨日のおぞましい出来事を話してみるか。もちろん、夢って体で。


「そういやさ、昨日すげぇ怖い夢見たんだけど⋯⋯」


 昨日起きたことをほとんど話してみた。まぁちょっとカッコよく話に補正を入れて。少しだけ気持ちが楽になる。嘘だって思われても、1人で抱えるよりはよっぽどいい。


「えぇーーー!すごい!ユウキくんヒーローになったんじゃん!しかも怪人ボコボコじゃん!めっちゃカッコイイ!今度変身してみてよ!」


 それが変身できちゃうんだなぁ⋯⋯。絶対人前ではしないけど。

 それにしてもヒーローかぁ⋯⋯。変身してテキを倒す過程そのものはヒーローのそれだけど、別に誰かを守ったわけじゃないし、必殺技は死ねキックだったし、そもそも倒した相手も元は人間だったし、そんなヒロイックなものじゃあないけどさ⋯⋯。なんなら被害者しかいないじゃないか。


 ⋯⋯にしても遥はこんな出来の悪い夢の話でも目をキラキラさせて興味津々に聞いてくれる。そこが遥の優しさであり、善性なのかもしれない。多分気持ちに嘘がない。これでまともな男子高校生か、あるいは真っ当に女の子だったら⋯⋯。今頃クラスの人気者だったろうに。


「ねぇユウキくん!そのヒーローに名前はないの?なんとかマンみたいな!」


「あ?名前?そういや決めてなかった⋯⋯。あ、いや別に決める必要は無いけどね」


「じゃあ私が決めてあげる!んんんん〜〜〜〜〜〜とぉ⋯⋯⋯⋯⋯⋯めぐるゆうきだから⋯⋯、メグルマン!ユウキマン!いや!メグルマスク!グレートメグルマスク!」


 なんでだんだんプロレスラーみたいになってくるんだ。ダサすぎるでしょうが。ほら、例えば俺の名前がユウキなんだから、それにちなんで『ブレイブマン』とか⋯⋯いやこれもダサいわ。


「⋯⋯⋯⋯メグル、私はメグルマスクがカッコいいと思う」


「ゴニョゴニョ⋯⋯ラックスは今静かにしてろ⋯⋯てかメグルマスク派かよ⋯⋯」


「え⋯⋯!?私うるさかったの⋯⋯?ユウキくんごめん⋯⋯」


「いや違くて違くて⋯⋯ごめんごめん⋯⋯えぇとメグルマスクがカッコいいと思います」


「なんだぁ〜〜。じゃあ次の夢でも頑張れ!メグルマスク!君の戦いは終わらない!」


 はよ終わって欲しいんよ⋯⋯。


 〜〜学校 お昼休み〜〜


「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」


「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯メグル」


「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯なに?」


「君は眠るのが好きなんだな、休み時間のほとんどを睡眠にあてている。体力の温存は大切だからな。良いことだと思うぞ。」


「好きでこうしてるわけじゃないです⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」


 いやほんとに眠いからこうしてる時もあるけど、大抵は寝たフリか疲れたフリ。こうしてる理由はいちいち説明したくない⋯⋯。


 でも今はお昼時間。だいたいチャイムが鳴って5分くらい経てばいつもアイツが来てくれる。もうそろそろかな。


「ユウキくーん!おまたせぇ。また寝たフリしてるんだ!お弁当食べよ!」


 言うなや。


 俺がアイツなんて三人称を学校で使える仲なんて遥しかいない。毎日お昼の時間だけこうやって、隣のクラスから一緒にご飯を食べに来てくれる。正直かなりありがたい。心の奥底ではいつも遥さんありがとうございますの気持ちでいっぱいだ。


 最初の方こそ周りからは、遥が男なのを承知で「おアツいねぇカップルだねぇ夫婦だねぇヒューヒュー」みたいな冷やかしは言われたりしたけれど、今ではそんなことはもう一切言われない。陰キャを極めすぎて、からかいすら受けなくなった。もうそれすら恋しい。はぁー。


 昼食中も遥は俺に対して楽しそうにお喋りをする。俺は教室だと声を出しにくいので、登校中以上にうんうん言ってるだけだが⋯⋯それでも遥はニコニコ楽しそうだ。俺も楽しいよ。


 昼休みが終わり、遥は自分の教室に戻っていく。「また帰りにね!」なんて言いながら。あぁ早く帰りたい。


 こうして5時間目、6時間目、7時間目と虚無の時間をいつものようにいつも通り過ごす。

 授業をボケっと聞きながら、改めて自分が得た超人的な力に対して思いにふける。


(仮にこの力を世間に公表すれば、今ここにいるコイツらも、俺に対してチヤホヤして跪くんだろうな⋯⋯)


 とかくだらない妄想をしてみるけど⋯⋯多分そう簡単にはいかない。こんな危険な力を持ってることを世間に知られた途端、どんな目に遭うかわかったもんじゃない。漫画やアニメみたいに上手くはいかないよね。


 こういう小さい小さい、妄想の中に留まる程度の征服欲みたいなのすらも「テキ」は喰らい、増幅させて、人の心を乗っ取るのだろうか⋯⋯。

 でもほんとなんの為なんだ。昨日はたまたま襲われたのが俺だけ⋯⋯だと思うけど、そうやって悪意を喰らって人を襲うことに何か意味があるのだろうか。わからない⋯⋯わからない⋯⋯⋯⋯⋯⋯グゥー⋯⋯スピー⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯。




「ーーーーーーーーーこらユウキくん!起きなさい!今日はこの授業で終わりなんだから頑張って!」


「⋯⋯⋯⋯⋯⋯あぁ!ご、ごめんなさい⋯⋯」


「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」


 こういう時は陽キャくんが寝て起こされた時みたいに誰か俺を笑ってくれよ⋯⋯。その静寂が1番つらいよ⋯⋯⋯⋯。


 ⋯⋯⋯⋯こうやって一日の学校生活が終わる。あとは帰るだけ。あ、部活は当然やってないです。

 今日は遥が遅いのでコソコソと隣の教室の前まで行き、遥が中から出てくるのを待つ。中にズカズカと入る度胸は俺にはない。

 小窓からチラッと教室を覗いてみると、今ちょうど帰りのホームルームが終わったところのようだ。遥は席を立ち、誰にもさようならを言うことも無く、そそくさと出口に向かって行く。

 

 あぁ⋯⋯知ってはいたけど、やっぱり遥も俺と同じでまともに会話をする相手がいないんだな⋯⋯。と胸がキュッと締められるような感覚と、1人なのは俺だけじゃないんだ、という安心感が同時にやってくる。

 こう思ってしまうのは我ながら性格が悪いと嫌でも感じるが、もし遥に友達がたくさんいたらと考えると⋯⋯それはそれでなんか嫌な気分だ。やっぱり俺は性格が悪いんだなぁ。


「あ!ユウキくん!待っててくれてたんだ!ごめんね!」


 いつものニコニコ笑顔だ。


「うん、もう帰ろ」


 いつも通り2人で帰り、いつも通り遥は家まで着いてきてくれる。


「それじゃあね!ばいばい!」


「じゃあねー。また明日」


  遥に見送られながら家に入る。はぁ疲れた。やっと家だ。


「ただいまー」


「おかえり、メグル」


「うわ!!!ビックリした!!!!連れて歩いてるの忘れてたわ!」


「ひどいじゃないか⋯⋯」


「ごめん⋯⋯」


 あとは家に帰ってやることといえば、ご飯を食べて風呂に入って⋯⋯ZwitchをしたりPwitter、2億ちゃんねるを眺めたりしてから寝るか⋯⋯。


「これがメグルの日常か」


「まぁこんな感じ⋯⋯。なんかさみしい感じでしょ」


「いや、そんなことは無いと思うぞ。メグルは休み時間も授業中も寝てばかりだが、遥君という大切な友達がいるじゃないか。あんなに心身になって接してくれる友達は、なかなか作れるものじゃあない」


「男だけどね⋯⋯」


「何の問題がある」


「いや⋯⋯」


 まぁ確かに⋯⋯。そこに関してはそれなりに恵まれてるかも。遥様にゃ感謝感謝雨あられって感じだよ。


「メグル、彼だけは絶対に守り抜けよ」


 変なフラグ建てないでぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!もぉ〜〜〜〜〜〜〜!!


 こんな具合で俺の日常生活は送られる。

 今じゃラックスも加わって、そこそこ愉快になった気はする。ほんとにそこそこだけど。


 そして遂にあの日から1週間が経とうとしていた⋯⋯。日常編はもう終わりだ⋯⋯⋯⋯。

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