第2話 知ってること。知らないこと。
〜前回のあらすじ〜
理不尽な殺意に対して理不尽なヒーローパワーを手に入れた!環ユウキくん!
だけどもこんな状況で頭はちんぷんかんぷん!とりあえずの情報整理だ!
かわいいかわいいヒロインも出ると思うけどイメージは各自自由に想像してくれ!
「ん゛んん⋯⋯⋯⋯ふわあぁ〜ぁん⋯⋯」
「おはよう、メグル」
「あぁ⋯⋯おはようございます⋯⋯」
ずっと道端で寝てたんだ⋯⋯。今何時だろ⋯⋯。⋯⋯早朝5時、まだそこまで時間は経ってないな。お父さんお母さん起きてなきゃいいけど。
「とりあえず今のうちに帰るけど⋯⋯ウチ来る⋯⋯?」
「初めからメグルと共に暮らすつもりだ」
「あぁ⋯⋯。だよね⋯⋯」
とりあえずそそくさと家に帰り部屋にすぐ戻る。二度寝したい気分だけど最初はこのオモチャへの質問が先だ。
「じゃあ寝ちゃう前に聞こうとしてたこと、何個か質問するけどいいすか」
「構わない、知っていることならなんでも教える」
「とりあえず君はなんなの?名前は?」
「それは私もわからない」
わかんねーのかよ。そういうキャラかよ。
「記憶喪失とか?」
「記憶も、名前も、元からあるのかすらわからない⋯⋯すまない⋯⋯」
「別に謝ることないけど⋯⋯。とりあえずなんて呼ばれたい?」
「メグルの呼びやすい名前で構わない」
んーー⋯⋯。ポキモンのニックネーム付けるのとは訳が違うからな⋯⋯。なんか緊張する⋯⋯。
「それじゃあ、光る!鳴る!デラックス!って感じがするから⋯⋯⋯⋯『ラックス』⋯⋯とか?どうでしょうか⋯⋯?」
「では私はラックスだな、改めてよろしくお願いする、メグル」
「よかった、じゃあラックス、よろしくね」
いや名前とかじっくり決めてる場合じゃないでしょ。質問質問⋯⋯。
「ラックスが今現在知っていることは、例えばどんなこと?」
「私が知っているのは先程倒した敵のこと。それとなぜ君を変身させたか。まぁなぜ知ってるかは覚えていないし、なんとなくの感覚で把握してるような状態だが⋯⋯」
「じゃあとりあえず一番気になるその敵のことかなぁ⋯⋯。なんなのあのバケモノは」
「アレは人間の悪意を探知し、その悪意ごと人間を喰らい、融合し、見ての通りのバケモノになる。」
あぁ⋯⋯。なんだかそれっぽい設定だ⋯⋯。
「その悪意?ってのは悲しみだとか、怒りだとか、憎しみとか⋯⋯そういうマイナスエネルギーに反応して喰ってるってこと?」
「いやもっとシンプルだ。大なり小なり、誰もが持つ悪意に内側から入り込みそれを喰らう。残るのは肥大化した悪意のみ。」
みんなああなっちゃう可能性があるのね⋯⋯。おっかねぇ。
「んじゃあなんで俺だけピンポイントで狙われたんだろ?」
「それは⋯⋯そういうキッカケだからだ⋯⋯。私とお前が出会い変身する⋯⋯。何故だかわからないが、そう決まってる気がする」
えぇ⋯⋯??それはちょっとフワフワしてて納得いかないぞ。
「じゃあザックり言うとそういう運命ってこと?」
「そういうことになるな。そこだけは何故か確信が持てるんだ。」
う〜〜〜〜〜〜ん⋯⋯⋯⋯。ものすっごいループ物の香りが⋯⋯。SFって感じがぁ⋯⋯。
なんだか今いる自分の世界が急に、偽物のような、作り物のような⋯⋯そういう舞台になって主人公をやらされている、そんな気持ち悪さを感じて少しだけ気が滅入る。
そんな思いをかき消すかのようにふとある事を思い出す。
「アレ!?そういえばそのバケモノって人間だったんだよね!?俺それを殺しちゃったわけなの⋯⋯?」
「だがもう人間ではない」
「じゃあいいか⋯⋯」
まぁそういう割り切り方をしなきゃ、やってられないよなぁ⋯⋯。下手すりゃそのまま殺されていたわけだし⋯⋯。気の毒だけど。知らん人だし。南無南無。
「うぅーんあとは⋯⋯その敵に名前はあるのかな」
「それは私もわからない。元からないのかもしれないな」
「じゃあ敵は敵だからテキでいいや」
もうその辺は適当だ。敵だからテキなんだ。
「ちなみにだが、そのテキは1週間に1度、決まって1回現れる。またその1週間後はいつ出てくるかわからないからな。気をつけてくれ」
??? 何そのルールは⋯⋯。まるで週1放送のアニメの敵みたいに、そんな感じで出てくるってこと?
1週間に1度出てくるのが確定してるのも嫌だなぁ⋯⋯。
「もしかして毎週日曜日の午前9時とか?」
「そうとは決まってないはずだが⋯⋯」
「だよね。冗談。」
えぇとあとは⋯⋯変身のことか。
「じゃあ後は変身について何か知ってること。ザックりと。」
「実はメグルと私の変身についても未知の部分が多いのだ⋯⋯。一つだけわかるのは、私たちでなければあのテキは倒せない。それだけだ」
「ひえ〜〜〜〜思ってた以上にザックリだ。ラックスはテキのことはたくさん知ってるけど、自分のことはなんにも知らないんだねぇ⋯⋯。」
「すまないな⋯⋯。あまり役に立てなくて⋯⋯」
「謝んなくていいって。むしろいろいろ正直に教えてくれてありがとう」
ほんとに正直に話してるのかはわからないけど、今はラックスの言うことを信じてみるしかない。多分騙してるとかはないでしょ⋯⋯。
「もっと聞くべきことがありそうだけど⋯⋯。とりあえずこれで最後かな。なんで俺の名字を知ってるの?」
「すまないがそ」
「わかってる、覚えてないけど何故か知ってるんでしょ」
「いやまぁそうなんだが⋯⋯名字だったんだな⋯⋯。下の名前はなんて言うんだ?」
アレ?そこは知らないんだ。
「じゃあまた改めて。『環 ユウキ』って言います。よろしくね」
「そうなのか、よろしくな。メグル。」
「下の名前でいいって」
「いや、何故かはわからないが、メグルという呼び方が私の中でこう、かなりしっくりくるのだ。呼び慣れてるというのか⋯⋯。」
うぅーーん、ますますループ物の匂いがしてきました。俺も前世でラックスと共に戦った感覚、なんとなく感じてきたね?全く覚えはないけど。
「じゃあまた来週頑張りますか⋯⋯。またまたおやすみなさい⋯⋯。」
「おやすみ、メグル」
とりあえずまた寝て、昼間に起きて、いつも通りの日曜日を過ごす。というのも、家でゲームをし、スマホでSNSとまとめサイトを眺めるだけの虚しい休日ですけども。
早朝にそれなりにおしゃべりした仲だけど、部屋に置いてあるラックスは今朝ほどそんなに話しかけてこない。必要な話以外はしないタイプか。
深夜のあの出来事はもう夢だったような気もしてくるけど、あの時出会ったラックスは確かにここにいる。また来週には理不尽な殺し合いが始まる。
そんなことを考えていても憂鬱になるだけなので、とりあえず明日の学校に備えてもう寝ようか⋯⋯。
「おやすみ」
「おやすみ、メグル」
そして月曜日の朝。
「おはよう」
「おはよう、メグル」
やっぱり挨拶は欠かさない。記憶はないけど育ちはいいんだろうな。
「準備完了。それじゃ行ってきます」
「待ってくれメグル、私もメグルと一緒に学校に行きたい。君がどんな生活を送っているのか興味がある」
「えぇ〜〜⋯⋯。まぁカバンに入れるくらいなら⋯⋯。あと学校じゃあまりお喋りできないからね」
「ありがとう、感謝する。」
ラックスをカバンに入れて今度こそ出発。行ってきます。家を出ると小学生の頃からのご近所さんが玄関前で待っていた。
「あっ、ごめんね!また待たせちゃって!」
「大丈夫!そんなに待ってないから!じゃあ学校行こ(*^^*)」
「うん」
やわらかい髪質でボブカットを可愛くキメてる元気な女⋯⋯女⋯⋯これが女の子じゃないんだなぁ⋯⋯。
『叶多 遥』
高校進学と共に女装に目覚めた数少ない俺の友達。