第1話 確かそれは何回目かのキッカケ
急に始まり急に襲われ急に変身し急に殺す。
1話はそれだけのお話です。主人公がどんな奴かをほんの少しだけ知ってもらうだけのお話。
何から説明すればいいんだろう。状況か。設定か。自己紹介か。
自己紹介からにしよう。俺の名前は「環 ユウキ」。「環」は「かん」じゃなくて「めぐる」って読む。なかなか珍しい苗字でしょ。
とある田舎町に住んでる高校1年生。好きな食べ物はケーキとかクレープとか甘いやつ。嫌いな食べ物は野菜全般、好きな女性のタイプは清楚系で優しくて⋯⋯。好きなアニメは⋯⋯。
いや、自己紹介はこの辺でいいか。次は状況説明ね。
上手く説明できる自信はないけど、どうやら今の俺は気色の悪い人型のバケモノに襲われて逃げてるみたいです。しかも日曜深夜の2時。急に甘いものが食べたくなって近くのコンビニに行ったらコレだよ。なんなの。
意味わかる?わかんないよね?このまま訳のわからないまま死ぬのかな俺。こうして今瞬時に脳内に作り出した「みんな」に語りかけてないと恐怖と孤独感でおかしくなりそうだ。いやもうなってるのかも。
そうこう無駄なこと考えてるうちに、その気色の悪いバケモノに見つかってしまう。そりゃあ自販機の影だとバレるよね。冷静じゃなかった。あぁ、終わった。
バケモノが人間とは思えない力の左手で俺の首を掴み、右手をグーの形にして、人間とは思えない速度のグーパンチを俺の顔面に⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯
ーーーーーーーーこの人生、特に思い返すほど楽しい思い出もなかったなぁ⋯⋯。お父さん、お母さん、先立つ不幸をお許しください⋯⋯。
ドガァァァァアーーーーーーン!!!!!!
あぁ⋯⋯。ほんとに死ぬほど痛いってのは痛みを感じないんだな⋯⋯。⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯いや死んでない!?
目を開けてみると奇妙なおもちゃのようなゲーム機のような、そんな物体がバケモノの拳を受け止めている。助かったけど更に意味がわからない。まさかこれを使って変身しろっていうんじゃないんだろな。
「大丈夫か!メグル!」
そして当たり前のように喋り出すおもちゃ。
「だっ⋯⋯大丈夫っス⋯⋯ありがとうございます⋯⋯」
「そうか⋯⋯!ならば説明は後だ⋯⋯!俺を使って変身するんだ!」
ほらやっぱ変身だ。でもそれで助かるのなら⋯⋯!
戸惑いや躊躇は特になかった。今はただ死にたくない一心でソイツを手に取り、なんだかそれっぽいボタンを押してみる。
その「変身」は一瞬だった。体に何かがまとわりついて驚いたバケモノの手が首から離れる。その隙を俺の体は見逃さなかった。
勝手に腕が動きお返しの右ストレート、気持ちがいい。
よろめいたバケモノの腹にヤクザキック、超快感。
倒れたソイツに馬乗りになりあとはめちゃくちゃにタコ殴り、最高の気分だ。
殴り続けているうちにソイツの体がピクピク痙攣するようになっていく。なんだかヤバそうな⋯⋯。
「メグル。夢中になるのはいいがそろそろトドメだ。」
トドメとかあるのか⋯⋯。タラタラしてられないのでそれっぽい必殺技を瞬時に使う。
「死ねキック!!!!!!!!」
我ながら酷すぎるネーミングセンスだ。死んで欲しい気持ちを抑えきれず声に出てしまった。
サッカーボールを蹴るみたいにバケモノの体をブッ飛ばし、さっきまで生きてたソイツは遥か上空で爆発四散。やっぱりこれはまるでヒーローモノだ。
「殺したのか⋯⋯?殺したよな⋯⋯?」
「あぁ、おそらく復活するようなことはないだろう。」
とか言いながら爆発の中から何かのパーツのようなものがどこかに飛んで行くのが見えたが、今はそれを追う気力もない。めちゃくちゃ疲れた⋯⋯。
「じゃあいろいろと説明してもらうからね⋯⋯。なんで俺は襲われたのか、アイツはなんなのか、なんで変身できたのか⋯⋯。」
こうしていろいろ聞こうとしてる内に眠くなり変身解除。意識が遠のいてくる⋯⋯。
辛うじて最後に聞こえた気がしたセリフは⋯⋯。
「今のは全てのキッカケだ。」
やっぱこれからもそういうことがあるって事ね。おやすみ。
読んでくれる方がいたら続きを書きます。そうじゃなくても書きます⋯⋯。暇な時に⋯⋯。