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BFT-015「適材適所・前」


 探索者の、昇格試験。


 それ自体は、何か強くなるとかそういった効果はない。

 単に、クリスタリアでの扱いというか、わかりやすい評価が変わるという物らしい。

 身分証って感じなのかな?


 ちなみに、登録するとまず駆け出しであるFから始まり、2段階ほど上のDになれば余裕のある生活が出来ると言われている。

 古代文字である言葉の頭文字がランク表記らしいけど、全部は知らないし、知らなくても大丈夫。


「探索者さんによって、得手不得手や強さのばらつきがありますからね。探索者のランク自体はあくまで参考、となりますが」


「それでも、クリスタリアにいる限りはその影響力は馬鹿に出来ない……例えばそう、家を借りようとしたりするときには」


 受付のお姉さんは、それ以上は語らずにただ頷くだけだった。

 試験自体は種類が用意されているらしく、何枚かの板が目の前に出された。


 特定の薬草を一定期間に採取すること、特定の怪物を討伐すること、などなど。


「正直、その……」


「難しくなさそうで、拍子抜けしました?」


 そのまま頷くのもまずいかなとは思いつつ、嘘は付けずに軽く頷いた。

 実際、やろうと思えば何個かは確実に出来るだろうなと思う物ばかりだ。


 これが昇格試験なら、もっとFから上がっている人が多いと思う。


「いくつか理由はありますよ。まず1つは、この試験はあくまでギルド側から話があって初めて有効なんです。先に達成して、試験を免除ってことにはなりません。定期的に中身は微妙に変えてますしね。他にも、あくまで試験は確認事項でしかないってこともあります。皆さんの納品、依頼の達成状況等から、十分な実力があるなと思った人にだけ提示されるんですよ」


「つまり、僕たちは言い方を悪くしたら便宜を図るだけの価値がある探索者だと認められたってことですね」


「身もふたもないですが、そういうことですね。何分、多くの方がFランクとなって、そのままいなくなるか安定して稼げませんから」


 その点、ブライトさんたちは最近すごい安定してますよ、と言われる。

 確かに、ソロの時と比べたらカレジア、ラヴィと一緒に戦ってるだけでも十分。

 さらには、最近は戦い方も色々考えて自分でも、お金がたまってるなって実感がある。


「主様は、サボらないからね」


「そうですよ。本当はもう少しゆっくりでもいいと思うんですけど」


「ありがとう、2人とも」


 2人とも、僕からの魔力で疲れも怪我も治ったり、回復できるからと僕のことを良く気にしてくれる。

 僕としては、だからといって2人が率先して傷つくような真似はしてほしくないんだよね。

 妖精との付き合い方としては、主流ではないなという気持ちもあるわけだけども。


「そういうところも、今回のお話の理由ですね。ギルドとしては、珍しい双子の妖精ではないかと注目してるんですよ」


「「双子??」」


 打ち合わせしていたかのように、声を重ねるカレジアとラヴィ。

 顔を見合わせる姿は、姉妹のようで、双子のようで……可愛いのは、間違いないよね。


「以前お話したように、大体の方は一定以上のランクから妖精と契約します。最初から強いほうがいいですからね。でも、低ランクのはずのブライトさんの妖精には他にはない特徴があります」


 これは言われなくてもわかる。飛翔能力だ。

 たぶん、高ランクにもいないわけじゃないんだろうけど、かなりレア。

 それが2人とも、となれば……ああ、なるほどなあ。


「わかりました。どれがいいですかね」


「どれでも構いませんよ。まあ、希少薬草の採取なんかが、やり手が少ないので助かるのは事実ですが」


 となればそれを選ぶことにしよう。

 以前、七色草をたくさん見つけたこともあるし、採取系とは相性が良さそうだ。


 具体的な採取対象を確認して、2人と一緒にギルドから出る。

 もう隠すこともないようなので、2人して軽く飛び、僕の肩に乗る。

 ひじから先ほどの背丈である彼女らが乗ると、人形で遊んでいるようで不思議な気分だ。


「ゴブリン滑りと、コボルト酒茸? 変なの」


「あまり聞きませんね。どちらもキノコの類の様ですけど」


「ひとまず、プロミ婆ちゃんに聞いてみようかな」


 こういう時は、先達の知識に頼るのも大事だと僕は学んでいる。

 効率よくと言えばいいだろうか? 同じ魔法を再発明することもないよね。


 ついでに、必要であれば余分に採取したりしてみようかなとは思っている。

 そんなつもりで、訪ねてみると先客がいた。

 確か……炎竜の牙の1人、筋肉どーん!って感じの体格の良い人だ。


「ん? おお、人形使いか。姉御のお気に入りらしいな」


「人形使い、ですか。出来ればそう呼ばれたくはないですね。2人は人形じゃあないんで。そのぐらい可愛らしいのは認めますけど」


 マスター、とか2人のつぶやきが聞こえる。

 いちいち、つっかかることじゃないのかもしれない。

 でも、いくらあこがれるような先輩探索者だとしても、通したいものはあるんだ。


「悪い悪い。俺もそのぐらい可愛い妖精を連れているってつもりで言ったんだ。幼女なんとかと呼ばれるよりはマシだろう?」


「まあ、そちらと比べるならそりゃ……不本意ですが」


 お互いの妥協点を確認しつつ、カウンターへと向かうと、プロミ婆さんが鑑定をしているところだった。

 持ち込んだのはこの人に間違いない。


「ほれ、変な嫉妬で小僧をからかうんじゃないよ。鑑定は終わったよ。このぐらいでどうだい」


 僕たちの目の前で、やり取りされるのは金貨だった。

 近いうちに、僕たちも金貨をやり取りできるように……そう思いながら空くのを待つ。


「じゃあな、天塔で出会ったらよろしく」


「こちらこそ」


 どこまで本気かわからない話をこなし、プロミ婆さんと向き直った。


「それで、今日は何の用だい」


「少し聞きたいことがあって……」


 ギルドの昇格試験の事を告げ、採取対象のことで聞きたいことがと伝えると、真面目な顔つきになった。

 それだけ厄介だったんだろうか?


「物は珍しくないよ。知られているかという点ではね。ただ……このあたりに採取できそうな場所があったかどうか……ああ、一応あるね。天塔の裏側に川が流れてるのは知ってるだろう? その近くにある岩場、そこになら……でも気を付けるんだよ。足場は悪い、歩けばすぐにこけるだろうさ」


 言外に、2人の出番だ。上手くやるんだよなんて言われた気がした。

 お礼を言って、2人と一緒に現場に向かうことにした。



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