新たな世界
異世界からこんにちわ、第2話です
眩しい太陽の光、小鳥の囀りが聞こえる。この音は………水か?水が近くにあるのか。涼しい風が吹き、木々が音をたてて揺れる。
俺は瞼を開けた。真っ暗だった視界に次第に光が差し込んでいく。
そこは森の中だった。一面緑の森の中。
取り敢えず右、左と見回してみる。
左右どちらともとにかく木が生い茂っている。自分のいるこの場所が森のどの位置なのか、知る由もない。
「ぐぅ〜。」
と、間抜けな音がなった。
音の発信源は明らかに俺の腹であり、目が覚めた辺りから空腹感を覚えていた。
俺は伸びをした後、
「よし、取り敢えずは食料と水の確保だな。」
早速行動を開始した。
食料は意外にも沢山あった。
周りの木々にはりんごやら梨やらが沢山実っており、1週間位は耐えられる量を確保しておいた。
それだけの量の食料をどう確保できたのかって?
それは、俺のズボンのポケットが四次元空間になっているかららしい。
誰に教えられた訳でもないが、何故か頭の中にその情報が入っていた。不思議な事もあるもんだ。
「いくらズボンとはいえ、どこのドラ○もんだよ……。」
と呆れながらも周囲を散策する。
今のところ、“異世界”というわりにはモンスターの一匹も出ておらず、平和に散策が続けられている。
一旦森を抜けてみようかと思っていたら、
「…?なんだ、この音は?」
水か?そういえば目が覚めた時、かすかに水の音が聞えた気がする。
でも、辺りに水らしきものは一つもない。俺、聴力も人並み程度なはずなんだけどなぁ…。
そんな事を思いながらも、音の聞えた方向へ進んでみる。
すると、目の前には澄んだ水の泉があった。
俺は目を奪われ、少しの間頭の中が空だった。
……だったから、それに気づくのに遅れたのだろう。
「……ん?」
そこに居たのは、裸体の女。
この泉で水浴びでもしてたのだろう。綺麗な裸体の女の子がそこに居た。
女の子はハッと俺に気がつく。
と、同じタイミングで俺も正気に戻る。
「…………。」
「…………!!」
お互い無言が数秒続いた後、
「え、あ!ご……ごめん!!」
「きゃぁぁぁぁあああ!!」
女の子の悲鳴が森中に響いた。
俺は彼女の投げた石鹸とも思えるものを額にもろに受け、気を失った。
目が覚めると、そこは家の中だった。
俺が寝ていたのはベッドの上、仄かに良い香りがする。
なんて思っていたら、「ガチャッ」という音ともに右前方のドアが開いた。
ドアの向こうから現れたのはメイドさんだった。
黒い猫耳を付けたメイド。パッと見外見だけなら10歳位だろうか?
「お目覚めになられましたか?」
「え?あ、うん。君が世話してくれたの?」
「いえ、あなたが眠っている間のお世話は主が行いました。」
主…ねぇ………。泉であったあの娘の事だろうか?
すると、パタパタという足音に続いて件の女の子が姿を現した。
泉で俺が裸体を見てしまった女の子。
どの位の距離があったのかは知らないが、ここまで俺を運んでくれたのだろう。
女の子は俺の前までくると、
「あの………ごめんなさい!!」
と、急に頭を下げた。
えーっと……?俺はこういう時どうすればいいんだ?
女の子に頭を下げられた経験なんて無い俺は、どうすればいいのか分らずにただ頭の中で言葉を練っていた。
「いいよいいよ。頭上げてよ………ね?」
「あ、はい…。すみません…。」
女の子の顔は随分と赤くなっている。風呂上がりなのだろうか?
それにしては髪は濡れてないような…?
「こっちこそごめんね。急に裸なんて見ちゃって………。」
言ってて恥ずかしくなってくる。
と同時に、“裸を見る”というワードに反応したのだろう。
メイドの猫耳がピクリと動き、とてつもない殺気が俺に向けられた。
「貴様のような下衆が………!主の裸体を見ただと………!?」
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!怖いぃ!!
あれ………?口の中に見えるの…牙だよな…?
って!そんなこと考えてる場合じゃない!俺死ぬよ!このままだと死んじゃうよ!!
「ストップ!メイリ、大丈夫だから。あれは私の不注意でもあるし、お互い様だから、ね?殺気抑えて。」
「…………主がそう仰るなら………。」
“メイリ”と呼ばれた少女は殺気を解き、前と変わらない表情に戻っていた。
そして、“主”と呼ばれていた女の子は俺のベッドの前まで来ると、
「始めまして。私はリーナっていいます。こっちの子は、私の専属メイドのメイリ。よろしくね。」
「よろしくお願いします。」
「俺は…………」
まて、これは本名を名乗っていいのか?前と同じなら悠真だが………今の感じからして、名前は全部カタカナ表記だと思う。なら、本名を少しいじって……。
などと考えてから、
「俺はシュウヤ。よろしくな。」
と、手を差し出した。
リーナは、少しビックリした様子だったが、俺の手を握り返してくれた。
これが、“俺”ことシュウヤの誕生の瞬間であり、リーナとの初めての出会いだった。
メインヒロインとの出会いは、主人公の運命を変えるのです、多分