第9話 寝る子は育つ、良い子は寝る時間、早寝を促す言葉はあるけど、徹夜を応援する言葉が欲しい
こんにちは!
明日葉晴です!
更新遅くなってごめんなさい!
ついでに二話構成って言ったのに尺が長くなってもう一話追加で必要になりました!
重ねてごめんなさい!
私は最近徹夜が出来なくなってしまいました。
おかげで色々やりたいことがあるのに全く進みません。
あ、更新遅れた言い訳をしたいわけじゃないです。
送れたのはスケジュール管理の甘さのせいです。
では、本編をどうぞ!
私は幽霊が視える。
「へぇ…ここが茜さんの部屋かぁ…」
これまでも何人も視てきたけど、家に招いたのは初めてだ。
「てか、女の子の部屋って初めて入ったなぁ…」
それを今言うのは割と卑怯だと思う。それよりもじろじろ見ないでほしい。恥ずかしいから。
「はぁ…とりあえず落ち着いてもらっていいですか?」
○
手越さんの家から帰ったその日、私は早速マンガの作成に取り掛かることにした。
「ではこれから漫画を描いていくわけなんですけど…この…ネーム?を基本に清書していけばいいですか?」
「うん、そうだね。俺のはもうコマ割りとか全部決めてるから、おおざっぱに言えばそれをもとに綺麗に仕上げていけば完成だね」
「了解です!じゃあ描き順とか知らないんで1ページずつ仕上げちゃいますね」
そう言って私は、手越さんのネームをもとに白紙の原稿に定規で線を引いていき、マンガのコマを作った。
「とりあえず、最初のページはこんな感じかな…さて…いよいよ絵を描いていくわけなんだけど…」
ここからが難題だ。昔に描いた手越さんのマンガの絵を横目で見つつ参考にして、ネームに描かれているキャラを練習で適当なノートに描いてみる。
「うーん…やっぱりなんか違うような…?」
キャラを一人仕上げえてみたけど何となく違和感がある。大まかには真似ていることはできているけど、素人の私でも違和感があるから、手越さんの絵を見慣れている人には大きく違いが判るだろう。
「どうですか?」
「うーん…そうだね…確かに俺の絵に似ているけど、バランスが少し違うね。耳はもう少し小さめでやや下の方に。目をもう少し離して眉毛との間隔は少し狭めて。輪郭はもう少し細くして丸みを減らして」
「なるほど…了解です!」
そうして試行錯誤すること数時間。時刻はすでに零時を回った頃。ようやくすべてのキャラが納得のいくものが出来上がった。
「どうですか?」
「うん。どのキャラも俺が描いたものに見えるね」
「やった!じゃあこの感じでコマにキャラを描いていけばいいですね!」
「そうだね。…でももう遅し時間だし寝ないといけないんじゃない?明日も学校はあるでしょ?」
確かに明日は平日だし学校はもちろんある。けど、私にとっての最優先事項は幽霊の成仏だ。それだけは譲れない。
「大丈夫ですよ!一日くらい学校行かなくても平気です!それに、ようやく描き方をつかんだのに寝ちゃったら、また描けなくなるかもしれないじゃないですか。だから今日は体力の続く限り描きますよ!」
「でも…」
「気にしないでください。私が成仏させてあげたいんです。私がしたいことをやるだけなので無理とかしてるわけじゃないんです。…さて!じゃあやりますよ!」
まだ何か言いたそうな手越さんをよそに、私は集中して絵を描き始めた。
○○
気付くと私は眠っていたようで時刻は朝の六時。私がいつも起きる時間だった。
やっば…いつの間にか寝てた…どこまでやったっけ…?
私は手元の原稿を見ると、数ページだけ絵が描かれてる現実を知った。
あちゃぁ…全然進んでないや…って、あれ?手越さんは…?
辺りを見回すと、手越さんの姿が視えなかった。
「手越さん?いませんか?」
出来るだけ声を抑えて、それでもはっきりと聞こえるくらいの声の大きさで呼び掛けた。
「やあ、おはよう。よく眠れたかい?」
「おっと!びっくりさせないでくださいよ!」
「あはは。幽霊っぽいことしたみたくて」
天井から逆さまに上半身だけを出した手越さんが声を掛けてきた。心臓に悪い。
「一気に目が覚めましたよ…と言うか、寝てたの知ってたなら起こしてくださいよ。全然進んでないじゃないですか」
「いやいや、睡眠も大事だと思ってね。それに体力が続く限りって言ってたから。そのままにしておこうと思って」
「それでも進捗の方が大事ですよ…まぁいいです。再開しますか」
そう言って私はマンガを再開した。
「いやいや、学校でしょ?準備とかいいの?」
「このペースだと学校行ってたら終わらないので今日は休みます。多分明日も」
「そこまでして終わらせなくても…」
「いえ、これは絶対に終わらせます。未練を晴らさなきゃダメなんです」
「どうしてそこまでして…」
どうして…そんなことは決まっている。
「私がやりたいから。絶対に後悔したくないからです」
もう二度と未練が晴れない幽霊を視ない為に…
「そっか…なんでそんなに頑ななのかは聞かないけど、無理はしないで。お願いを聞いてもらってる俺が言うことじゃないかもしれないけど…」
「はい。大丈夫です」
そうして作業を再開した。途中、お母さんが私の部屋に来て学校に行かせようとしたけど、適当な理由で休むことを伝えた。幸いにも深くは聞かずに納得したように部屋を出ていってくれた。
それにしても…
「あー…思ったよりも疲れる…」
人の絵を真似して描いているからすごい神経を使う。完璧じゃなくても違和感の無いように描くにはその人の癖とかを真似して描かなきゃいけないし、自分の癖とかは出せない。無意識に自分の癖とかが出ると描き直さなきゃいけないし、一度描いた絵を何度も見直して間違いとかを探すから、一コマ描くのにもかなり時間が掛かっていた。
「大丈夫?ちゃんと休憩しないと」
「あ、えっと…大丈夫です!ちょっと疲れただけなので!まだまだ余裕です!」
「いやそうはいっても…だいぶ時間たってるよ?」
「はい?」
そう言われて時計を見ると時刻は午後五時。気付けばもう夕方だ。
「嘘!?もう!?ペース上げないと!」
焦りを感じて再び作業を開始しようとしたその時。
「茜ーお友達よー」
「ふぇっ!?なんで!?」
ノックの後にお母さんが扉を開く。すると後ろには見慣れた顔が三人。
「茜、大丈夫?」
「おすおす!元気やったか!?」
「見たところ元気みたいだけれど…何してるのかしら?」
「みんなどうしたの!?」
お母さんの後ろから、美和、舞、小夜がそれぞれ声を掛けつつ入って来た。
「皆さん、茜のことを心配してきてくれたのよ?皆さん、この通り娘は元気ですから、心配かけた分、存分にいじめても結構ですよ」
「それが母親の言うことか!?」
「ゆっくりしていってくださいねー」
「ちょっと!?」
私の主張を無視して部屋を出ていったお母さん。確かに心配をかけたのは悪いけど、あんまりだと思う。
「それで茜、今日はどうして休んだの?風邪じゃないみたいだし」
「あー…それはー…」
「なんや、おもろそうなことしとるやん?」
「あ、ちょっと!」
美和にどう説明しようか迷っていると、舞が机の上にあるマンガを見ていた。
「これは…マンガかいな?」
「そうだよ…それを描き終えなきゃいけないから今日と、多分明日も休む」
「あら…茜、こんな趣味があったのね。私、気付かなかったわ」
「あたしも…親友だと思ってたのに…」
小夜は意外そうに、美和は少し落ち込んだ様子で感想を言った。残念ながら趣味じゃない。いや、趣味みたいなものの一環ではあるけど。
「いやぁ…趣味っていうか…その…なんて言ったらいいかわかんないんだけど…」
「何?一体どうしたの?」
「茜…もしかして…」
流石は親友の美和、なんでこんなことをしているのか見抜いたのだろう。
「そうだよ…幽霊の未練を晴らすためにやってるの…」
もう隠すことも出来ないと思って白状することにした。
「なんやて!?幽霊関係かい!せやったらウチになんで言ってくれんの!?どこや!?どこにおるんや!?」
「舞、ちょっと落ち着きなさい」
「ふぎゃ!!」
小夜が舞の顔を鷲掴みして強制的に静かにさせた。
「それで?一体そのマンガが幽霊とどう関係あるわけなのかしら?」
「茜、話して?あたしも力になれるかもしれないから」
「もちろん、私もできそうなら手伝うわ。幽霊の未練とかは知らないけど、茜にずっと学校を休ませるわけにはいかないもの」
「うふぃおおふふぇ!」
「みんな…ありがとう…!!あのね…」
そうして、私はずっと黙っていた手越さんを紹介した。実際にはみんなは見えないだろうけど。その後に今までの経緯と、なんでマンガを描いているのかを説明した。
「そっか…茜らしいね。あたしもできることやるよ!!」
「私も絵を描くのを手伝ってあげるわ」
「ウチもやるで!幽霊に関われるなんて感激や!!」
「みんな…本当にありがとう!」
「ほんと…いい子達だね…俺からもありがとうって伝えてもらっていいかな?」
「はい!みんな、手越さんもありがとうって言ってる」
「「「どういたしまして」」」
急遽人数が増えて、一時は作業を教えるとかしてペースが落ちたけど、慣れてきたら一人の時より格段に作業が早くなった。何より小夜が戦力になった。元から絵はうまかったけど、人の絵を真似する作業にもかかわらず、すぐに手越さんの絵の特徴をつかみ清書出来る様になった。
みんなでの作業はそのままお泊り会にまで発展して作業を進め、ちょっとだけ騒がしかったものの、何とか金曜の朝にすべての作業が終わり、無事に印刷所に原稿を渡すことができた。その日はみんな揃って遅刻をした。
○○○
土曜日。私は葬祭場に訪れていた。もちろん、手越さんの通夜に出席するためだ。
まぁまだ本人は幽霊としてここにいるけど…
自分の通夜が気になったのか、手越さんも一緒についてきた。
「こんにちは。手越さん」
「あなたは…来て頂いてありがとうね」
「いえ…私も呼んで頂いてありがとうございます」
「彼女さんに見送ってもらえるとあの子も喜ぶと思うわ」
「そう…だといいですね」
そうだった…この人には彼女っていう設定だった…
「あ、でも、別に引きずってもらいたくて呼んだわけじゃないのよ?ここできっちりお別れして、また新しい出会いを見つけて頂戴ね?」
「あ…はい…」
いやいや…そう言われても…まぁいいや…深く考えないようにしよう…
幽霊の手越さんを視ると、若干複雑そうな顔をしていた。
「じゃああそこで受付して適当なところに座ってちょうだい。もう少し時間があるから、お手洗いとか行っても構わないわ」
「わかりました」
示されたところで受付を済ませて、私は一旦トイレに行くことにした。
「なんかごめんね。こんなとこまで来てもらって…母さんもなんかちょっと失礼なこと言ったし」
「いえ…結局は自分の意志でも来たのでいいです。勘違いも…まぁしょうがないですし…」
人気のないとこまで来ると手越さんが声を掛けてきた。さっきのやり取りを申し訳なく思ったようだ。
「そう言ってもらえると気持ちが楽になるよ」
手越さんは少しだけ安心したようにそう言った。
「それにしても、なんか変な気分だよ。自分の通夜を見るなんてね」
「自分から言いだしてそれですか」
「ははは。まぁそうなんだけどね」
「普通は見ることなんてありえないですから、そう思うのも無理はないかもしれませんけど」
「そうだね…未練が無ければこうすることも出来なかった…か」
未練があることをどう思っているのかは手越さんの表情からは読めなかった。
「絶対に…未練を晴らしましょうね」
「うん…ありがとう…」
通夜はつつがなく進み、私は帰って行った。手越さんはそのまま残ると言って、次の日の葬式の様子も見ていくようだった。
手越さんの未練は後は出店するだけだ…無事に終わらせよう…
通夜を見たからか、改めて決意してマーケットに臨むのだった。
第9話を読んで頂き、ありがとうございます!
今回はちょっと物語の進行が強すぎてテンションが低かったかもしれないですね。
えっと、前書きでも話した通り尺が長くなってしまったので、手越さん編?は次回まで伸びます。
次回はテンション高めで頑張りたいですね。
ブックマークして頂いてる皆さん、そうでない皆さん。
いつも読んで頂き、ありがとうございます!
次回もお付き合い頂ければ幸いです!
すみません!!
次回の更新は6/30に更新します!
本当にごめんなさい!!
6/23追記