第57話 行き先の名前と場所を知らずに歩き出せば、それはほぼ迷子
こんにちは!
明日葉です!
遅れに遅れています。
大変申し訳ないです…
ついでに今回は少し短いです…
今回は二話構成にします。
一話にすると微妙に長くなりそうなので…
まぁ久しぶりに二話構成にして美和ちゃん編に入る前に準備運動しとこうかと。
それでは本編をどうぞ!
私は昔から幽霊が視える。
「もっと…静かなとこのような…?」
そんな私が幽霊の成仏を手伝う場所として使う、ほぼ人気のない神社があるのだけど、珍しく誰か、と言うか幽霊がいた。浮いてるから間違いない。
「他を探してみようかな…」
何か探してるらしいその女性は、首を傾げて当たりを見回していた。私に気付いていないのか、それとも気付いていて私が視えていないと思って無視してるのかは分からない。とりあえず声を掛けなきゃ始まらないだろう。
「あの…そこの人、生きてますか?」
「おや?誰かいるのかな?」
「……え?」
◯
私がふよふよ浮いているお姉さんに声を掛けると、きょろきょろと見回した。明らかに目の前にいるのに私と目が合わないとこを視ると、私のことが見えていないのだろうか。まさか幽霊から私が見えないなんてことがあるのだろうか。
「すみません。私はここです」
「おっと、そっちの方なんだね。ごめんごめん。あたしはほとんど目が見えないんだ」
「あ、そうなんですか…それは…すみませんでした…」
「いいよいいよ。知らなきゃ知ればいいのさ。それに見た目は普通…だと思うしね」
私がお姉さんに声を掛けると、丁度私と逆方向を見ていたお姉さんが、頭を掻きながら申し訳なさそうに笑って振り返った。幽霊が人を見れないことがあるのかと思ったけど、どうやらお姉さんに事情があったらしい。あまり触れちゃいけないところだと思って私が謝ると、お姉さんはからからと笑って許してくれた。
見た目普通って言うか…美人だよなぁ…健康的な感じ…
「っと、普通と言えば、あたし幽霊だと思うけど、きみは良くあたしが視えるね?」
「あ、はい。私は幽霊を視て話すことが出来るんです」
「へぇ、ホントにそんな人がいるんだね。驚きだぁ…あ、あたしは日野藤亜子。亜子でいいよ」
「あ、はい。私は三葉茜です。亜子さん」
「茜ちゃんね。うん、覚えた。でも硬いよー?敬語はいらないし、呼び捨てでもいいよ」
「呼び捨てはちょっと…」
「うー…ん…じゃあ間を取って亜子ちゃんは?」
「え…あー…亜子…ちゃん」
「オーケー!グッド!ワンダフル!むしろこっちの方が良かった!」
なんか距離感掴めない人だなぁ…
お姉さん、亜子ちゃんが質問してきたから答えると、思い出したかのように名前を言ってきたから、若干戸惑いつつも名前を言い返した。何と言うか、距離が近すぎる上に話が色んな方向に飛んでる気がする。
「おっと、何やら戸惑った気配を感じるね。困らせちゃったかな?」
「あ、その…少し。嫌なわけじゃないけど…」
「そっか、それは良かった。いやぁ…あたし目が見えないからさ、自分から積極的に行かないと遠慮しちゃう人もいるから、ついつい」
「そう…なんだ…」
私にはない価値観だなぁ…
亜子ちゃんは自分の抱えている問題を理解していて、だからこそ自分から大きく踏み込むことにしているみたいだ。幽霊が視えるからと距離を置こうとしてしまう私とは真逆の考えだ。それは本当に尊敬出来る。
「しまった。自分で言っといて湿っぽくなっちゃったね。それで、茜ちゃんはあたしに何か用があったのかな?もしかしてナンパ?実は男の子だったりするのかな?」
「違うよ!ナンパでも男子でもないよ!」
「あっははっ!冗談冗談。幽霊の視える可愛い声の男の子なんて、滅多にいないだろうしね」
「幽霊が視えるってだけで滅多にいないけど。私以外知らないし」
「そうなんだ。家族も?」
「うん、視えない…と思う。私が視えるって言った時、凄く驚いた…と言うか、不気味なものを見た様子だったし」
「そっかぁ…あたしには分からない苦労も、いっぱいありそうだね」
「いや、それはお互い様だと思うよ。私も、亜子ちゃんの苦労が分かるって言えないから」
「たはは…こりゃ一本取られた」
「あははっ!」
奇妙な感じだけど、少しだけ戸惑った距離感もすぐに慣れてしまったみたいだ。傷の嘗め合いじゃないけど、お互いになかなか理解出来ない悩みを抱えているからだろう。悩みに共感出来なくても、そういうのがあるってことだけで奇妙な連帯感が生まれた気がする。
「それで、また話逸れちゃったけど、何の用だったのかな?」
「あ、えと、私は幽霊の成仏の…未練を晴らす手伝いをしてるの。だから亜子ちゃんにも、何か手伝えることがあればと思ったんだけど、何かない?」
「ほぉほぉ、それは感心感心。けど、あたしのお願いはなかなか難しいよ?」
「どんと来い」
「あっははっ!それは頼もしい。ならちょっとお願いしようかな」
また少しだけ暗くなった空気を変えようとしたのか、それとも自分で聞いてた本題を思い出したのか、再び私の用事を聞いてきた。私が幽霊に声を掛ける用事はただ一つ。未練を晴らす手伝いをすること。生きてる人には積極的になれない私だけど、これだけは消極的になってられない。
「あたしね、ちょっとある場所を探してるんだ」
「ある場所…?」
「そう。どこか分からないんだけど、その場所に行きたい」
それはまた…
亜子ちゃんの未練は、聞くだけならシンプルだった。多分誰だって持ってる思い出の場所を探してるらしい。だけど、亜子ちゃんはそれがどこか分からないと言う。確かに難しい。それに、亜子ちゃんは目がほとんど見えないのだから、かなり情報も限られて来るだろう。
「一応聞くけど、場所の名前とかは?」
「あっははぁ…多分分かってると思うけど、知らないんだよねぇ…」
まぁ…そうだろうね…知ってたらある場所なんて言い方はしないだろうし…
「それじゃあ特徴は?」
「うーんとねぇ…とても静かなとこだよ。あとなんか、いい匂いがするとこ」
「静かで…いい匂い…?」
亜子ちゃんに場所の特徴を聞いた後、私は少し黙ってみてから肺一杯に空気を吸い込んでみた。ひんやりとした空気と一緒に、神社の周りの木と湿った土の匂い、それと本殿の古い木材の匂いがして、とても落ち着く。私は好きだし、いい匂いだと言えばいい匂いだろう。
「でも、ここじゃないんだよね?」
「うん。もっと静かなとこだった。あと匂いも違う。甘い匂いがした」
「もっと静かなとこ…?え、というか匂いするの?」
「そうだね、匂いを感じるけど…なんか変?」
「あ、いや…初めて知ったから…」
幽霊って匂い分かるんだ…
今まで気にしたこと無かったけど、幽霊は匂いも分かるらしい。なにかで線香の煙とかご飯の湯気とかがごちそうになるって聞いたことがあるけど、それに関係するのだろうか。それとも亜子ちゃん限定なんだろうか。目が見えないからそっちが幽霊としても発達した的な。
それに、ここより静かなとこってなかなかないと思うけど…防音室とか何かかな…?
神社があるのは割と長い階段を上った山の上と言っても過言じゃない。だから普段、滅多に人は来ないし、だから私も安心して使っている。聞こえるのは、私達の話声を除けば、たまに吹く風の音と木が揺れる音くらいだ。風が吹かなければ、鳥の声はおろか虫の声すら聞こえない。
改めると…ここってめちゃくちゃ静かだったんだ…
「それで茜ちゃん、ここより静かなところって知らないかな?」
「うー…ん…ぱっとは思いつかないかなぁ…?」
「そっかぁ…」
「あっ!でもっ!一応私の知る他の静かなところに行ってみようよ!もしかしたらってこともあるし!」
「お、いいね!デートだ」
「デート…とは違うかもしれないけど」
「あははは!冗談冗談」
私が黙って考え事をしていたら、亜子ちゃんが質問をしてきた。私はそれに歯切れ悪く答えると、亜子ちゃんは少しだけ落ち込んだ様子を見せる。自信満々に任せてと言ったのに、落ち込ませてしまったから、私は慌てて代案を出すと、亜子ちゃんはからかう様に笑い直してくれた。
「それじゃあ、エスコトートは任せようかな?」
「はいっ!…って、どうやって連れて行こう?」
「鼻歌でも歌いながら歩いてくれれば、付いて行けるよ?」
「いや…めっちゃ恥ずかしいね…」
「じゃあスキップとか?タップダンスしながらとか…」
「もっと恥ずかしいんだけど!?」
てかスキップって…ちょっとデジャブなんだけど…タップダンスなんて出来ないし…出来てもやらないけど…
亜子ちゃんが笑った後に腕を組んで頷きながら私に案内を頼むと、私はそこで連れていく方法に疑問を持った。目の見えない亜子ちゃんを連れていくには手を引くのが一番だけど、幽霊には触れない。それで悩んでいると、亜子ちゃんがなんとも恥ずかしい方法を提案してきた。かなり前の話だけど、スキップで恥ずかしい思いをしたことを思い出して若干凹んだ。
「あっはっはっ!じゃあしょうがないから、少しそのあたりをいつもの調子で歩いてもらっていいかな?」
「え…?あ、うん。いいけど…」
今までで一番盛大に笑った亜子ちゃんが、その後に良く分からないお願いをしてきた。だけど黙って私は指示に従って、境内を適当に歩き回った。
「うん。オーケー!覚えた!」
「覚えたって…何を?」
「茜ちゃんの足音。癖とか歩調とかをね」
「そんなことも出来るの!?」
「まぁ目が見えないからねー。色々補うために」
「すごい…」
少し歩き回っただけで私の足音を判別出来るようになったらしい。記憶力とかどうなっているんだろうか。ちょっと気になる。
「ふっふっふ…他にも色々分かるよ?」
「え…例えば?」
「茜ちゃんの体重」
「ちょっ…!?まっ!嘘っ!?」
「茜ちゃんの体重はー…」
「まままま待って!?言わなくていいからっ!!」
二月を終えたこの時期の私の体重はマズイっ…!!
例によって二月中はお菓子を大量に持ち込んでいた私は、それを消費するのも大体私だ。美和達も食べてくれるとは言え、バレンタインの交換以外は基本好きな分だけしかあげてない。だから過剰に食べるというにはならず、結果的に私が大体食べている。
まぁ…舞は結構食べてくれるけど…
「まぁ、そこまで言うなら止めてあげようか」
「え、てかホントに分かるの?」
「うん。誤差はあるけど」
「もはや私の能力より凄いんじゃ…?」
超能力レベルの亜子ちゃんの能力に私は舌を巻いた。多分私の幽霊が視えるって力よりもよっぽどいないような気がする。だけどそれも目が見えないからこそだと思うと、素直に褒めていいのか分からないけど。
「それじゃ、早速行こー!」
「あ、うん。了解!」
そんな亜子ちゃんの驚きの能力はさておき、私は亜子ちゃんの思い出の場所探しに出掛けるのだった。
◯◯
と言うわけで私は早速静かだと思い当たるところに辿り着く。その間、私は周りに不審がられないように黙って歩いていたのにも関わらず、亜子ちゃんはしっかり付いてきていた。しかも私の隣にぴったりとくっついて。他の幽霊や人と違うのは、移動手段が浮いているという事くらいだ。
「さて、一か所目に着いたよ」
「おー?さてさて茜ちゃんが最初におすすめするスポットはどこかな?」
「墓地」
「おっとぉ?斬新なデートコースに亜子さんは戸惑いを隠せないぞぉ?」
「あー…ごめん。静かなとこってのを優先させたら真っ先にここが思い付いた」
てか自分では亜子さんって言うんかい…
私が一か所目に選んだのは近所の墓地。亜子ちゃんにも言った通り、静かなところで真っ先に思いついたのがここだったから来ちゃったけど、私もきた後でないと思った。本当に悪く思う。
「けどま、せっかくの茜ちゃんのおすすめだし、少し静かにしててねー」
「あ、うん」
私の考えを少しは気遣ってくれたのか、亜子ちゃんは私に静かにするように言ってからゆっくりと目を閉じて集中する。そのまますーっと上を向いてから少し動きを止めて、弾かれたように正面を向いて目を開いた。
「うんっ!違うねっ!」
「だよね!?ごめんね!?」
「あっははー!いいよいいよ!一発で正解の場所に着くとも思ってなかったし!」
「いや…正直当てる気ないって文句言われても何も言い返せない場所だし…」
墓地が思い出の場所になるわけないと少し考えれば分かることなのに、必死だったことを言い訳にしても無理があるチョイスだ。それでも笑って許してくれる亜子ちゃんは根本的に善人なんだろう。
「まーまー!気にしない気にしない!それに、なんか匂いは近い気がする…かも?」
「え?ホント?すぅー…」
亜子ちゃんが更に私を励ますように言った言葉なのかもしれないけど、私はどんな匂いなのか気になったから思いっきり空気を吸い込んだ。漂ってきたのは、線香の匂いと花の匂い。ここで考えられるのは線香の匂い、のわけがないだろう。
となると…
「花の匂いが近い…ってこと?」
「多分…?」
「多分か。まぁでも一応それを手掛かりにして考えてみるね」
「頼むねー」
花の匂いがして…しかも静かなとこ…
「うん。次に行ってみようか」
「お?その声は何か思いついたかな?」
「んー…正解の自信があるわけじゃないけどね?」
「いいさいいさ!数撃ちゃ当たるってね!」
なんだろ…私の方が励まされてるような…?
何故かは分からないけど、私が亜子ちゃんの成仏を手伝っているはずなのに、何でか私が元気付けられている気がする。こんなんで私は亜子ちゃんの探すところを探し当てられるのか不安になるけど、それを気付かれるわけにはいかない。
少なくとも…顔に出してもバレないかな…
「それじゃ茜ちゃん、次の行先に向かってみよー!」
「おー!」
私はそんなことを考えながら、亜子ちゃんのはつらつとした掛け声に努めて元気に応じながら、多分少し困った顔になっているのを自分で感じるのだった。
第57話を読んで頂き、ありがとうございます!
今回はお姉さん的幽霊です!
久しぶりにまともっぽい人ですね!
いや、若干まともでない特殊能力がありますけど…
しかも相変わらず茜ちゃんがツッコミに回りますね。
それでは今回はここまで!
ブクマして頂いてる皆様!
そうでない皆様!
本当に申し訳なさと共に感謝を申し上げます!
次回は3/14を予定…にはします…
引き続きお付き合い頂ければ幸いです!




