第5話 意外と言うのは予想が出来なかったから意外と言うもの
こんにちは!
明日葉晴です!
ゴールデンウイーク連日投稿!
連日投稿は今日で最後にします。
今回はちゃんと幽霊の話です。
今回の話は構成にだいぶ迷いました。
書いてる途中で、何回も話の方向に迷いながら書いていました。
その話はまた後書きで。
では、本編をどうぞ!
私は幽霊が視える。
「ハッハッハッ…」
けどこれは流石に意外だ…
「ハッハッハッ…」
今までいろんな人を視てきたけど…
「ワフッ!」
「犬は予想外…えっと…生きてる?」
○
私は早速頭を抱えていた。とりあえず幽霊であることは触れないことで確認した。だけどそれ以降はどうすればいいかわからない。
「初だよ…何、犬って…」
「ワッフ!」
綺麗なサラサラのベージュの毛並みに、真っ黒なつぶらな瞳。大きめの体で利口そうな顔をしている、気がする。
「ゴールデンレトリバー…かなぁ…?」
現実逃避の意味も込めて犬種を推測した。だけど問題はそこではないことが頭にちらつく。
「犬…だよね…でも幽霊…だよね…」
「ワフッ!」
「だよねー…」
私は幽霊が視えるけど、強制的に成仏させられるような特殊能力は持ってない。触ることもできないし、ましてや幽霊だからと犬でも会話できるようになるわけでもない。だからせめてと未練を晴らす手伝いをするだけ。だけど…
「犬の未練って何…?てか犬の幽霊って初めてなんだけど…未練ってあるの…?」
今までに人の幽霊はたくさん見てきたけど、人以外は本当に初めてだ。むしろ人以外にも幽霊になるというなら、今まで出会ってこなかったのが不思議だ。
「仮に、この子が例外なのだとすれば…実は元は人?」
いやいやまさか…
私は自分の出した考えを一度否定する。そんな超特殊ケースを考えて思考停止するのはやめることにした。
「まぁシンプルに考えれば、この子にも幽霊になるほどの未練があるってことかな…」
いろんな考えが巡りに巡って、私はようやく現実を受け止めることにした。しかしそれはスタートラインに立ったというだけで何も踏み出してはいない。
「お座り」
「ワフッ!」
「お手」
「ワフッ!」
毛並みの良い手を私の手に乗せるように置いた。もちろん感触はない。フリだというのも考慮してるんだろう。本当に賢い。
「おかわり」
「ワフッ!」
「お回り」
「ワフッ!」
「そっちぃ!?」
「ワフゥ?」
お回りと言ったら器用に二本足で立って敬礼した。お巡りさんだ。私が驚くと不思議そうに首をかしげてきた。
予想の斜め上をいってる…
「ま、まぁ…芸が仕込まれるくらいに賢いってことか…」
それならもしかすれば未練の一つくらい生まれるか…な?
「犬…幽霊…未練…未練…?」
犬の未練って何だろう…?
「うーん…」
私は改めて犬を見つめた。生きていて触れるのなら撫でまわしたいほどにサラサラの毛並みに見える。
「えっと…お腹すいてる?」
「ワフゥ…」
一応、真っ先に思いついたことを、問いかけるように犬に向かって言ってみたら、まるで違うといったように鳴いた。言葉を理解しているなら相当賢い反応だ。これなら質問していけば答えが分かるかもしれない。
「まぁお腹すいてる程度の未練ならそこらへんに野良猫の幽霊とかいそうだよね…」
落ち着いたと思ったけど、やっぱりまだ混乱しているのかな…
よく考えればそんな未練で残っていたらこれが初めての人以外の遭遇になるはずがない。と言うより、幽霊にお腹がすくとかがあった試しもない。人でもそんな未練は今までいなかった。
「となると…家に帰りたい…とか…?」
「クゥ…」
それはどっち?まぁとりあえずこの方向性でいいかな。
ひとまず家に帰すことに決めた私は、再び犬を観察した。
「首輪がある…ってことはやっぱり飼い主がいるわけで…」
艶めいた毛並みから見えた赤い首輪を私はしげしげと観察した。
「あっ…これは名前?えっと…武蔵…?」
「ワフッ!」
似合わなっ!!
「ま、まぁいいか…後は…あっと!これは住所!」
犬…武蔵の首の下の方には家の住所と思われる表記があった。
「この住所は今いる所の近くね。詳しくは書かれていないけど、よかった…」
遠いところだったらどうしようかと思った…
「えっと…武蔵。とりあえず家に戻る?」
「ワッフ!」
「……じゃあ行こうか」
「ワッフ!」
軽く会話が成立していることに対しては最早どうでもよくて考えるのを止めた。そうして、私と武蔵は歩き出したのだった。
○○○
道中、武蔵はおとなしく私の後をついてきた。サラサラとした毛並みの尻尾がリズミカルに揺れる姿は何ともかわいらしい。でも名前は武蔵。
「ホント、君の飼い主が見てみたいよ」
「ワフワフッ!」
「…ごめん何言ってるかわからない」
「フフンッ!」
今のはニュアンス的には、でしょうね。かな?
「ところでこのへんって見覚えある?」
「ワフッ!」
「それはあるって受け取ればいいかな?」
「ワフッ!」
「なるほど…」
多分見覚えがあるってことだろう…
「家までの道はわかる?」
「フゥ…」
「それはわからないと受け取ればいいのかな?」
「ワフッ…」
これは多分詳しくは覚えてないってことかな…
「散歩はあんまり行かなかったの?」
「ワフゥ…」
いけない…少し元気がなくなってしまった…
「それにしても武蔵は賢いね」
「フフンッ!」
ちょっとドヤッた…本当に言葉を理解してるっぽいな…
私は武蔵を元気づける意味も込めて言うと、武蔵は誇らしげに頭を上の方に向けた。
「っと…そろそろこの辺のはずなんだけど…」
私が独り言を口にすると、ちょうど近所の人らしきおばあちゃんが玄関先の鉢植えを弄っていた。
丁度いいから聞いてみよう…
「あの…すいません」
「はぁい?」
「このあたりで武蔵って犬を飼っていた家を知りませんか?肌色に似たサラサラした毛並みの大きい犬なんですけど…」
おばあちゃんに武蔵の名前と特徴を伝え、家を尋ねた。
「武蔵ちゃんを知っているのかい?」
「は、はい…亡くなったと噂で聞きまして…線香でも上げようかと…」
「そうかい…なら間に合ってよかったかもしれないねぇ…」
間に合って…?
「あの…どういう意味ですか?」
「ん?武蔵ちゃんは知っててシゲじぃのことは知らないのかい?」
「あー…っと…しばらくこの辺を離れてて最近帰って来たので…最近の事情はちょっと…」
「あぁそうなのかい。ならしょうがないかもねぇ」
危なかった…確かに犬の名前を知ってて飼い主の事情を知らないのはおかしい。てかシゲさんていうのも今知ったし。
苦しい言い訳だったけど何とか信じてもらえたようだ。飼い主の名前を知らないとは口が裂けても言えない。
「もともとシゲじぃも長くなかったんだけどねぇ…先に武蔵ちゃんが逝ってから、どんどん弱っていってねぇ…そろそろかって周りも本人も言ってるんだよ…最近はめっきり顔も見なくなったしねぇ…身寄りもいないようだし、近所で時々様子は見てるんだけどねぇ…心配は心配だよねぇ…」
「そう…だったんですね…」
「フゥ…」
私の横でおとなしくしていた武蔵が寂しそうに鳴いた。きっと一人残してきたことが心配だったんだろう。それが未練となって今ここのいるのかもしれない。
「家…教えていただけませんか?私もシゲさんが心配です」
「構わないよ。ここから二つ目の角を右に曲がって二軒目がシゲじぃの家だよ」
「ありがとうございます。行ってみます」
「あぁ。武蔵ちゃんとの思い出話でもしてやれば、ちょっとはシゲじぃも元気になるだろうねぇ」
「はい。私の知ってること色々話してきます」
「よろしくねぇ」
まぁ知ってることは少ないけど、今いるって話せばあるいは…
そんなわけでおばあちゃんに見送られ、私と武蔵はシゲさんの家に向かった。
○○○○
「ここで合ってる?」
「ワフッ!」
大丈夫そうだ…
ピンポーン
シゲじぃと思われる家の前に行き、私はインターフォンを押した。家の明かりは点いているから人はいると思うけど反応はなかった。
寝てる…?もしくはお風呂とか…単純に気付かなかった?
ピンポーン
………反応なし…
「さて、この場合は一体どうしようか…」
「ワフッワフッ!」
私が独り言をつぶやいたとき、武蔵が何か言いたげな目で見つめてきた。
「どうしたの?」
「ワッフ!」
「あぁ!ちょっと!」
行ってしまった…
武蔵は一度吠えた後に、家の中に突撃していった。
中を見てくるってことかな…?
「ワフワフワフワフワフ!」
「うおい!何々!?」
私が呆然としていたらすごい勢いで吠えながら戻ってきた。その後私の周りをグルグルと回り始める。
「どうしたどうした!?」
「ワフワフッ!!」
なんだか焦ってる…?まさか!?
「お邪魔しますっ!」
武蔵の様子がおかしいことから、私は家の中に入ることを決めた。幸い…と言っていいかわからないけど、玄関にカギは掛かっていなかった。
「武蔵っ!どこ行けばいいっ!?」
「ワフッ!」
「そっちね!」
私が状況を察したのが伝わったのか、武蔵は家の中を先行して走って行き、私はその後を追った。そして居間らしきところにおじいちゃんが倒れていた。
「大丈夫ですか!?」
「ワフッ!!」
私は必死に呼びかけたが返事はなかった。しかし、息は微かにあった。
「救急車…!」
私は混乱する中、かろうじて救急車を呼ぶことが頭に浮かび、携帯で救急車を呼んだ。そして数分後、救急車が到着しおじいちゃんは病院へと運ばれた。私は発見者として同乗し、病院へと行くのだった。
○○○○○
シゲさんが病院の処置室に入ってから数十分後、お医者さんが出てきた。
「えっと…君は?村松さんとどういう関係ですか?」
「シゲさん…村松さんのところの飼い犬と遊んだことがあるだけです」
「単なる知り会いってことですね」
嘘は言ってないけど勝手に解釈してくれたようだ。実際には本人と面識はない。
「それで、見つけた時の状況は?なんで家に入ったのかな?」
「飼い犬が亡くなったと聞いたので線香でも上げようと思って訪ねたのですが、反応がなかったので不思議に思い、村松さんも長くないと聞いていたのでもしかしてと思って入りました。見つけた時は居間にうつぶせで倒れていて、息はありましたが呼び掛けても反応はありませんでした」
これも嘘は言ってない。実際に突入したのは武蔵がきっかけだけど、飼い犬の幽霊が慌てていたので、なんて信じてもらえないだろう。
「ふむ…なるほどね。わかった。ありがとうございます。おそらく今日が山でしょう。油断はできません。一応、意識は軽く戻ったので話していかれますか?」
「はい。お願いします」
「では中にお入りください。何かありましたらすぐに呼んでください」
「はい」
そうして私は部屋に入った。いつの間にか武蔵はシゲさんのベッドのそばでおとなしくしている。
「こんにちは」
「あぁ…お嬢さん君が助けてくれたのかい…?」
「私は救急車を呼んだだけです」
「そうかい…まぁそれでもありがとう…」
「いえ…」
シゲさんは本当に弱っている様子だった。声に覇気がない。
「ところで君は…どこかで会ったことがあるかな…?」
「いえ…初対面です」
私は正直に言うことにした。
「ではなぜ…?」
「私には幽霊が視えます」
「っ……?」
シゲさんは軽く息をのんだような気がした。しかしすぐさま否定する気配はなく、間が空いたから私の言葉を待っているのだろう。
「私はあなたの飼い犬…武蔵を幽霊として見つけました。今もあなたのそばにいます」
「武蔵が…なるほど…彼とは一緒に逝く約束をした…もしかすると…約束を果たしに来てくれたのかもしれないなぁ…」
「っ!!」
今度は私が息をのむ番だった。
まさか…
私は武蔵を見つめるが、特に反応はない。本当だというのだろうか。
「武蔵と約束した時はすでに…ワシも武蔵も長くはないと言われていた…共に長く生きようと思い、元気づけるために言ったんだが…結局、彼の方が先に逝ってしまったなぁ…」
「ワフ…」
シゲさんのつぶやきに武蔵は寂しそう鳴いた。それは先に死んでしまったことを後悔しているのか、それとも…
約束を果たせなかったことを後悔しているのか。
「どのみち…ワシももう長くない…なら…武蔵が幽霊としている今なら…約束を果たす最後の機会なのかもしれんなぁ…そのために…彼も来てくれたのかもしれんなぁ…」
「そんなっ…!」
「ワフッ!!ワフワフッ!!」
シゲさんの言葉を私は否定しようとした時、何かを訴えるように武蔵はひときわ大きく吠えた。
「武蔵…?」
「ワフワフッ!ワフッ!!」
武蔵は私に対しても何かを伝えるように私を見ながら吠える。
そっか…今のは私でもわかるよ…任せて…
「武蔵は賢い子ですよね」
「…?あぁ…そうだね…?」
私の突然の問いかけの意味が分からないといった雰囲気でありながら、シゲさんは答えた。
「そんな賢い子が、元気づける為だけの言葉を理解せずに、約束だけ果たしに来るでしょうか?」
「それは…」
「現に、武蔵は今のおじいさんの言葉を素直に聞いていました。最後の言葉以外は」
「っ!!」
「武蔵は生きて欲しいんです。おじいさんに。それが未練となって幽霊になったんです」
「武蔵…」
「生きてください。少なくとも、生きることを諦めないでください」
「………」
私の言葉がどれだけ届いたかわからない。そもそも、幽霊が視えること信じているかも怪しい。だけど私は伝えなきゃいけない。幽霊になるほど強い思いを残した武蔵のためにも。
「ふぅ…」
長く続いた沈黙は、シゲさんのため息で破られた。
「お嬢ちゃんは不思議だ…まるで…武蔵が本当に言っているようだ…いや…本当に言っているんだろう…そこに幽霊としているのかい…?」
「はい」
「そうか…分かったよ…武蔵、ワシはもう少し生きるな…おまえの分まで…だから約束は守れん…先に破ったのはお前なんだ…それくらい許してくれ…」
「ワフッ…ワフッ!!」
シゲさんの決意を聞くと、武蔵は聞き届けたと言わんばかりに吠えて、体が透け始めた。
これでよかったんだ…
「おじいさん…武蔵が成仏します。何か伝えるなら最後です」
「そうだな…先にあの世で待っててくれ、わしもゆっくり行くから…会ったらまた色々教えてあげよう…」
「ワフッ!………ワッフワフッ!」
シゲさんの言葉を聞き遂げた武蔵は嬉しそうに吠えた後、私を見つめて力強く鳴いてから消えていった。
「武蔵は…成仏しました…」
「そうか…それはよかった…お嬢ちゃん…名前は…?」
「三葉茜です」
「そうか…ありがとう…三葉さん…」
「いえ…私にはこれしかできないですから…」
幽霊の成仏の手伝いしか…
「長居し過ぎました。私はもう行きますので、ゆっくり休んで下さい」
「そうか…分かった…よければまた来てくれないかな…?」
「はい…また来ます」
そう言って私は部屋から出て、お医者さんに一言断りを入れてから病院を後にした。最後に疑問は残ったけど。
武蔵…最期、私になんていったのかな?
○○○○○○
数日後。
「シゲさん、また来ました」
「おぉ!いらっしゃい」
山を越えたからなのか、すっかり元気になったシゲさんが病院のベッドの上に座っていた。
「ん?ワシは名前教えたかな?」
あ…しまった…
「あー…実はシゲさんの家を訪ねるとき、道中で近所の方に聞いたんです。玄関先に鉢植えがいっぱいある家のおばあちゃんから」
「あぁ…ヨシばぁか…心配をかけたなぁ…退院したら、近所に顔を出さないとなぁ」
良かった…それほど気にしていないか…
私は一安心すると、ふと疑問に思ったことがあったのを思い出した。
「そう言えば、武蔵にお回りと言った時、回らないで敬礼したんですけど何でですか?」
そう。お巡りさんの芸が私はどうしても気になっていた。
「はっはっはっ!あれか!ワシはな、昔暴走族だったんだ」
「えぇっ!!」
待ってすごい意外…!
「それで警察を見かけるたびに、あれがお巡りだぞ。と言ってたらしまいには警官の真似をするようになったんだ」
「そうだったんですね」
納得だけど、意外な部分が多すぎてもう訳が分かんない。すべて受け入れるしかない。
「そんな話ならいくらでもあるぞ?たとえば…」
そんな感じで、私とシゲさんはいろいろな話をした。ためになるような話も合ってとても有意義だった。
これも幽霊でつながった一つの縁…かな。
改めて、これからも私はこういう縁を大事にしたいと思ったのだった。
第5話を読んで頂き、ありがとうございます!
今回は犬でした!
この物語のタブには人外を入れていますが、幽霊と言う意味で入れたわけではないのです。
そう、全てはこの話のため…嘘です。偶然です。
さて、前書きでも話しましたが、今回の話はだいぶ迷いました。
実のところ、シゲさんも死んでしまう終わりが最初に浮かんだんですが、それはあまりに私らしくない気がしてどうしても書けませんでした。
これが一番悩んだ点ですね。
他も細かいところで言うと、武蔵の芸を試すとことかですね。
というわけでいかがでしたでしょうか?
ゴールデンウイークの連日投稿は本日を最後とします。
ですが、まだまだ書きたい話もあるので、基本的に隔週…できれば毎週日曜日に更新したいと思います。
早くもブックマークして頂いてる皆さん、それ以外の読んで頂いている皆さん、ありがとうございます!
次回もお付き合い頂ければ幸いです!