第49話 変わり者は集団に一人いることが多いけど、一人以上いることは意外と少ない
こんにちは!
明日葉晴です!
ごめんなさい…
ホント…もう平謝りするしかないんです…
申し訳ございません…
気を引き締めて…
今回は前回の続きになります!
前回は北千住さんと山口さんがイチャイチャ…
は、してないですね。
あ。今回はちゃんと幽霊が出ます。
それでは、本編をどうぞ!
私は昔から幽霊が視える。
「いやぁ…いい時間だった…」
「な、なんか…疲れました…」
「お疲れ。助かった」
幽霊のつながりで大学生のカップルに着せ替え人形にされた後、結構いい時間になったから学食を奢ってもらうことになった。
「ほんっっと!助かったよぉ!インスピレーションがバンバンきた…よ?」
「「なんで疑問形?」」
「ナイスコンビネーション!」
友達よりも近い距離だけど、べたべたしてるわけじゃないこの二人は、別に誰かと仲良さそうにしててもいいらしい。山口さんとハモったら何故か北千住さんに喜ばれた。
まぁそれが羨ましくも思うんだけど。
◯
「学食って結構おいしいんですね」
「だしょだしょ?数少ない推しポイントよ?」
「それはどうなんだ…?」
昼ご飯として学食を食べ終えて、流れでそのままのんびりすることになった。学食の内部はレストランみたいに綺麗な内装で、さっきのカフェとはまた雰囲気が違った。カフェもレストランもあって充実してて、値段はかなり安めだ。正直条件がいい。
「学食の種類も結構あるしね。平日はサラリーマンとか割といるよ」
「なんか、憧れの大学って感じですね」
「あはっは!でも学部によっては課題に追われて大変よ?私らなんか、まだ軽い方だし」
「まじですか…」
どうやら楽しそうに見えるのは表側らしい。てか北千住さんは三徹してるとか言ってなかっただろうか。それで軽い方とか、重い方はどれだけ厳しい生活を送っているというのだろうか。
「香織、勧誘したいのか怯えさせたいのかどっちなんだ?」
「はっ!?いや!めっちゃ大学楽しいから!これはほんとだから!うち来よ!うち!」
「あー…ははは…」
確かに楽しそうなのは分かりましたけど…
課題をやっている二人は本当に楽しそうだった。それで辛いだけじゃないのは充分に伝わってきた。それに周りに目を向けると、休日なのに普通にちらほらと人がいる。若干顔色の悪い人もいるけど、大抵は楽しそうだ。まぁ休日なのに来なきゃいけないって考えれば楽しいだけじゃないのはわかるけど。
まぁ…それは高校も同じだしなぁ…
「ぇ…!?」
「茜ちゃん、どったの?」
「えー…っと…いや…」
北千住さんのあたふたした大学のアピールを聞きつつ周りを見ていたら、幽霊らしき人を視つけ息を漏らした。私の様子が変わったことに気付いたのか、北千住さんが不思議そうに私に質問してくるけど、私はそれにどう答えたものか迷った。
んー…やっぱりこの二人を巻き込んじゃダメだよなぁ…
「すいません。ちょっと急用を思い出して…」
「えっ!?なになに?ホントの彼氏?」
「いや、彼氏はいませんけど…」
私が席を立とうとすると、何故か北千住さんが食い付いてきた。残念だけど、ホントもなにも彼氏はそもそもいない。いるのは幽霊だ。
「えー?じゃあ…」
「いや、行かせてやれよ…」
「あー!そうだよね!ごめんごめん!」
「すいません…」
「気にせず行ってこい」
なおも私の用事を当てようとする北千住さんに、山口さんが呆れた様子で注意した。それで北千住さんは謝ったけど、私は特に気にしない。と言うより今出来た用事だし、なんなら奢ってもらってるから申し訳ないのは私の方だ。そんな私に気を遣ったのか、山口さんは軽く送り出してくれた。
さて…幽霊の人は…
二人から離れた私は、さっき視た同い年くらいに見える男子の幽霊を探した。幸いにもそんなに移動してなくて、学食から出た人気のない道の隅にいた。休日なのが幸いしたのか、少し見渡しても人が他に来そうな気配はなかった。
「ねぇ君!生きてる?」
「へ…?」
私はチャンスとばかりに声を掛けると、自分が話しかけられると思わなかったのか、驚いた様子でこちらを振り返ってきた。そりゃ幽霊を実際に視れる人がいるとは思わなかったのだろう。その気持ちは分からないでもない。
「あの…僕が視えるんですか?」
「うん。もうばっちり」
「ほうほう。私には全く視えない!」
「「へ…?」」
そうして男子からされた質問に答えると、今度は私の後ろから声が聞こえてきた。それには私も思いがけない出来事だったから、今度は私と男子の驚いた声が重なった。振り返ってみると、何故か難しい顔をした北千住さんと呆れた顔をした山口さんが立っていた。
「なんで…二人がいるんですか…?」
「いやぁ…茜ちゃん帰ったし、私らも部室戻ろうかと思ったんだけど…そこで茜ちゃんが周りを気にしながら人気のない方に行くのが見えたからさー」
「あー…ははは…」
まさか見られていたとは…心配されたか…
「人気のないとこでやらしーことをするんじゃっ!?って思ってさー」
変な方向に心配されてた!?
「これは見なけ…こほん…止めなきゃって思ってさー」
今…見るつもり的なこと言ってた…?いや、そもそもしないんだけどね…
私は二人が何でいるのか聞くと、北千住さんが訳を話してくれた。途中不穏なことを言っていたけど、まぁそれも安心の現れ何だろう。と、思っておくことにしよう。それも含めて心配していたという事にしておかないと、ツッコミが追い付かなくなる。
「ちなみにグッチーは見る気満々だったよ」
「違うわボケ」
「そんなこと言ってー、興味深々だった癖にー」
「何をするつもりかは気になったが、変な想像はしてない…してないからな?」
「あ、はい。山口さんがそんな人じゃないってなんとなく信用してますから」
私が納得しようとしてるうちに、北千住さんのボケの矛先が山口さんに向かった。山口さんは慣れているのか、気にした様子もなく流している。だけど私がいるのを気にしたのか、念を押すように言ってきたから、私は気にしてないことを伝えた。
「むむっ…!?そんなっ…!」
っと…そっか、流石にこんなこというと北千住さんも嫉妬…というか心配するか…
「えと…」
「茜ちゃんの信頼を勝ち取ってるなんて!グッチーずるい!」
「そっちかい!」
「ほへ?」
私の言葉に反応したのか、北千住さんが残念そうな顔をしたから、私は山口さんに恋愛感情はないってことを言おうとした。だけどその前に北千住さんは別の意味で残念なことを言ってきた。流石に堪えきれずにツッコみを入れてしまった。
「あの…それでなんの用かな…?」
「あ、ごめんなさい。置いてきぼりにしちゃって…」
「いや…それはいいんだけど…」
二人、主に北千住さんへのツッコミが忙しくて放置してしまっていた幽霊男子。申し訳なさそうに用件を聞いてきたから、私はとりあえず向き直って謝った。
「それで、用件なんだけど、君の成仏の手伝いをさせて欲しいんだ」
「僕の成仏の…?」
「そう。具体的には、未練を晴らす手伝いをしたいの」
「未練か…」
私は幽霊男子への質問に端的に答えた。こういうのはサクッと話した方が警戒されなくていいだろう。幸いにも、ここには丁度さっき私が幽霊を視えることを知ってる人しかいない。だから話してしまっても大丈夫だ。
「はいはーい!私も手伝うよ!役に立てるかわかんないけど」
「えっ!?そんな悪いですよ!」
「いやいやぁ…こんな面白そうなことを一人でやる方が、悪いんじゃないかなー?」
「面白いって…」
「それに、手越のお願いを叶えてくれたお礼もしたいんだよ」
「北千住さん…」
私が幽霊男子にいつものように私が出来ることを言うと、何故か北千住さんも手伝うと言い出してきた。突然の申し出に私は断りを入れると、北千住さんが何も気にしてないと言わんばかりに面白がっていた。私としては割と重要なことだから、面白がられることにちょっとムッとしたけど、その後の言葉でそんな気持ちもどこかに行ってしまった。
「グッチーも、いいよね?」
「ああ。構わない」
「分かりました…お願いします」
私が何も言わないところを見て、北千住さんは山口さんにも確認を入れる。山口さんもそれを嫌な顔せずにすぐに受け入れていた。そんなところを見せられてしまっては、断る方が申し訳ない。
「それじゃ改めて…私は三葉茜。綾目高校の二年」
「私は北千住香織だよ!この大函大学の二年!」
「山口清史郎。同じくこの大学の二年」
「えっと…千葉陽介。他県の高校で三年だったんだ。今年この大学を受験するつもりだったんだ」
ひとまず北千住さん達のことが片付いたから私から自己紹介した。それに続いて北千住さんが元気よく、山口さんは落ち着いて自己紹介。その後に幽霊男子、千葉さんが少しだけ戸惑いながらも名前と事情を言ってくれた。
「先輩だったんですね。すいません」
「いいよいいよ。タメ口で」
「えと…じゃあ…」
年上だとわかって謝ると、千葉さんは笑って許してくれた。いい先輩だ。ふわっとしてる感じ、なんだかここの大学生だった幽霊の手越さんに似ている気がする。
「それで、未練だったね。僕の未練は…そうだな…この大学で過ごしてみたかったって言うのがあるのかな。気付いたらここにいたし」
「そうなんだ…」
受験前に亡くなったことで、それが未練になったといことなのだろうか。この大学に余程入りたかったのだろう。なら、少しでも楽しんでもらえたらいい。偶然だったけど、北千住さんと山口さんが協力してくれたのはタイミングが良かった。
「北千住さん、山口さん、早速協力して欲しいことがあります」
「ほいきた!なんでございましょう?」
「大学の中を案内してもらえませんか?実は…」
そういう訳で早速二人に協力を頼んだ。幽霊の名前と事情を伝えて、おそらく未練だろうことを話して、大学の中を案内出来ればいいんじゃないかという事を説明した。
「よし来た!任されようじゃないの!」
「問題ない」
「それじゃあお願いします」
「お願いします」
そうして、急遽小規模のオープンキャンパスが始まるのだった。
◯◯
「よーし。まずここが我が大学の誇る大講堂だよ!色んな講義はもちろん、入学式に発表会、学祭のライブなんかも行える圧倒的大活躍の講堂だよ!こう…人がいないと…わぁぁぁぁ!って大声出したくなるね」
「広っ…」
「大きい」
私達がまず来たのは北千住さんが大講堂と言った場所。その名の通りめちゃくちゃ広い。公営の体育館ばりに広い。ライブが出来るって言うのも納得の広さだ。
「だけど…椅子がないですね」
「椅子と机はね、管制室で操作出来るんだ。ぽちっとボタンを押すとニョキって出てくるよ」
「ニョキ…?」
「ハイテクだ…」
私は講堂って名前なのに椅子と机がないのに疑問を持って聞くと、北千住さんは説明してくれた。おそらく管制室ってとこでボタンを押すと、床かどっかから出てくる仕組みなんだろう。私は擬音に疑問を持ったけど、千葉さんは感心していた。
「見せてあげたいけど、一回遊びでやったら怒られたことあってさー…」
「俺が完全にとばっちりを受けたやつな」
「そりゃ怒られますよ…」
「あはは…反省はしてるよ……後悔はしてないけどねっ!」
「そういうヤツだって知ってた」
「らしいっちゃらしいですけど…」
「あはっは!さぁさぁ次行こー!」
そうして、大講堂を後にして次の場所に向かうことになった。思えばこの大学は無茶苦茶広い気がする。近所って言えるくらいの近くにあるわけだけど、こうしてしっかりと見学するのは初めてだ。少しだけ私も楽しくなってきた。
「ここが普通講義棟!同じような教室がいっぱいあって、座学系の講義は全部この棟でまかなってるんだよ」
「一か所にまとめて効率化を図ってるわけだな」
「ここも大きいですね」
「確か学科って結構あったと思うけど…全部出来るのかな…?」
次に来たのは北千住さんが普通講義棟と呼んだ場所。ここもなかなか大きいようだけど、千葉さんは引っ掛かるところがあるみたいだ。
「そうなんだ…山口さん、全部の学科がここで受けてるんですか?入り切るのかって千葉さんが疑問に思ってるみたいですけど」
「ああ、座学だったら全部の学科がここで講義を受けてる。学科がいくらあっても全時間座学があるってわけじゃないからな。上手く組まれてるんだろう。その代わりいつも講義室は全部使われてる感じだな」
「へぇ…」
「そうか…大学はずっと授業ってわけじゃないからか…」
千葉さんの疑問を受け取って、私は代わりに山口さんに質問した。山口さんは嫌な顔一つせずにあっさりと説明してくれた。いまさらだけど幽霊とか信じてなさそうな顔なのによく付き合ってくれると思う。
「んじゃ、ここは同じ部屋ばっかで楽しくないし、次行こ次!」
「「はい!」」
普通講義棟の説明もそこそこに私達はまたも移動して、どんどんと大学内を回っていく。敷地は広く建物も多い。だけど疲れることなく楽しめたのは、北千住さんの案内と山口さんの説明が上手かったからだろう。二人の息がぴったりだった。
うーん…こういうの見ると、ちゃんとカップルなんだなぁ…
そうして、私もそうだけど千葉さんもしっかりと楽しめている様子で、突然始まったオープンキャンパスが進んでいくのだった。
◯◯◯
色々大学を回って、次が最後と言われてやってきたのは、私達も少しだけ見慣れた場所。つまりは北千住さん達の部室だった。幸いにもまだ部室には誰もいない状態で、千葉さんと話しても問題ないだろう。
「さぁ!ここが我等が安息の地にして、世界征服の野望を果たすための城だ!」
「どこの魔王だお前は」
相変わらずのハイテンションの北千住さんにツッコむ冷静な山口さん。そのテンションを維持できるのは尊敬するし、ずっと付き合うのも凄いと思う。
「他の奴がいなくて良かったな」
「あ、それなら私が人払いしておいた」
「そんな…なんかすいません…」
あまり動じることがないと思っていた山口さんも、流石に不思議に思ったのか疑問を口にした。すると北千住さんがさらっと理由を言う。多分私に配慮したんだろう。なんだか申し訳なく思ってしまう。
「いいよいいよ。ちょっと人に言えないことをグッチーとするから部室貸して。って言っただけだしね」
「いや…それ大丈夫なんですか…?」
主に他の人の心象的に…
「大丈夫だ。前に同じことを言ったことがある。前回は釣る目的だったがな。おかげで来たやつは酷い目に合っていたが」
「前科があるんですか…」
「あはっは!今回はそれを逆手に取ったわけさ!」
北千住さんは気にした様子もなく理由を言った。だけどそれはそれで他の心配が出てきた私は質問をした。今度は山口さんがそれに答える。こう言っちゃ失礼かもしれないけど、北千住さんは思ったより頭が良いのかもしれない。残念な使い方な気がしないでもないけど、今はそれがありがたいから何も言わないで置くことにした。
「それで、人払いまでしてどうするんですか?」
「確かに。ここで何かするつもりなんですか?」
「よくぞ聞いてくれた!」
一連の流れを見送った千葉さんが本題に戻した。何と言うか、空気の読める人だ。コントみたいなノリに全部付き合ってから話を戻すあたり、かなりいい人なんだろう。そしてそれを引き継いで私が質問すると、北千住さんは待ってましたとばかりに宣言した。
「見学ばっかじゃつまんないと思って、最後にここでウチのサークルを体験してもらおうかと思って!」
「つまんないってことはなかったけど…それは嬉しいですね。ところで、ここは何のサークルなんですか?」
私としてはとても面白かったけど、さらに北千住さんはここで体験授業に似たことをするらしい。やれることは限られるかもしれないけど、私もそれはとてもいいアイディアだと思う。千葉さんも同じようなことを思ってたらしい。千葉さんの質問を含めて、私は北千住さんに伝えた。
「ここ?服飾サークル。とは名ばかりのコスプレサークル」
「服飾…ってことはデザインとかもやってるんですか!?」
私は初めて知ったサークルの名前を聞いて驚いたけど、もっと驚いたのは千葉さんの食いつき具合だ。いや、名ばかりと言い切ったのにも驚いた。だけどそれに関してはそれだけ自由なサークルなんだという事で納得しておくことにした。
「デザインもやってましたよね?確かデザイン科って言ってましたし」
「うん。正確には、芸術学部、服飾デザイン学科だね」
「おぉ…!僕もまさにそこを受けようとしてたんですよ!」
私が確認の為に北千住さんに問いかけると、北千住さんは正式な名前を言ってくれた。そうしたことで千葉さんが食いついた理由が判明する。だとすれば、北千住さんが提案したサークル体験は打って付けだろう。
「どうやら同じとこ受ける予定だったみたいです」
「そっか…うん。ならばそのお手並み、拝見させてもらおうじゃないか!」
私が端的に伝えると、北千住さんは少しだけ悲しそうな顔をしてから、それを振り切るようにそう宣言した。そうした理由はなんとなく察しが付く。それを追及するほど私も野暮じゃない。
「先輩方のお眼鏡に適うかはわかりませんが…その挑戦、受けさせてもらいます!」
「私が千葉さんの意見を伝えれば問題ないですね」
北千住さんの宣言を受けて、千葉さんも燃え上がったようだ。好きなことを出来るのはやっぱりいいのだろう。私が間に入れば、疑似的にデザインを完成させることが出来るだろう。
「じゃあ茜ちゃん。モデル役、よろしくぅ!」
「……あ、え?私ですか…?」
「他に誰がやるっていうのさー」
「いや…山口さんとか…北千住さんとか…」
「私は作る側。グッチーも作る側。さあ選択肢は?」
「私…ですねー…」
「せーかーい!」
あぁ…これは逆らえないヤツだ…
「悪いな。諦めろ」
「そうですね…」
私はまたすごく疲れるのだろうと思いつつ、山口さんの慰めに同意するのだった。
◯◯◯◯
その後しばらく、私を介して千葉さんの意見を言いつつ、服のデザインを考えるのが三人の間で白熱した。そして驚くことに北千住さんの服を作り上げる速度が半端ない。小一時間程度でデザインした服を一着作り上げてしまう。それを私が着てまた意見を出し合って、修正して、また私が着る。これを繰り返して、一着の服を作り上げていった。
「かーんせーい!」
「つ…疲れた…」
何回も服を着替えるのもそうだし、千葉さんの意見を伝えるのもあって、二役こなしたから、かなり疲れた。だけどそうしてようやく服が完成した。今思えば、やっぱり私じゃなくても良かった気がするけど、それをツッコむ気にもなれなかった。
「何と言うか…感無量です…」
「それは良かったね…」
「いやぁ…千葉君いいねぇ…私やグッチーとは傾向違うから、いい刺激になったよ!」
「そう言ってもらえると、照れます…!」
やり切った雰囲気を出した千葉さんを労うと、北千住さんも千葉さんをタイミングよく褒めた。それがきっかけかは分からないけど、嬉しそうな顔をした千葉さんの身体が透け始めた。成仏の兆候だ。
「千葉さん…」
「あはは…やっぱり大学は行きたかったですけど…最期に体験出来て良かった」
大学で過ごしてみたかったという未練は、体験を経て満足出来たという事なんだろう。今回は本当に北千住さんと山口さんの二人に助けられた。多分私だけじゃダメだったと思う。
「北千住さん、山口さん。千葉さんが成仏します」
「そっか…うん。いい後輩が出来て、嬉しかったよ。楽しかったし、いい刺激になったし、ホント、残念だ…」
「楽しんでもらえて、役に立てたなら良かった…」
私が二人に千葉さんのことを伝えると、それぞれ言葉を発した。北千住さんはさっきまで元気な様子が無くなり、本当に残念そうに呟く。山口さんはあんまり表情が変わってないけど、微妙に言葉にキレがない気がする。二人とも本当に優しい人達なんだと、改めて思う。
「僕も、本当に楽しかったです…二人みたいな先輩が出来て…本当に良かった」
二人の様子を見て、千葉さんも嬉しさと悲しさが混ざった表情で感想を言った。少しの間だったけど、千葉さんにも二人の優しさが伝わったようだ。私は千葉さんの言葉を二人に伝えた。
「それと三葉さん、僕の願いを叶えてくれてありがとう」
「私は…二人の間に入っただけです…それしか出来なかったので…」
「それが無ければこうはならなかった。ありがとう。それじゃあ…さようなら」
そうして、千葉さんは光になって消えていった。
「成仏…しました…」
「そっか…」
「あぁ…」
二人に千葉さんが成仏したことを伝えると、二人は短く言葉を漏らした。なんとも言えない空気が私達の間で漂った。
「茜ちゃんは…さ…」
「はい…?」
「………いーや。なんでもない」
「そうですか…?」
「うん。やっぱいいや。気にしないで」
北千住さんが何か言いたげに私の名前を呼んだけど、結局何も言わずに終わった。なんだったんだろうか。結構表情豊かな北千住さんなのに、その顔からは考えが読み取れなかった。
「さって!じゃあ帰ろっか!ご飯食べてく?奢るよ?」
「いや…そんな何回もいいですよ」
「ううん、いいよ。楽しかったし…まぁ…そんな気分なんだよ」
「はい…?」
そんな様子から一変して、北千住さんが少し前と同じ調子になった。この人はどれだけ奢りたがるのだろう。それともお金持ちなのだろうか。
「俺が出す」
「え…その…」
「気にするな。昼が香織からの礼なら、俺もするべきだろう」
「でも…」
「大丈夫だ。奢れないほど、困ってるわけじゃない」
私が困惑していると、今度は山口さんが入ってきた。もっともらしい理由に聞こえるけど、突然と言えば突然だ。だけど、私が何か言う前にさっさと歩きだしてしまった。
「グッチー太っ腹ー!」
「香織は…まぁいいか」
「いよっしゃ!」
そんな山口さんに北千住さんはさっと並んで、ちゃっかり奢るのに便乗していた。山口さんは何か言いたげな様子をみせたけど、結局諦めたのか受け入れていた。
「あ、そうそう、茜ちゃん」
「はい…?」
「またおいで。困ったことがあったら、遠慮しなくていいから」
「……はい」
北千住さんが何かを思い出したように振り返ると、そんなことを言ってきた。優しい人だとつくづく思う。その思いを噛みしめて、私は嬉しくなった。
「うん。ほら!早く来ないとグッチーの気が変わっちゃうから!」
「強いて言えば香織に奢りたくなくなるかもな」
「ちょっ!?やばっ!茜ちゃん早く!」
「あはは…今行きます!」
そうして、私は山口さんの奢りで夕飯を食べることになった。その間雑談で色々、主に手越さんの話とかをしてから、別れたのだった。
第49話を読んで頂き、本当に…本当にありがとうございます!
いつも思いますが、茜ちゃん以外の人が出た時は幽霊の存在が薄くなりがちですね!
まぁそう言う時は大体その人達を書きたいって思ってる時ですから、必然的にそうなってしまうんですけどね。
北千住さん書くのはマジで楽しかったです。
正直もっと書きたかったんですけど、三話にすると中途半端な長さになりそうだったので止めました。
それでは今回はここまで!
遅れてばっかりなのに読んで頂いてる皆様には最大級の感謝を申し上げます…!
ブクマして頂いてる皆様!
そうでない皆様!
また次回もお付き合い頂ければ、本当に幸いです!




