第47話 風邪の症状、決まったとこからと言うのはないけど、どこから来ても辛い
こんにちは!
明日葉晴です!
今回めちゃめちゃ遅れて本当にごめんなさい!
ホント、言い訳出来ないくらい遅れてしまいました。
今回はシリアスな雰囲気多めになってます!
あと少しだけいつもより短めです。
そのかわりと言ってはですが、茜ちゃんの過去のお話が少し出てきます。
それでは、本編をどうぞ!
私は昔から幽霊が視える。
「くしゅ…あー…やっぱ風邪かなぁ…?」
超能力染みた力があっても身体は普通の人。そりゃ体調も悪くなる。
「早退した方が良かったかも…」
体調良くないし、早く帰りたい。けど、こういう時に限って大体問題は起きる。まさに目の前に幽霊らしきお姉さんが立ち尽くしていた。
「すみません…生きてま…へっくしょん!」
「…あなたの方が辛そうね」
◯
想定してなかったファーストコンタクトはさておき、人目を避ける為に神社まで付いてきてもらった。くしゃみをしまくってたから心配されたけど、大丈夫だと言って神社にしてもらった。自分の部屋だと、熱で幻覚を見てると思われる。そうなったら病院に連れてかれる。
病院にはいつでも行けるし、今はこの人優先だよね…
「えと…まず名前…くしっ!…の前に鼻かみます…」
「その…本当に大丈夫なの…?」
「だいじょぶです…」
季節の変わり目のせいか、鼻が壊れたのかもしれない。寒気とかは何もないけど、くしゃみが異常に出てくる。それにともなって鼻も出てくる。鬱陶しい。
「ずびっ…すいません…私は三葉茜っていいます」
「と、唐突ね…私は菅野奈緒よ…三葉さん、先に帰るか病院に行った方がいいんじゃない?」
「いえ…くしゃみと鼻水だけなので…」
「熱は?」
「熱はない…っくしゅん!」
「説得力ないね…」
終始菅野さんは苦笑しながら私の方をみてた。何とか自己紹介は出来たけど、菅野さんは私の体調がどうしても気になるみたいだ。確かにここまでくしゃみとか連発してれば気になるのもしょうがないとは思う。やっぱり私が悪い。けど私も菅野さんをほっとけないのもわかって欲しい。
「とにかくいんで…っしょい!」
「でっしょい…」
「気にしないで下さい…」
なんだか段々、私の体調を気にしてるのか面白がってるのか分からなくなってきた。苦笑は苦笑のままなんだけど、しょうがないなぁ、みたいな雰囲気を持ってる。なんというか、優しいお姉さんって感じだ。こんな人を成仏させないわけにはいけない。
「それで、本題なんですけ…っどい!…菅野さんの…っくっす…!…未練をっうぉい!…教えて下さい…っしゅん!」
「えぇ…っと…ごめん。内容が全然入って来ないよ…」
「ずみまぜん…」
私を心配してくれてる菅野さんの為にも早く未練を晴らそうかと思ってたけど、まず本題に入れなかった。久しぶりにまともに会話出来そうな人なのに、私がまともに会話出来そうにない。
「風邪なの?」
「寒気とかはないんですけど…」
「季節の変わり目だからかな?」
「多分…すいません。もう一回鼻かみます…」
「どうぞ」
もはやどっちが気を遣われる側なんだかわからない。今のところ私の方が圧倒的にお世話されてる。おかしい。私が菅野さんのお手伝いをしなきゃいけないのに、何もできていない。
「ずび…それで本題なんですけど…菅野さんの…未練をは…らすお…手伝いをしたいん…でっすん…」
「私の未練?」
「はい…ずび…」
「ふふっ…そうねぇ…今だと、三葉さんの風邪が治らないと晴らせそうにないかな?」
「いえいえ…くしょん!…私のことはおいといて下さい…くしっ…」
今度はちゃんと本題を言うことが出来た。めちゃめちゃくしゃみを我慢したけど、ギリギリ最後だけに留めた。だけどそんな私のせいで菅野さんの未練を上手く聞き出せない。
会話って…なんでこんな難しいんだろ…
普通に会話出来るところで、普通に会話出来る人と、何故か会話が出来ない。おかしい。私の能力は幽霊を視て、話が出来るはずなのに。
「私は家帰ったらちゃんと大人しくしますから…ぐずっ…」
「ほんとかなぁ…?」
「いや、なんでそこ疑うんです…っしっ…」
「私、看護師だったの。だからそう言って聞かないおじいちゃんおばあちゃんや、子供達を沢山見てきたんだよ?」
「おじいちゃん、おばあちゃんじゃないし…子供ってそれ、小学生とかのことですよね…?」
悪いけど私は元気なお年寄りじゃないし、やんちゃなキッズでもない。花も恥じらう女子高生だ。ごめん、それは盛った。ただの恥ずかしい女子高生だ。
うん…なんかテンションおかしくなってきたかも…
「ううん。三葉さんくらいの子でも全然いるよ。いくつになっても言う事聞かない子なんているのよ」
「私…ずず…そんな反抗期じゃないです…ずび…」
「女の子は反抗期があった方が可愛いよ」
「おとなしくしろと言うのか…ずすっ…反抗しろと言ってるのか…」
「ふふふ…」
どっかで聞いたことあるなぁ…てかそれは今まで言ってたこと全否定では…?
自分のテンションが上がって来てるのも感じつつ、菅野さんが私のことを破天荒扱いしてきたから否定した。熱は感じないくしゃみと鼻水が止まらなくって、看護師の人に言われるとおとなしくしようと思えて来るから不思議だ。
「ともかく、菅野さんはどんな未練があるんですか…?くしっ…幽霊になったってことはそれがあることは分かるんですけど…へくっ…」
くっ…くしゃみ止まるの辛い…
私はもう一度菅野さんに未練が何かを聞いた。もういっそ、私のことを心配してくれるなら言って欲しい。私は折れる気はない。
「そう…私の為を思うなら言って欲しい…!」
「あらあら」
テンションがついに抑えられなくなってきたのか、うっかり冗談半分の言葉が出てしまった。半分は本気だけど、もちろん菅野さんを成仏させたいって言う気持ちもある。ただ普段なら言わないことを言ったことに自分で動揺した。
「あ…すみません…ずっ…つい心の声がもれました…」
「いいよいいよ。そっか。三葉さんの為ならしょうがないかぁ」
「あっ…いえ…その…もちろん菅野さんにきちんと成仏して欲しいとも思ってます…くしゅん…」
「私が未練を言って成仏したら、三葉さん、ちゃんとお休みする?」
「します」
気を悪くしたかと思って謝ると、菅野さんは面白がるように笑いながら許してくれた。割と失礼な言葉だったと思うのに、お姉さん力が半端ないと思う。
「疑ってるわけじゃなくて、単純な興味なんだけど、私が成仏すると三葉さんは何かメリットがあるの?」
「すぐに休むことが出来ます」
「そうじゃなくて…」
な…なんだって…!?
「三葉さんは幽霊を視つけたら、いつも成仏のお手伝いをしてるの?」
「え?はい…」
「それで、何かメリットがあるのかなぁって」
「あー…ずびっ…特にないですよ」
「そうなんだ?」
「はい…くしゅ…別に特典みたいなのがあるわけじゃないです」
菅野さんは不思議そうに、私が幽霊の成仏の手伝いをする理由を聞いてきた。始めは菅野さんを成仏させるメリットかと思ったけど、どうやら全体的な話らしい。けど、残念ながら私に何かメリットがあるわけじゃない。
徳がたまって天国に行ける保証になるわけでもないからなぁ…
「強いて言えば、私の気分が悪くならないだけですね」
「どういうこと?」
「んと…ずひっ…迷子を放っておくと気まずい。みたいな感じですかね」
「私は迷子かっ!」
「ひくしっ…菅野さんも私を子供扱いしたからお互い様ですよー…」
我ながら綺麗事だなぁ……そんなもんじゃないのに…
「ごめんなさい。見栄張りました。そういう理由もあるはありますけど…ずびっ…ホントは違うんです…」
「ん?」
私は菅野さんに表向きの理由を話した。菅野さんは例えに口を尖らせはするけど、あっさりと信じてくれた。だけど菅野さんのその態度で私の罪悪感が増して、風邪で気持ちが出やすくなってるせいか、自分で言ったことを覆した。
「ホントは罪滅ぼしのつもりなんです。ぐすっ…昔、成仏出来なかった幽霊を一人、目の前で視ました。未練を晴らす手伝いをしたのに、ダメだったんです…うっ…」
一人だった記憶より、いじめられた過去より、こびりついて頭から離れない瞬間。なによりも思い出したくない思い出だ。目を背けられないのは知ってるけど、それでも私は身体を丸めて逃げようとする。
「そんな人をもう二度と出したくないとかじゃないんです。ぐすっ…私がもう視たくなくて、そんなことが起きた罪悪感を自分勝手に和らげたくてやってるだけなんです…ぐすん…」
重い蓋を開けてしまったら、もう一度閉めるのに時間が掛かる。さらには押し込めていたモノが溢れて、その勢いのせいでさらに蓋を閉めるのが難しくなる。最悪だ。もう風邪で鼻をすすってるのか、嫌なことを思いだして泣きたくなってるのかわからない。
「私がいい子だからやってるんじゃないんです…ぐすっ…いい子だって思っていたいだけなんです…」
やってしまったことは消えないって知ってる。だけどそれに負けずに、それを償う努力をしてるって言いたいだけ。自分が可愛さの為でしかない。そんな自分に嫌気が差す。
「そっか。三葉さんは考え方がずいぶん大人なんだね」
「え…?くしっ…」
「私が三葉さんくらいのときは、自分の考えてることの裏なんて考えたこともないよ」
「そうなんですか…?」
「そうだよ。きっと私が三葉さんだったら、辛い記憶はあるけどやっぱり放っておけないから手伝う!くらいしか考えないだろうね」
そんな私に対して菅野さんは、慰めも励ましもしないで、ただ感心していた。慰めてもらっても気分は晴れないだろうけど、反応には驚いた。
「看護師やってるとさ、笑って患者さんに接したり励ましたりしても、仕事だろって拒絶されることがよくあるんだ。そんなことないですよっていいながら、心の中じゃ当たり前だろって思うの」
私の驚きが収まらない内に、菅野さんは私の隣にドカッと音がしそうな勢いで座りながら話し始めた。幽霊だから実際には鳴らないけど。
と言うか…愚痴…?
「好き好んで患者さんの相手しないよって思うのと同時に、それでも辞める気がない自分がいてさ。どっちなんだろってホント思うよ」
そして座ったと思ったら大の字になって寝転んだ。さっきまで優しいお姉さんみたいな雰囲気だった分、そんながさつと言うか、なげやりな態度に驚いた。それが似合っているのがまた不思議だ。
「で結局、表があれば裏もある。どっちがホントとかじゃなくて、どっちもホントなんじゃないかな」
「どっちも…本当…」
「そうそう。それに三葉さん、ほっとけない気持ちもあるって言ったでしょ?だからそれでいいんじゃない?」
同じように本当の気持ちを隠しながら仕事してたと言う菅野さん。でも結局は辞めなかったから、どっちも本当の気持ちでいいと言う。
「それに、三葉さんの気持ちもわからなくないよ」
「えっ…?」
「看護師だから。治りますって言った次の日に、死んじゃった人もいるよ」
「あっ…」
「でもやっぱり辞めなかった。辞めたいって思った次には、やってて良かったって思う時もあった。一人で泣いた時もあれば、みんなで笑う時もあった。だから結局看護師でいたんだ」
私の気持ちがわかると言った菅野さん。むしろそれは、私が菅野さんの気持ちを少しはわかると言った方がいいのに、私に寄せてくれた。本当は私なんかより、菅野さんの方が何倍も似たようなことを見てきたはずなのに。
「あの…すびっ…ごめんなさい…」
「あははっ…謝らなくていいよ。というか、三葉さんが人生経験早すぎ。むしろ私の方が、辛いこと思い出させちゃってごめんね」
「いやっ…でもっ…私っ…」
「だからいいんだって」
「っ!?ずびっ…」
私が謝ると、逆に菅野さんに謝られた。でも私の方が圧倒的に悪いから否定しようとすると、不意に抱きしめられた。実際には振りだけだけど、私は何故かそれだけで言葉が出なくなった。
「さっきも言ったけど、三葉さんは経験するの早すぎたんだよ。そして、それで折れなかったのが、立ち直ろうとしてるのが、すごいし、偉いし、尊敬する。三葉さんは何も悪くないんだよ」
「かんっ…のさん…うっ…うぅ…うわぁぁぁ…!!」
菅野さんの言葉は、私の心にすっと入ってきた。菅野さんのお陰で、私の罪悪感が薄らいで、重かった蓋をまたあっさりと閉じることが出来た。
私が助けたかったのに…助けられちゃったな…
きっとこの罪悪感はなくならないと思う。また蓋が開くときもあるだろう。でも次開く時は、もう少し向き合えることが出来るかもしれない。そうだといいと今は願いたい。
だから…今は…少しだけ救われよう…
そうしてしばらく、私は菅野さんに抱かれながら泣いた。少しだけ救われる為に。菅野さんと会えて良かったと思う為に。もしかすると、これがさっき菅野さんの言ったことなのかもしれない。
「ぐすんっ…ずびっ…くしゅん…」
「どお?落ち着いた?」
「はい…」
しばらく泣いた後、菅野さんが私が落ち着いたのを見計らってか、ゆっくりと離れた。感じるはずのない温もりが離れて、少しだけ寂しく思う。
「ありがとうございました…」
「どういたしまして。といっても、何も出来てないかもしれないけど」
「そんなことないです…ずびっ…私はちゃんと救われました…菅野さんと会えて良かったです。菅野さんがいるなら、軽い風邪でもちゃんと病院行ったと思います」
「ははは。それはちゃんと行こうよ…でもそっか。私も看護師やってて良かったよ」
「菅野さん…!」
私がお礼を言うと、菅野さんはそれを謙遜しながら返した。私はそんな菅野さんに、私なりに感謝をさらに伝えると、菅野さんはツッコミつつ身体が透け始めた。
「あらら。未練晴れちゃったかな?」
「そうでしょうけど…なんで…?私…何も…」
「んー…なんでだろうね?でも、私も三葉さんと会えて良かったと思うよ。看護師やってて、本当に良かったって思えたから」
あっけらかんといい放つ菅野さんに、私は戸惑いを隠せなかった。救ってもらってばっかりで、私は何もしてないと思ったからだ。そんな私に、菅野さんが会えて良かったと言ってくれるのが不思議でしょうがない。
「最後に一番、助けてあげられて良かったって、そう思えた。多分これが理由なのかな。ありがとう。三葉さん」
「菅野さんっ…」
「大丈夫。三葉さんはちゃんと人を助けられてる。自信を持って」
私が戸惑う間、菅野さんは自分なりに考察して、答えを見付けたらしい。そして、私に優しく笑い掛ける。
「それじゃ、そろそろ逝くよ」
「私、そのっ…ずっ…ありがとうございました!」
「うん、私も、ありがとう。体調管理、しっかりするんだよ?」
「はいっ…!」
「バイバイ」
最期に何か伝えたくて、でも言葉がでなくて、結局ありきたりな感謝の言葉を口にした。そんな私に菅野さんは笑いながら、最期に看護師らしいことを言って、光になって消えていった。
「ずびっ…へっ…くしょん…!帰って寝よう…」
そうして私は、約束を守る為にすぐに帰って温かくして眠りについた。結局、次の日に熱が出て、病院に行くことになったのは、言うまでもないかもしれない。
第47話を読んで頂き、本当に、ほんっとうにありがとうございます!
風邪引きやすい時期なので、このお話になりました。
風邪引くと心弱りますよね。
だからそんなこともあってか、茜ちゃんが自分からがっつり過去の気持ちに触れました。
それでは今回はここまで。
投稿遅れたことを、改めてお詫び申し上げます。
それでも読んでくださってる皆様には感謝しかありません!
そこに
ブクマして頂いてる皆様と
そうでない皆様に
違いはありません!
次回の更新は10/25を予定します!
引き続きお付き合い頂ければ、何よりの幸いです!