第45話 信じる心は真実に勝る
こんにちは!
明日葉晴です!
ギリギリの投稿になってすいません!
今回で舞ちゃん編は終わりです!
予定通りの話数でホッとしてる半面、何となく寂しく感じます。
夏の終わりを最近感じるようになったせいでしょうか?
まぁまだまだ暑いんですけどね!
とりあえず、話したいことは後書きで!
それでは本編をどうぞ!
私は昔から幽霊を視てきた。
「事件とは、常日頃、日常的に起きている…」
けど、幽霊の未練はいつも前向きで、恨みとかそう言うのじゃない、ただの願いばかりだった。
「つまり!この場にも事件はあるという事です!」
だから、こんな恨みを作るようなお願いは、予想も出来なかった。
◯
犬神さんの未練の宣言に、私達はなんとも言えない空気の中で考えてごとをしていた。と言っても、他の三人が何を考えているかは分からない。少なくとも小夜が幽霊のことを考えるとは思えないし。
それにしても…凶悪事件…かぁ…滅多に起きなくない?てか滅多に起きたら凶悪もなにもないだろうしなぁ…
確かにここは山の中の別荘。ロケーションだけを見れば、ミステリーなんかじゃテンプレとも言える舞台が整ってる。だけど残念ながらここにいるのはただの女子高生、と言うには少しだけ普通から外れているけど、気心の知れたメンバーだ。事件の起こりようがない。
でもなぁ…今すぐに山を下りて事件探しても見つかる保証もないし…かと言って、まさかここで事件を起こすわけにもいかないしなぁ…
「「事件かぁ…」」
私と美和が同時に溜息を吐きながら呟いた。どうやら一応美和も同じことを考えていてくれたらしい。こういう時は本当に頼りになる親友だ。私と一緒にちゃんと幽霊のことを考えてくれる、数少ない理解者だ。
「事件なんて起こらない方がいいのよ。そう言うのはフィクションの中だけで充分よ」
「それはそうだけど…さぁ…」
小夜の言葉に、私は同意しつつもチラリと犬神さんを視た。小夜の言葉には特に反応を示さずに、目を瞑って何か考え事をしている様子だった。とりあえずろくなことを考えてないような気がするから、今は放っておくことにしておくことにした。
「そもそも現代日本の探偵と言う職業は、基本的には調査を目的とした個人、企業の依頼を中心に活動する諜報機関よ。事件捜査はもちろん、解決に関して探偵の出る幕はないわ。それらは警察の仕事よ」
「ド正論…」
小夜はさらなる言葉を重ねる。ぐうの音も出ないほどの正しい探偵のあり方だ。物語の探偵と現実の探偵との差をこれでもかと言うほどに言った。なんでここまで責めるのかは分からないけど。
「それを理解しているはずなのに、なんでお母様は事件に首を突っ込みたがっていたのかしら…」
小夜のお母さんのせいか…
疑問に思ったけど、すぐに解決された。最後に小夜が疲れたように呟く。おそらく小夜のお母さんは似たようなことで事件とか犯罪とかに関わりたがっていたのかもしれない。本当に変な方向でアグレッシブすぎる。
「と、ここまで言ったところで、その幽霊とやらはどうなのかしら?」
「無視だね」
「はぁ…」
小夜は一通り自分の意見を言ってのけたところで、私に幽霊の様子を聞いてきた。探偵というのに思うところがある分気になったのだろう。私は再び犬神さんを視てから、一ミリたりとも体勢が変わってないことを確認して小夜に伝えた。小夜は打つ手なしと言うかのように重い溜息を吐く。
「ねぇ茜。凶悪事件と言ってたけど、探偵さんは具体的にどんな事件を解決したがってるの?」
「え…」
「よくぞ聞いてくれました!」
「うわっ!?びっくりした…!?」
考えていても仕方ないという感じで、今度は美和が私に向かって質問をしてきた。それを聞いて私は犬神さんに質問をしようとしたところで、私が言葉を発するよりも先に犬神さんが食いついてきた。都合のいい事しか聞こえない便利な耳をしているのだろうか。
「ボクが追い求めているのはただ一つの真実!」
うん…どっかで聞いたことのあるようなセリフだね…
「その真実に至るまでにあるドラマ!」
ドラマ…?
「つまりは!人の思いが入り乱れてしまったがゆえに起こってしまった悲劇を解き明かし、悲しみの連鎖に終止符を打ちたいのですよ!」
「フィクションの見過ぎだと思う」
あ、ついうっかり口に出してしまった…
芝居がかった口調で自分の理想を語る犬神さん。内心でツッコんでいたけど最後は口を滑らせてしまった。だけど特に気にした様子もなく、ただ言い切った感を漂わせていた。これを今から私が説明するのかと思うと、めちゃくちゃ恥ずかしい。でも今までの感じからすると、端折ったりすると注意が飛んでくるだろうから、ちゃんと言わなきゃいけないだろう。
「えと…茜?」
「あ、うん…その………」
私が固まっていたからだろう。美和が不思議そうに私の名前を呼んだ。それで決意を固めた私は、少しの間の後に全く同じことを口にした。
「それはー…その…」
「フィクションの見過ぎね」
「それに関しては同意見だよ」
私の言葉を聞いた後、美和が非常に言い難そうにしてから小夜が引き継いではっきりと言葉にした。さっきの私の言葉と同じだから、私は素直に同意した。と言うかそれ以外に感想はない。
「なぁ…探偵さん…それ、別に凶悪事件や無くてもええか?」
「なに…?」
「舞、どうしたの?」
そんな混乱した私達を差し置いて、今まで黙って何かを考えていた舞が犬神さんに問い掛けた。
「ウチらの間で事件は起こらへんけど、ウチが提供出来る未解決の事件が、一つある」
「舞…貴女…」
「どうせ茜に言うた時点で美和にも話そ思うとったし、なんもせんよりええやろ」
決意したように言った舞の言葉から、何の話をしようとしているかわかった。私よりも早くに気付いたらしい小夜は、舞を気遣う素振りを見せたけど、舞の意志は変わらなさそうだ。
「未解決事件…ふむ。聞きましょう」
「待って。舞、ホントにいいの?美和に話しちゃダメってわけじゃなくて、この探偵の推理で解決するとは思えないし、変な想像が出るだけだよ?」
聞く気満々の犬神さんを止めて、私は舞にもう一度掛け合ってみた。幽霊を成仏させることに協力的なのは本当に嬉しい。でもそれでいたずらに舞の過去を出して、ひっかきまわしてまで解決したいとまでは思ってない。
「だっ…たら…私がっ…私の話でっ…」
「ええねん。そない思い出そうとするだけできっつい顔されるのを見てる方が痛々しいわ。ウチはなんとも思わん。変な想像?上等や。こちとら変な想像で前に押し進められてんねん。今更一つ二つ追加されるくらい、どうってことないわ」
「まっ…い…」
「だからもう落ち着きや」
舞が言うくらいならと私が話そうと提案しようとすると、上手く言葉が出なくなった。それを舞は苦笑しながら止めて、自分が話の種になってもいいと言った。それにも私は何か言おうとするも、喉が詰まったように何も言えなくて、舞に気を遣われるだけとなった。
「待たせた…かは知らへんけど、勝手に喋るで。昔むかしの話や………」
犬神さんの様子が分からないだろう舞は、一つ前置きしてから、私に話したのと同じ語り口で喋りだした。小夜は懐かしそうに、美和は真剣に、そして犬神さんは何を考えてるか分からない表情で聞いていた。
舞は…こんなついでみたいな形で美和に話して良かったの…?私が落ちなければ…私にも話さずにいて…それで…
舞が穏やかに話している間、私の心の中は後悔が渦巻いていた。私が落ちなければ、舞は自分の過去を安売りするようなことはしなかった。私が簡単に聞かなければ、一日に何度も大事な話をすることもなかった。過去を辛く思ってはないとは言っていても、何度も話していいようなことじゃない気がする。
私が落ちなければ…犬神さんとも会わずに…会わずに…?会わなかったら犬神さんは…?そうなったら………違う…私だけ落ちれば…?
「…かね…ぁかね…?茜っ!?」
「…え?」
私は何が最良だったかを考えていると、揺さぶられながら呼び掛けられたことで意識を戻した。さっきまで何を考えていたかは、そのせいで忘れた。
「え?じゃないよ?今なんか変なこと考えてた?」
「完全に意識がどっか飛んでってたなぁ」
「全く…妄想にふけるのは舞だけで充分よ」
「ナチュラルにディスるん、止めてくれへん…?」
「あっは…ごめん、心配掛けた。もう考えない」
具体的には何を考えていたか忘れたけど後悔だけは残っているから、多分美和の言ってることは当たっているだろう。顔にも出ていたらしい。舞が苦笑いしていて、小夜は呆れながら私への注意と舞への弄りを並行して行っていた。小夜なりの配慮だろうけど舞への配慮はされてないことに、私は笑いながらも謝った。
「そんで、ウチは話し終わったんやけど、探偵さんの反応はどないや?」
「ん…?あー…ちょっと待って…」
私の様子が元に戻ったのを感じたのか、舞が犬神さんの様子を聞いてきた。どうやら私が考え事をしてる間に、舞は昔の話を終わらしていたらしい。舞に言われて、私は犬神さんの様子を視た。
「失踪…行方不明…神隠し…失われた過去…」
「なんか考え事してるね」
「お気に召したようでなによりや」
視てみると、ぶつぶつと何かを考え込んでいた。呟いているワードから舞に関係のありそうなことだというのは分かるけど、どういう迷推理が働くかまでは流石に予想つかない。その様子を伝えると、舞はからから笑った。
「それにしても…舞、あたし達に話して良かったの?」
「なんや、美和まで同じこと気にするんか?」
「だって…思ってた以上に大事な話だったから…」
「ええんよ。どうしても秘密って程、隠したかったわけやない。それに、二人にはいつか話たってもええと思っとったし。それが今やっただけのことや」
私と同じように感じたのか、美和が舞に遠慮がちに聞いていた。だけど舞は一貫して気を遣わせないような態度と言葉で、私達を逆に気遣っている。
「これからも今まで通りでいてくれたら、ウチはそれでええねん」
「……うん、分かった。これからもよろしくね。舞」
「あぁ。よろしくな」
そうして、舞の過去を知ったからと言ってこれからも何も変わらないという舞に、美和は一拍置いてから笑顔で答えた。それに舞もいつもの調子で答えた。
「名前…記憶…意味……真の…名…?だとすると…紡ぐ回答は…!?」
「…?」
その間に、今まで呟いていた犬神さんが呟くのを止めて顔を上げた。一点を見つめるようにして真剣な表情をした犬神さんは、何を思い付いたというのだろうか。
「メイド、一つ聞きます」
「あ、え?舞、犬神さんがなんか聞きたいって」
「なんや?」
「君は両親を恨んでいますか?」
「えと…両親を恨んでいるかだって」
「いや…正直なんとも思ってへん」
「そうですか」
一体なんなの…?
舞の方をまっすぐに見た犬神さんが、舞に向かって短く質問をした。残念だけどその声は聞こえていないから私が通訳として代わりに舞に聞く。そうすると、ますます何を考えてるか分からない態度を取る。
「正直に言えば、現状では君の過去も、何故この山にいたのかもわかりません」
「まぁ…そうだろうね…」
「ですが、君の両親…というよりどちらか片方ですが、君のことをどう思っていたのか、そして何故君の情報が何一つ見つからなかったか、という事は推理できます。あくまで話を聞いての推理ですが」
「は…?」
犬神さんは当たり前だと思えることを言った後に、驚くことを口に出した。突然のことに私は戸惑って、舞に通訳する前に思わず犬神さんを視た。
「茜、探偵さんはなんやて?」
「あ、ごめん。その…舞の親のどっちかが、舞をどう思ってたかは推測出来るって…あと…なんで情報が出てこなかったかも、わかるかもしれない…」
「は…?」
私の様子に、舞は私に呼び掛けて先を促した。それで通訳するのを思い出して、舞に犬神さんの言葉を伝えると、舞は私と同じ反応を返してきた。
「君はその推理を聞く気はありますか?」
「舞…聞く?」
「………聞く…聞いてみたい」
「ふむ…そうですか」
犬神さんは舞に意思を確認してきた。私はそれをしっかりと伝え、舞は少しの間を置いた後に聞く決意を口にした。
「では話します。順を追って説明しましょう」
いったい…どんな…
舞の意思を確認した犬神さんは、短く宣言した。言われた内容が何であれ、決意を固めてる舞には、なんであってもちゃんと伝えようと、私も決心した。
「何かを探すにしても、手掛かりと言うのは重要です。ですがそれでも何も見つからなかった場合、まず根本から疑うべきでしょう。今回で言えばメイドの名前ですね」
「………だって」
「なん…やて…?」
私は犬神さんの言葉を、一字一句間違えずにみんなへと伝え始める。だけどその言葉は、立ち直ったはずの舞の根幹すら揺るがす内容にも思える。
「手掛かりを見返す。やっと掴んだものを否定したくないのはわかりますが、大事なことです。君の名前は本当に『ひたちまい』なのか」
言いたいことはわかる。だけど、それじゃ本当にまた何もわからない状態になってしまう。犬神さんが何を伝えたいのかわからない。
「物事は多角的に見るべきでしょう。『ひたちまい』という結果に固執せず、何が『ひたちまい』とさせているかを考えるべきでしょう」
「どういう意味や…?」
「一つは君自身の記憶。そしてもう一つは…読み方です」
「読み方…?」
「今、君がどういう字をもって『ひたちまい』と形作っているかは知りませんが、あるはずですよね?君の名前の漢字が」
「っ!?」
「今の漢字は君の記憶から読みを決め、漢字を作ったと思います。その逆を行えば、同じ『ひたちまい』でも多様な見方が出来るはずです」
私は犬神さんの言葉を伝えながら、多分みんなと同じ様に悩み、そして理解していった。つまり、『ひたちまい』を探すのではなく、『ひたちまい』と読める漢字の人を探すべきだと。
「例えば日に立つと書いて『日立』。もしかすれば君は『にったち』かもしれない。『まい』にしても、他に漢字はあるでしょうし、その分読みはあるはずです。名前の漢字は自由度が高いですし、ひらがなと言うこともあるでしょう」
「確かにそうね…」
「なんにせよ、これで一応のメイドの情報が見つからなかった説明はつきます」
「その…通りや…」
犬神さんの説明に大きな矛盾はないように思える。小夜と舞から反論がない辺り、その辺は確認していないのかもしれない。後は、小夜のお父さんに確認すれば分かるはずだ。
「さて、ではもう一つの本題。メイドが親にどう思われていたかですが…」
「っ…」
「結論から言えば、君は愛されていたと見ていいでしょう」
「…それは…なんでや…?」
みんなも気になっていただろうもう一つの推測。私を含めて誰もが固唾を飲んで待つ中、まず私がその結論を聞いて、みんなに言った。犬神さんの予想は嬉しいもので、でも舞は疑いもあるのか、感情を出来るだけ出さないように聞いたのが分かる。
「簡単なことです。先程の推理と合わせて、名前の漢字の別の読み方を教えたと言うことは、その名前に込められた意味、漢字の意味を教えたと言うことでしょう。そんなこと、興味は元より、愛情がなければしないでしょうね」
「っ!!!」
名前に込められた意味。それを聞かされてるのが何よりの証拠だと犬神さんは言った。もしかすると、犬神さんは自分の名前に思い入れがあるのかもしれない。事件起こす側と言ったことを反省した。
「さて、以上でボクの推理は終わりです。証明は出来ないが、一つの目安になるんじゃないかと思います」
そう締めくくった犬神さんの言葉を私は伝え切り、舞を見た。
「ウチは…」
舞…
項垂れていて表情が見えない舞が、一言だけ呟く。私は、多分小夜も美和もだと思うけど、心配になった。呟いた一言が重い。また自分がわからなくなっているんじゃないかと不安になる。
「ウチは…舞や。常陸舞や…!」
「貴女…」
「小夜、多分今、旦那様に確認取ろ思うたやろ…?」
「え…えぇ…」
「それ、せんでええ」
「え…?」
そんな空気を断ち切るように舞は顔を上げて宣言した。そして、小夜に質問してから、小夜の取ろうとした行動を先読みして制限した。私はもちろん、言われた小夜も戸惑った様子を見せた。
「なぁ小夜、ウチの名前はなんや?」
「貴女…の…名前…は…」
「あぁ」
「貴女…は……常陸舞。私のメイド…そして…親友よ」
戸惑う小夜に、舞は一つの質問を投げかけた。その答えに詰まった小夜。だけど、舞は信じるように待ち、小夜はそれに答えた。
「せや。ウチは常陸舞やねん。他の誰でもない。小夜と奥様が付けてくれた名前があんねん」
その答えを聞いた舞は、自分に言い聞かせるような内気な感じではなく、まるで世界に宣言するかのように静かに言い放った。
「探偵さんの推理が間違っとるとは言わん。やけど…やけどな?その推理聞いて、やっぱウチは『常陸舞』以外あらへんと思うた」
「ふむ…」
「やって、ウチに名前付けた時の愛情は二人分やねん。少なくとも一人、やないねん。確実に二人や。それに勝とう思うなら、それ以上持って来ぉへんと無理やろ」
犬神さんの推測を否定せず、だけどそれでも舞は今の自分をより強く肯定した。それでこそ舞と言える、今と未来を優先する言葉だった。
「そうですか…それが君の真実なら、そうなんでしょう」
な…犬神さん…!
「はぁ…失念していました…確かに愛情は、一つじゃないですね」
悔しそうに、だけどどこかすっきした表情の犬神さんは、成仏の兆候が表れていた。
「私の出す真実に限りなく近い推理より、自分の信じる真実ですか…」
自分では自信のあっただろう推理を、ただのわがままとも取れる気持ちだけで打ち砕いた舞を、賞賛するように空を仰いだ。室内だから見えるのは天井だろうけど。
「それがただ一つの真実と言われたら、どんな名探偵も必要ありませんね…おとなしく舞台を降りましょう」
「ちょっ…!」
「さらば」
「まぁっ…!?」
そして私達にお礼も挨拶もさせる暇もなく光となって消えて行った。なんだかわからないけど、消える早さがいつもより早かった気がする。
「茜?どないしたん?」
「犬神さん…成仏しちゃった…」
「えぇっ!?」
「あらそう」
舞が気付いた瞬間には時すでに遅し。犬神さんは消え去った後だった。最後の最後まで自分のペースを貫いた、ある意味一人勝ちかもしれない。
「よっぽど舞に負けたのが悔しかったのかしら。私のメイドに勝とうなんて烏滸がましかったわね」
「お?小夜が幽霊を認めるんは珍しいな」
「……そうね…私も浮かれているのかもしれないわね。私の思い付かなかったことを出したことは評価するわ」
「ほっほぅ…?ついに小夜も信じるようなったかぁ」
「それはないわね。夏の夜の、一時の夢みたいなもの。貴女を…舞を拾った偶然と同じよ」
「はは…そか。確かにそら偶然やな」
「そう言う事よ」
一番興味をなさそうな反応をした小夜だったけど、一番に感想を口にした。それに対して舞が真っ先に反応して、小夜が今の心境を素直に話していった。これも夏の夜の一時の夢なんだろう。
「それじゃ、今の偶然を、目一杯楽しもうよ!」
「そうだね。まだ夜は始まったばっかりだもんね」
「…もう。今日だけよ」
「おぅおぅ!今日だけ、今日だけや!」
そんな二人に触発されて、私と美和も小夜の言葉を少しだけ借りて乗っかった。こんな素直で隙のある小夜は珍しいし、弄れる機会は滅多にやって来ないだろう。そうして、私達は騒ぎながら一夏の夜を過ごしていったのだった。
◯◯
騒ぎに騒いで夜を過ごした次の日。私達は昼までぐっすり眠ってから、私と舞はわさび畑でスマホを探していた。
「どっこ飛んでったんかのぉ…」
「いやぁ…急だったからねぇ…じゃなくて!なんで普通に動いてんの!?」
「わはは!鍛え方が違うねん」
「鍛えてても普通一晩で回復しなくない…?」
何の異常もないかのように動く舞に、私は遅れてツッコんだ。そのツッコミに意味の分からない理由で返されて、私は呆れと疑問しか出なかった。ちなみに小夜と美和は、私達が自分のスマホを探してる間に遅めの昼食を作るそうだ。
「ねぇ舞」
「なんや?」
「ホントに良かったの?」
「過去を話したんは気にせんでくれというたやろ?」
「そっちじゃなくて、名前の話」
「……あぁ…」
せっかく二人だから、と言うわけでもないけど、私は舞に気になっていたことを聞いた。それを聞いた舞は、少しだけトーンを落として動きを止めた。
「小夜には内緒やで?」
「うん…」
そして、私の方をゆっくり向いてから、悪戯っぽいような寂しいような、なんとも複雑な表情を表情で笑って言った。
「全く気にならんと言えば、流石に嘘になるわな」
「なら…」
「けどな。ウチが夜言うたんも、嘘でも冗談でも、夢でもないねん」
「舞…」
やっぱり、舞だとしても気になることは気になるらしい。それでも、確かな意志を感じさせる言葉で言葉を繋いだ。
「ウチにとっての今は、常陸舞やねん。顔も覚えとらん、理由も知らんダレソレやなく、小夜と奥様がくれた存在なんや。ウチにとってはそれが一番大事や」
「そっか。変なこと聞いてごめん」
「かまへんよ。しゃあないやろ。ウチも同じ立場なら聞いてまうわ」
「ありがと」
舞にとっては今が大事。自分の知ってる、信じてる確かな存在。それを持ってるから、舞はここまで自分を確立してるのだろう。私にはそうと言えるものがあるのだろうか。
「なぁ、ウチからも一つええか?」
「もちろん」
「茜は、自分が幽霊を視れることに理由があるとして、その理由に救いがなかったら、どないするん?」
「救いがなかったとしたら…」
私は舞の質問を考えつつ、舞の気持ちも一緒に考えた。そして、質問の答えよりも先になんとなく察気付くことが出来た。昨日の話を聞いていたからと言うのもあるのかもしれない。
あぁ…舞にも怖いものがあるのか…
舞は自分で言っていた。自分は過去を辛いと思ったことがないと。その言葉と合わせて考えると、舞は自分の一番辛い過去が、始まりの記憶になるのを怖がっているのかもしれない。
私にとっての一番辛い過去は…間違いなく…
舞の気持ちを察するにあたって掠めた私の記憶。それを思えば、例え私の力に理由があって、それが救えないものだとすれば、答えが自然と出てきた。
「私は私の分まで幽霊を救う。私より辛い思いをする幽霊がいて欲しくないから」
「…そか。茜は……」
「ん?どうしたの?」
「あぁ…」
私は自分の答えを舞に伝えると、舞は納得したような表情を見せた後に真剣な顔になった。それが不思議で問いかけると、力のない声が聞こえてきた。
「いや。なんや早死にしそうやと思っただけや!」
「なんだそれ…?」
「うはははは!」
だけどよくわかんない理由ではぐらかされた。そして私の質問に答えることなく、ただ笑っただけでスマホを探す体勢に入った。真面目に話すのは終わりという意思表示なんだろう。だから私も仕方なくスマホ探しに戻った。その後は他愛のない雑談をして、小一時間ほど探したところでお互いのスマホが見つかり、美和と小夜の待つ別荘に戻るのだった。
第45話を読んで頂き、本当にありがとうございます!
舞ちゃん編は以上で終わりとなります!
読むのお疲れ様でした!
予想以上に名残惜しくて少し長くなりました。
この舞ちゃん編は、このお話全体を考えるにあたって、茜ちゃんの次に思いついた過去の話になります。
ですが小夜ちゃん編を書いてる時にifのルートを思いつきました。
今回の終わり方…と言うより全体像は、最初に思い付いたものを採用してます。
最初に思い付いていたのに、幽霊はifルートの後に思い付くという、なんとも意味わからん経緯でこの舞ちゃん編は完成しました。
余談にはなりますが、何となく感づいている方がいるでしょうが、舞ちゃんの本名は別にあります。
ifではそれを明かすのですが、元々明かさない予定だったのでそれをそのままにしてあります。
いつかプロフィールを書く気になったらしれっと入れるかもしれません。
総括すると、色々ごちゃってした感じで出来ていった不思議な話でした!
それでも読んですっきりして頂けたら、私だけがごちゃっとしたという事になりますね。
それでは今回はここまでと言うことにしましょう。
ブクマして頂いてる皆様!
そうでない皆様!
いつも読んで頂いて、ホントの本当に感謝しております!
次回の投稿は少し間を開けて、9/27を予定させて頂きます!
引き続き、お付き合い頂けましたら、何よりの励みになります!




