第43話 人の変な趣味は、人の変な提案から始まる
こんにちは!
明日葉晴です!
少し投稿遅れて大変申し訳ございません!
きっと見直してきてもらってたところでこの失態…本当にごめんなさい!
今回も舞ちゃんの昔話になります。
オカルト好きになった原因の話です。
今回も今回で香夜さんが大活躍!
察してるかと思いますが、私は香夜さんを大変気に入っています。
そんなことはさておき、本編をどうぞ!
side.茜
私は昔から幽霊が視える。
「あれはウチが小夜に世話んなってしばらくしてからや…」
そのせいでひどい目にあったりして、自分は一番不幸なんだって思ってた時もあった。
「ウチのことがなんもわからんてわかった時は、流石に荒れたんよ。まぁそれも、一瞬だけやったんけど」
でも、私よりも辛い目にあってる人は沢山いるんだって、今はそう思うし、不幸だと思ってた自分が嫌になる。
○
side.舞《過去》
小夜の両親、つまりは香夜さんと小太郎さんに保護されてから三週間が経った。この間になんも音沙汰ないねんから、流石の幼いウチでもわかった。ウチは捨てられてもうたんやと。
それでも…三人がなんも言わんと、ウチも諦めきれんやん…
そう自分に言い聞かせ取っても限界ってもんがある。そんな状態で気楽に過ごせるはずもなく、厚意で家に置かせてもらっとるんに、態度に出てまう。そしてそんな態度をしていれば、周りのメイドや執事達はウチの事情を察して、同情的な視線を向けてくる。それがまたウチの心を荒ませていった。
嫌や…そんな目ぇで見んなや…!
そんな気分が沈んでいく毎日の中、決定的な場面に遭遇してもうた。
「もう…これ以上は…」
「私達が諦めてどうするの?私を口説こうとした小太郎さんはどこへ行ったのかしら?」
「冗談を言っている時ではない」
「私はいつだって本気…あら?まい…」
「くっ…」
すぐにウチのことやって理解出来た。香夜さんがウチを見て驚いとって、小太郎さんはウチを見て悔しそうな顔をした。それを見てしまえば、何が何でも理解してまう。ウチの手掛かりがなんもないことが。
「っ!!」
「まいっ!」
「ひたち!」
やり切れんくなったウチは、走ってその場から立ち去った。二人がウチのことを呼び止めるも、振り返ることも速度を緩めることもせんで一心不乱に小夜の屋敷ん中を走って出口に向かった。
「お待ちなさい」
「っ!?」
お婆のメイドが出口に行こうとしたウチの前に立ちはだかった。おとなしくしとる分には優しいええお婆やけど、ちょい礼儀やらに厳しいとこあって、怒るとめっちゃ怖い。そんな人が、どこにあったって思う竹箒を構えて待ち構えとる。
「奥様の命令により、例えお客様であっても多少手荒な手をつかってでも止めさせて頂きます」
ツッコミを入れる余裕もあらへんほどに心が荒れとるウチであっても、流石になんやって思う。多少の範囲がデカすぎる思うわ。竹箒は立派な凶器や。
「はいやぁっ!」
「ぇっ…」
なんかの武術の様に竹箒を回され、気付いたら痛みもなく天井を見上げとった。ホンマ企画外のお婆や。香夜さんを小さい頃から面倒見て、小夜も教育しただけはある。てかこの人に面倒見られてなおあんな性格な香夜さんも大概やろ。
「手段を選ばなくて申し訳ございません。痛みやお怪我は?」
「あらへんわ…」
ウチを覗き込みながら心配そうな目ぇで質問してきたお婆。ウチはそれをゆっくり起き上がりながら答えた。
「それは安心しました」
「お婆は…」
「はい?」
「お婆はウチを可哀想やと思うか…?」
香夜さんと小太郎さんが知っとることを、この人が知らんわけない。聞いたとこによるとメイドん中で一番偉いらしいわ。知らんとしても、この人が察しとらんわけない。
「私はいかなる事情のあるお客様だろうと、失礼に当たる感情を持って接することはございません。それが私の矜持でございます」
「せやけど、知っとるんやろ?ウチが…」
「もちろん知っております。それでも断言致しますが、可哀想、などとは微塵も感じません」
「そんなことあらへんやろ!他のメイドやて…」
「ほぉ?他の子達がそのように接したと?」
「いや…そうやないけど…」
「でも何かを感じたと。当家のメイドが不愉快な思いをさせたことを、深くお詫びいたします」
「え…」
お婆はウチの質問に、柔らかくも強さを感じる姿勢で答えた。それでもウチは信じられずに問い詰めると逆に質問を返された。何かされたわけでもないウチはたじろぐと、ウチが感じたことを察した後に深く腰を折って謝ってきた。
「他の子達については私が責任を持って教育し直し致しますので、今はどうかこの老婆の頭一つでお許し下さいませ」
「そんな…しゃあないことやし…」
「しょうがない。では済まないのですよ」
頭を上げ、ウチに笑顔を向けながらそう言い切った。その頑なな姿勢に、何も反論出来んくなった。
「さて、奥様がお呼びになっています。一緒に来て下さいませ」
「はい…」
物事の優先順位がはっきりしとるお婆は、すぐに切り替えて香夜さんの命令を実行することにしたらしい。ウチは断る気力もなく、ただ一緒に付いていく。
「奥様、お連れしました」
「入って頂戴」
「失礼致します」
香夜さんの部屋の扉にお婆がノックをした後、許可を得て一緒に入る。そこにはいつもの笑顔を浮かべた香夜さんと、涼しい顔の小夜がおった。
そか…小夜も知っとったんか…
「まい様をお連れ致しました」
「ありがと。下がって頂戴」
「畏まりました」
お婆を部屋から出して、ウチと小夜と香夜さんの三人だけになる。ウチはいよいよ、ホンマのことを言われて身寄りのない子供の行く施設なりに行くんやと覚悟した。
「さて、まい…」
「はい…」
「うちの子にならない?」
「……はい?」
香夜さんから呼ばれ一度間を置かれたあと、あまりにも意味わからんことを言われた。聞き返すことすら遅れるほどに、理解が追い付かへんかった。
「まぁ!即決とは嬉しいわ!」
「お母様、今のは了承ではなく疑問です」
「そんなことないわよ。ねぇ、まい?」
「あの…小夜が正解や」
「だそうですよ。お母様」
「あら残念」
やけど、ウチの疑問もお構い無しに勘違いで喜ぶ香夜さん。それを小夜が呆れながらツッコミを入れた。どこまでもいつも通りな二人に、ウチの方が戸惑った。
「それに説明を省き過ぎです。経緯とか状況とか、あるんじゃないですか?」
「だって神隠しにあった子よ?おも…放っておけないじゃない…!」
「非現実的です。それと本音が漏れています。お母様」
かみ…かくし…?
淡々と小夜が香夜さんに注意するも、香夜さんはあっけらかんと言葉を放つ。その聞き慣れん言葉にウチは戸惑った。
「神隠しってなんや?ウチは捨てられてんやろ?」
「神隠しっていうのはね、人が神様とか妖怪とかにさらわれてしまうことよ」
「根拠もなにもないことですが」
「せや!そんな嘘吐かんと、ホンマのこと言ってや!」
ウチが問いただすと、香夜さんは全く検討違いのことを言い出す。そんな香夜さんの態度に流石に腹が立って、つい怒鳴ってもうた。
それに…そんなん言われたら…!
なんもわからんと、なんやウチの存在そのものが嘘になってまう気ぃした。それが嫌で、悲しくて、否定しとぉて、感情が暴れ出した。
「んー…それがね?まいのこと、なぁーんにも、わかってないの。じゃあもう神隠しでいいじゃない!って思ってね」
「お母様だけですが」
「嘘や!ホンマやとしたら、もっと良く調べ!」
ウチがいくら怒鳴ろうと、いつものふわふわした態度を崩さん香夜さん。なんもわからんわけないと、半ば願う様にウチは問い詰める。
「調べたわ。でもわかんなかったの。うちを嘗めないで頂戴?警察だっておど…協力してくれるのよ?日本中調べて、手を尽くした上で、なにもわかってないの」
「そんな…」
ウチの小さい頭では、警察、日本中っちゅう言葉で、ことの大きさを計った。それでもウチは信じたくあらへんけど、否定するだけの根拠もない。
「そうね…まだ信じられないと言うならこうしましょ?私はまだまいのことを調べ続けるわ。まいは、神隠しを立証して頂戴?あ、立証っていうのは、本当のことを明らかにすることよ」
「神隠しを…立証…?」
「そう。神隠しがあるとして調べるのか、ないとして調べるのか、どっちでもいいわ。好きにして頂戴」
そんなウチの疑いを察したのか、香夜さんは思いもせんかった提案をしてくる。人が怒っとるのに、こんな提案を素でしてくるあたり、香夜さんの感性は普通やない。
「お母様はまたそんな現実味のないことを…まい、別にそんなことしなくても家にいてくれていいわ」
「いや…やったるわ…」
「え…?」
「香夜さんでも出来んかった、ウチがここにいる証拠、集めようやないか…!」
「まい…!?」
「んーっ!そうこなくっちゃ!」
せやけどウチにとってはそれがどうしようもなく魅力的に思えた。ウチの存在が嘘やない理由。なんでもええから証明したい。ウチは藁にもすがる思いやった。
「じゃあそしたら、まずは仮でもいいから戸籍作っちゃいましょうか。住所は家で…誕生日はどうしましょ?」
「お母様、それよりも先に決めるべきものがあります」
「あら?何かしら?」
「まいの名前です。正確には、名前の漢字ですが」
「あらそうね!流石小夜!冴えてるわね!」
そうしてウチは、常陸舞としての人生を歩むことになった。
○○
side.茜
「てなわけや。ウチの人生の始まり始まり」
「それで…勝負はどうなったの?」
「結局、どっちもどうしょうもないくらいに手掛かりなしや。奥様は亡くなってもうて、一応は旦那様が情報集めとるらしいけどな」
「……そうなんだ」
そうして舞は、自分が小夜の家に引き取られた経緯を締め括った。夜空を見上げながら話した舞の表情からは、今どんな気持ちか分からない。そしてどんな気持ちで過ごしてきたか、簡単に分かると言う事も出来ない。
「うはは!そんな顔すんなや!ウチはもうこれでええ思とんねん」
「でも…覚悟してた以上に、簡単に聞いちゃいけない話だったから…」
「ウチが勝手に話たんや。気にせぇへんでええ。それにさっき言った通り、ウチは奥様の提案に乗ってよかった思てんねん」
何も言えなくなった私を、いつも通りの明るい笑顔で励ましてくれた。その笑顔には、後悔も何も無いように見えた。
「神隠しのことを調べていくうちに、ウチは世の中の不思議なもんに惹かれていったんや。現実では証明出来てへんことが仰山ある。せやったらウチみたいなんもいてもええんやないかって。そう思えたんや」
「舞は…凄いよ…ほんと凄い」
「ホンマに凄いんは奥様や。ぶっとんだ提案でウチを丸め込んだ上に、結果として前向きに生きれるようしてくれた。狙い通りかは、もうわからんがな」
辛いはずの過去を後悔も何も無いように話す舞に、私は舞を評価する言葉はない。舞よりも苦労したわけじゃない私は、単純で中身のない言葉しか言えなかった。
「なにより、誕生日も、生まれたところも、名前でさえ嘘っぱちのウチやけど、ウチが今までやってきたことは嘘やあらへん。神隠しについて調べるうちにオカルトが好きになったことも、小夜のメイドにしてもらったことも、記憶がないとこから始まったウチの大事な存在した証やから。それをこれからもウチという存在に刻んで、本物にしていくんや。ウチがウチを証明し続ける」
昔は自分に過去がなくて荒れた舞は、過去に囚われずに未来に向けて生きていく方法を見つけたというわけだ。過去がないからこそ、今と未来を大事にして常に前向きになれるのかもしれない。それは舞にしか出来ない、舞らしい生き方だと思う。
「舞…」
「なんや?」
「もし…もし仮に、舞に幽霊が視える力があったとして、そのせいで辛い目にあったとしたら…どう考える?」
私には舞の考え方は出来ない。私には未来だけを見る生き方が出来なくて、過去にどうしても忘れられない記憶がある。私に舞の考え方は出来なくとも、なにか参考に出来ないかと思って、質問してみる。
「それはイジメとかそう言う話か?」
「ううん、そうじゃない。そうじゃなくて…幽霊を視ること自体したくないって思うほどの経験の話」
「せやな…ウチは辛い経験すらも、ウチの生きた証やと考える。けど多分、それはウチやからって言えるんも、ウチが茜の言うほどの辛い経験をしたことないからやとも分かる」
「舞も充分辛い経験だと思うから、したことないって言うのも違うと思うけど…」
「全然ちゃう。ウチはスタートで迷っただけで、茜みたいに途中で怪我したわけやないねん。ウチは背中を押されて済んだことを、茜は手当せなあかんことやろ」
「そう…?そういう…こと…?」
私からすれば同じ辛い過去だと思うけど、舞にとっては違うらしい。やっぱり考え方が根本から違うみたいだ。舞は自分を励ますだけ充分で、私のこととは別だと言った。
「そういうことや。せやからウチは多分、茜の経験の参考にはならへんやろ。すまんな」
「ううん。謝ることないよ。私も、変なこと聞いてごめん」
「茜こそ謝ることないわ。でもそやな…ウチも仮の話になるんやけど、辛い経験したら、その辛い経験から得た、辛いこと以外を考えるべきなんやないかな」
「辛いこと以外の…」
「せや。ま、思い出すんも辛いんやったら、難しいんかもしれんけどな。結局、何が辛いか、どれほど苦しいかは、本人にしか分からんやろから」
「…なるほど…ありがと」
「かまへんよ」
私の…私のやってしまった取り返しのつかないことから得たもの…かぁ…
舞は自分の経験ではなく、私がしたように仮の話からで自分の考えを話した。それは参考にならないと言いつつも、割と的を射た話だと思う。私はそれを受け入れることが出来て、心に留められた。そうして、私は心を落ち着けて、舞は何かすっきりした様子で時間を過ごした。
「あー…それにしても、小夜達は来ぉへんなぁ…?」
「あはは…そうだねー…」
そんな時間を過ごして少しだけ気恥ずかしくなったのか、舞は空気を切り替えるように話題を作った。確かに割と長い間話をしていたけど、なかなか二人がやって来ない。
「このまま来なかったら、やっぱ朝まで待つしかないかな?」
「その前に不審者に襲われたりしてな」
「怖いこと言わないでよ…」
「宇宙人に誘拐されたりして、行方不明者になってもうたりな」
「一気に現実味がなくなったね…」
「うはは!不審者より面白そうやし、そっちの方がええなぁ」
「相変わらずだねぇ」
私が無難な解決を言うと、舞がそれを茶化した。その言葉に私が文句を言うと、今度は舞らしい話をし始める。行方不明的な存在だったのによく言えるものだと感心しつつも、それは言葉にせずに呆れた。
「これは事件の匂いがしますねぇ!!?」
「はぁぁぁっ!?」
そしてそんな会話に割り込む様にいきなり知らない声が聞こえてきて、私の叫び声が山の中で木霊するのだった。
第43話を読んで頂き、本当にありがとうございます!
と言うわけで舞ちゃんの過去でした!
香夜さんの誘導によって舞ちゃんはオカルトの道へ…
あと明確には言ってませんが、舞ちゃんのメイドモードはお婆の影響を受けてます。
護身術もお婆仕込みです。
そんなことはさておき。
最後に出てきたのは何者か!?
勘のいい皆様はきっとお気付きでしょう…
それでは今回はここまで!
改めて今回遅れたことを深くお詫び申し上げます。
ブクマして頂いてる皆様!
そうでない皆様!
遅れても読んで頂いてることを本当に嬉しく思います!
次回の更新は8/30を予定してます!
引き続きお付き合い頂ければ何よりの幸福です!




