第37話 さほど服に興味がない人ほど着せ替え人形にされる機会が多い気がする
こんにちは!すみません!
明日葉晴です!
最早謝罪すら許されないほどな気がしますがまた遅れました。
本当にすみませんでした。
今回も一話完結です。
前回シリアス感が強かったので、反動で癖が…
まぁ多分そこまでヤバいヤツでもないと…思いたいです。
それでは本編をどうぞ!
私は昔から幽霊が視える。
「ナンッ…!セーンスッッ!!」
大通りで一人、大きく仰け反りながら人に指を指して叫んでいる幽霊らしき男の人がいる。あれが実は生きてる人だとするなら、今この通りにいる人達のスルースキルは伊達じゃないと思う。
「茜?どうしたの?」
「いや…美和、今ナンセンスって聞こえた?」
「……頭打った?」
「正常なんだなぁ…」
おおっぴらに聞けないから、遠回しに美和に確認したら心配された。幽霊なのはほぼ確定したけど、何かを失った気がする。悲しい。
「さて…どうしよ…」
◯
大通りと言うこともあっていきなり声を掛けることが出来ない。だから私は幽霊を視失わないようにしつつ、美和を建物の陰に引っ張った。
「ちょっと…どうしたの?」
「その…幽霊がいて、道の真ん中で話せなかったから…引っ張ってごめんね」
「なるほど、そう言うこと。いいよ」
いきなり連れて来られた美和は、私に不満気な目を向けた。だから正直に説明すると、納得したように許してくれた。ホントに気のいい親友だ。
「それで…どうやって声を掛ければいいかと思って」
「あー…どういう幽霊さんなの?」
「どういう…」
私は続けて相談すると幽霊の特徴を聞かれて、幽霊の方に視線を移す。そこには依然として、道行く人に叫び続ける幽霊がいた。
「なんか…人を指して叫んでる」
「刺して…?え?刃傷沙汰?」
「いや、指してるのは指ね」
「なんだぁ…指かぁ…」
刃傷沙汰って…
私の言葉に焦った様子の美和。私が紛らわしい言い方したのも悪いけど、とりあえずツッコミを兼ねて訂正すると、安心したようだった。
「でもなんで人に指を指して叫んでるの?」
「それがよくわかんないんだよね…ナンセンスとか、ノットクールとか、ソーバットとか言ってる」
「???」
なんとか幽霊を理解しようと思ったのか、美和が幽霊の叫んでる内容を聞いてきた。だけど、私としても伝えられる内容は少ない。その数少ない情報を言うと、美和がさらに困惑したのがわかった。気持ちはわかる。
「えぇ…っと…現代社会に対して憂いてる人…とか?」
「それが未練だとしたら聖人君子かなんかだね。ついでに言えば、規模が大き過ぎてどうしようも出来ない気しかないよ…?」
「そこをなんとか…あたし達が世の中の良さを伝えて…?」
「美和、落ち着いて?一回その考えから離れよ?」
「あ…うん」
混乱し過ぎたのか、美和がよくわからないことを言い出し始めた。一回遠回しに違うと思うことを言ったけど、なおも食い下がってきたから、今度ははっきりと考え直すように言った。どうやら沼から抜け出してくれたらしい。
そもそも…現代社会を憂いてる人はナンセンスって叫ばないよね…
「とりあえずどういう幽霊かは置いてといて…というか分からないから、先に声を掛けたいんだよね」
「んー…そうだね…このままだと分からないばっかりだもんね。どうしたら一番いいんだろう…」
私はそう美和に説明すると、納得してくれると同時に悩み始めた。今更だけど、今日の予定もそっちのけで私に付き合ってくれる美和には本当に感謝しかない。
「ごめんね…せっかくの休みなのに」
「あはは。いいよ、大事なことだもん」
「ありがと」
私は美和に感謝と謝罪をしながら考える。学校が休みの今日は、もともと買い物をする予定だった。何か目的のものがあったわけじゃないけど、適当に新しい服でも見ようかと言う話をしていた。と、そこまで思ってふと気付いたことがあった。
あれ…もしかして…?
気付いたことを確認するためにも改めて幽霊を視る。すると幽霊が指を指しているのは、人ではあるけど、人によって向いている方向が違うのに気付いた。
「美和、もしかしたら幽霊の叫んでる理由、わかったかもしんない」
「ホント!?」
「多分、だけど」
私としても確実って言えるわけじゃない。けど、指してものと言葉の意味を考えると正解じゃないかと思う。
「美和、ちょっと小芝居に付き合ってくれる?幽霊の近くで美和に話し掛けるから、私の話に合わせて」
「やってみる」
私の無茶振りにも躊躇うことなく受けてくれる美和。私はそれを信じてるし、実際に合わせてくれるとも思っている。
むしろ私の方が大根役者かもね…
そんなことを思いながら、私と美和は並んで歩き出した。幽霊はまだこっちに気付いた様子はない。
そろそろ…かな?
「ねぇ美和、今日はどこに服を買いに行くつもりなの?」
「ん…今日は気になってたブランドがモールに入ったから、そこを見たいかな」
タイミングを見計らって会話を切り出した。美和も始まったことに気付いたのか、少し息を飲んでから答えた。ここは今日の予定通りでもあるから自然だ。
まだ反応なし…か。
聞こえてなかったのか定かじゃないけど、幽霊はまだこっちに気付いた様子はない。食い付いてもらうにはここからが大事だ。
「そうなんだ!美和の服のセンスいいから楽しみだなぁ!」
「そっ…!そんなことないよっ!」
あ、ガチで照れてる…
まぁ私としてはホントのこと言ってるつもりだけど、少しだけテンションを上げて大袈裟に言った。すると幽霊はようやく私達に気付いたようで、視線をこっちに向けてきた。その間、私達は幽霊に着実に近く。
「そんなことあるよー!他の人と比べればわかるって!」
「いやっ…!他の人と比べてわかるのは、あたしがセンスあるわけじゃないってことだよっ!」
これ、照れ過ぎてパニクってるな…?
私が更に煽ると、美和は小芝居のことは忘れたように必死で否定してきた。まぁ白々しくなるよりいいと思う。そして私のそんな思惑はさておき、幽霊はしっかり食い付いて私と美和の間に入るように来た。
「ふむ…確かにナンセンスと言うほどではない」
きたっ!
ついに私達に興味を持った幽霊に内心で喜んだ。だけどそれを表に出さずに、落ち着いてスマホを取り出して文字を打ち込んだ。
「ねぇ、見て。ちなみに美和の言ってたブランドってこれ?」
私は自分の言った言葉とは無関係な内容を打ち込んだスマホを、幽霊にも見せるように美和に見せた。
『私にはあなたが視えています。話を聞きたいので付いてきてもらえますか?』
打ち込まれた文章を見て、幽霊が驚いたように私を見た。ついでに照れに照れていた美和も冷静になったのか、真剣な表情で私を見た。
「わかった」
「これこれ。このブランドであってるよ」
「よし!それじゃ行こっか」
幽霊は大きく頷いて、美和が演技を続けた。私はそのどちらにも合った言葉を言ってから歩き出した。
◯◯
私と美和は幽霊を連れて、丁度近くにあった元々の目的のモールにきた。そこで人気のない階段の踊場で止まり、幽霊と向き合う。
「それでは、まず付いて来てもらってありがとうございます」
「いい。それより本当に視えているんだね」
「はい。私だけで、こっちの子には姿も視えないし、声も聞こえませんが」
私は向き合ってからお礼を言った。それに対して幽霊は、短く応えて私を見た。
「私は三葉茜です。こっちの子は高尾美和」
「高尾美和です。幽霊さんは視えませんが、茜が視えることを知っていて手伝いをしてます」
「僕は大熊郁治だ。手伝いとは?」
「私は幽霊が視えるので、成仏のお手伝いをしているんです。美和もその手伝いです」
「なるほど」
初めて視たときの通りで叫んでた姿が印象的過ぎて、冷静な態度に違和感はあるけど、そこは飲み込んで自己紹介をした。合わせて美和も紹介すると、美和は自分で名乗った。それにともなって大熊さんも同じように名前を言って質問してきたので、質問に答えてから美和に大熊さんの名前を伝えた。
「つまり君たちは僕を成仏させようということかな?」
「そうです」
「ふむ…」
大熊さんが私達の意図を察して質問してきた。私はそれを肯定すると、大熊さんが何かを考え始めた。
「断る」
「ええぇっ!?」
ともすれば断られてしまった。私はそのことにとても驚いた。今まで成仏することに協力的な幽霊ばかりだったから、まさか成仏を断られるとは思わなかったからだ。
でも…成仏しないのは絶対にダメ…
「あの…その理由は…?」
「強制的に成仏をさせられては僕の目的が達成できない。僕は現代のファッション感覚が衰退しているように思えて悲しいんだ。それを是正するまでは成仏できない」
「えぇ…」
美和…割と正解じゃん…
美和の当てずっぽうな理由が若干掠っていて、私は驚きと呆れが混ざったなんとも言えない気持ちになった。と、複雑な感情が渦巻くのも束の間、私は大事なことを言っていないことに気が付いた。
「私、幽霊が視えるし会話もできますけど、それしかできません。強制的に成仏させることなんてできないんです。私達の言うお手伝いって言うのは、幽霊の未練を晴らすお手伝いです。未練が無くなれば成仏できますから」
「なるほど、僕の早とちりか。すまなかった」
「いえ…私も未練のこと言ってなかったので…」
「大丈夫だ、そう言うことなら手伝ってもらおう」
そんなやり取りで何とか和解した。動揺が抜けてなかったのか、私も未練の手伝いってちゃんと言ってなかったのが悪い。しょうがないことだろう。
それにしても…難しいよなぁ…
大熊さんの未練が正しいなら、美和の言っていた通り社会全体を直すみたいなことをしないとダメなら、タイムリミットまでに間に合う気がしない。そこのところ、しっかりと見極めないとドツボにはまる。
まぁ…自分の本当の願いって、意外と正確に分からないからなぁ…
結局のところ、幽霊が最初に言った未練が正しかったことは意外と少ない。社会規模の未練は、さすがにスケールが大きすぎて信用もできない。
と言っても、方向性はそういうので間違いないんだろうけど…
「茜、どうなったの?」
「あ、ごめん。ひとまず未練を晴らす方向で決まったよ」
「そっか。どんな未練?」
「あー…その…今の世の中のファッションが気に入らないんだって…」
「えと…大変そうだね…」
経過が気になったのか、美和が私に質問してきた。それに私が答えると、自分が取り乱して言ったことが当たっていたのが微妙なんだろう。私と同じでなんとも言えなさそうな表情をしていた。
「大変なのはしょうがない。とりあえず出来ることをしようか」
「そうだね。一番大変なのは大熊さんだしね」
「感謝する。ではまず出来ることだが……君達のセンスが見たいっ!」
「センス…ですか?」
「その通ぉりヨっ!!」
おっとぉ…?
さっきまでの冷静な態度はどこへやら。なんだか変な方向にテンションが上がってきている大熊さんに、私は困惑した。語尾までなんかおかしくなってきている。やっぱり道端で視た姿は間違いじゃなかったようだ。というか間違いであって欲しかった。
「僕の代わりに世の中のファッションを直していくのだかラっ!まずは君達がどの程度のセンスを持ってるかを見る必要があるでショ!?」
「は…はぁ…」
「だから!まずは…」
「まずは…?」
「ショップに行くわヨっ!」
うわぁ…マジかぁ…
何と言うか、完全に口調がヤバい人になった大熊さんに、私は正直引いてしまった。女口調とラリってる間くらいの喋り方に、本能的に逃げたくなったのは黙っておいた。そして、そんな大きな不安を抱えたまま、私は美和も連れて大熊さんのあとを追ったのだった。
◯◯◯
なんでこうなったんだろ…
私は試着室の中で一人、頭を抱えていた。なぜ私がこんな目に合っているか不思議でならない。こんな目、と言っても別にしょうがない結果ではあるし、多分必要なことだと思う。思いたい。
はぁ…私は元々人並みだけどさぁ…相性…なのかなぁ…あんなにヒートアップするなんて…
事は数十分前に遡る。大熊さんの頼み通り、私と美和のファッションセンスを披露するにあたって、お互いに合った服を選び合うことになった。そこまではしょうがないで済む話で、私は人並み、平凡、面白みがないという、酷評ではあるけど納得もいくし自己評価どおりだった。
まさか美和がなぁ…私もセンスはいいと思ってはいたけど…
問題は美和だった。なんの因果か、美和が私に選んだ服が大熊さんのセンスに引っ掛かったらしい。大いに食いつかれた。
「茜、まだ?」
「三葉さん?まだなノぉ?」
「あ、うん。もうちょっと…」
そうして始まったのが美和と大熊さんのバトル。生贄は私。いままで味わったことはなかったけど、噂に聞く着せ替え人形気分とはこういうものなんだろう。これまでは自分で無難なのを選ぶか、美和のアドバイスしか聞いたことなかったから、こうもアレコレ言われるのは疲れる。
そして今…もう何度目なんだろ…
頭を抱えていたけど、そんなことは二人が許さなかった。美和には大熊さんの声が聞こえないはずなのに、ぴったりの同タイミングで私に声を掛けてきた。そんなわけで私は手早く着替えて試着室から出る。今回は大熊さんチョイスだ。
「でまーす」
「んぅー…いいわネっ!ソゥクール!」
「うぅ…悔しいけど、あたしが茜にはしないチョイス…でも合ってる…」
心を無にして出ると、大熊さんと美和がそれぞれ感想を言った。いや大熊さんのは分からないけど。
それにしても…今だけは美和に大熊さんが視えてるんじゃないかと思うなぁ…
何故か分からないけど息がぴったりの二人。会話をするときは私を挟むけど、感想のタイミングとか呼び掛けるタイミングとか、見計らってるように揃えてくるあたり怖い。
「僕の見立てに間違いないわネ!爽やかヨ!」
カットソーにオーバーオール。麦わら風のハット。これからの季節的には丁度いいかもしれない涼し気な感じだ。ついでに、私では絶対に選ばないだろう。
「くぅ…なら…これを使って!茜!」
「えぇ…まだやるの…?」
「「やる!」」
ついにハモった…!
美和から新しく服を渡されて私はまた試着室に戻る。今度渡されたのはシャツだけだから、カットソー止めてこっちにしてくれと言うことなんだろう。
「どー?」
「ふふんっ…こっちのほうが涼やかじゃない?」
「くっ…やるわネ…」
オーバーオールはそのままに、水色で大き目のラインの入ったボーダーの半袖のシャツに交換。私はこっちの方が好みだ。
「まさか僕のチョイスを修正してくるなんテ…」
「でも、美和が初めて対抗ではなく、大熊さんの案に乗っかったので大熊さんの勝ちでいいのでは…?」
落ち込んでるところ悪いけど、本音を言えばそろそろ落としどころを見つけて解放されたい。疲れた。
「いいエ…人の意見を取り入れることのできる…それこそが本当にファッションを理解できる人ヨ…」
「大熊さん…」
「人に教える立場としテ…長いこと忘れてしまっていたようネ…」
悔しそうだけど、何故かすっきりしたような顔をした大熊さん。それは心から満足しているのが、身体が透け始めていることからもわかる。
はて…それにしても、世の中は良いのだろうか…?
今更蒸し返す気はないし、未練が晴らされたみたいだから気にしなくてもいいと思うけど、こうもあっさりされると流石に不思議に思う。
「美和、大熊さんが成仏しそう」
「えっ…?ほんと?そっか…」
疑問はさておき、私は美和に大熊さんの状態を伝えた。美和もおそらく不思議に思ったんだろうけど、すぐに残念そうな顔になった。
「その…大熊さんの服選びは、あたしにとって新鮮でした」
「いいヨ。僕の意思は…君に任せるワ!」
まさか…?
「高尾さん!僕の意志をついで、この世のファッションを任せるわネ!」
諦めてなかったー…!
「僕のセンスは存分に見せたワ…!これからは…まかせた」
そう言い残し、言い切った表情で大熊さんは消えていった。衝撃的過ぎて美和に伝えるのも忘れていたけど、これを素直に伝えてもいいのだろうか。
「茜?どうしたの?」
「あ、あー…うん。成仏したよ」
「そっか。最期はなんて?」
「えと…大熊さんのセンスも受け継いで役立てて欲しいって。あと、まかせたって」
「まかっ…!?うぅ…考えておこうかな…」
「まぁ…将来の一つとしておけばいいんじゃないかな?」
「そうだね」
結局、私は手短に伝えた。別に美和の重荷になって欲しいわけじゃないから、出来るだけ軽い感じで。幽霊を成仏させておいて、自分の負担になってしまうなら本末転倒だろう。美和がそうなってしまうのは嫌だ。粗末にしていいわけじゃないけど、できるだけ負担がないほうがいい。
だから、これくらい軽くでいいかな…
「じゃ、とりあえずこれ買ってくるね」
「わかった。次はあたしの一緒に見てくれる?」
「もちろん」
そうして、私と美和はその後も買い物を楽しんだのだった。
第37話を読んで頂き、本当にありがとうございます!
毎回遅れて申し訳ないです。
こんなに遅れると謝罪も軽くなってしまいそうなので気を付けます…
それでは今回ですが、最近ナルシストっぽい人しか書いてない気がしますね。
ただのナルシストってわけではないんですけどね。
普通にオネエさんにするのも癪だったので、暴走するタイプになりました。
それと、大熊さんは現代のファッションを憂いていましたが、私は全く興味ないです。
そもそもセンスあるとも全く思ってないので。
ただ話が思いついた結果って感じですね。
さて今回はここまで!
安定してないのにブクマして頂いてる皆様!
投稿が読めないのにブクマしてなくても読んで頂いてる皆様!
本当に感謝しています。
そして懲りずに次回の予定を立てますが、7/5を予定します!
また次回もお付き合い頂ければ幸いです!




